遠隔会議
遠隔会議(えんかくかいぎ、英: teleconference)は、それぞれ遠隔地にいる人々が電気通信システムで相互に接続し、音声や映像、資料を共有しながら会議や打ち合わせを行うこと。テレカンファレンスまたはテレコンファレンスともいい、テレカンと略されることもある。『デジタル大辞泉』はテレビ画面を通じて会議をすることと定義し、テレビ会議・ビデオ会議を同義語としている[1]。英語のteleconferenceは、電話やコンピュータ端末などの電気通信機器を用いて離れた場所にいる人々が会議を行うことを指し[2]、本項では音声だけで行う電話会議、映像を伴うテレビ会議(ビデオ会議)、インターネットを通じて資料や画面の共有を統合したWeb会議(ウェブ会議・オンライン会議)を含めた広い意味で扱う[3][4][5]。講義やトレーニングに用いる場合はウェビナー(遠隔セミナー)と呼ぶ。

遠隔会議は、電話会社による1920〜1930年代のテレビ電話の実験に始まり、会議室同士を結ぶテレビ会議システムとして実用化された。日本では1984年に日本電信電話公社がサービスを開始している[6][7]。1990年代以降にISDNやIP網向けの国際規格が整い、2010年代にはクラウド型のWeb会議サービスが企業に広がった。2020年の新型コロナウイルス感染症の流行で外出や出社が制限されたことを契機に利用は急拡大し[5]、英BBCによれば、Zoomの1日あたりの会議参加者はピーク時に3億人を超えた[8]。
遠隔会議は、在宅勤務やサテライトオフィス勤務などのテレワーク(リモートワーク)において、社内の打ち合わせや顧客との商談を行う手段として使われている。総務省の『情報通信白書』はテレワークとオンライン会議を一括りの節で扱い[9]、同省の調査では、テレワークを導入している企業の割合は2019年の20.2%から2020年に47.5%へ上昇し、2025年は50.1%であった[10][11]。国内のWeb会議システムの利用率は、MM総研の調査で2019年12月末の44%から2020年4月末には63%に上昇した[12]。政府は、テレワークの効果として通勤時間の削減、育児や介護と仕事の両立、遠隔地の人材の確保、オフィスコストの削減、災害時の事業継続、通勤混雑や環境負荷の軽減を挙げている[13][14]。
会社の取締役会や株主総会、民事裁判の期日、地方議会の委員会、診療や大学の授業でも遠隔会議の利用が制度上認められるようになった[15][16]。2020年にはG7やG20の首脳会議がテレビ会議形式で開かれ[17][18]、国連総会の一般討論も各国首脳が現地を訪れない形式で行われることになった[19]。技術面では、VRや空間コンピューティングを用いて参加者が同じ空間にいるように会議を行う仕組みや、生成AIによる会議の文字起こしと要約も登場している[20][21][22]。
定義と用語
[編集]英語のteleconference(テレコンファレンス)は、『メリアム=ウェブスター』辞典によれば、電話やコンピュータ端末などの電気通信機器を用いて、互いに離れた場所にいる人々の間で会議を開くことを意味する[2]。日本語の辞書では意味がやや狭く、『デジタル大辞泉』は遠隔会議を「互いに離れた場所にいる人どうしがテレビの画面を通じて会議をすること」と定義し、テレカンファレンス・テレビ会議・ビデオ会議を同義語として挙げ、電話会議とウェブ会議を関連する項目として参照している。同辞典では「テレビ会議」の項目が「遠隔会議」への参照項目になっており、遠隔会議が上位の見出し語として扱われている[1]。本項では、英語のteleconferenceに対応する広い意味で、音声のみの会議も含めて扱う。『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』は「テレビ会議システム」を、遠隔地点にある2か所以上の会議室の画像と音声を伝送し、互いにテレビ画面を見ながら会議を行うシステムと説明し、旅費と時間の節減ができるため官庁・企業・大学などで普及しているとしている[7]。
音声だけで行う会議は電話会議(音声会議)と呼ばれる。『デジタル大辞泉』はこれを「一度に3台以上の電話を使って、同時に会話できるシステムまたはサービス」と定義し、固定電話・携帯電話・IP電話などを利用して国内外を問わず会議ができるとしている[3]。映像を伴うものはテレビ会議(ビデオ会議)と呼ばれる。インターネットを通じて資料やデータの共有を伴うものはウェブ会議(Web会議)と呼ばれ、同辞典はウェブカンファレンス・オンライン会議・オンラインミーティング・ネット会議を同義語として挙げている[4]。IT用語辞典e-Wordsは、2地点の間を結ぶテレビ電話と異なり3地点以上を同時に結ぶものをテレビ会議(ビデオ会議)とし、その仕組みを基盤に資料やデータの共有、操作画面の共有、チャットなどの機能を統合したものをWeb会議と区別している[5]。
遠隔会議の仕組みを講義やトレーニングに利用する場合は遠隔セミナー(英: teleseminar)またはウェビナー(英: webinar)と呼ぶ。
形態
[編集]遠隔会議は、やり取りする情報の種類(音声のみか、映像や資料を伴うか)と、利用する端末や回線によって、次のような形態に分けられる。
| 形態 | 主な手段 | 特徴 |
|---|---|---|
| 電話会議(音声会議) | 固定電話・携帯電話・IP電話 | 3台以上の電話を同時に接続し、音声のみで会議を行う[3]。 |
| テレビ会議(ビデオ会議) | 専用端末や会議室システム、ISDN回線やIP回線 | 2か所以上の会議室の画像と音声を伝送する。多地点接続装置(MCU)を使うと数十か所を結ぶ会議もできる[7]。 |
| Web会議(ウェブ会議・オンライン会議) | パーソナルコンピュータ・スマートフォン・ウェブブラウザ・クラウド型サービス | 映像と音声に加え、資料やデータの共有、画面共有、チャットを統合する[4][5]。 |
| ウェビナー(遠隔セミナー) | Web会議システムの配信機能 | 講師から多数の受講者へ講義や説明を配信し、質疑を受ける。 |
| 仮想オフィス | 常設のオンライン空間 | 参加者が常時接続し、必要なときに会話や会議を始める。 |
| VR・AR会議 | ヘッドマウントディスプレイ・空間コンピューティング機器 | アバターや等身大の映像で、参加者が同じ空間にいるように会議を行う。 |
| テレプレゼンス | 高精細の大画面と専用の部屋 | 相手が同じ部屋にいるような臨場感を重視する。 |
VRや空間コンピューティングを用いた会議の例としては、2021年にMeta(当時のFacebook)が公開したVR会議室「Horizon Workrooms」がある。参加者はアバターとしてVRで参加するか、パソコンからビデオ通話で参加する[20]。2023年にAppleが発表したApple Vision Proでは、FaceTimeの参加者を等身大のタイルで表示し、装着者は「ペルソナ」と呼ぶデジタル表現で映る[21]。
