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限定合理性

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限定合理性(げんていごうりせい、英: bounded rationality, 仏: rationalité limitée)とは、合理的であろうと意図するけれども、認識能力の限界によって、限られた合理性しか経済主体が持ち得ないことを表す。これは、1947年にハーバート・サイモンが『Administrative Behavior』で提唱した人間の認識能力についての概念であり、オリバー・ウィリアムソンはこの概念を取引コストに関わる経済学の基礎として据えた。

概要

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限定合理性は、個人が意思決定を行う際には合理性が限定されており、そうした制約のもとでは合理的な個人は最適な決定ではなく満足のいく決定を選択する、という考え方である[1]。

その制約には、決定を要する問題の難しさ、心の認知能力、および決定を下すために利用できる時間が含まれる。この見方では、意思決定者は満足化する主体として行動し、最適な解ではなく、その時点で手にしているものすべてを用いて満足のいく解を探し求める。したがって人間は、最適な決定を判断するために完全な費用便益分析を行うのではなく、むしろ自らの充足基準を満たす選択肢を選ぶのである[2]。

社会科学における人間行動(英語版)のモデルの一部は、合理的選択理論やダウンズの政治的エージェンシー・モデル(英語版)におけるように、人間を合理的な存在としておおむね妥当に近似あるいは記述できると仮定している[3]。限定合理性の概念は、意思決定を、利用可能な情報のもとで最適な選択を見いだす完全に合理的な過程とみなす、最適化としての合理性という考え方を補完するものである[4]。したがって限定合理性は、(他の経済学理論が用いている)人間行動の完全合理性という仮定と、人間の認知の現実との間の乖離を扱うものだといえる[5]。要するに限定合理性は、現実の意思決定問題の扱いにくさと、それを行うために利用できる計算資源の有限性のために、完全に合理的な決定が実際にはしばしば実行可能でないという事実を考慮に入れて、完全合理性の概念を修正するものである。限定合理性の概念は、政治学、経済学、心理学、法学、哲学、認知科学など、さまざまな分野に影響を与え続けており、またそこで議論の対象となり続けている[6]。

背景と動機

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「限定合理性」はハーバート・サイモン(Herbert A. Simon)によって作られた語であり、経済学、政治学および関連分野で用いられている、数理的かつ新古典派経済学的な意思決定のモデル化に代わる基礎として提案された。多くの経済学モデルは、行為主体が平均的には合理的であり、多数を集計すれば効用を最大化するために自らの選好に従って行動すると近似できると仮定している[2]。限定合理性によってサイモンが目指したのは、「経済人の大域的合理性を、人間を含む有機体が現に有している情報へのアクセスと計算能力、そしてそうした有機体が存在する種類の環境と両立するような、一種の合理的行動に置き換えること」であった[7]。限定合理性という用語が現れて間もなく、この主題領域における研究はこの問題を掘り下げて検討し始めた。1953年にモーリス・アレ(Maurice Allais)が完成させた研究は、意思決定の非合理性という考えを生み出す端緒となった。彼は、選好が与えられていても個人が常に最も合理的な決定を選ぶわけではなく、したがって合理性という概念は経済学的予測において常に信頼できるものではないことを見いだしたのである[8]。

『Models of Man』のなかでサイモンは、ほとんどの人間は部分的にしか合理的ではなく、行動の残りの部分においては非合理的であると論じている。別の著作では、彼は「限定合理的な行為主体は、複雑な問題を定式化し解決する際、および情報を処理(受信、貯蔵、検索、伝達)する際に限界を経験する」と述べている[9]。サイモンは一組のハサミという比喩を用いた。そこでは一方の刃が現実の人間の「認知的制約」を表し、他方が「環境の構造」を表しており、心が環境における既知の構造的規則性を利用することによって限られた資源をどのように補っているかを示している[4]。

サイモンは、かなり厳密な形式化の路線にとどまりながらも、古典的な合理性のモデルをいくらかより現実的なものにしうる、いくつかの次元を記述している。それらには以下が含まれる。

