E-MU Proteus

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E-MU Proteus(イーミュー プロテウス)は、米国E-MU Systems社が1989年から発売したシンセサイザー音源モジュール)である。

本項目ではシリーズ各機と、「Proteus」の名称は持たないが同系列である各機種の概要を記載する。

概要[編集]

Proteusシリーズは、1989年当時には最高レベルのスペックであったE-MU Emulator IIIサンプラーの「サンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16ビット」というスペックをROMベースで実現したPCM音源モジュールである。プリセット音源としての性質をもちつつ、様々なモジュレーションソースをユーザーが任意のパラメータに接続できるデジタルモジュラーシステムによるシンセサイズと、最初からマルチティンバーでの使用を前提としていることを特徴とする。

初期のモデルにはフィルターが搭載されていなかったが、後年のモデルではE-MUの特許技術であるZ-Planeフィルターが搭載されて音づくりの幅を広げた。

音源システム[編集]

Proteusシリーズは、1989年のProteus1から1998年のProteus2000、さらには2000年代のソフトウェア「Proteus X」に至るまで、ほぼ一貫したシステムをもつ。その概要を下記に記載する。

パッチコード・モジュレーション[編集]

Proteusシリーズでは、シンセサイザーの要であるモジュレーションがモジュラーシンセサイザーのようにソースとデスティネーションを自由に選択して設定するようになっており、エディットモード内にそのための専用画面が用意されている。

例として、LFOで音量を変調するトレモロ効果を得る場合は次のように設定する。

1.LFO -> AMPVol (LFO1から、アンプボリューム)

さらに、上のトレモロの深さをモジュレーションホイールで変更したい場合は、次のように設定する。

(1) 1. LFO -> AMPVol (LFO1から、アンプボリューム)

(2) 2. MWhl -> Crd1Amt (モジュレーションホイールから、コード1のアマウント)

1つの音色に設定できるモジュレーションの数や、どのくらい変調するかの設定方法は機種により異なる。

アサイナブルアウトプット[編集]

Proteusシリーズは廉価版の製品ラインを除くほとんどの機種でステレオアウトプットを3系統(メイン1、サブ2)備えており、パート毎に出力先を変更することができる。Proteus2000シリーズでは、1音色の中でレイヤー毎に出力先を指定することも可能。

サブアウトプット端子にはオーディオの入力も可能になっており、Yケーブルを使用することで外部エフェクターでプロセスした信号をProteusに戻し、メインアウトプットからまとめて出力することができる。エフェクターを搭載しない機種も多いProteusシリーズだが、アサイナブルアウトプットを活用して外部エフェクターを使用することなどが当初から想定されている。

操作系[編集]

Proteusシリーズは1Uのスペースと2行の液晶画面を基本としており、この制約の中で操作するために次のような操作系でほぼ統一されている。

  • カーソルキー  順送り、または逆送りに画面内の項目を移動する。初期の機種では順送りのみ。
  • EDITキー  選択中の音色を編集するモードに入る。
  • Enterキー  項目の決定や実行(保存等)
  • Masterキー  MIDIの受信モードや全体のチューニングを設定するMASTERモードに移行する。
  • データエントリー  ロータリーエンコーダーにより選択中のパラメータを変更する。音色の変更もこれで行う。

ラインナップ[編集]

初期モデル[編集]

  • Proteus/1 「BAND IN A BOX」と銘打って発売された。ピアノやギター、ベース、ストリングスセクション、ホーン、シンセサイザー、ドラムスなど幅広い音色を搭載した音源モジュール。出荷時期によってパネルにあしらわれた機種名が「Proteus/1」「Proteus/1 POP/ROCK」の二種類存在する。 音色はプライマリー、セカンダリーの二つの波形を重ねることができ、それぞれにチューニングや音量の設定、エンベロープやLFOによるモジュレーションが可能。また、複数の音色を「リンク」機能によりスプリット、レイヤーさせることができる。 波形容量は4MBで、内部にさらに4MBの拡張ROMを搭載できるよう設計されており、Invision社がこのためのアップグレードキット"ProtoLogic"を発売した。
  • Proteus/2 Proteus/1に続き発売された第二弾で、オーケストラの楽器を多数収録したモデル。弦楽器はバイオリンやチェロといった種別ごとに分けてあり、木管、金管楽器も幅広く収録された。 波形容量は8MBで、筺体を開けると2枚のROMが搭載されていることを確認できる(Proteus/1は1枚。)
  • Proteus/3 民族音楽に使用されるエスニック楽器を幅広く収録したモデル。波形容量は4MBとなっている。