歴史
[編集]テレビ電話からテレビ会議へ
[編集]遠隔地を映像で結ぶ試みは、電話会社の実験から始まった。英語版『ブリタニカ百科事典』(Encyclopaedia Britannica)によれば、片方向のテレビ電話の最初の公開実演は1927年4月7日にワシントンD.C.のハーバート・フーヴァー商務長官とニューヨークのAT&Tの間で行われ、双方向の実演は1930年4月9日にベル研究所と同社本社(いずれもニューヨーク)の間で行われた[6]。AT&Tは1964年のニューヨーク万国博覧会でPicturephone(ピクチャーフォン)を実演し、来場者はカリフォルニア州のディズニーランド会場との間で映像通話を体験した[23]。1971年には第2世代のPicturephoneが導入され、電話回線を使う白黒アナログ映像の通話サービスとして提供された[6]。
日本では、会議室同士を結ぶテレビ会議システムのサービスを1984年3月に日本電信電話公社が宅内設置型で開始し、各通信機器メーカーも製品の提供を始めた。当初は専用のテレビ会議網と高速デジタル回線を使い、その後はISDN回線やIP回線で接続されるようになった[7]。
標準化とインターネット
[編集]国際電気通信連合の国際電信電話諮問委員会(CCITT、後のITU-T)は1988年に映像符号化のH.261を、1990年にISDN向けテレビ電話システムのH.320を勧告し、異なるメーカーの端末を相互に接続する基盤が整った[24][25]。1996年には、資料共有などを扱うマルチメディア会議のデータプロトコルT.120と、パケット網(IP網)上のマルチメディア通信を定めるH.323が勧告された[26][27]。IETFは1999年に呼制御プロトコルのSIPをRFC 2543として公開し、2002年にRFC 3261へ改訂した[28]。英語版『ブリタニカ百科事典』によれば、1990年代後半には会議室に設置してISDNまたはインターネットで接続する業務用のビデオ会議システムと、パーソナルコンピュータにカメラを接続するデスクトップ型のビデオ会議が発展した[6]。
インターネットを介した会議サービスも登場した。1995年に創業したWebExはWeb会議サービスを提供し、2007年にシスコシステムズが約32億ドルで買収した[29][30]。2003年に登場したSkypeは無料のインターネット電話ソフトとして普及し、2005年にeBayが買収した[31]。Skypeを買収していたマイクロソフトは2025年2月28日にSkypeの終了を告知し、同年5月5日にサービスを終了した[32][33]。2010年にはAppleがiPhone 4の発表とともにビデオ通話機能FaceTimeを発表した[34]。
クラウド型サービスの普及
[編集]2010年代には、クラウド型のWeb会議サービスが企業に広がった。Zoom Video Communicationsは2011年に設立され、2013年にZoom Meetingsを一般公開した[35]。2017年には、Amazon Web Services(AWS)が音声・映像会議とチャット、画面共有を統合したAmazon Chimeを[36]、Googleがリンクを開くだけで最大30人が参加できるHangouts Meet(後のGoogle Meet)を[37]、それぞれ提供開始した。
2020年の急拡大
[編集]新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって外出や出社が制限された2020年、遠隔会議の利用は世界的に急増した。IT用語辞典e-Wordsは「テレビ会議やWeb会議の仕組みは以前から存在したが、新型コロナウイルス感染症の突然の大流行で外出が大きく制限されたことをきっかけに2020年から一気に普及・浸透が進んだ」と記述している[5]。Zoomの1日あたりの会議参加者は、オラクルの事例紹介によれば2019年12月の1000万人から2020年4月には3億人に増え[38]、BBCも2020年6月、ピーク時に1日3億人を超える参加者を数えたと報じた[8]。Googleは2020年4月、Google Meetの1日の会議参加者が前週に1億人を超えたと発表し、「リモートワークと生活」への対応を理由に同サービスを個人にも無料で開放した[39]。日本でも、MM総研の調査でWeb会議システムの利用率が2019年12月末から2020年4月末にかけて大きく上昇した(後述)[12]。
ハイブリッドワークと新技術
[編集]総務省の『令和8年版情報通信白書』は、民間企業のテレワークについて「2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大後、急速に導入が進み、その後横ばいで推移している」と記述している[9]。技術面では、2021年にMetaのVR会議室「Horizon Workrooms」、2023年にAppleの「Apple Vision Pro」が発表され、VRや空間コンピューティングによる会議が製品化された[20][21]。生成AIの会議への応用も進み、2023年9月にZoomは会議要約などを行うAI Companionを有料アカウント向けに追加費用なしで提供し[22]、Google MeetではGeminiが会話を文字起こしして要約と行動項目をGoogleドキュメントに保存する機能が提供されている[40]。MM総研の2021年の調査(国内企業2604社)では、Web会議システムに今後追加してほしい機能として「議事録作成/文字起こし機能、字幕機能」を挙げた企業が47.3%で最も多かった[41]。
技術
[編集]遠隔会議は、参加者の音声や映像を符号化して通信回線で送り、相手側で復号して再生する仕組みで成り立つ。会議を成立させるには、参加者同士を呼び出してつなぐ「呼制御」、複数地点の音声・映像を合成または配信する「会議制御」、エコーや雑音を抑える音響処理、資料を共有する機能が必要になる。以下では、それぞれの基盤となる規格と仕組みを概説する。
音声と映像の符号化
[編集]電話網の音声はITU-T(旧CCITT)のG.711でパルス符号変調により符号化されており、電話会議もこれを基盤としてきた[42]。インターネット上の会議向けには、IETFが2012年に標準化したOpusがある。OpusはVoIPやビデオ会議などの双方向音声向けに設計され、6kbit/sの狭帯域音声から510kbit/sの高音質のステレオ音楽まで一つの方式で扱える[43]。映像については、ISDN時代のテレビ会議で使われたH.261(1988年)に続き、2003年にH.264が勧告された[24][44]。ウェブブラウザで動くWebRTCの仕様では、音声はOpusとG.711、映像はVP8とH.264の実装が必須とされている[45][46]。
呼制御と接続方式
