ビスホスフィン
ビスホスファン(羅Bisphosphani、英bisphosphanes)或いは慣用名でビスホスフィン (羅Bisphosphini、英bisphosphines) は、無機化学および有機化学において配位子として使われる化合物の一群で、ホスフィン部位を2個有するもの総称。ジアミン類の燐類縁体である。ジホスフィン類(系統名ジホスファン類、羅Diphosphani、英diphosphanes、慣用名ジホスフィン類、羅Diphosphini、英diphosphines)とも呼ばれるが、複数形のない日本語ではヒドラジン(ジアザン)の燐類縁体で化学式P2H4の化合物であるジホスファン(系統名ジホスファン、羅Diphosphanum、英diphosphane、慣用名ジホスフィン、羅Diphosphinum、diphosphine)と紛らわしい為ここではビスを用いる。
ビスホスフィンは2個のホスフィン部位がそれぞれ金属に配位するので、通常はキレート性を持っている。
最も広く使われているビスホスフィン配位子は、ビス(ジフェニルホスフィノ)アルカン、Ph2P(CH2)nPPh2である。これらは、X(CH2)nX (X=ハロゲン) と YPPh2 (Y=アルカリ金属) をテトラヒドロフラン中で反応させて作ることができる[1]。DPPMのように2つのホスフィン間の架橋基が1原子分の長さしかないものは金属-金属相互作用もしくは結合構成を助長する傾向がある。これは結合性電子のドナーである2つのP原子が互いに近く、クローズしているからである。長く柔軟な多くの架橋基をもつキレートホスフィンを使うと、全く違った影響が現れてくる。例えば、キレートホスフィンBu2tP(CH2)10PBu2tでは環に最大72個の原子をもつ錯体を与えることができる[2]。
一般的な配位子
[編集]多くのジホスフィン配位子が可能であり、いくつかのものは市販されている。市販されているジホスフィンには以下のようなものがある。
- 1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン (DPPM)
- 1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン (DPPE)
- 1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン (DPPP)
- 1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン (DPPF)
- 2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル (BINAP)
- 4,5'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9'-ジメチルキサンテン(Xantphos)
脚注
[編集]- ^ Wilkinson, G.; Gillard, R.; McCleverty, J. Comprehensive Coordination Chemistry: The synthesis, reactions, properties & applications of coordination compounds, vol.2.; Pergamon Press: Oxford, UK, 1987; p. 993. ISBN 0-08-035945-0
- ^ Cotton, F.A.; Wilkinson, G. Advanced Inorganic Chemistry: A Comprehensive Text, 4th ed.; Wiley-Interscience Publications: New York, NY, 1980; p.246. ISBN 0-471-02775-8