享年
享年(きょうねん)とは、死亡時の年齢を表す漢語[1]。人が「天から享(う)けた年数」という意味であり、この世に存在した年数である[2]。「
語義
年齢を表す漢語表現には「年歯(ねんし)」、「享年(きょうねん)」、「行年(ぎょうねん)」、「春秋(しゅんじゅう)」などがある[1]。このうち享年(きょうねん)は死亡時の年齢を表す漢語で相対的に新しい表現とされている[1]。
位牌などに享年(あるいは行年)を記載することがあるが、寺院や地域によって解釈に違いがある[3][4]。
まず、日本では満年齢の概念が存在せず数え年のみが使われていたため、享年にも伝統的に数え年が使用されていた。数え年は元日を基準とするので新暦の導入[注 2]以前は暦法により元日が新暦とは異なる。ただ将来分かりやすいよう享年を満年齢で墓に彫刻する例もあれば、既に彫刻されている先祖の年齢表記の方法に合わせて彫刻する例もある[3]。「享年」と「行年」に関して現実には寺院や地域によって解釈に違いがあるため、位牌の記載などに関しては寺院などで確認する必要がある[3][5]。
また、本来、「享年」は何年生きたかであり数字の下に「歳」を付けないが、「行年」は何歳まで生きたかであるから数字の下に「歳」を付けるとされた[2][5]。しかし、国立国語研究所によると「享年〜歳」の用例は近世の文語平叙文にみられる表現としている[2][6]。享年に「歳」を付ける表記も一般的になりつつあり、例えば『広辞苑』など一部の国語辞典では凡例に「享年〜歳」と記載している[2]。
中村元ほか編著の岩波仏教辞典(岩波書店)には、「享年」の同義語である「行年」について、「特に仏教語というわけではない」とある。
共同通信社が発行する『記者ハンドブック』では2022年の第14版で初めて掲載されたが、共同通信に加盟している地方紙から様々な意見があったとしており、2020年代においても地域性が見られた[4]。
注釈
- ^ 『漢字源』学研、「行」の項を参照。
- ^ 日本では1873年(明治6年)1月1日に、新暦(グレゴリオ暦)を導入する。明治5年12月2日(グレゴリオ暦:1872年12月31日)までは、旧暦(天保暦(天保15年1月1日(グレゴリオ暦:1844年2月18日)導入))を用いていた。
脚注
- ^ a b c 山口尭二「年齢を表す名詞語彙の変遷」『佛教大学文学部論集』第87巻、佛教大学、2003年、29-42頁。
- ^ a b c d “日盲社協通信 No.70”. 日本盲人社会福祉施設協議会. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b c “追加彫刻について”. 真駒内滝野霊園. 2022年4月3日閲覧。
- ^ a b “「空揚げ→唐揚げ」 新聞用語のバイブル『記者ハンドブック』改訂の背景とは 共同通信校閲部に聞く:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2023年2月11日閲覧。
- ^ a b “位牌受注時における戒名に関する注意点”. さがみ典礼. 2022年4月3日閲覧。
- ^ 曲亭馬琴の作品、竹豊故事(1756年(宝暦6年)刊)などでも、「歳」をつけており、現在の誤用であるとは言えない。国立国語研究所のFAQでは、使ってとがめられるほど大きな間違いとはいえないとしている。