[編集]参加者を呼び出して会議に接続する手順は、回線の種類ごとに標準化されてきた。ISDN回線ではH.320(1990年)、IP網ではH.323(1996年)とSIP(1999年・2002年)が用いられ[25][27][28]、ウェブブラウザ同士の通信ではWebRTCが用いられ、2021年1月にW3Cの勧告およびIETFの標準となった[47]。従来のH.323やSIPに対応した会議室端末をクラウド型のWeb会議に参加させるため、両者を仲介するゲートウェイも提供されている[35]。
3地点以上を結ぶ会議では、各地点の音声と映像をどこで合成・配信するかが設計上の要点になる。テレビ会議システムでは、多地点接続装置(MCU)を利用することで数十か所を結ぶ会議が可能である[7]。Web会議サービスの多くは、端末同士を直接つなぐのではなく、サービス提供元のサーバで参加者から送られてくる映像や音声を統合して各端末に配信する方式をとっており、参加者が増えても一定の通話品質を保てるようにしている[5]。音声だけの電話会議では、3台以上の電話を同時に接続する仕組み(会議ブリッジ)が使われる[3]。
音響処理と付加機能
[編集]電話網の回線で生じるエコーを抑えるネットワークエコーキャンセラは、ITU-TのG.168(1997年)で規定されている[48]。会議室のスピーカーから出た相手の声がマイクに回り込む音響エコーは端末側で処理され、会議室向けのスピーカーフォンには適応型エコーキャンセラーやノイズリダクションを搭載した製品が提供されている[49]。資料や画面の共有は、ITU-TのT.120(1996年)がマルチメディア会議のデータプロトコルとして定めたもので[26]、Web会議では映像・音声に統合された標準的な機能になっている[4][5]。2020年代には、会議の録画に加えて音声認識による文字起こしと生成AIによる要約が各サービスに組み込まれた[22][40]。
セキュリティ
[編集]インターネット上の会議では、音声・映像を通信経路上で暗号化して送ることが前提となっている。IETFはWebRTCのセキュリティアーキテクチャをRFC 8827(2021年)として定め、メディアの暗号化にはDTLS-SRTP(鍵交換と暗号化を組み合わせた方式)を用いる[50]。
会議室システムと端末
[編集]会議室に据え置いて使う端末は、専用のテレビ会議端末から、クラウド型サービスに対応した会議室システムへ移行している。Zoom Roomsはソフトウェアを基盤とする会議室システムで、ハードウェアパートナーの機器と組み合わせて提供されている[35]。ロジクールは2019年、タッチパネル・カメラ・スピーカー・マイク・小型PCを組み合わせ、Zoom Rooms・Google Hangouts Meetに認定された会議室向け製品を発売した[51]。テレビ会議端末メーカーのPolycom(ポリコム)とヘッドセットメーカーのPlantronicsを前身とするPolyは、HPの製品ラインになっている[52]。ヤマハは会議用スピーカーフォンや天井設置型マイクなどの遠隔会議向け音響機器を提供している[49]。
サービス基盤
[編集]クラウド型の会議サービスは、事業者自身が借りるデータセンターの区画(コロケーション)とパブリッククラウドを組み合わせて運用されている。Zoomは2019年時点で9か国13か所のコロケーション・データセンターからサービスを提供し、事業の一部の重要な側面のホスティングにAWSなどのパブリッククラウドを利用していた[35]。2020年の急拡大時にはOracle Cloud Infrastructureも基盤に加え、オラクルによれば当初数十万人規模の同時会議参加者を支え、数週間で数百万人規模へ拡張した[38]。Slackは2020年、音声・映像通話の基盤にAWSのAmazon Chime SDKを採用した[53]。
利用
[編集]リモートワークとハイブリッドワーク
[編集]遠隔会議は、在宅勤務やサテライトオフィス勤務などのテレワーク(リモートワーク)において、社内の打ち合わせや顧客との商談を行う手段として使われている。MM総研が2020年5月に発表した調査(企業・団体の役員・社員2119人)では、回答者が挙げたWeb会議システムの導入目的として「テレワーク環境の整備」が最も多かった[12]。総務省の令和7年通信利用動向調査(2025年・テレワークを導入している企業1371社の複数回答)では、導入目的として「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」61.6%、「勤務者のワークライフバランスの向上」53.8%、「業務の効率性(生産性)の向上」45.0%が上位に挙げられ、移動時間の短縮・混雑回避、非常時の事業継続、介護・育児中の社員などへの対応、人材の確保がこれに続いた。導入企業の83.4%が導入目的に効果があったと回答している[11]。
総務省の通信利用動向調査によれば、テレワークを導入している企業の割合は2019年の20.2%から2020年には47.5%に上昇し、2021年51.9%、2022年51.7%、2023年49.9%、2024年47.3%、2025年50.1%と推移した[9][10][11]。国土交通省の「テレワーク人口実態調査」では、テレワークをしたことがある雇用型就業者(雇用型テレワーカー)の割合は2019年度の14.8%から2020年度23.0%、2021年度27.0%へ上昇し、2022年度26.1%、2023年度24.8%、2024年度24.6%、2025年度25.2%と推移した[54][55]。内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(就業者対象)では、テレワーク実施率は全国で2019年12月(2020年5月調査での回顧回答)の10.3%から2020年5月に27.7%、2023年3月に30.0%へ、東京都23区では17.8%から48.4%、51.6%へと上昇した[56]。東京都が都内の従業員30人以上の企業を対象に行う調査では、2020年の緊急調査でテレワーク導入率が3月の24.0%から4月には62.7%へ上昇し、2021年以降の月次のテレワーク実施率調査では2022年1月57.3%、2024年1月41.6%、2026年1月43.9%と推移している[57][58]。総務省の『令和8年版情報通信白書』は、こうした推移を「2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大後、急速に導入が進み、その後横ばいで推移している」とまとめている[9]。
| 調査(実施主体) | 指標 | 2019 | 2020 | 2021 | 2023 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 通信利用動向調査(総務省) | テレワークを導入している企業の割合[10] | 20.2 | 47.5 | 51.9 | 49.9 | 50.1 |
| テレワーク人口実態調査(国土交通省) | 雇用型テレワーカーの割合(年度)[54] | 14.8 | 23.0 | 27.0 | 24.8 | 25.2 |
