コンテンツにスキップ

デヒドロアラニン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
デヒドロアラニン
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 1948-56-7 チェック
PubChem 123991
ChemSpider 110510 チェック
DrugBank DB02688
KEGG C02218 チェック
ChEBI
特性
化学式 C3H5NO2
モル質量 87.08 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

デヒドロアラニン(Dehydroalanine)は、デヒドロアミノ酸の1つである。遊離型では存在せず、天然では微生物ペプチド内の残基として生じる[1]。非飽和の骨格を持つ点で、アミノ酸残基としては特殊である[2]

構造と反応性

[編集]

大部分の第1級エナミンと同様に、デヒドロアラニンは不安定である。ペプチドやその関連化合物のようなN-アシル化誘導体は安定である。例えば、2-アセトアミドアクリル酸メチルはエステルN-アセチル化誘導体である。ペプチドの残基として、翻訳後修飾により生成する。必要な前駆体はセリンシステイン残基であり、酵素によってそれぞれ硫化水素が脱離して生成される。

大部分のアミノ酸残基は求核的に不活性であるが、デヒドロアラニンまたはその他のデヒドロアミノ酸を含むものは例外である。これらはα,β-不飽和カルボニルのため求電子的であり[2]、そのため例えば他のアミノ酸をアルキル化する。

生成

[編集]

デヒドロアラニン残基は、抗菌活性を持つ環状ペプチドであるナイシン中に初めて検出された[2]。また、ランチビオティックミクロシスチンにも含まれる。

DHAは、システインまたはセリンから、酵素なしの塩基触媒で生成するが、この反応は料理中やアルカリ性食品の加工中に発生する。これがリシン等の他のアミノ酸残基をアルキル化し、リシノアラニン架橋を形成して、元のアラニンラセミ化させる。結果として生じたタンパク質は、ある種には低栄養、また別の種には高栄養となる。またリシノアラニンは、ラットの腎臓肥大の原因となる[3]

デヒドロアラニンを含むペプチドの多くは、毒性を持つ[2]

きわめて毒性の高い物質であるナイシンは3つのデヒドロアミノ酸残基を含んでおり、そのうち2つはデヒドロアラニン残基である。

デヒドロアラニン残基は、長い間、ヒスチジンアンモニアリアーゼフェニルアラニンアンモニアリアーゼの重要な求電子触媒残基であると考えられてきた。しかし後に、より求電子性の高い別の不飽和アラニン誘導体である3,5-ジヒドロ-5-メチルジエン-4H-イミダゾール-4-オンが真の活性残基であることが明らかとなった[4][5]

出典

[編集]
  1. ^ Downs, DM; Ernst, DC (April 2015). “From microbiology to cancer biology: the Rid protein family prevents cellular damage caused by endogenously generated reactive nitrogen species.”. Molecular microbiology 96 (2): 211-9. doi:10.1111/mmi.12945. PMC 4974816. PMID 25620221. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4974816/. 
  2. ^ a b c d Siod?ak, Dawid (2015). “α,β-Dehydroamino Acids in Naturally Occurring Peptides”. Amino Acids 47: 1-17. doi:10.1007/s00726-014-1846-4. PMC 4282715. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4282715/. 
  3. ^ Friedman, Mendel (1999). “Lysinoalanine in food and in antimicrobial proteins”. In Jackson, Lauren S.; Knize, Mark G.; Morgan, Jeffrey N.. Impact of Processing on Food Safety. 459. Springer. pp. 145-159. doi:10.1007/978-1-4615-4853-9_10. ISBN 978-1-4615-4853-9. PMID 10335374 
  4. ^ Retey, Janos (2003). “Discovery and role of methylidene imidazolone, a highly electrophilic prosthetic group”. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Proteins and Proteomics 1647 (1-2): 179-184. doi:10.1016/S1570-9639(03)00091-8. 
  5. ^ “Crystal structure of phenylalanine ammonia lyase: multiple helix dipoles implicated in catalysis”. Biochemistry 43 (36): 11403-16. (September 2004). doi:10.1021/bi049053+. PMID 15350127.