ゴーラル属
ゴーラル属 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ゴーラル Naemorhedus goral
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Naemorhedus Smith, 1827[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Naemorhedus goral (Hardwicke, 1825) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゴーラル属[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゴーラル属(ゴーラルぞく、Naemorhedus)は、偶蹄目ウシ科に含まれる属。
分布
[編集]インド、大韓民国、タイ、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、ネパール、ミャンマー、ロシア南東部[2][3]
形態
[編集]尾は短いか中程度で、先端には房状の体毛が伸長する[2][3]。
眼窩がわずかに突出する[2]。前顎骨は鼻骨に接しない[2]。頭頂部が盛り上がり[4]、頭骨の顔と頭頂部の稜線の間の角度が60°以上に達する[2]。角は後方に向かい、鉤状にならない[2]。眼下部に臭腺(眼下腺)がない[2][4][5]。吻端の体毛で被われない裸出した皮膚部(鼻鏡)は大型で、鼻孔より後方に達する[2]。臼歯の数は上顎・下顎共に左右に3本ずつ(上顎・下顎で6本ずつ)[2]。中手骨や中足骨は細長い[2]。蹄の間に臭腺(蹄間腺)がある[2][4]。
乳頭の数は4個[2]。
分類
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Hassanin et al.(2012)よりミトコンドリアDNAのシトクロムbとCOI遺伝子の塩基配列を決定し最大節約法で推定した系統図を抜粋[6] |
カモシカ属と形態が類似し近縁と考えられ、本属の方がやや進化した分類群だと考えられていた[2]。2012年に発表されたミトコンドリアDNAのシトクロムbとCOI遺伝子の塩基配列を決定し最大節約法などによる系統解析でも、カモシカ属とは単系統群を形成すると推定されている[6]。
以下の分類・英名は、Grubb(2005)に従う[1]。和名は川田ら(2018)に従う[7]。
- Naemorhedus caudatus オナガゴーラル Long-tailed goral(ゴーラルの亜種とする説もあり[2][5])
- Naemorhedus baileyi アカゴーラル Red goral(ゴーラルの亜種とする説もあり[2][4])
- Naemorhedus goral ゴーラル Himalayan goral
- Naemorhedus griseus チュウゴクゴーラル Chinese goral
以前はゴーラルのみで本属を構成していたが[8]、亜種と考えられていたオナガゴーラルやアカゴーラルが形態から別種とされるようになった[4][5]。2005年の分類ではチュウゴクゴーラルが独立種とされた[1]。一方で2019年にはチュウゴクゴーラルとゴーラルを同種とする説が提唱された[9]。2021年の分子系統学的研究でも狭義のチュウゴクゴーラルとゴーラルを同種とみなしたが、チュウゴクゴーラルの亜種とされていたN. griseus evansiがゴーラルやチュウゴクゴーラルよりもアカゴーラルと近縁であることから独立種N. evansiとし、アカゴーラルをN. baileyiとN. cranbrookiの2種に分割する説も提唱されている[10]。狭義のチュウゴクゴーラルを独立種として認める場合、本属は最大6種に分類される[11]。
生態
[編集]繁殖形態は胎生。1回に1頭(まれに2頭)の幼獣を産むと考えられている[2][4][5]。
人間との関係
[編集]生息地では食用とされたり毛皮が利用され、内臓が薬用になると信じられている[5]。
伐採・造林・焼畑による生息地の破壊、食用や薬用、毛皮用の乱獲などにより生息数が減少している種もいる[4][5]。
参考文献
[編集]- ^ a b c Peter Grubb, "Naemorhedus,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp.705-706
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 今泉吉典 「ゴーラル属」『世界の動物 分類と飼育7 (偶蹄目III)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1988年、92-94頁。
- ^ a b Valerus Geist「ヤギ,ヒツジの仲間」「ヤギ亜科26種」三浦慎悟訳、今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科4 大型草食獣』、平凡社、1986年、144-149頁。
- ^ a b c d e f g h 小原秀雄 「アカゴーラル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、158頁。
- ^ a b c d e f g 小原秀雄 「オナガゴーラル」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、156頁。
- ^ a b Alexandre Hassanin, Frederic Delsuc, Anne Ropiquet, Catrin Hammer, Bettine Jansen van Vuuren, Conrad Matthe, Manuel Ruiz-Garcia, Franc ois Catzeflis, Veronika Areskoug, Trung Thanh Nguyen, Arnaud Couloux, "Pattern and timing of diversification of Cetartiodactyla (Mammalia, Laurasiatheria), as revealed by a comprehensive analysis of mitochondrial genomes," Comptes Rendus Biologies, Volume. 335, Issue. 1, 2012, pp. 32-50.
- ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
- ^ Jim I. Mead, Nemorhaedus goral, Mammalian Species, No. 335, American Society of Mammalogists, 1989, Pages 1–5.
- ^ Emiliano Mori, Luca Nerva, Sandro Lovari, “Reclassification of the serows and gorals: the end of a neverending story?,” Mammal Review, Volume 49, Issue 3, 2019, Pages 256-262.
- ^ Guogang Li, Nan Sun, Kyaw Swa, Mingxia Zhang, Ye Htet Lwin & Rui-Chang Quan, “Phylogenetic reassessment of gorals with new evidence from northern Myanmar reveals five distinct species,” Mammal Review, Volume 50, Issue 4, Mammal Society, 2020, Pages 325-330.
- ^ Bheem Dutt Joshi, Vinaya Kumar Singh, Hemant Singh, Saurav Bhattacharjee, Ashutosh Singh, Sujeet Kumar Singh, Kailash Chandra, Lalit Kumar Sharma & Mukesh Thakur, “Revisiting taxonomic disparities in the genus Naemorhedus: new insights from Indian Himalayan Region,” Mammalia, Volume 86, Issue 4, Walter de Gruyter, 2022, Pages 373-379.