感熱紙

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サーマルプリンター用のロール紙

感熱紙(かんねつし)は、を感知することでが変化するである。

概要

感熱紙は、印刷面には独特の鈍い光沢があり、ここに熱により化学反応を起こして変色する物質(色素前駆体であるロイコ色素と、それと反応する顕色剤)を塗布してある。この面に文字や図形の形に合わせて熱するとそれらを浮かび上がさせることができる。温度が高いほど濃く、低いほど淡くなるが、常温では短時間で変色しない。色は黒色に変化するものが多いが、紺色セピア色のものも存在する。反応温度を変えた複数の物質を使い2色に対応した感熱紙も存在し、高温で黒色に、低温でほかの色に変色するため、印字ヘッドの温度ムラから黒色の周りに低温で反応した色が出現する。

長期保管には向かず、印字後に湿気や脂分を含んだり光に当たることで徐々に全体が変色、あるいは反転部分が元の色へ戻る。扱いに注意することで保存日数を伸ばすことができるが、それでもあまり長くはなく、最適な「乾燥した冷暗所」に保管してなお、数年を超える保存には適さない。また消費期限があり、長いこと使用せずに放置した感熱紙は黄ばんだり、印字結果がかすんでいる場合がある。

ファックスレシート印刷に主に使用される他、鉄道の切符、公営ギャンブルの投票券、数字選択式宝くじのくじ券などでも使われている。また、ワープロ専用機の内蔵プリンタも感熱紙を利用するものが多く存在した。感熱紙への印刷は熱源があればよいため、インクトナーを必要としない。

こと印字する場合などでは、プリンター側のヘッド部分が非常に簡略化しやすいこともあって、小型軽量化や装置組み込みプリンターに利用されているが、専ら見た後は捨てられる用途の印字にしか向かず、一種の表示装置の延長として使われている。

歴史

感熱紙が登場する以前は感電記録紙(Electrosensitive Recording Paper)が使われていた。現代の感熱紙に比べると大きなエネルギーが必要で印刷中は紙の焦げる臭いが漂うほどだった。 1960年代に入ると低いエネルギーで印刷できるロイコ染料を使用した感熱紙が開発され専用印刷機が開発された。感熱紙と5x7ドット同時加熱印刷方式はICの発明の半導体技術からテキサス・インスツルメンツ社が1965年にプリントヘッドを発明し、1969年にコンピュータ用印刷表示機(サーマルプリンターSilent 700が発表され、当時のタイプライター、円筒(ASR-33)やドットインパクト式、球方式(IBMセレクトリック)、活字ベルト式などの各種のインパクト式印刷騒音から次第に静音化された感熱紙への印刷方式が採用された。 発表時の印刷は白灰地に濃い灰色に近かったが直後から日本の製紙メーカによっても創られ数年のうちに白地に黒色と改良された。 1970年代後半には電電公社の業務用ファックスが開発実用化された。受信用紙は表面を白銀色にコーティングした紙を用い、放電で表面を破壊して下層の黒色層を露出したイメージ印刷としていたが用紙幅長の線状加熱ヘッドの開発で感熱紙に取って代られた。1990年代にはフルカラーを表示できる内部発色式のサーモオートクロームも発売された。

2007年には、フルカラーの感熱紙(en:ZINK)も開発されている[1]

脚注

関連項目