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浜一中大福餅事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
浜一中大福餅事件
現在の静岡県立浜松北高等学校のグラウンド
場所 日本の旗 日本静岡県浜松市広沢町(現在の中央区広沢
静岡県立浜松第一中学校(現在の静岡県立浜松北高等学校
日付 1936年昭和11年)5月10日[注釈 1]
原因 食中毒
死亡者 44名
負傷者 2072名[注釈 2]
被害者 大福を食べた学校生徒、職員、およびその家族
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浜一中大福餅事件(はまいちちゅうだいふくもちじけん)は、1936年昭和11年)5月10日に静岡県立浜松第一中学校(現・静岡県立浜松北高等学校)で運動会の終了後に配布された大福を食べた生徒、教員、その家族らが、翌日以降に食中毒を発症し、多数の死傷者を出した事件。上記の学校名から浜松一中食中毒事件浜松一中大福餅食中毒事件とも呼ばれる。

概要

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1936年5月10日の運動会終了後、6個入りの大福が生徒や職員に配布された[1]。配布翌日以降、大福を食べた者が食中毒を発症し、その数は『浜松市史』の記述では生徒883名、生徒の家族1161名、職員21名、職員家族51名にも上り、そのうち生徒29名、生徒家族15名の合計44名が死亡した[1][2][注釈 3]

中毒の原因について、当初は製造元を解雇された人間の怨恨による毒物混入や緑青中毒、製造過程での過失といった言説が流れた(怨恨説については、該当する人物が一時警察に検挙拘留された)が、被害者の中に近傍の浜松飛行第7連隊や高射砲第1連隊の関係者が含まれたことから、陸軍軍医学校北野政次(当時二等軍医正)[注釈 4]を派遣して調査し、市内の菓子店で製造された際に混入した「ゲルトネル氏腸炎菌(サルモネラ)」と発表した[1][2][4][3][5]。菓子店は店内にネズミが横行するような劣悪な衛生環境だったとされる[3]が、その混入経過の解明にまでは至らなかった[1]。大福は白餡入りと黒餡入りが3個ずつ配布されたが、発症者はすべて黒餡入りを食べた者だったことから「黒餡の大福のみ(目立たないという理由で)ネズミの糞を取り除かなかったのではないか」とする見解がある[3]

当時として空前の規模の食中毒被害であったため、広く報道されるとともに、県、市、地元医師会、陸軍軍医学校、日本赤十字社第3師団の救護団、浜松衛戍病院などの機関が連携し「被害を最小限に食いとめることができた」と『浜松市史』には記されている[1]。本事件は社会に食中毒の恐怖を認識させ、これ以来「大福餅事件を忘れるな」が合言葉となった[6][注釈 5]

事件後、校庭には慰霊碑が建立された[1][8]

脚注

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注釈

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  1. ^ 実際の発症は11日以降。
  2. ^ 『浜松市史』記載の罹患者数(合計2116名)から死亡者を除いた数字。
  3. ^ 『浜松市史』の罹患者を合計すると2116名だが、『文春オンライン』の記事は罹患者数を「2296名」とする。
  4. ^ 北野はのちに731部隊の幹部となったことで知られる[2][3]常石敬一によると、部隊の母体といえる陸軍軍医学校防疫研究室は、この事件に大きな関心を抱き、石井四郎ら複数の関係者が現地で調査にあたり、報告書も発表した[2]
  5. ^ その後、本事件から60年後に当たる1996年(平成8年)に大阪府堺市で、学校給食での病原性大腸菌(O157)による集団食中毒事件が発生[6]。9523人が罹患、3人の児童が死亡するという事件(堺市学童集団下痢症)も起こっている[7]

出典

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  1. ^ a b c d e f 浜松市史 三 第四章第六節第三項 スペイン風邪流行 浜一中大福餅事件”. 浜松市立中央図書館/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ. 2021年12月12日閲覧。
  2. ^ a b c d 小松新 (2020年6月8日). “運動会の大福餅を食べて死者44人……あの「七三一部隊」トップも駆けつけた“未曾有の大事件”とは”. 文春オンライン. 2021年12月12日閲覧。
  3. ^ a b c d 食中毒による死者数の推移 - 社会実情データ図録
  4. ^ “大福禍の中毒素ゲ氏菌の正体 独逸のゲルトネル氏が発見 主として牛豚肉に”. 中外商業新報(現・日本経済新聞. (1936年5月17日). https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100282994 2021年12月12日閲覧。 (リンク先は神戸大学経済経営研究所新聞記事文庫)
  5. ^ 来住輝彦、「サルモネラのささやき」 『生活衛生』 1964年 8巻 4号 p.135, doi:10.11468/seikatsueisei1957.8.135, 大阪生活衛生協会
  6. ^ a b 角野猛微生物の発見と性質について(1)(教材研究)」『日本調理科学会誌』(2010年12月5日発行、日本調理科学会)2021年12月13日閲覧。
  7. ^ O157 堺市学童集団下痢症を忘れない日|堺市 2021年12月13日閲覧。
  8. ^ 浜一中大福餅事件”. 浜松情報BOOK. 2021年12月11日閲覧。

関連項目

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