以上の3モデルはハードウェアを含め多くの仕様が共通であり、純粋に搭載する音色によってジャンルが分けられたものと言ってよい。このコンセプトは後年のProteus2000シリーズにも継承された。以下に、主なスペックを示す。

  • 同時発音数:32音
  • マルチティンバー数:16
  • 内蔵エフェクター:なし
  • MIDI端子:IN.OUT/THRU
  • オーディオ出力端子:ステレオ×3系統
  • D/A変換(出力)サンプリング周波数:39kHz
  • D/A変換量子化ビット数:16ビット
  • サイズ:1Uラックマウント(樹脂製筺体)
  • 音色数:192  このうち、64-127の64音色がRAMとなっておりユーザーが上書き可能

派生モデル[編集]

初期モデルには以下のような派生モデルが存在する。名称に「XR」がつくものはRAM領域が従来の64音色から拡張され、音色番号0-255の256音色が上書き可能となっている。

  • Proteus/1 plus Orchestral Proteus/1にProteus/2の音色を抜粋した4MBの拡張ROMを搭載したもの。
  • Proteus/1 XR Proteus/1のXR版。
  • Proteus/2 XR Proteus/2のXR版。
  • Proteus/3 XR Proteus/3のXR版。
  • Proteus MPS 61鍵盤モデル。Proteus/1をベースとし、後述するProformance相当のピアノ音色と、シリーズで初めての内蔵エフェクターが追加された。 オーケストラ音色を追加したProteus MPS plus Orchestralも存在する。

中期モデル[編集]

  • Proteus FX 廉価版Proteusとして登場したもので、Proteusシリーズ1/2/3から抜粋された音色を搭載する。「FX」の名のとおり内蔵エフェクターを搭載するが、フィルターは搭載していない。 同時発音数は32音、16パートマルチティンバー。オーディオ出力のサブアウトが無くなり、ステレオアウト1系統のみとなっている。
  • Ultra Proteus 後述する「Morpheus」と同一のハードウェアで音色セットをProteusシリーズよりにリニューアルしたモデル。Proteus1,2,3から抜粋された音色にProformanceのピアノ音色を搭載し、Z-planeフィルターと内蔵エフェクターを備える。 同時発音数は32音、16パートマルチティンバー。PCMCIAの音色カードが発売されたが、これらは波形を供給するものでなく本体の内蔵波形を使用した音色データとなっている。

後期モデル[編集]

  • Proteus2000 1998年に発表されたモデル。従来機種を大きく上回るスペックをもち、音色は72pin SIMMによる拡張ROMで供給可能。ジャンル毎に特化した多数のモデルがあり、「Proteus2000シリーズ」とも言うべき独立したシリーズを形成した。 同時発音数は128音、32パートマルチティンバー。波形容量は32MBで最大128MBまで拡張可能。従来はプライマリー・セカンダリーの2レイヤー構成だった音色は4レイヤー構成となった。

ソフトウェア[編集]

  • Proteus X 2004年に発表されたWindows用のソフトウェアシンセサイザー。スタンドアロンまたは、VSTプラグインとして動作する。 以下のようなサウンドライブラリが付属していた。
    • Proteus X Composer Proteus2000の全音色。
    • Saint Thomas Strings ストリングスセクション。
    • Hip Hop Producer 同社MO'Phattのためにサンプリングされたオリジナル録音。
    • Beat Shop One
    • アコースティックドラムセット。キットとループを収録。
    • E-MU General MIDI 同社APS等に付属していたサウンドフォントと同等の、8MBのGM対応サウンドセット。
    • Studio Grand 新規に録音された1.4GBのグランドピアノ。強弱は4段階で、後期に出荷されたものは、フィルターを使って音色変化を補完している。

