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イーナムクロー馬姦事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イーナムクロー馬姦事件
日付2005年7月2日
場所アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ワシントン州キング郡
非法人地域(イーナムクロー近郊)
種別獣姦
原因外傷性大腸穿孔による急性腹膜炎
関係者ボーイングエンジニアの男(Mr.Hands)[1]
写真家の男性、
正体不明の男性、
牡馬
死者1名(首謀者Mr.Hands)

イーナムクロー馬姦事件: Enumclaw horse sex case)は2005年に発生した、アメリカ合衆国ワシントン州キング郡イーナムクロー近郊の非法人地域に位置する農場で、ボーイング社のエンジニアであった男[2]1960年6月22日 - 2005年7月2日)が牡馬との肛門性交中に事故死した事件である。男は"Mr.Hands"の名義で獣姦系ポルノを製造していた[3]

2005年の7月、友人にビデオ撮影をさせながら馬との性交に及んでいたMr.Handsは大腸穿孔を起こし、その後、その怪我が原因で死亡した。この事件はシアトル・タイムズによって報道されたが、この記事は2005年中に最も多く読まれたもののひとつとなった[4]。後に、この事件は非公式に「イーナムクロー馬姦事件」と呼称されるようになった[5]。彼の死後、彼が馬との性交に及ぶ動画がインターネット上で流通するようになった。

Mr.Handsの死によって、ワシントン州では動物との性交と、その撮影を禁じる法案が早急に通過することとなった。現在、同州では獣姦罪はクラスC英語版の重罪として5年以下の懲役が科されている。

事故死

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この事件はワシントン州キング郡の非法人地域にある広さ40-エーカー (16 ha)の農場で起こった(イーナムクローの北西にあたる)[6][7]。Mr.Handsは隣のトレイラーハウスに住んでいたもう一人の男と、しばしばこの農場にやって来ては中で馬と性交にふけっていた[2]

2005年7月2日、ある男が治療を求めてイーナムクロー地域病院にMr.Handsの名を伏せたまま彼を車で連れてきている[6][8]。医師がMr.Handsを診察室に運びこんだが、その後死亡が確認された。Mr.Handsを車で病院に連れてきた男は、職員が連絡をとるためやって来たときにはすでに姿を消していた[6]

捜査

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Mr.Handsの死後、警察運転免許証をもとに彼の知人や親戚にあたった。初期の報道によれば、警察はMr.Handsの仲間を追うために監視カメラの記録も利用している。各方面と連絡を取った上で、当局は事件の起こった農場をつきとめた[6]

検視局は「大腸穿孔による急性の腹膜炎で亡くなった」と判断し、その死についても事故のようなものと結論を下した[9]。また後に検察が、この種の性行為をさせられた「ビッグ・ディック」[7][10]というあだ名のアラブ馬は怪我をしていないと判断している[7]。裁判を伝えたマスコミの報道によれば、彼が所有していた獣姦趣味のビデオが大量に押収され注意深く検証されたにもかかわらず、そちらからも馬に怪我を負わせた証拠は見つかっていなかった。つまり動物虐待で起訴することは不可能であり、他に有罪とする根拠がないため、Mr.Handsと一緒にいた男も不法侵入の罪に問うぐらいしかできないということだった。

ワシントン州で獣姦の合法性が問題となったのは、Mr.Handsの死後にようやく法の執行機関が彼の仲間を罰する方法を見つけてからだった[…]検察当局は動物虐待で起訴することを望んでいたが、警察が押収している彼の家にあった大量のビデオテープのコレクションからは、動物が虐待されているという証拠をまったく発見できなかった。馬一頭を人道的にファックすることを咎める法は存在しないため、検察は不法侵入に問うのがやっとだった — Charles Mudede, The Stranger[2]

報道

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シアトル・タイムズのジェニファー・サリヴァン記者によれば、キング郡の保安官事務所はもともと新聞がこの事件について報道するとは考えていなかった。「あまりに陰惨である」ためである。しかし事件の起こった農場は獣姦に参加したい「大変な数の人間」を虜にしていた、とAP通信が報じたことで、シアトル・タイムズも多くの人間が関わっているならばこの事件を記事にする必要があると考えた[11]

報道各社はMr.Handsの名を伏せて事件を報じたが、Mr.Handsの死後、彼が馬との性交に興じる動画がインターネットを通じて社会に出回るようになった[12]

判決まで

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仲間であった54歳の写真家の男[7]が最も重い不法侵入罪で起訴された。第三者である農場の所有者は自分の土地に獣姦を目的にやって来ている男たちに気づいていなかった。3人目の仲間は検察の押収したビデオにも姿が映っていないため罪に問われなかった。起訴された男は罪を認め、裁判官は1年の執行猶予と300ドルの罰金、一日の社会奉仕を科し、二度とこの農場には立ち入らないことを命じた[2]

