エンボス
エンボス(Emboss)とは板金や紙などに文字や絵柄などを浮き彫りにする加工である。
概要
エンボス加工には裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式がある。
印刷加工としては、表面に型押しする加工のうち、模様を凸状に盛り上げる加工をエンボス(浮き出し)、模様を凹状にへこませる加工をデボス(空押し)という[1]。
エンボス加工はクレープ加工とも言う。インクを使わず紙に模様を入れたり、手触りを良くしたり、薄い紙を一枚一枚はがれやすくする効果がある。また書籍の表紙カバーで印刷をしたタイトルやイラストの縁をエンボス加工することで、見た目と手触りとの二重の効果を与えることが出来る。書類にはエンボス加工を用いてエンボス印(浮き出しプレス印)を押印することがある。エンボス印を押す事務用品をエンボッサーまたはシールプレス、型押機などという。エンボス印を押印した箇所の偽造を困難にするため、身分証明書の写真欄に押印されることもある。
金属加工としては自動車のナンバープレートが代表的なものである。
プラスチックカードへの応用
クレジットカードやキャッシュカードなどのプラスチックカードにカード番号や有効期限、口座番号、氏名等を表示するのにも使われる。クレジットカードでのカード決済時には、専用プリンタ(インプリンタ)を使ってエンボス加工した文字を伝票等に転写する。現在では磁気ストライプやICチップによる処理が一般的となり、エンボス加工を施していないカードも出回るようになった。
清拭や吸収を目的としたもの
キッチンペーパーやトイレットペーパーでは性能や使用感を向上させるために、製造過程でエンボス加工が施されている。
擬似的なもの
コンピュータによる画像処理ソフトウェアには画像データを「浮彫」状に変換したり文字列を立体的に表現するなどの機能を持つものがあり、その処理をエンボスという場合がある。写真データなどをエンボス処理する場合、明るさの変化の大きい所を明るく、変化の少ない所を暗く、あるいはその逆の処理を行い通常は白黒画像化される。
コンピュータのGUIではこの擬似的な視覚効果を利用し各要素に立体感を持たせることが行われる。ボタンであれば上の縁を明るく下の縁を暗くすることで凸状に出ている状態、逆にすることで押して凹んだ状態であると認識させることができる。
地図の山岳部などの陰影表現もエンボスと呼ばれる。かつてはエアブラシによる人手の作業であったが、現在は前述のコンピュータ画像処理により容易に精密なエンボス描写が可能になっている。
脚注
- ^ 製本加工編集委員会『製本加工ハンドブック 技術概論編』日本印刷技術協会、2006年、24頁