| 生活意識・行動の変化に関する調査(内閣府) | 就業者のテレワーク実施率(全国)[56] | 10.3 (12月) | 27.7 (5月) | – | 30.0 (3月) | – |
| テレワーク実施率調査(東京都) | 都内企業(従業員30人以上)の実施率(各年1月。2020年は3月の緊急調査による導入率で、翌4月は62.7)[57][58] | – | 24.0 | – | 51.7 | 45.0 |
| 各行は調査ごとに母集団・定義・時点が異なるため、行の間で数値を比較することはできない。 | ||||||
働き方の面では、国土交通省の令和6年度調査が、雇用型テレワーカーの週あたりテレワーク日数が2020・2021年度の2.4日をピークに減少したものの週2日以上の水準を維持しており、「出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークが定着傾向」にあると分析している。同調査では、通勤時間が1時間30分以上の就業者でテレワーカーの割合が50.6%と、通勤時間が長いほど高かった[59]。
国際的には、総務省の『令和5年版情報通信白書』が2023年の調査に基づき、「テレワーク・オンライン会議」を利用したことがある人の割合は米国とドイツで50%強、中国で70%超、日本では30%程度としている[60]。スタンフォード大学のニコラス・ブルーム(Nicholas Bloom)らによる各国調査(Global Survey of Working Arrangements)では、フルタイム被雇用者の週あたり在宅勤務日数は2023年時点で調査対象34か国の平均が0.9日、英語圏1.4日、欧州0.8日、アジア7か国0.7日であり、日本は2022年の調査で1.2日(労働者の希望は1.5日)だった[61][62]。ユーロスタットによれば、EU27か国で「通常自宅で働く」15〜64歳の就業者の割合は2024年に8.9%だった[63]。
政府・調査機関が挙げる効果
[編集]政府や調査機関は、遠隔会議を含むテレワークの効果を次のように整理している。総務省は、社会にとっては労働力不足の解消・地域活性化・環境負荷の軽減・耐災害性の向上・過密交通の緩和、企業にとっては人材確保・離職防止・生産性向上・コスト削減・事業継続、就業者にとってはワークライフバランスの向上・通勤時間の削減・育児や介護、治療と仕事の両立を挙げている[13]。厚生労働省が2021年3月に策定した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」は、労働者側の利点として通勤時間の短縮とそれに伴う心身の負担の軽減、仕事に集中できる環境での業務効率化、時間外労働の削減、育児や介護と仕事の両立を、使用者側の利点として生産性の向上、育児・介護等による離職の防止、遠隔地の人材の確保、オフィスコストの削減を挙げている[14]。同ガイドラインは、フレックスタイム制をテレワークになじみやすい制度とし、裁量労働制などについてはテレワークを認めることで働く場所も労働者の選択に委ねることが考えられるとしている[14]。国土交通省は、テレワークの推進がワークライフバランスの改善、離職の防止、生産性の向上、災害時の事業継続、大都市圏の通勤混雑の緩和、地域活性化などに良い影響をもたらすことが期待されると説明している[64]。
働く人の側の評価も調査されている。日本労働組合総連合会の2020年調査(4月以降にテレワークをした1000人)では、テレワークの利点として「通勤がないため、時間を有効に利用できる」を挙げた人が74.6%で最も多く、81.8%が継続を希望した[65]。内閣府の『令和3年版男女共同参画白書』は、テレワーク経験者が挙げる利点として「通勤が不要になる」82.6%、「休憩時間・隙間時間を有効活用できる」58.3%を示し、テレワークを続けている男性の家事・育児時間が2020年5月に増加してその後も同水準を保ったと記述した[66]。『令和3年度年次経済財政報告』も、パーソル総合研究所の2020年の調査を引いて、テレワークの利点として「通勤や移動にかかる時間の削減」と「通勤や移動のストレスがない」ことを挙げた人が各7割に達したとし、「テレワークの実施や通勤時間の短縮は、結果として在宅時間の増加をもたらしている」と述べている[67]。
2017年の働き方改革実行計画は、テレワークを「時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができるため、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる」と位置づけ、国民運動として推進する方針を示した[68]。2025年4月から段階的に施行された改正育児・介護休業法は、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう措置を講じることを事業主の努力義務とし、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者については月10日以上のテレワークを含む5つの措置から2つ以上を講じることを義務づけた[69]。
通勤混雑・事業継続・地域・環境
[編集]総務省などの府省は、テレワークを都市の通勤混雑を緩和する手段としても位置づけ、東京都・日本経済団体連合会・日本テレワーク協会などと2017年から「テレワーク・デイ」(2018年以降は「テレワーク・デイズ」)を実施した。参加は2017年に約950団体・6.3万人、2018年に1682団体・約30.2万人、2019年に2887団体・約68万人が参加した[70]。総務省が携帯電話の位置情報から推計した2019年の効果は、集中実施期間中に東京23区への通勤者が1日あたり約26.8万人(9.2%)減少したというものだった[71]。環境省の『平成30年版環境白書』は、2017年のテレワーク・デイに豊洲駅の朝夕の利用者数が最大約2割減少したこと、参加団体のオフィス消費電力が平均7.1%減少したことを紹介し、総務省の試算としてテレワークによりオフィスと家庭を合わせた電力消費を1人当たり14%削減できるとした[72]。国土交通省の2022年版(令和4年版)首都圏白書は、首都圏の自動車通勤者がテレワークをした場合の二酸化炭素削減量を1日あたり最大約2337トン(削減率9.7%)と試算した[73]。
災害への備えとしても活用される。内閣府(防災担当)の帰宅困難者対策ガイドラインは、企業に対し通勤自粛などの行動ルールとテレワークの推進方針を策定して事業継続計画(BCP)に位置づけることを求めている[74]。国土交通省鉄道局は、台風による鉄道の計画運休に備えて時差通勤やテレワークで輸送需要を抑える取り組みを重要とし、2020年に企業の事例を公表した[75]。2020年4月7日の緊急事態宣言にあたり、内閣総理大臣は記者会見で「オフィスでの仕事は原則自宅で行うようにしていただきたい」と述べ、出勤者を最低7割減らすよう求めた[76]。
