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黒ボク土

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

黒ボク土(くろボクど)は、日本でよく見られる土壌の一つである。

概要

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黒ボク土の土壌断面

黒ボクとは、土の色と乾燥した土を触った場合のボクボクした感触に由来し、古来からの農民による呼び名であった。また、黒土と呼ばれることも多いが、日本国外の黒土(チェルノーゼム)と性質は異なる。また、地域によっては黒ノッポ、黒フスマ、黒ニガといった呼び名を使うこともある[1]

黒ボク土は日本の国土の31%程度を占め、火山の分布する北海道東北関東九州に多くみられ、国内の畑の約47%を覆っている[2]。国外でも、世界スケールの地図では現れにくいが、カムチャツカ半島、ニュージーランド北島など火山周辺の地域に分布している。

母材である火山灰土腐植で構成されている。表層は腐植が多いため色は黒色又は黒褐色、下層は褐色となる。火山山麓台地平地でよく見られ、一部火山灰に由来しない黒ボク土も存在し、この場合は火山より遠く離れた地でも見られる。

火山噴火により地上に火山灰が積もり、その上に植物が茂る。枯れた植物は分解されて腐植となり、長い時間をかけて黒ボク土を形成する。ローム層も火山灰を由来とするが、ローム層が形成された時代は気候が冷涼だったため植物が分解されず、黒ボク土とは異なる土壌となった。

火山灰に含まれる活性アルミナ有機物が結合するため、日本国内の他の土壌と比べると有機物の含有量が非常に多いうえ、有機物の効力で植物に適した団粒構造をなす。保水性や透水性が良く、緻密度(土の硬さ)が低く、耕起が容易であることから他の土壌に比べて物理性は良好である[2]

一方で、アルミナの影響でリン酸分の吸着力が高いため、リン酸分が不足しやすく、施肥をおこなわないとやせた土壌となる。

黒ボク土群の分類

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黒ボク土は、土壌の発達程度・生成環境(水分、母材等)に応じて、以下の6つの土壌群に分類される[2]

  • 土壌として未発達なもの:未熟黒ボク土(D1)
  • 地下水位の高い場所にあり、一年を通じて水で飽和されている層が50cm以内に出てくるもの[3]:グライ黒ボク土(D2)
  • 地下水の影響で湿っているもの[4]:多湿黒ボク土(D3)
  • 有機物を多く含むが黒くないもの:褐色黒ボク土(D4)
  • 結晶性粘土を含むもの:非アロフェン質黒ボク土(D5)
  • アロフェン主体のもの:アロフェン質黒ボク土(D6)

未熟黒ボク土はリン酸吸収係数は低い。グライ黒ボク土は全層または下層がグライ化している。

多湿黒ボク土は主に排水の悪い地域にあり下層に地下水等の影響による斑紋がみられる。

褐色黒ボク土は森林植生下において発達し、土壌有機炭素含量は高いものの土色は黒くない。

非アロフェン質黒ボク土は、強酸性で、岩手県南部・宮城県北部・東海山陰に多く見られる。

アロフェン質黒ボク土は北海道、青森県東部・岩手県北部・関東・九州に多く見られ、非アロフェン質よりリン酸の保持能力が高い。

国際的な呼称

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FAO土壌分類では"Andosols"(アンドソル)、USDA土壌分類では"Andisols"(アンディソル)とされる[5]

これらの名称は、戦後にGHQが日本に派遣したアメリカの土壌学者James Thorpらが、特徴的な不良土として黒ボク土を「Ando(暗土) soil」として紹介したことに由来する[6][7]

脚注

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  1. ^ 久馬『土とは何だろうか?』京都大学学術出版会、2005年12月15日。 
  2. ^ a b c 農業・食品産業技術総合研究機構. “黒ボク土”. 日本土壌インベントリー. 2017年12月31日閲覧。
  3. ^ 農業・食品産業技術総合研究機構. “グライ黒ボク土”. 日本土壌インベントリー. 2017年12月31日閲覧。
  4. ^ 農業・食品産業技術総合研究機構. “多湿黒ボク土”. 日本土壌インベントリー. 2017年12月31日閲覧。
  5. ^ Food Watch Japan『畑の土 iii/黒ボク(3)』、2017年1月閲覧。
  6. ^ 浅海重夫・渡邊眞紀子. “アンドソルとは”. コトバンク. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2021年10月20日閲覧。
  7. ^ 福田克彦『三里塚アンドソイル』平原社、2001年、57p

外部リンク

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