コンテンツにスキップ

リー環のコホモロジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学において、リー環のコホモロジー: Lie algebra cohomology)とは、リー環に対するコホモロジー論である。それは Chevalley and Eilenberg (1948) によって、コンパクトリー群位相空間としてのコホモロジーの代数的構成を与えるために、定義された。上の論文では、コシュール複体英語版と呼ばれる鎖複体がリー環上の加群に対して定義され、そのコホモロジーが普通の意味で取られる。

動機付け

[編集]

Gコンパクト[要曖昧さ回避]単連結リー群のとき、G はそのリー環によって決定され、したがってそのコホモロジーはリー環から計算できるはずである。これは次のようにしてできる。そのコホモロジーは G 上の微分形式の複体のド・ラームコホモロジーである。これは同変微分形式英語版の複体に置き換えることができ、それは今度は適切な微分でリー環の外積代数と同一視できる。外積代数のこの微分の構成は任意のリー環に対して意味をなし、したがってすべてのリー環に対してリー環のコホモロジーを定義するのに使われる。より一般に加群に係数を持つリー環のコホモロジーを定義するために類似の構成を用いる。

定義

[編集]

を可換環 R 上のリー環、 をその普遍包絡環とし、M の表現とする(同じことだが -加群とする)。R の自明表現と考え、コホモロジー群

を定義する(Ext の定義は Ext関手を参照)。同じことだが、これらは左完全不変部分加群関手

の右導来関手である。

同様に、リー環のホモロジーを

と定義でき(Tor の定義は Tor関手を参照)、これは右完全余不変英語版関手

の左導来関手と同値である。

リー環のコホモロジーについての重要な基本的な結果の中にはホワイトヘッドの補題英語版ワイルの完全可約性定理英語版レヴィ分解英語版定理がある。

シュバレー・アイレンバーグ複体

[編集]

k 上のLie環 の左 -加群 M に値を持つリー環コホモロジーはシュバレー・アイレンバーグ複体 を用いて計算できる。この複体の n-コチェインは M に値を持つ n 変数の交代 k-多重線型関数 である。n コチェインのコバウンダリは次で与えられる (n + 1)-コチェイン δf である[1]

ただしキャレットはその引数を除くことを意味する。

小さい次元のコホモロジー

[編集]

0次コホモロジー群は(定義により)加群に作用するリー環の不変加群である:

1次コホモロジー群は内部微分の空間 Ider を法とした微分の空間 Der である:

ただし微分はリー環から M への写像 d

なるもので、それが内部微分とはそれがある aM

で与えられることをいう。

2次コホモロジー群

はリー環の加群 M によるリー環の拡大

の同値類の空間である。

より高次のコホモロジー群に対しては同様の易しい解釈は無いようである。

関連項目

[編集]

参考文献

[編集]
  • Chevalley, Claude; Eilenberg, Samuel (1948), “Cohomology Theory of Lie Groups and Lie Algebras”, Transactions of the American Mathematical Society (Providence, R.I.: American Mathematical Society) 63 (1): 85–124, doi:10.2307/1990637, ISSN 0002-9947, JSTOR 1990637, MR0024908, https://jstor.org/stable/1990637 
  • Hilton, P. J.; Stammbach, U. (1997), A course in homological algebra, Graduate Texts in Mathematics, 4 (2nd ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-94823-2, MR1438546 
  • Knapp, Anthony W. (1988), Lie groups, Lie algebras, and cohomology, Mathematical Notes, 34, Princeton University Press, ISBN 978-0-691-08498-5, MR938524 
  1. ^ Weibel, Charles A. (1994). An introduction to homological algebra. Cambridge University Press. p. 240