地域政策では、2021年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2021」が、「地方で暮らしてもテレワークで都会と同じ仕事ができるとの認識が拡大」したとして、都市部の企業に勤めたまま地方に移住する「地方創生テレワーク」(「転職なき移住」)を推進し、サテライトオフィスの整備などを交付金で支援する方針を示した[77]。
生産性に関する研究
[編集]在宅勤務の生産性を測った研究として、スタンフォード大学のブルームらが中国の旅行会社CTrip(現Trip.com)のコールセンター従業員を対象に行った9か月間の実験がある。在宅勤務を志望した従業員を在宅勤務群とオフィス勤務群に無作為に割り当てたところ、在宅勤務群の業績は13%高く、その内訳は休憩や病欠の減少による就業時間の増加が約9%、静かな作業環境による1分あたりの通話件数の増加が4%であった。在宅勤務者は仕事の満足度の向上と離職の減少も報告した[78]。ブルームらはさらに、同社の従業員1612人を対象に2021年から2022年にかけて6か月間のランダム化比較試験を行い、週2日の在宅勤務を認めるハイブリッド勤務が職務満足度を高め、離職率を約3分の1減らした一方、2年間の業績評価・昇進・書いたコードの量に差は生じなかったと2024年に『Nature』誌で報告した。管理職の生産性への予想は実験前のマイナス2.6%から実験後にはプラス1.0%に転じた[79]。日本でも、内閣府の『令和2年度年次経済財政報告』が2016〜2018年度にテレワークを導入した企業の全要素生産性への平均処置効果(導入企業と非導入企業の差から推定した効果)を有意にプラスと分析し[80]、慶應義塾大学の大久保敏弘とNIRA総合研究開発機構の第10回就業者実態調査(2023年・回収1万726件)は「コロナ禍初期よりも、テレワークにより仕事を効率的に進める人の割合が高まっている」とした[81]。
企業の事例
[編集]各社の発表によれば、2020年以降にリモートワークを標準とする勤務制度を導入した企業の例として次のようなものがある。富士通は2020年7月、新しい働き方「Work Life Shift」を発表した。国内グループ従業員約8万人の勤務形態をテレワーク勤務を基本とし、コアタイムのないフレックス勤務を全従業員に広げ、在宅勤務環境の整備費用を補助し、通勤定期券代の支給を廃止するとともに、オフィスの規模を2022年度末までに「50%程度に最適化」する方針を示した[82]。NTTは2022年7月から、勤務場所を社員の自宅とし会社への通勤圏に居住する必要をなくす「リモートワークを基本とする新たな働き方」を国内主要グループ会社に導入した[83]。メルカリは2021年9月、出社もフルリモートも社員が選べ、国内であれば住む場所も選べる「YOUR CHOICE」を導入した。同社は2020年2月から原則在宅勤務とし、その試行を通じて通勤時間の短縮や業務効率の向上といった利点が見られたとしている[84]。米国ではDropboxが2020年10月、リモートを標準としオフィスを共同作業の場に位置づける「Virtual First」への移行を公表し[85]、GitLabは自社を「世界最大級の全社リモート企業の一つ」と位置づけ、創業以来オフィスを持たず、65か国以上の従業員が全員リモートで働く運営を自社のハンドブックで説明している[86]。
教育
[編集]教育分野では、遠隔会議の仕組みが遠隔授業や遠隔教育に用いられる。総務省の『令和2年版情報通信白書』によれば、2019年3月時点で初等中等教育において遠隔教育を実施している自治体は一部の学校での実施を含めて22%であった[87]。2020年の感染拡大期には、5月12日時点で回答した全国の大学・高等専門学校の86.9%が授業開始を延期し、例年どおりに開始した学校もほとんどが遠隔授業を実施または検討していた。文部科学省は遠隔講義の経験がない大学が約220校あるとして、学生向けに約10万人分のモバイル通信機器を無償で貸し出す支援を行った[87]。文部科学省の調査では、遠隔授業を活用した大学の割合は2019年度の約37%から2020年度には約50%に増加した[88]。遠隔授業の法令上の根拠と単位数の上限については後述する。
医療
[編集]医療では、患者と医師をビデオ通話などで結ぶオンライン診療が行われている。総務省の『令和2年版情報通信白書』は、2020年の感染拡大に際して厚生労働省が電話やオンラインによる初診を特例的に認めたことを、医療分野のICT活用の例として取り上げている[89]。診療報酬上の評価は2018年度改定で始まり、2022年度改定で初診から恒常的に評価されるようになった(後述)。
行政・司法・外交
[編集]日本の裁判所では、2020年2月3日に知的財産高等裁判所と8か所の地方裁判所本庁で民事訴訟の争点整理にウェブ会議を用いる運用が始まり、2022年11月7日には全ての高等裁判所・地方裁判所に広がった[90]。その後の民事訴訟法改正でウェブ会議による手続が法律上も整備された(後述)。
地方議会では、委員会のオンライン開催を差し支えないとする総務省の見解(後述)を受け、条例などを改正した団体が2022年1月時点の135団体(全団体の7.6%)から2024年1月時点には383団体(21.4%)に増え、実際に議員が委員会にオンラインで出席した団体も35団体から129団体に増えた[91]。
外交の場でも用いられる。2020年3月16日にはG7の首脳テレビ会議が、同月26日にはG20の首脳テレビ会議が開かれ、外務省によればいずれも首脳間でテレビ会議が行われたのは初めてであった[17][92]。同年11月のG20リヤド・サミットもテレビ会議形式で開催され、菅義偉内閣総理大臣が出席してG20リヤド首脳宣言が発出された[18]。合衆国最高裁判所は2020年4月、延期していた事件の口頭弁論を同年5月に電話会議で行い、裁判官と代理人はすべて遠隔から参加し、音声を報道機関に生配信すると発表した[93]。国際連合の広報は2020年7月、同年9月の国連総会一般討論が初めて「バーチャル」形式となり、各国首脳がニューヨークを訪れずに参加すると報じた[19]。世界保健機関の第73回世界保健総会は、2020年5月18日と19日に議題を絞った縮小開催で、続いて同年11月9日から14日の再開会期も、いずれもオンラインで開かれた[94]。国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループは2020年3月3日、同年4月の春季会合をバーチャル形式に変更する共同計画に合意したと発表した[95]。