その後

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Mr.Handsの死後[2]、オーバーン出身の共和党員で州議会議員のパム・ローチはワシントン州で獣姦を禁止する法案を提出した[11]。そして獣姦をクラスCの重罪とする上院法案6417条は2006年2月11日、36人の議員全員が賛成し、可決された(つまりこの条例が成立するまで117年間にわたってワシントン州では獣姦は合法だったということになる)。ストレンジャー紙のチャールズ・ムーダッドダイによればこの法律(RCW 16.52.205)を読むのは「ハードコアポルノを読むのと紙一重」であるが、同時に「ほとんど喜劇的なまでに易々と通った法律」でもあり、実際に獣姦は同州においてついに何の政治的支援も受けず、擁護する団体も現れなかった[2]。さらにこの法律は「生死を問わず」「動物と性的な行為あるいは性的接触を行う人間を撮影」することも禁じている。この但し書きに触れてムーダッドダイは、起訴された男に「まっすぐ非難の指を向ける」法律だと述べている[2]

2009年、獣姦に加わった罪でこの事件の「犯人」を含む3人の男がテネシー州モーリー郡の刑務所に収監されている[13]。2010年1月に彼は裁判所で動物と性行為に及んだことをみとめ、保護観察期間に置かれることになった[14]

映画

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Mr.Handsの生涯とその死を追いかけ、イーナムクロー近郊の農場に集まった人々の生活を描いたドキュメンタリーは、2007年に「動物園」("ZOO")というタイトルがついてサンダンス映画祭で発表された。この映画は同時に出品された856本の候補作から選抜された16本の作品の一つとなり[15]、その後アメリカ各地のイベントで数え切れないほど上映された[16]。サンダンスに続いて同年のカンヌ映画祭の監督週間で上映される5本のアメリカ映画の一つにも選ばれている[17][18]

脚注

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  1. ^ The Strange, Sad Story of the Man Named Mr. Hands Who Died from Having Sex with a Horse”. vice. vice.com. 7 February 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。1 January 2016閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Mudede, Charles (February–March 2006). “The Animal In You”. The Stranger. http://www.thestranger.com/seattle/Content?oid=30811 2006年4月30日閲覧。 
  3. ^ Horse Riding Mr Hands, Washington
  4. ^ “Horse sex story was online hit”. The Seattle Times. (December 30, 2005). http://www.seattletimes.com/seattle-news/horse-sex-story-was-online-hit/ 2016年5月11日閲覧。 
  5. ^ Macdonald, Moira (2006年7月3日). “Infamous Enumclaw horse sex case to be made into movie”. The Seattle Times. http://old.seattletimes.com/html/entertainment/2003097374_horse03.html 2016年5月11日閲覧。 
  6. ^ a b c d Sullivan, Jennifer (July 15, 2005). “Videotapes show bestiality, Enumclaw police say”. The Seattle Times. http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2002384648_farm16m.html 2006年4月30日閲覧。 
  7. ^ a b c d Rick Anderson (November 9, 2005). “Closing the Barn Door”. Seattle Weekly. http://www.seattleweekly.com/2005-11-09/news/closing-the-barn-door.php  "Tait, a truck driver who lives near the Southeast 444th Street farm where the death occurred, "
  8. ^ Keegan, Rebecca Winters (Sunday January 28, 2007). “Have You Seen the Horse Sex Movie?”. Time. http://www.time.com/time/arts/article/0,8599,1583009,00.html September 17, 2010閲覧。 
  9. ^ Sullivan, Jennifer (July 15, 2005). “Enumclaw-area animal-sex case investigated”. The Seattle Times. http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2002382718_horse15m.html 2006年4月30日閲覧。 
  10. ^ Foundas, Scott. "Zoo." Variety. Friday May 18, 2007. Retrieved on September 17, 2010.
  11. ^ a b Messer, Lesley (Monday July 18, 2005). “When a Man Dies in a Sex Act with a Horse -- What's a Reporter to Do?”. Editor & Publisher. http://www.allbusiness.com/services/business-services-miscellaneous-business/4679718-1.html September 17, 2010閲覧。 
  12. ^ Lim, Dennis. FILM; A Lyrical Approach to a Subject That Shocks. The New York Times. April 1, 2007. 2. Retrieved on October 13, 2010. "The sex in Zoo is merely glimpsed and barely discernible in a few seconds of a video that the police had confiscated and that was circulated on the Internet after Mr. Pinyan's death."
  13. ^ "3 accused of having sex with animals in Maury Co." WKRN. October 19, 2009. Updated on October 20, 2010. Retrieved on October 31, 2010.
  14. ^ Sullivan, Jennifer. "Felon accused of running animal-sex farm in Whatcom County." The Seattle Times. Friday April 16, 2010. Retrieved on October 31, 2010.
  15. ^ Westneat, Danny (December 3, 2006). “New movie is the spawn of horse sex”. The Seattle Times. http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2003459228_danny03.html 
  16. ^ Dentler, Matt (2007年5月4日). “Matt Dentler's Blog: Cannes Countdown: Directors' Fortnight Lineup Impresses”. 2007年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月28日閲覧。
  17. ^ "Zoo, which opens today in NY and LA, has just been selected as one of the features of the prestigious Directors Fortnight sidebar at this year's Cannes Film Festival". Zoo: Inside the Controversial Documentary about Bestiality
  18. ^ Eugene Hernandez, "CANNES '07: Slate Set for 49th Directors' Fortnight", IndieWIRE, May 3, 2007.

関連項目

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外部リンク

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