フェノスカンジア

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フェノスカンジア

フェノスカンジア[1]フェノスカンディア[2]とも。Fennoscandia または Fenno-Scandinavia)は、地理的かつ地質学的な用語である。この語が指す地域は、スカンジナビア半島コラ半島カレリア、およびフィンランドである[3]

この語は、1898年にフィンランドの地質学者ラムセイ (Wilhelm Ramsay) が論文で提唱した[2]

地質学[編集]

この語は地質学においては、ノルウェーカレドニア造山帯[注釈 1]とその北西部を除く)南部、スウェーデンとフィンランド、そしてロシアの一部の基底を成すバルト楯状地 (Baltic shield) とほぼ同じ地域を指している[1]。バルト楯状地は約35 - 30億年前に形成され、最終氷期の後、厚い氷床が融けその重量が無くなったことによる隆起が続いている[5]。その隆起運動はフェノスカンジアの隆起 (Fennoscandian uplift) として知られている[6]

地理学[編集]

1902年にラムセイは論文において、フェノスカンジアの語が指し示す範囲の地域には地質学的なまとまりだけでなく自然環境的なまとまりも認められるとして、自然学・地理学的な用語としても用いられうる旨を提唱した[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ カレドニア造山運動に伴って生じた、スウェーデンからバルト地方にかけての地域とデンマーク・ポーランド・北海海盆などの地域とを分ける北東 - 南西方向の構造帯は、フェノスカンジア境界帯 (Fennoscandian Border Zone) またはトルンキスト線 (Tornquist Line) として知られている[4]

出典[編集]

  1. ^ a b 小林 1996
  2. ^ a b 浅井 1973, p. 1965
  3. ^ The Oxford Handbook of the Archaeology and Anthropology of Hunter-Gatherers, eds. Vicki Cummings; Peter Jordan; Marek Zvelebil (Oxfored; New York: Oxford University Press, 2014), p. 838
  4. ^ Allaby編 2004a
  5. ^ 山下 & 中村 1996
  6. ^ Allaby編 2004b
  7. ^ 浅井 1973, p. 1966

参考文献[編集]

  • (浅井 1973)浅井辰郎 著「フェノスカンディア」、渡辺光ほか編 編『世界地名大事典 3 ヨーロッパ・ソ連』朝倉書店、1973年5月30日、pp. 1065-1066頁。ISBN 978-4-254-16553-1全国書誌番号:73019381 
  • 地学団体研究会新版地学事典編集委員会編 編『新版 地学事典』平凡社、1996年10月。ISBN 978-4-582-11506-2 
    • (山下 & 中村 1996)山下昇、中村一明「バルト楯状地」 p. 1046.
    • (小林 1996)小林英夫「フェノスカンジア」 p. 1118.
  • Allaby, Ailsa、Allaby, Michael編 編『オックスフォード地球科学辞典』坂幸恭監訳、朝倉書店、2004年5月。ISBN 978-4-254-16043-7 
    • (Allaby編 2004a)「フェノスカンジア境界帯」 p. 507.
    • (Allaby編 2004b)「フェノスカンジアの隆起」 p. 507.

関連項目[編集]