各国の議会も遠隔会議を取り入れた。イギリス下院は2020年4月21日、議員がビデオリンクで質問や大臣声明に参加できるようにする動議を可決し、「ハイブリッド議事」として各開議の最初の2時間に最大120人が遠隔参加できるようにした。下院運営委員会(House of Commons Commission)は同月16日、議員がZoomを通じて大臣に質問できる方式を承認していた[96][97]。欧州議会では2020年3月26日の本会議で代替の投票手続が初めて用いられ、議員が加盟国内の連絡事務所などから遠隔で本会議や委員会に参加できる措置が取られた[98]。アメリカ合衆国下院は2020年5月15日に決議H.Res.965を可決し、公衆衛生上の緊急事態の期間中、代理人を通じた遠隔投票と委員会の遠隔審議を認めた[99]。日本の国会における検討は後述する。
企業統治・採用
[編集]会社の意思決定の場でも遠隔会議が使われる。取締役会をテレビ会議や電話会議で開くことは法務省の見解と登記実務で認められており、株主総会についても会場と遠隔参加を組み合わせるハイブリッド型や、場所の定めのないバーチャルオンリー型が制度化されている(後述)[15]。採用活動では、就職みらい研究所の『就職白書2021』が、2021年卒の採用でWeb面接の実施有無によって採用の充足度に差があり、Web面接での選考が特に進んでいる関東や従業員5000人以上の企業で充足度が高かったとしている[100]。
日本における制度整備
[編集]遠隔会議がリモートワークの手段として広がる過程では、会議に「出席」したと法律上認められるかどうかが論点となり、企業統治・司法・議会・医療・教育のそれぞれで制度が整えられてきた。
| 年 | 分野 | 内容 |
|---|---|---|
| 1996年 | 会社法(取締役会) | 法務省民事局参事官室が、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みであればテレビ会議システムによる取締役会も認められるとの見解を公表[101]。 |
| 2002年 | 会社法(取締役会) | 法務省民事局商事課長回答(民商3044号)により、電話会議方式で開催された取締役会の議事録を添付した登記申請が受理されることが明確化[101]。 |
| 2015年4月 | 教育 | 学校教育法施行規則の改正で、全日制・定時制の高等学校でも同時双方向のメディアを利用した授業を正規の授業として実施可能に(36単位以下)[102]。 |
| 2018年4月 | 医療 | 診療報酬改定で、通信技術を用いた診察を評価する「オンライン診療料」を新設[103]。 |
| 2019年8月 | 教育 | 中学校等で受信側の教員が相当の免許状を持たなくても遠隔授業を行える「遠隔教育特例制度」を開始[104]。 |
| 2020年2月 | 会社法(株主総会) | 経済産業省が「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公表[105]。 |
| 2020年4月10日 | 医療 | 厚生労働省が事務連絡で、感染症が収束するまでの時限的・特例的な取扱いとして初診からの電話・オンライン診療を認める[106]。 |
| 2020年4月30日 | 地方議会 | 総務省が、条例や会議規則を改正したうえで、映像と音声の送受信により相互に認識しながら通話できる方法で委員会を開催することは差し支えないとの見解を通知[91]。 |
| 2021年6月 | 会社法(株主総会) | 産業競争力強化法の改正により、場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)が可能に[15][107]。 |
| 2022年3月 | 国会 | 衆議院憲法審査会が、緊急事態が発生した場合等には憲法56条1項の「出席」に例外的にオンラインによる出席も含まれると解釈できるとの意見の大勢を取りまとめ、議長に報告[108]。 |
| 2022年4月 | 医療 | 診療報酬改定で、情報通信機器を用いた場合の初診料と再診の評価を新設し、オンライン診療料を廃止[109]。 |
| 2022年5月 | 民事訴訟 | 民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立。ウェブ会議による争点整理(2023年3月施行)と口頭弁論への参加(2024年3月施行)が可能に[16]。 |
| 2023年2月 | 地方議会 | 総務省が、災害・育児・介護などの事由による委員会へのオンライン出席と、本会議における一般質問のオンライン実施についての見解を通知[110]。 |
会社法上の会議
[編集]会社法369条1項は取締役会の決議要件として取締役の過半数の出席を定めるが、出席の方法は規定していない。会社法施行規則101条3項1号は、取締役会議事録の記載事項として、開催場所に存しない取締役などが出席した場合の「当該出席の方法」を挙げており、開催場所にいない取締役の出席が前提とされている[111]。テレビ会議による取締役会は、1996年4月19日付けの法務省民事局参事官室の見解により、「各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」であれば認められることが示され、電話会議による取締役会についても2002年12月18日付けの民事局商事課長回答(民商3044号)で、その議事録を添付した登記申請が受理されることが明確になった[101]。
株主総会については、経済産業省が2020年2月26日に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」を公表した。ハイブリッド型バーチャル株主総会は、物理的な会場で株主総会を開催しつつ、会場にいない株主がインターネット等で遠隔地から参加または出席できる形態で、同ガイドは会社法上の出席にあたるかどうかにより「参加型」と「出席型」に分類し、株主総会の開催方法に追加的な選択肢を提供するものと位置づけた[105]。さらに産業競争力強化法の改正により、会社法の特例として場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)の制度が創設され、上場会社は経済産業大臣および法務大臣の確認を受けてこれを開催できるようになった[15]。法務省は施行に合わせて2021年6月16日付けの通知(民商第103号)で商業登記事務の取扱いを定めた[107]。
民事訴訟
[編集]民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)は2022年5月18日に成立し、同月25日に公布された。この改正により、当事者双方が裁判所に出頭することなくウェブ会議や電話会議で弁論準備手続(争点整理)や和解の期日に参加できる仕組みが2023年3月1日に施行され、ウェブ会議で口頭弁論の期日に参加できる仕組みが2024年3月1日に施行された。人事訴訟や家事調停でウェブ会議により離婚などの和解や調停を成立させることができる仕組みは2025年3月1日に施行され、訴訟記録の電子化などを含む全面施行は2026年5月21日である[16]。
地方議会
