勇士たち

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『勇士たち』
ロシア語: Богатыри
英語: The Bogatyrs
作者ヴィクトル・ヴァスネツォフ
製作年1881年 - 1898年
種類油彩カンヴァス
寸法295.3 cm × 446 cm (116.3 in × 176 in)
所蔵トレチャコフ美術館モスクワ
座標北緯55度44分30.1秒 東経37度37分13.2秒 / 北緯55.741694度 東経37.620333度 / 55.741694; 37.620333座標: 北緯55度44分30.1秒 東経37度37分13.2秒 / 北緯55.741694度 東経37.620333度 / 55.741694; 37.620333

勇士たち』(ゆうしたち)または『ボガトィリ』(: Богатыри, : The Bogatyrs)は、ロシアの画家ヴィクトル・ヴァスネツォフ1881年から1898年にかけて描いた絵画である[1][2][3][4][5]。『3人の勇士』(: Три богатыря, : Three Bogatyrs[6][7][8][9]、『英雄たち[10]とも。

モスクワトレチャコフ美術館のホール26に所蔵されている[6][3]。縦 295.3 センチメートル、横 446 センチメートルの大きさをもつ[2][11]

来歴[編集]

ヴャトカ地域の村に生まれ、おとぎ話などに慣れ親しんで育ったヴァスネツォフは、1870年頃には本作のためのスケッチを製作していた[2]

本作は、1898年4月23日に完成され、そのすぐ後に美術品収集家のパーヴェル・トレチャコフによって買い上げられた[1][2][12]。同年6月にトレチャコフは、画家のヴァシーリー・ポレーノフの助言を受けて、ヴァスネツォフの作品を展示するための大きな部屋を確保し、そこに本作が飾られた[2]。また、本作が完成されて間もないうちにヴァスネツォフの個展の開催が決定され、1899年の3月から4月にかけてサンクトペテルブルクにおいて、本作を含む計38作品を集めた個展が開催された[2]

作品[編集]

描かれている3人の人物は、ロシアに伝わる英雄叙事詩、ブィリーナに登場する主人公である[1]。秋空のもとに広がる平原の中で、勇士たちが馬にまたがっている[13]トウヒの木やハネガヤの草の他に、灰色をした岩などが描かれている[14]。勇士たちの後方には、地平線まで続く暗色の丘陵が描かれている[14]。ヴァスネツォフの説明によれば、勇士たちは旅の途中であり、広野を見回しながら、誰かが災難に遭遇していないか、どこかに敵が潜んでいないかなどを確認しているところである[14]

画面中央の人物は、イリヤ・ムーロメツである[2][5]。ムーロメツは、黒い毛色をした馬に乗っており、手をかざして遠方に視線を向けている[5]。片方の手でを持っており、もう片方の手には、およそ 650 キログラムほどの重さのある棍棒を提げている[15][5]

画面向かって左の人物は、ドブルィニャ・ニキーチチである[5]。ニキーチチは、白い毛色をした馬に乗っており、銀色をした鎖帷子を着用している[13]。金色をした鞘に収まった剣を、片方の手で抜き出しているところであり、もう片方の手で、宝石が用いられたを持っている[15][5]

画面向かって右の人物は、アリョーシャ・ポポーヴィチロシア語版英語版である[5]。ポポーヴィチは、鍛えられた矢と、絹の弦が張られた弓を左手に持っており、グースリという楽器を右手に持っている[15][5]。ポポーヴィチのまたがる馬は、金色の毛並みをもっており、草を食べている[14]

脚注[編集]

  1. ^ a b c “ヴィクトル・ヴァスネツォフが描いたロシア民間伝承の美しい絵画10枚”. ロシア・ビヨンド. (2020年2月5日). https://jp.rbth.com/arts/83205-viktor-vasnetsov 2020年2月29日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g Третьяковская галерея - Шедевры русского искусства”. Журнал «ТРЕТЬЯКОВСКАЯ ГАЛЕРЕЯ». 2020年2月29日閲覧。
  3. ^ a b RUSSIAN ART ON THE RISE - RUSSISCHE KUNST IM AUFBRUCH”. Kroll Family Trust. 2020年2月29日閲覧。
  4. ^ Кузнецова Екатерина Сергеевна. “МНОГООБРАЗИЕ ЖАНРОВ ЖИВОПИСИ”. Муниципальное бюджетное учреждение дополнительного образования. 2020年2月29日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h 『ロシア絵画の旅』 2012, p. 210.
  6. ^ a b “トレチャコフ美術館を1時間で見る:必見の傑作10点”. ロシア・ビヨンド. (2018年1月11日). https://jp.rbth.com/arts/79543-tretyakov-kaiga 2020年2月29日閲覧。 
  7. ^ Victoria Klimentieva (2009年8月). “NICHOLAS ROERICH: IN SEARH OF SHAMBHALA”. テキサス大学オースティン校. 2020年2月29日閲覧。
  8. ^ “スラヴのジャスティス・リーグ:古代の物語、叙事詩のスーパーヒーローたち”. ロシア・ビヨンド. (2017年12月25日). https://jp.rbth.com/arts/79479-bogatiri 2020年2月29日閲覧。 
  9. ^ Памятник князю Владимиру в Киеве”. КОНБ им. В.Г. Белинского. 2020年2月29日閲覧。
  10. ^ 福間加容・望月哲男. “ソローキンと絵画 - 小説『ロマン』と 19 世紀ロシア美術” (PDF). 北海道大学スラブ研究センター. 2020年2月29日閲覧。
  11. ^ Сказочный мир Виктора Васнецова”. Минкультуры России. 2020年2月29日閲覧。
  12. ^ “"Аленушка" и "Три богатыря": о чем расскажут картины Виктора Васнецова”. Москва 24. (2018年5月18日). https://www.m24.ru/articles/iskusstvo/18052018/152875 2020年2月29日閲覧。 
  13. ^ a b 『ロシア絵画の旅』 2012, pp. 210, 211.
  14. ^ a b c d 『ロシア絵画の旅』 2012, p. 211.
  15. ^ a b c Yana Myaskovskaya. “HUMBLE MOTIFS ON LUXURY OBJECTS: FEDOR ROCKERT'S ENAMELWARE IN THE RUSSIAN SILVER AGE, 1880-1917”. Penn State College of Information Sciences and Technology. 2020年2月29日閲覧。

参考文献[編集]

  • ポルドミンスキイ 著、尾家順子 訳『ロシア絵画の旅 はじまりはトレチャコフ美術館』群像社、2012年10月。ISBN 978-4-903619-37-8