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ボンビコール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ボンビコール
識別情報
CAS登録番号 765-17-3 チェック
PubChem 445128
ChemSpider 392860
UNII LZT8R8TVZ7
特性
化学式 C16H30O
モル質量 238.415 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ボンビコール: Bombykol化学式:C16H30O)はカイコガのメスが放出するフェロモンである[1][2]。この物質は1959年ドイツの生化学者アドルフ・ブーテナントにより発見され、化学的にその特性が評価された最初のフェロモンである[3]。ボンビコールという名称はラテン語名であるBombyx moriにちなみ、ブーテナントによって命名された。生体内では、フェロモン結合タンパク質BmorPBPの天然のリガンドとして作用する[4]

用途

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ボンビコールのようなフェロモンはごく微量を散布するだけでその影響は絶大であり、オスはメスの居場所の情報について混乱を引き起こす。このことを利用して、大量の農薬を散布することなく害虫を効果的に駆除するための誘引剤として用いられる。なお、フェロモンとしての特異な活性は化合物の絶対配置や異性体混合物などに依存することが多く、ボンビコールはその(10Z,12E)異性体よりも100億倍、(10E,12E)異性体よりも10兆倍の活性を持つ[1]

生合成

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ボンビコールの生合成

ボンビコールはアセチルCoAから16炭素を持つ脂肪アシルであるパルミトイルCoA英語版を経て生成することが知られている。パルミトイルCoAは、Bmpgdesat1(Desat1)遺伝子によってコードされている不飽和化酵素によって、モノエン(11Z)-hexadecenoyl-CoAやジエン(10E,12Z)-10,12-hexadecadienoyl-CoAに変換される。ここで使用される酵素は、この連続した2つの脱飽和ステップを触媒的に進行させるために必要な唯一の酵素である[5]。パルミトイルCoAはこの不飽和化とカルボニル炭素の還元的修飾を伴うステップでボンビコールに変換される[6]

出典

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  1. ^ a b 『ボルハルト・ショア―現代有機化学(上)第8版』化学同人、2019年12月20日、682頁。ISBN 978-4-7598-2029-4 
  2. ^ Kuwahara, Yasumasa; Mori, Naoki; Yamada, Shigeki; Nemoto, Tadashi (1984). “Evaluation of Bombykol as the Sex Pheromone of Bombyx mandarina(Lepidoptera : Bombycidae)” (英語). Applied Entomology and Zoology 19 (2): 265–267. doi:10.1303/aez.19.265. ISSN 0003-6862. https://www.jstage.jst.go.jp/article/aez1966/19/2/19_2_265/_article. 
  3. ^ Butenandt, Adolf; Beckmann, Rüdiger; Hecker, Erich (1961-01). “Über den Sexuallockstoff des Seidenspinners, I. Der biologische Test und die Isolierung des reinen Sexuallockstoffes Bombykol” (ドイツ語). Hoppe-Seyler´s Zeitschrift für physiologische Chemie 324 (Jahresband): 71–83. doi:10.1515/bchm2.1961.324.1.71. ISSN 0018-4888. https://www.degruyter.com/document/doi/10.1515/bchm2.1961.324.1.71/html. 
  4. ^ Leal, Walter S. (2004-11-23), Schulz, Stefan, ed., Pheromone Reception, 240, Springer Berlin Heidelberg, pp. 1–36, doi:10.1007/b98314, ISBN 978-3-540-21308-6, http://link.springer.com/10.1007/b98314 2022年6月19日閲覧。 
  5. ^ Moto, Ken'ichi; Suzuki, Masataka G.; Hull, J. Joe; Kurata, Ryuichiro; Takahashi, Shunya; Yamamoto, Masanobu; Okano, Kazuhiro; Imai, Kiyohiro et al. (2004-06-08). “Involvement of a bifunctional fatty-acyl desaturase in the biosynthesis of the silkmoth, Bombyx mori , sex pheromone” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 101 (23): 8631–8636. doi:10.1073/pnas.0402056101. ISSN 0027-8424. PMC 423246. PMID 15173596. https://pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.0402056101. 
  6. ^ Ando, Tetsu; Hase, Takema; Arima, Rika; Uchiyama, Masaaki (1988). “Biosynthetic pathway of bombykol, the sex pheromone of the female silkworm moth.” (英語). Agricultural and Biological Chemistry 52 (2): 473–478. doi:10.1271/bbb1961.52.473. ISSN 0002-1369. http://www.jstage.jst.go.jp/article/bbb1961/52/2/52_2_473/_article.