  • 効用関数の型を限定すること
  • 情報の収集と処理にかかる費用を認識すること
  • ベクトル型ないし多値の効用関数をもつ可能性

サイモンは、経済主体は厳格で硬直的な最適化の規則ではなくヒューリスティックを用いて決定を下すと示唆している。彼らがそうするのは、状況が複雑だからである。ヒューリスティックによって抑制される行動の例は、単純な状況(例えば三目並べ)で用いられる認知的戦略と、困難な状況(例えばチェス)で用いられる戦略とを比較するときに見て取れる。ゲーム理論的経済学によって定義されるところでは、両者はともに完全情報の有限ゲームであり、したがって同等である[10]。しかしチェスにおいては、心的な処理容量と能力が拘束的な制約となっており、それゆえ最適な選択は可能ではない[10]。したがって、行為主体の精神的限界を検証するためには、チェスにおけるような複雑な問題を研究し、個人が自らの認知的限界をどのように回避しているのか、また解を形成するためにどのような行動やヒューリスティックが用いられているのかを検証すべきである[11]。

アンカリングと調整のヒューリスティックは、限定合理性と、意思決定者が合理的な決定を下さない理由について、ある程度の説明を与える。ゼンコら(Zenko et al.)が実施した研究は、意思決定者が行う身体活動の量がアンカリングと調整によって影響されうることを示した。というのも、ほとんどの意思決定者は通常は非合理的とみなされ、指示された量の身体活動を行うことはまずないと考えられるからであり、またこれらの意思決定者が自分がどれだけ運動を行うかを決めるためにアンカリングと調整を用いていることが示されたからである[12]。

限定合理性の概念と密接に関連するその他のヒューリスティックには、利用可能性ヒューリスティックと代表性ヒューリスティック(英語版)がある。利用可能性ヒューリスティックとは、人々が、鮮烈な経験や最近の経験のように、容易に思い浮かぶ出来事の生起可能性を過大評価する傾向があることを指す。これは、不完全な情報や代表性を欠く情報に基づく偏った判断につながりうる[13]。代表性ヒューリスティックは、人々がしばしば、ある出来事の確率を、それが典型的ないし代表的な事例にどれほど似ているかに基づいて判断し、基準率や標本の大きさといった他の関連する要因を無視する、というものである[14]。

例

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限定合理性は、政治的意思決定、投票行動、および政策の帰結に重大な影響を及ぼしうる。その顕著な例がヒューリスティックに基づく投票である。限定合理性の理論によれば、個人が意思決定を行うために使える時間、情報、認知資源は限られている。投票の文脈においてこれが意味するのは、ほとんどの有権者が、候補者、争点、政策に関する入手可能なすべての情報を現実的に収集し処理することはできない、ということである。仮にそのような情報が入手可能であったとしても、それを分析するために必要な時間と労力は多くの有権者にとって法外に大きいであろう。その結果、有権者はしばしばヒューリスティックに頼ることになる。ヒューリスティックによって有権者は、関連するすべての要因を包括的に評価するのではなく、政党所属、候補者の外見、単一争点における立場といった手がかりに基づいて決定を下すことができる。例えば、政党所属というヒューリスティックに依拠する有権者は、単にその候補者が自分の好む政党に属しているという理由だけで、実際には自分の利益に合致しない政策を掲げる候補者に投票することがある[15]。

モデルの拡張

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意思決定者は、どのように、そしていつ決定を下すかということ自体についても決定しなければならず、同じ情報を有する意思決定者であっても状況を等しく分析して同じ合理的決定に到達できるわけではないことから、アリエル・ルービンシュタイン(Ariel Rubinstein)は、意思決定手続きを明示的に特定することによって限定合理性をモデル化することを提案した[16]。ルービンシュタインは、同じ水準の情報のもとで最終的な決定に到達する際の一貫性は、意思決定手続きそのものを考慮に入れなければならないと論じている[16]。 ゲルト・ギーゲレンツァー(英語版)(Gerd Gigerenzer)は、意思決定理論家たちはある程度までサイモンの本来の考えに忠実ではなかったと述べた。むしろ彼らは、合理性の限界によって意思決定がいかに損なわれうるかを考察したり、人々が最適化できないことにどのように対処しうるかをモデル化したりしてきた。ギーゲレンツァーは、単純なヒューリスティックが理論的に最適な手続きよりもしばしば優れた決定をもたらすことを提唱し、また示している[3]。さらにギーゲレンツァーは、行為主体は自らの環境との関係において反応し、それに応じて適応するために自らの認知過程を用いると主張した[2]。

