火種
火種(ひだね)は、物質を燃焼させる上で使われる小さな火のこと。古くは摩擦熱などを利用してそれを籾殻やおがくずなどに引火させ、空気を送ることで燃焼させたものを火種とした。
おもな火種の作り方
詳細は「発火法」を参照
- きりもみ式
- よく乾燥した板(ヒキリ板)と棒(ヒキリギネ)を用意し、板に穴を開けてその上に棒の先がはまるほどのくぼみを作る。そして、くぼみに棒の先をあてがい、高速で回転させる方法。
- 弓きり式
- きりもみ式は非常に労力を要するため、紐と棒で弓状の道具を作り、紐の部分を棒に一周させて前後に動かすようにしたもの。摩擦によって黒い粉が生じたら、さらに回転速度を上げる。煙が起き始めたら静かに息を吹きかけて小さな赤い火が起きるのを確認する。さらに上記の籾殻などを加え、徐々に火を大きくする。
- 舞きり式
- 一枚の板の中心部に穴を開けて棒を通し、紐を棒の上部に何周か巻きつけて板の左右の端に固定したもので前後にではなく上下に動かすようにしたもの。
火種の維持
マッチやライターといった点火用具がなかった頃は、火をつけるのはそれほど簡単ではなく、一度つけた火種はできる限り保持することが望ましかった。火鉢などでは火のついた炭に灰をかけることで長持ちさせることができた。 また、火縄銃や大砲などの場合は開戦時に火をおこすわけにもいかず、あらかじめ火縄に点火し、これを消さないようにしなければならなかった。
火種の継承
「灯明」も参照
古くから火は信仰の対象でもあり、特定の火種から作られた火を特別視するケースもある。例えばオリンピック期間中に会場で点される聖火は、ギリシャにあるオリンピアの競技場跡で太陽光により点されたものがリレー形式で開催地まで運ばれる。リレー途中で火が消えないよう、常に分けておいた予備の種火を準備するなど、取り扱いには細心の注意が払われる。また、広島の平和記念公園に点されている『平和の灯』は、厳島の弥山に1200年間燃え続けているとされる『消えずの霊火』より採火され、今も絶やさず燃やされ続けている。