[編集]総務省自治行政局行政課長は2020年4月30日付けの通知で、各団体が条例や会議規則を改正したうえで、感染症のまん延防止の観点から委員会の開催場所への参集が困難と判断される場合に、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話できる方法で委員会を開催することは差し支えないとの見解を示した[91]。その後の2023年2月7日付けの通知では、本会議の表決と、その前提となる質疑や討論は議員が議場で行わなければならないとする一方、委員会については災害の発生や育児・介護などの事由によりオンラインで出席することを各団体の判断で可能とすることは差し支えないとの見解を示した[110]。全国都道府県議会議長会は2023年10月に標準委員会条例と標準会議規則を改正してオンラインによる委員会出席の特例を置き、全国市議会議長会と全国町村議会議長会も2024年2月に同様の改正を行った[91]。
国会
[編集]国会については、日本国憲法第56条1項が議事を開き議決するための「出席」を定めていることから、オンラインによる出席が可能かが検討された。衆議院の憲法審査会は2022年2月から4回にわたり討議と参考人質疑を行い、同年3月3日、同条の「出席」は原則として物理的な出席と解するべきであるが、国権の最高機関としての機能を維持するため、緊急事態が発生した場合等にどうしても本会議の開催が必要と認められるときは例外的にオンラインによる出席も含まれると解釈することができる、という意見の大勢を取りまとめ、議長に報告することを協議決定した[112][108][113]。
医療・教育
[編集]医療では、2018年度の診療報酬改定で、リアルタイムの通信技術を用いた診察を対面診療の原則の上で一定の要件のもとに評価する「オンライン診療料」(70点)が新設された[103]。2020年4月10日、厚生労働省は事務連絡で、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの時限的・特例的な取扱いとして、医師が医学的に可能と判断した範囲で初診から電話や情報通信機器を用いた診療を行って差し支えないとした[106]。2022年度の診療報酬改定では、情報通信機器を用いた場合の初診料(251点)と再診の評価が新設され、オンライン診療料は廃止された。厚生労働省の資料によれば、時限的・特例的な対応での初診料は214点で、対面診療の初診料288点と比べて約74%の水準であり、新設にあたってはその中間程度の水準とすることが適当とされた[109]。
教育では、大学設置基準が「多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる」授業を認め、この方法で修得できる単位数を卒業要件のうち60単位までと定めている[114]。高等学校については、2015年4月1日に公布・施行された学校教育法施行規則の改正により、全日制・定時制の課程でも同時かつ双方向的に行われる「メディアを利用して行う授業」を正規の授業として実施できるようになり、修得できる単位数は卒業に必要な74単位のうち36単位以下とされた[102]。この規定は学校教育法施行規則88条の3に置かれている[115]。中学校等では2019年8月から、一定の基準を満たすと文部科学大臣が認める場合に受信側の教員が相当の免許状を持たなくても遠隔授業を行える「遠隔教育特例制度」が始まり、2024年4月からは大臣の指定を不要とする改正が行われた[104]。文部科学省は、1人1台の端末と高速大容量の通信ネットワークなどの学校ICT環境を整備するGIGAスクール構想を進めている[116]。
市場と主要サービス
[編集]世界の主要サービス
[編集]| サービス | 提供者 | 提供開始 | 備考 |
|---|---|---|---|
| WebEx(Cisco Webex) | WebEx → シスコシステムズ | 1990年代 | 1995年創業のWebExが提供。2007年にシスコが約32億ドルで買収[29][6]。 |
| FaceTime | Apple | 2010年 | iPhoneなどApple製品間のビデオ通話[34]。 |
| Zoom Meetings | Zoom Video Communications | 2013年 | 2011年設立。会議室システムZoom Roomsも提供[35]。 |
| Amazon Chime | Amazon Web Services | 2017年 | 会議・チャット・画面共有を統合[36]。 |
| Google Meet | 2017年(Hangouts Meet) | 2020年に個人にも無料開放[37][39]。 | |
| Slack ハドルミーティング | Slack | 2021年 | 通話に自由に出入りできる音声中心の機能[117]。 |
| Jitsi | オープンソース | – | 自前のサーバーで運用したり自社アプリに組み込んだりできる[118]。 |
| BigBlueButton | オープンソース | – | 遠隔学習向けに開発された仮想教室ソフトウェア[119]。 |
日本の事業者
[編集]日本では、1984年の日本電信電話公社によるテレビ会議サービスの開始以降、通信機器メーカー各社がテレビ会議システムを提供してきた[7]。Web会議サービスを提供する国内事業者の例としては、1998年創業のブイキューブがテレビ会議・Web会議のツールとサービスを事業とし[120]、1997年に設立されたエイネットは2002年にWeb会議システム「FreshVoice」を発売し、2020年にはWebRTCを用いた版を出した[121]。2020年2月に石川県七尾市で設立されたoViceは、参加者がアバターで行き交う仮想空間型のプラットフォームを提供している[122]。
市場統計
[編集]国内の利用状況については複数の調査がある。MM総研が2020年5月に発表した企業・団体の役員・社員2119人への調査では、Web会議システムの利用率は2019年12月末の44%から2020年4月末には63%に上昇し、利用中または検討中のシステムはZoomが35%で最も多かった[12]。同社が2021年10月に発表した国内企業2604社の情報システム担当者への調査では、Web会議システムを導入している企業は51.0%で、調査対象の7種類のコラボレーションツールの中で最も導入率が高く、有料版を契約する企業が最も利用するシステムはZoomが60.1%で最も多く、Google Meetが7.9%であった。1社あたりの導入システム数は有料版だけでも平均2.2だった[41]。
