大統領令 (アメリカ合衆国)
大統領令[1](だいとうりょうれい、大統領命令[2]、大統領行政命令[3]、執行命令[2])は、アメリカ合衆国議会の承認を得ずに、アメリカ合衆国大統領がアメリカ合衆国連邦政府やアメリカ軍に対して発するアメリカ合衆国の行政命令・行政委任立法。
アメリカ合衆国憲法で明確に規定されているわけではなく、1789年以降、行政官による任務遂行の命令に資するために発せられてきた。
日本語では、「大統領令」という表現にexecutive order(行政命令)とpresidential memorandum(大統領覚書)の二つを含める場合と、executive order(行政命令)だけを含める場合とがある[4]。
種類
[編集]アメリカ合衆国連邦政府では、以下の概念その他が存在する。
- 大統領命令 (Presidential directive) - 最広義の「大統領命令」であり、およそ大統領が発する命令の全てを指し、以下の全てを含む。
- 大統領令 - 連邦政府の運営を管理するための命令。
- 大統領布告 (Presidential proclamation) - 状況を述べ、法令を宣言し、その順守を要請し、出来事を認知し、或いは、法令に明記されている状況の現実化を認知することで法令の実施を発動する、布告 (Proclamation) 。
- 大統領覚書 (Presidential memorandum) - 連邦行政府の様々な諸省庁の行動・実務・政策などを管理・統治する、覚書。
- 大統領決定 (Presidential Determination) - 連邦行政府の公的な政策や立場となる、ホワイトハウスが発する決定。
- 大統領認定通告 (Presidential finding) - 議会(その委員会を含む)への、特定の事態が発生したことの認定・通告。
- 国家安全保障命令 (National security directive) - 国家安全保障会議への命令。
連邦議会の立法権との関係
[編集]連邦議会が制定する法律に基づく大統領への委任立法であることもあり、また逆に、連邦議会による立法で上書き(無効化・廃止)され得る。
連邦最高裁の司法権・違憲審査権との関係
[編集]実際に連邦最高裁による違憲判決で無効化されたことは過去に複数回あり、その内の1つは、ハリー・S・トルーマン大統領が朝鮮戦争時にストライキしていたオハイオ州の製鉄工場を強制接収した『大統領令10340号』である[5]。
歴史
[編集]1907年から番号が振られ始め、エイブラハム・リンカーン大統領が1862年に発した『奴隷解放令』まで遡って番号を振った。
日本において有名なものに、太平洋戦争時の大規模な日系アメリカ人の強制収用の根拠となった、フランクリン・ルーズベルト大統領による1942年2月19日の『大統領令9066号』がある。
そのフランクリン・ルーズベルト大統領は、歴代で最多の3721本を発している[6]。
毎年ホワイトハウスで感謝祭の前日に行われる七面鳥恩赦式にて、「turkey pardon(七面鳥恩赦)」と呼ばれる、料理のために用意された七面鳥を放免する儀式が行われるが、2014年、バラク・オバマ大統領は、この恩赦の命令を「executive order」と表現した[7]。
脚注
[編集]- ^ “資料5:米国:規制の計画及び審査に関する大統領令” (PDF). 環境省 (日本). 2014年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月11日閲覧。
- ^ a b 英和辞典 Weblio辞書
- ^ 英辞郎 on the WEB
- ^ アメリカ大統領権限分析プロジェクト:トランプ大統領と「大統領令」:とくに行政命令について | 研究活動 | 東京財団政策研究所
- ^ 越智道雄『なぜアメリカ大統領は戦争をしたがるのか?』アスキー・メディアワークス、2008年、125頁。ISBN 9784048700252。
- ^ “大統領令とは? 法律並みの拘束力、制限も”. 産経新聞. (2017年2月2日). オリジナルの2017年2月2日時点におけるアーカイブ。 2017年2月9日閲覧。
- ^ Kirsten Appleton「President Obama's Latest Executive Order Doesn't Cause Flap」『ABC News』ABC、2014年11月27日。2020年6月4日閲覧。