ヒュー・ディクソン(英語版)(Huw Dixon)は後に、限定合理性の基礎にある推論の過程を詳細に分析する必要はないかもしれないと論じた[17]。行為主体が最適解に近づくような行動を選択すると考えるならば、イプシロン最適化(epsilon-optimization)という概念を用いることができ、これは利得が最適値からイプシロン以内に収まるように行動を選択することを意味する。最適な(達成可能な最良の)利得を と定義すると、イプシロン最適化の選択肢の集合 は、次を満たすすべての選択肢 として定義できる。

計算論的な観点からは、意思決定手続きはアルゴリズムやヒューリスティックとして符号化することができる。エドワード・ツァン(英語版)(Edward Tsang)は、行為主体の実効的な合理性はその計算知能によって決まると論じている。他の条件が等しければ、より優れたアルゴリズムとヒューリスティックを備えた行為主体は、より劣ったヒューリスティックとアルゴリズムしか持たない行為主体よりも、合理的な(最適に近い)決定を下しうる[18]。また、多くの人工知能システムは、計算量のより多い推論を戦略的に用いることによって、より低い資源コストで性能を最適化できることを示している[19]。

チリツィ・マルワラ(Tshilidzi Marwala)とエヴァン・ハーウィッツ(Evan Hurwitz)は、限定合理性に関する研究において、技術の進歩(例えばムーアの法則によるコンピュータの処理能力、人工知能、ビッグデータ分析)が、実現可能な合理性の空間を画する限界を拡張することを見いだした。この合理性の限界の拡張によって、機械による自動化された意思決定は市場をより効率的にする[20]。

限定合理性のモデルは限定的利己心(bounded self-interest)[21]にも拡張され、そこでは人間は、その時点で個人が有する情報が不完全であるために、他者の利益のために自らの利己的利益を進んで放棄することがある。これは、それ以前の経済モデルでは考慮されてこなかったことである[22]。

限定合理性の拡張であり、クリストファー・シムズ(Christopher Sims)によって研究された合理的無関心(rational inattention)の理論は、完全な情報を得るための費用を負担するのではなく、不完全な情報のもとで決定が選択されうることを見いだした。これは、意思決定者が限定合理性を甘受することを選んでいることを示している[23]。

不確実性下の意思決定のための速くて倹約的な規則のレパートリーである「適応的道具箱」[24]という概念を用いて、ギーゲレンツァーとその同僚による生態学的合理性に関する研究は、限定合理性を制約下の最適化とも、人々の推論の誤りの研究ともみなさない。適応的道具箱に含まれる戦略は、最適化が、そして多くの場合は確率と効用の計算が実行可能ではない状況に適用される。生態学的合理性は、社会規範、模倣、その他の文化的道具がどのような場合に合理的な戦略として機能するのかを探究し、賢いヒューリスティック[25]が現実の意思決定環境の構造をいかに利用しうるかを示す。

行動経済学との関係

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限定合理性は、1950年代に新古典派経済学理論のなかで論じられた仮定の諸点に取り組もうとするものである。この理論は、複雑な問題、問題が提示される仕方、すべての代替的選択肢、および効用関数が、あらかじめすべて意思決定者に与えられていると想定するが[26]、これは現実的ではないかもしれない。これは数十年にわたって広く用いられ受け入れられてきたが、経済学者たちはこの理論を利用することにいくつかの難点が存在することに気づいた。この理論は、意思決定者が最初にどのようにして問題を発見するのかを考慮しておらず、それは決定全体に影響を及ぼしうるものであった。さらに、個人的価値観、代替案が発見され創出される仕方、および意思決定過程を取り巻く環境も、この理論を用いる際には考慮されない[27]。これに対して限定合理性は、意思決定者の認知能力と、最適な意思決定を妨げうる要因に焦点を当てる[28]。さらに、新古典派経済学理論のように市場に焦点を当てるのではなく組織に焦点を当てることによって、限定合理性は、ジョン・D・W・モアクロフト(John D.W. Morecroft, 1981)が述べたように「……組織の業績と成功は主としてその構成員の心理的限界によって左右される……」ことを強調する点で、他の多くの経済理論(例えば組織理論)の基礎ともなっている[29]。