市場規模については、IDC Japanが2021年5月に発表した予測で、2020年の国内ユニファイドコミュニケーション(電話・会議・チャットなどの通信手段を統合する製品)とコラボレーティブワークスペース(Web会議やコンテンツ共有などの共同作業ツール)の市場は売上額4084億7800万円(前年比8.7%増)となり、後者が成長を牽引したとされた。同社は2025年に4968億1500万円になると予測した[123]。アイ・ティ・アール(ITR)が2021年7月に発表した国内Web会議市場の調査では、2020年度の売上金額は257億円で前年度比130.7%増となり、2025年度までの年平均成長率は13.2%と予測された。同社は、ウェビナーやオンラインイベントなど不特定多数への情報発信を目的とした利用が増えていることと、ハードウェアと一体化した据え置き型サービスの需要拡大を指摘している[124]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- 1 2 “遠隔会議(エンカクカイギ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 小学館『デジタル大辞泉』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。 および “テレビ会議(テレビカイギ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 小学館『デジタル大辞泉』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 “Teleconference Definition & Meaning” (英語). Merriam-Webster. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 “電話会議(デンワカイギ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 小学館『デジタル大辞泉』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 “ウェブ会議(ウェブカイギ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 小学館『デジタル大辞泉』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。 および “オンライン会議(オンラインカイギ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 小学館『デジタル大辞泉』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 “テレビ会議(ビデオ会議)とは”. IT用語辞典 e-Words. インセプト. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “Videophone - Benefits, Uses & History” (英語). Encyclopaedia Britannica. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 “テレビ会議システム(テレビかいぎシステム)とは? 意味や使い方”. コトバンク. ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』・朝日新聞社. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 “Zoom sees sales boom amid pandemic”. BBC News (英語). 2020年6月2日. 2026年9月7日閲覧.
- 1 2 3 4 “令和8年版 情報通信白書 第Ⅱ部 第11節 (2) テレワーク・オンライン会議”. 総務省 (2026年). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 “図表Ⅱ-1-11-22 テレワーク導入率の推移(データ)” (CSV). 総務省(令和8年版情報通信白書) (2026年). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 “令和7年通信利用動向調査の結果(概要)” (PDF). 総務省 (2026年5月29日). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 “Web会議システムの利用シェアはトップの「Zoom」が35%” (Press release). MM総研. 2020年5月22日. 2026年9月7日閲覧.
- 1 2 “テレワークの推進”. 総務省. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 “テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン” (PDF). 厚生労働省 (2021年3月). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 4 “場所の定めのない株主総会(バーチャルオンリー株主総会)に関する制度”. 経済産業省. 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 3 “民事訴訟法等の一部を改正する法律について”. 法務省 民事局 (2026年3月25日). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 “G7首脳テレビ会議”. 外務省 (2020年3月16日). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 “G20リヤド・サミット”. 外務省 (2020年11月23日). 2026年9月7日閲覧。
- 1 2 “COVID-19: World leaders to stay at home, in first 'virtual' UN General Assembly”. UN News (英語). 2020年7月23日. 2026年9月7日閲覧.
- 1 2 3 “Introducing Horizon Workrooms: Remote Collaboration Reimagined” (Press release) (英語). Facebook(現Meta). 2021年8月19日. 2026年9月7日閲覧.
- 1 2 3 “Introducing Apple Vision Pro: Apple's first spatial computer” (Press release) (英語). Apple. 2023年6月5日. 2026年9月7日閲覧.
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- ↑ “AT&T Picturephone Helped Usher in the Video Conference Era” (英語). BizTech Magazine. CDW (2017年2月1日). 2026年9月7日閲覧。
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