マリンスノー
マリンスノー(英: Marine snow)は、肉眼で観察可能な海中懸濁物のことである。海中の様子を撮影した映像、写真等で雪のように見える白い粒子がマリンスノーである。マリンスノーは海中を沈んでいき、やがて海底に降り注ぎ堆積する。地上に降る雪とは異なり、マリンスノーは様々な形、大きさをしたものが同時に存在する。球状、彗星状、糸状、平板状など様々な形をしたものがあって、大きいものは10センチメートルを超すものもある。これらのマリンスノーは世界中の海洋で見ることができる。
命名
1952年、北海道大学の井上直一と鈴木昇が潜水艇「くろしお」に乗り込み、海中の調査を行っていた際に海中の懸濁物がライトの光に照らされ、雪のように白く見えたことから、彼らはマリンスノー(海に降る雪)と名付けて和文・英文の論文で初めて用い[1][2]、その後世界中でこの言葉が使われている。
正体
マリンスノーの正体はプランクトンの排出物、死骸、またはそれらが分解されたもの、もしくは物理的に作られた粒子である。言い換えると肉眼的大きさで水中を漂うデトリタスである。
よってプランクトンなどが少なく透明度の高い熱帯の海中よりもプランクトンが多く魚などがたくさん棲息する温帯や寒帯の海中の方が多く見ることができる。また、駿河湾や相模湾など、沿岸部で急激に深くなっている海域では、川や都市から流れてくる有機物によってプランクトンが多く発生し、そのため沢山のマリンスノーを見ることができる。
役割
マリンスノーは1日に数十メートルから数百メートルの速さで沈んでいき、やがて深海に生息する生物の餌となる[3]。深海は太陽の光も届かないため、浅い海に比べて生息する生物の数が極端に少なくなるので、深海に生息する生物にとっては貴重な栄養源となる。
また、マリンスノーの主な成分は炭素である。海洋全体を浮遊しているということを考えると、それらは膨大な量の炭素を保有していると考えられるので、地球における炭素循環において無視できない。
脚注
- ^ “時を訪ねて 潜水艇くろしお 北大水産学部(函館)”. 北海道新聞. (2019年9月22日 日曜navi 1-2面)
- ^ “本学における学術研究の潮流 | 北海道大学 大学院水産科学研究院 大学院水産科学院 水産学部”. 北海道大学. 2019年9月23日閲覧。
- ^ BRANDON KEIM. “海底のミクロ:マリンスノーで生きる生物たち”. WIRED.jp. 2019年11月7日閲覧。