限定合理性の考えと密接に関連する概念の一つがナッジである。ナッジと限定合理性との結びつきは、ナッジが、限定合理性から生じる認知的制約やバイアスを人々が克服するのを助けるように設計されているという事実にある[30]。ナッジは、人々の選択の自由を制限することなく、より良い決定へと人々を導く選択アーキテクチャ(英語版)を設計することを含む。この概念は、リチャード・セイラー(Richard Thaler)とキャス・サンスティーン(Cass Sunstein)による2008年の著書『Nudge(英語版)』(邦題『実践 行動経済学』)によって広く知られるようになった[31][32]。

ナッジの用いられ方の一つは、情報を明確で理解しやすい形式で提示することによって複雑な決定を単純化し、個人の認知的負担を軽減することを目的とするものである。ナッジはまた、デフォルト・バイアス(人々が初期設定の選択肢に固執する傾向)のような、ありふれたヒューリスティックやバイアスに対抗するように設計されることもある。例えば、他の適切な政策が整っている場合、死後の臓器提供を初期設定の選択肢とし、離脱(オプトアウト)の規定を設けることが、実際の提供率を高めることが示されている[33]。さらに、十分な情報に基づく決定を下すために必要な情報が不完全である場合には、ナッジが関連する情報を提供することができる。例えば、メニュー項目のカロリー量を表示することは、人々がより健康的な食品を選択する助けとなりうる[34]。

行動経済学に基づく経済モデル(英語版)において限定合理性を実装することは、従来の一般均衡モデルで用いられる効用最大化や利潤最大化に代わるものを見いだすことを意味する。ストック・フロー整合モデル(英語版)(SFC)やエージェント・ベース・モデル(ABM)では、行為主体が最適化手続きではなく単純な経験則的行動の連なりに従うものとして実装されることが多い[35][36][37]。他の動学モデルは、限定合理性を「改善の方向を探すこと」[38]と解釈し、行為主体は自らの効用を高めるために勾配上昇の手法を用いるとする[39][40]。

限定性の原理

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限定合理性に加えて、限定的意志力(bounded willpower)と限定的利己性(bounded selfishness)は、完全に合理的で自己利益的かつ自己規律的な個人という伝統的な新古典派経済学の想定に異議を唱える、行動経済学におけるもう二つの主要な概念である[41]。

限定的意志力とは、人々が自制心の限界と短期的な欲求を優先する傾向のために、長期的な計画や意図をやり遂げることにしばしば困難を抱えるという考え方を指す。これは、先延ばし、衝動的な支出、不健康な生活習慣の選択といった問題につながりうる。限定的意志力の概念は、双曲割引の考え方と密接に関連している。双曲割引とは、人々が将来の報酬よりも即時の報酬をより高く評価する傾向があり、その結果として時間を通じて選好が一貫しなくなることを記述するものである[41]。

伝統的な経済モデルは人々が主として自己利益によって動機づけられると想定するのに対し、限定的利己性は、人々が社会的選好をも有しており、公正さ、互恵性、他者の福祉といった要因を気にかけることを示唆する。この概念は、慈善的な寄付、社会的ジレンマにおける協力、社会規範の存在といった現象を説明するのに役立つ[41]。しかし、他者への配慮は、その範囲が限られており、内集団びいき(英語版)や情緒的距離といった要因によって影響されうるという意味で、しばしば限定されている[42]。

心理学における限定合理性

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ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)の共同研究は、限定合理性の地図を作成しようとする試みの中で、ハーバート・サイモンの考えを発展させたものである。この研究は、合理的主体と想定される者が行う選択を、個人の最適な信念と満足化行動によって行われる選択と比較して探究しようとした[43]。カーネマンは、この研究が主として心理学の分野に貢献するものであると述べている。それは、心理学的研究が形式的な経済モデルに適合するだけの精密さを欠くためである。しかしながら、これらの理論は、単純かつ精密なモデルを拡張し、多様な心理学的現象を包含する方途として、経済理論にとって有用である[43]。カーネマンとトベルスキーの業績が扱った三つの主要な主題は、判断のヒューリスティック、リスク下の選択、フレーミング効果(英語版)であり、これらはハーバート・サイモンが限定合理性の心理学として定義したものに該当する研究の集大成であった[44]。サイモンの研究とは対照的に、カーネマンとトベルスキーは、限定合理性が単純な課題に対して及ぼす影響に焦点を当てることを目指し、それゆえ状況にかかわらず生じる認知メカニズムの誤りにより大きな重点を置いた[10]。カーネマンが行った研究は、経済的意思決定における感情と心理が、当初考えられていたよりも経済学の分野において大きな役割を果たしていることを明らかにした。この研究は、恐怖や個人的な好き嫌いといった意思決定の背後にある感情に焦点を当て、これらが経済的意思決定における重要な要因であることを見出した[43]。