系列機[編集]

「Proteus」の名称がつかないが同系列の機種を便宜上ここで取り扱う。

  • Pro/Cussion ドラム/パーカッションに特化したモデル。エフェクターは搭載していないが、ドラム波形を加工して使用する事で疑似的なリバーブを得るなど本機独特の機能を持つ。発音数などのスペックはProteus/1等と同じ。
  • Proformance ハーフラックサイズのピアノ音源で、KAWAIのグランドピアノからサンプリングされたステレオサンプルを使用している。同時発音数は16音。 音色を追加したProformance plusというモデルも存在する。
  • Vintage Keys ビンテージシンセ、エレピ等のサウンドを8MBのROMに収録したモデル。このモデルは当初からProteusシリーズとしてProteus/3よりも早くから企画されていた[1]ものの、当時は十分な性能のデジタルフィルターが開発されておらず見送られていたが、のちに同社EMaxに搭載された"H-Chip"を2つ搭載することでフィルターを実現し、本機の発売に至っている。波形容量を倍の16MBに増強したVintage Keys plusというモデルも存在する。 同時発音数などのスペックは、Proteus/1シリーズと同等。
  • Morpheus 初めてZ-Planeフィルターを搭載したモデル。さまざまな特徴的な音色を多数プリセットしているが、元となる波形はオーソドックスな楽器音も多い。 Ultra Proteusは本機のバリエーションモデルだが、Z-PlaneフィルターはUltra Proteusの方がさらに種類が増えている。
  • Orbit ダンスミュージック、特にテクノ/ハウス等に焦点を絞ったモデル。8MBの波形、Z-Planeフィルターに加えて、「BEAT MODE」というプリセットMIDIパターンを演奏する機能、さらにこれらのパターンを任意に並べる簡易シーケンサが搭載されていることが大きな特徴となっている。 同時発音数は32音、16マルチティンバー、ステレオアウトプット3系統といったスペックも歴代から受けつがれているが、内蔵エフェクターは省略された。パネルの色は黄金色。 BEAT MODEのパターン数を増やすなどの強化が為された、Orbit V2というモデルも存在する。
  • Planet Phat Orbit V2と同等の音源システムだが、プリセット波形、音色がR&BやHip Hopなどのいわゆる「ブラックミュージック」に特化したモデル。パネルの色はメタリックな紫。
  • Carnaval Orbit V2と同等の音源システムだが、特にラテン系のワールドミュージックに特化したモデル。BEAT MODEにも、モントゥーノなどのラテン系演奏パターンが数多くプリセットされている。パネルの色はメタリックな赤となっている。
  • Audity2000 E-MUが70年代に開発したものの発売されなかった16ボイスアナログシンセサイザー、AUDITYの名前を冠したモデル。Proteus2000シリーズと同じ筺体デザインだが同時発音数は32音、ROM容量は16MBとなっている。本機のシステムや操作性はProteus2000シリーズにほぼそのまま継承されたが音色やROMの互換性は無い。 本機にOrbit、Planet Phatの波形を追加する拡張ROMとして「Audity Extreme」が発売された。

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 月刊キーボード・マガジン 1999年4月号 "最新モデルの源流を探る E-MU Proteusシリーズ & Proteus 2000"
  • E-MU Proteus オペレーションマニュアル
  • 月刊キーボード・マガジン 1993年4月号 Product Review "E-MU Vintage Keys"
  1. ^ 月刊キーボード・マガジン1993年4月号。Product review内のE-MU systems副社長(当時)Pete Hayes氏インタビューより。

外部リンク[編集]

  • E-MU Systems - 2010年の「SHORT BOARD49/LONG BOARD61の発売を最後に2016年10月現在は楽器/音響機器を製造しておらず、ヘッドフォンやスピーカーのブランドとなっている。