はつなみ型巡視艇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
はつなみ型巡視艇
基本情報
種別 23メートル型PC
運用者  海上保安庁
就役期間 1951年 - 1975年
前級
次級 しののめ
要目
満載排水量 50.00トン
総トン数 53.00トン
全長 23.0 m
4.60 m
深さ 2.40 m
吃水 1.24 m
主機 ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 700馬力
速力 13.9ノット
航続距離 480海里
乗員 10名
テンプレートを表示

はつなみ型巡視艇(はつなみがたじゅんしてい、英語: Hatsunami-class patrol craft)は、海上保安庁の港内艇の船級(1957年に巡視艇に呼称変更)。区分上はPC型、公称船型は23メートル型[1][2]

来歴[編集]

創設直後の海上保安庁においては、35~47メートル級のPS型巡視船と、15~17メートル級のCL型港内艇のあいだがなく、運用上の不都合が指摘されていた。このことから、15メートル型CLよりも広域に警備救難業務を行い、局地哨戒の根幹を成す、新しいPC型港内艇として計画されたのが本型である[1]

1950年3月、造船所各社の技術者を中心とした海上保安庁船舶設計審議会において、基本計画がほぼ決定され、同年5月末には、審議会委員および海上保安庁関係者によって15メートル型CL(そよかぜ型)の運用実績調査が行われた。この結果、没水部船型は角型、構造様式は斜め二重張り構造として設計されたものの、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)より、アメリカ沿岸警備隊の83フィート型巡視艇と同様、一重張り外板構造の丸型船型とするように要求があった。これに対し、特に構造様式については、日本ではこのような使用目的の軽構造艇を一重張り外板で建造した前例がなく、特に外板剪断力に抵抗する工作については非常に難しいとして、日本側は難色を示したものの、GHQの側が意見を変更しなかったことから、設計変更を余儀なくされた[1]

設計[編集]

上記の経緯より、結局、アメリカ沿岸警備隊の75フィート型巡視艇に倣って設計され、没水部船型は丸型となった。しかし危惧されたとおり動揺性能が思わしくなかったことから、竣工後に、船長の約3分の1にわたるビルジキールを取り付けて、改善を図った[2]。また構造様式については、GHQの要求を容れた一重張り外板構造の艇を10隻、斜め二重張り構造の艇を14隻建造した。就役後、どちらからも構造上の欠陥は出なかった[1]

主機関については、敗戦直後で国産機関の製作が中止されていたことから、1949年9月に舶用ディーゼルエンジンの経験者を呼集して検討した結果、池貝鉄工所の6HSD 30型(出力300馬力)をベースとして、出力350馬力、回転数1,350 rpmの高速ディーゼルエンジンを新規開発・設計することとなった。しかし予算・期間上の余裕がなく、試作を経ずに量産に入ったことから故障が相次ぎ、1番艇の竣工は3ヶ月遅延し、就役後も大小の不具合を生じた[1]

同型船一覧[編集]

なお4番船「うらなみ」は、洞爺丸台風に対する救難業務中の1954年9月26日、青森県鰺ヶ沢にて自らも遭難して全損し、初代むらくも型の昭和29年度計画艇(あさぐも型)の設計をもとに、同艇から回収した主機関を搭載して再建造された[2]

計画年度 # 船名 建造 竣工 解役
昭和25年度 PC-01 はつなみ 東造船 1951年4月20日 1973年12月3日
PC-02 あやなみ 1951年4月28日 1973年11月8日
PC-03 いそなみ 墨田川造船 1951年5月18日 1970年2月2日
PC-04 うらなみ 横浜ヨット 1951年4月21日 1973年12月4日
PC-05 きよなみ 1951年5月20日 1970年2月12日
PC-06 おきなみ 南国 1951年4月21日 1973年1月9日
PC-07 たまなみ 1951年5月15日 1972年11月11日
PC-08 すずなみ 長崎造船 1951年4月29日 1976年1月19日
PC-09 ちよなみ 四国船渠 1951年5月3日 1971年11月6日
PC-10 はやなみ 1951年6月3日 1975年7月4日
昭和25年度
第1次追加
PC-11 はつづき 墨田川造船 1951年7月13日 1973年10月13日
PC-12 はなづき 1951年7月30日 1971年2月27日
PC-13 きよづき 横浜ヨット 1951年7月17日 1972年12月2日
PC-14 もちづき 1951年8月25日 1970年1月24日
PC-15 にいづき 東造船 1951年5月23日 1972年12月2日
PC-16 すずつき 1951年6月15日 1971年1月30日
PC-17 てるづき 南国特殊造船 1951年6月25日 1971年2月5日
PC-18 うらづき 1951年8月2日 1970年10月27日
PC-19 わかづき 長崎造船 1951年6月29日 1969年10月20日
PC-20 やまづき 1951年8月19日 1973年12月5日
昭和25年度
第2次追加
PC-21 はるづき 四国 1951年11月5日 1970年12月2日
PC-22 なつづき 1951年11月27日 1973年9月10日
PC-23 あきづき 東造船 1951年9月25日 1970年11月5日
PC-24 ふゆづき 1951年10月25日 1972年2月10日

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e 徳永陽一郎、大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空 (交通ブックス205)』成山堂書店、1995年、58-59頁。ISBN 4-425-77041-2 
  2. ^ a b c 「海上保安庁全船艇史」『世界の艦船』第613号、海人社、2003年7月、40-90頁、NAID 40005855317