東ヨーロッパ・クラトン
東ヨーロッパ・クラトン(ひがしヨーロッパ・クラトン、英: East European craton)は、構造地質学におけるクラトンのひとつである。現在の、バルティカ大陸始原プレートの中核であり、3つの地殻区域: 北西のフェノスカンジア楯状地、東のヴォルガ・ウラル・クラトン、南のサルマティア・クラトン から構成される、非常に広大な地質学的区域である。
概要
[編集]東ヨーロッパ・クラトンを構成する、フェノスカンジア楯状地はバルト楯状地 を含み、太古代と原生代初期の雑多な地殻の寄せ集めである。サルマティア・クラトンは、さらに古い太古代の地殻から成る。ヴォルガ・ウラル地域は、堆積物で厚く覆われているが、深部への掘削により、ほとんどが太古代の地殻であることを明らかになっている。東ヨーロッパ・クラトンには、フェノスカンジア楯状地/バルト楯状地とウクライナ楯状地という、2つの楯状地がある。ウクライナ楯状地とヴォロネジ山塊 (Voronezh Massif) は、南西と東側は 3.2 - 3.8 Ga(10億年前)の太古代の地殻から構成され、その他の地域は 2.3-2.1 Ga の原生代初期の造山帯から構成される。
中央ロシアのウラル山脈は、東ヨーロッパ・クラトンの東の端にあたり、原生代末期の、東ヨーロッパ・クラトンとシベリア・クラトンの造山型の衝突の痕跡である。中央ロシアのクラトンの南の境界は、サルマティア・クラトンが、顕生代の厚い堆積物と、アルプス造山運動により地中深くまで埋められる箇所に相当する。間に挟まった古生代後期の Donbass 褶曲帯(プリピャチ-ドニエプル-ドネツ オラーコジンとしても知られている)は、サルマティア・クラトンを横断して、これをウクライナ楯状地とヴォロネジ山塊に分割している。
プラットフォームの基盤岩
[編集]最も特徴的な 東ヨーロッパ・クラトンの物理地質学的様相は、その幅 3000 km におよぶプラットフォームを覆う、広大な厚さ 3 km あるいはそれ以上のリフェアン(Riphean; 原生代中期から後期を指す地質年代)堆積層である。これは、基盤岩が露出した、バルト楯状地の北西部分と、南西にあるウクライナ楯状地との間で、鋭いコントラストを示している。リソスフェアの厚さも、ウクライナの 150 - 200 km、ロシア南部の 120 km、バルト楯状地北西部分の 250 km 以上というように、場所により大幅に変化し、これに伴って地殻の厚さも非常に大幅に変化する。クラトンの中にある楯状地は、全て露出した結晶性の地殻である。これに対して、クラトンのプラットフォームの部分は、結晶性の地殻あるいは基盤岩が、より若い堆積物により覆われている。従って、東ヨーロッパ・クラトンの地殻は、バルト楯状地及びウクライナ楯状地と、堆積物で覆われたプラットフォームの基盤岩から構成されることになる。
初期のプレート運動
[編集]東ヨーロッパ・クラトンは、大部分が初期の深いマントルプルームに起源を持つ、広大な原生代と古生代の地溝を伴う、非常に複雑なプレート活動履歴を持つ。
参考文献
[編集]- Artemieva, Irina M. (2003) "Lithospheric structure, composition, and thermal regime of the East European Craton:implications for the subsidence of the Russian platform", Earth and Planetary Science Letters, 213, 431–446
- Bogdanova, Svetlana V., Gorbatschev, R. and Garetsky, R.G. (2005) The East European Craton, in: Selley, R.C., Cocks, L.R. and Plimer, I.R. (Eds) Encyclopedia of Geology, Amsterdam ; London : Elsevier Academic, 5 vols, ISBN 0-12-636380-3, p. 34-49
- Bogdanova, Svetlana V. (2005) "The East European Craton: Some Aspects of the Proterozoic Evolution in its South-West", Polskie Towarzystwo Mineralogiczne - Prace Specjalne (Mineralogical Society of Poland ? Special Papers), 26, 18–24
- Bogdanova, Svetlana V. (2000) "Palaeoproterozoic Accretion of Sarmatia and Fennoscandia", Europrobe News, 13 June, p. 7–9
- Evins, Paul. "Precambrian evolution of the major Archaean blocks of the Baltic Shield" University of Oulu, Dept. of Geology, PL 3000, 01401 Oulu, Finland [broken link: 3 July 2007]
- Ruban, Dmitry A., and Yoshioka, Shoichi. (2006) "Late Paleozoic - Early Mesozoic Tectonic Activity within the Donbass (Russian Platform)", Trabajos de Geologia, 25, Univ. de Oviedo, 101-104.