限定合理性はまた、交渉技術においても有用であることが示されており、デハイら(Dehai et al.)が行った研究によれば、労働者と企業が労働者のより高い賃金について交渉する際に限定合理性の手法を用いて行われた交渉は、双方にとって対等な解決に到達することができた[45]。

社会ネットワーク構造への影響

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近年の研究、とりわけカストゥリラスナ(Kasthurirathna)とピラヴィーナン(Piraveenan)の研究は、個人の限定合理性が、その個人たちの間で進化する社会ネットワークのトポロジーに影響を及ぼしうることを示している[46]。

多様な合理性概念

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サイモンは、後に、合理性を実質合理性(substantive rationality)と手続き合理性(procedural rationality)とに区別した[47]。オリバー・ウィリアムソンは、合理性に3段階あると唱えている。クリストファー・チャーニアクは、最小合理性(minimal rationality)の概念を唱えた[48]。塩沢由典は、サイモンの限定合理性概念が情報獲得と生体内での情報処理の双方を包含していることを指摘し、ユキュスキュルの機能環を基礎に視野の限界・合理性の限界・働きかけの限界の3項に再構成することを提案している[49]。

合理性の強さ

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ウィリアムソンによると、合理性には3段階の強さがある。最も強いものは最大化計算ができるという意味の合理性であり、通常のミクロ経済学が仮定しているものである。逆に最も弱いものは有機的合理性と呼ばれるものであり、貨幣、市場、所有権など、誰も計画的にそれを作り出そうとしなかったにもかかわらず発生した制度に関する合理性である。限定合理性はその中間である。

さらに、これらの合理性の外には非合理性がある。取引費用経済学は、新古典派経済学が前提とする強い合理性を否定するが、非合理性を仮定するわけではなく、経済主体が自己の利益を追求すること自体は合理的であろうと意図するという前提から導かれる。合理性が限定されているために、将来が不確実な世界で将来起こりうることを正確には予測できず、かつ経済主体が機会主義的に行動すれば、契約の改定や紛争の調整が必要になり、取引費用を発生させる。この取引費用をいかに節約するかが、取引統御機構の選択に影響する。

満足化仮説

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限定合理性に基づいてサイモン(1952)は、「経済主体は効用などの目的関数を最大化するのではなく、それについての達成希望水準を設定し、その水準以上の値が達成されれば目的関数の値をさらに改善するための代案を模索することはしない」という仮説を提唱した。これを満足化仮説(satisficing hypothesis)という[50]。

脚注

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  2. 1 2 3 Campitelli, Guillermo; Gobet, Fernand (2010). “Herbert Simon's Decision-Making Approach: Investigation of Cognitive Processes in iExperts”. Review of General Psychology 14 (4): 354–364. doi:10.1037/a0021256. ISSN 1089-2680.
  3. 1 2 Mancur Olson, Jr. ([1965] 1971). The Logic of Collective Action: Public Goods and the Theory of Groups, 2nd ed. Harvard University Press, Description, Table of Contents, and preview.
  4. 1 2 Gigerenzer, Gerd; Selten, Reinhard (2002). Bounded Rationality: The Adaptive Toolbox. MIT Press. ISBN 978-0-262-57164-7
  5. ↑ Wheeler, Gregory (2020), Zalta, Edward N., ed., Bounded Rationality (Fall 2020 ed.), Metaphysics Research Lab, Stanford University 2022年5月3日閲覧。
  6. ↑ Chater, Nick; Felin, Teppo; Funder, David C.; Gigerenzer, Gerd; Koenderink, Jan J.; Krueger, Joachim I.; Noble, Denis; Nordli, Samuel A. et al. (2018-04-01). “Mind, rationality, and cognition: An interdisciplinary debate” (英語). Psychonomic Bulletin & Review 25 (2): 793–826. doi:10.3758/s13423-017-1333-5. ISSN 1531-5320. PMC 5902517. PMID 28744767.
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  9. ↑ Oliver E. Williamson, p. 553, citing Simon.
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参考文献

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関連文献

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関連項目

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外部リンク

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