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ニセフチトリゲンゴロウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニセフチトリゲンゴロウ
分類
: 動物界
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera[1]
亜目 : オサムシ亜目(食肉亜目) Adephaga[注 1][1]
: ゲンゴロウ科 Dytiscidae[2]
亜科 : ゲンゴロウ亜科[3]Dytiscinae[4] または Cybistrinae[注 2][6]
: ゲンゴロウ族[4] Cybistrini[4][6]
: ゲンゴロウ属[4] Cybister[8][6]
: ニセフチトリゲンゴロウ
学名
Cybister guerini

Aubé, 1838

ニセフチトリゲンゴロウ[9](Cybister guerini)は、コウチュウ目ゲンゴロウ科ゲンゴロウ亜科ゲンゴロウ属水生昆虫。別名グエリーニゲンゴロウ

形態[編集]

フチトリゲンゴロウ C.limbatusに体形・色彩が酷似しており[10]オス交尾器を見ないと正確には判別できないが、本種の方が丸っこく若干小型である[11]。また、C.limbatusと非常に似ているため過去に混同されてきたようでタイプ標本の精査が必要と指摘されている[12]。日本産のフチトリゲンゴロウは常にC.limbatusとされてきているが、本種とC.limbatusの2種が含まれている可能性がある[10]。さらに、かつて「タイ産フチトリゲンゴロウ」として流通していた種類は東邦大学理学部教授・久保田宗一郎によりフチトリゲンゴロウでもヒメフチトリゲンゴロウでも本種でもない未記載種である可能性が指摘されている[13]

分布[編集]

中国南部・東南アジア南アジアに生息する。だが、この分布はC.limbatusと重なる。

近縁種[編集]

フチトリゲンゴロウ C.limbatus 本種と酷似する。日本では南西諸島に分布する種で、オオゲンゴロウと並ぶ大型種。「国内希少野生動植物種」に指定され、捕獲・採取・譲渡(販売など)が原則禁止されている。

ヒメフチトリゲンゴロウ C.rugosus 佐藤 (1984b)[14] によってヒメフチトリゲンゴロウが記録されるまで国内ではフチトリゲンゴロウと混同されていたものと思われる[15]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 森・北山(2002)は「ゲンゴロウ類 Dytiscoidea は鞘翅目・食肉亜目(オサムシ亜目)水生食肉亜目に属する」と述べている[1]
  2. ^ ゲンゴロウ属 Cybister および同属を含むゲンゴロウ族 Cybistrini は森・北山(2002)ではゲンゴロウ亜科 Dytiscinae に分類されているが[3]Anders N. Nilsson の論文(2015)では Dytiscinae 亜科から Cybistrinae 亜科を分離し[5]、ゲンゴロウ族 CybistriniCybistrinae 亜科に分類する学説が提唱されている[6]。中島・林ら(2020)はゲンゴロウ類の分類表(307頁)にてゲンゴロウ属・ゲンゴロウモドキ属を「ゲンゴロウ科 ゲンゴロウ亜科・ゲンゴロウモドキ亜科」として紹介している[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 33.
  2. ^ 森 & 北山 2002, p. 53.
  3. ^ a b 森 & 北山 2002, pp. 138–139.
  4. ^ a b c d 森 & 北山 2002, p. 139.
  5. ^ Nilsson 2015, p. 7.
  6. ^ a b c d Nilsson 2015, p. 73.
  7. ^ 中島 et al. 2020, p. 307.
  8. ^ 森 & 北山 2002, p. 152.
  9. ^ カンボジアの水生昆虫調査”. p. 1. 2024年6月13日閲覧。
  10. ^ a b ゲンゴロウ亜科 | 基礎ゲンゴロウ学”. gengology.com. 2024年6月13日閲覧。
  11. ^ shingo-ayumi. “Cybister guerini”. 海を歩くゲンゴロウ. 2024年6月13日閲覧。
  12. ^ Jiang, Z. -Y., Zhao, S., Mai, Z. -Q., Jia, F. -L, Hendrich, L. 2023 : Review of the genus Cybister in China, with description of a new species from Guangdong (Coleoptera: Dytiscidae). Acta Entomologica Musei Nationalis Pragae 63: 75-102.
  13. ^ 遺伝子解析による未知ゲンゴロウ類の種同定”. 学校法人東邦大学. 2024年6月13日閲覧。
  14. ^ 佐藤正孝 1984b :日本産水棲甲虫類の分類学的覚え書 Ⅱ.甲虫ニュース 66: 1-4.
  15. ^ 中根猛彦 1993 :日本の大型ゲンゴロウ.昆虫と自然 28(8): 2-7.

参考文献[編集]

  • Nilsson, A.N. (2015年). “A World Catalogue of the Family Dytiscidae, or the Diving Beetles (Coleoptera, Adephaga)” (PDF). 2019年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月13日閲覧。
  • 森正人、北山昭『図説 日本のゲンゴロウ』(改訂)文一総合出版、2002年2月15日(原著2000年6月20日)、152-158,189-190頁 - 原著『図説 日本のゲンゴロウ』は1993年6月30日に初版第1刷発行。
  • 中島淳、林成多、石田和男、北野忠、吉富博之『ネイチャーガイド 日本の水生昆虫』(初版1刷発行)文一総合出版、2020年2月4日。ISBN 978-4829984116