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衝突電離

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
衝突電離の概念図

衝突電離(しょうとつでんり、英語: impact ionization)とは、半導体絶縁体に高電界を印加した場合に、電子ホールのキャリアが材質を構成する原子もしくは分子に衝突しイオン化させると同時に、複数のキャリアを作り出す現象。

衝突電離が生じるには十分な運動エネルギーが必要であるため、高い電界が必要である。

この衝突電離が生じて増加したキャリアが更に衝突電離を引き起こすと、正のフィードバックが働き電子雪崩 (electron avalanche) が発生する。高抵抗の材質で電子雪崩が発生し、低抵抗のフィラメント状の領域ができることを電流フィラメントと呼ぶ。

半導体における衝突電離

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通常、半導体中の電子は、電圧の印加により低電圧側から高電圧側に移動する。電界が小さい場合は、十分な速度まで加速される前に、半導体を構成する分子や原子に衝突するため、衝突と衝突の間の緩和時間も長く、正のフィードバックが生じにくい。

逆バイアスされた半導体は極めて薄いpn接合部を中心に空乏層が形成され絶縁体のように振る舞う。この状態で逆バイアス電圧を上げると空乏層が広がるとともに電界強度も上がる。このため何らかの要因で生じた自由電子が強電界のもとで加速され、電子の運動エネルギーが高くなると緩和時間も短くなるため衝突電離は生じやすくなる(→平均自由行程も参照)。この衝突電離で生じた電子は電界で加速され、運動エネルギーが高い状態になる、これをホット・エレクトロン (hot electron) と言う。

半導体の中で衝突電離が生じると、電荷を運ぶキャリアの量が増大するため電流は急激に増加する。これをアバランシェ降伏という。これを利用した素子が、光子の衝突で発生する電子と正孔の対を電子雪崩により増倍させるアバランシェフォトダイオードや、設計された電圧でアバランシェ降伏を起こさせる用途のアバランシェダイオードである。

その一方で、特に GaAsMESFETHEMT 等の電界効果トランジスタでは、衝突電離で生じたホールの流出先が存在しないため、単純な電流増幅だけでなく、蓄積された正孔によるポテンシャルの変動による不安定現象(キンク現象と呼ばれる)が発生する。衝突電離は、半導体のキャリア生成と再結合の過程の一つであり、高電圧が掛かった状態における半導体物理を理解するには必須な項目である。

類似した現象

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衝突電離の名称では呼ぶことはないが、放電も電離(イオン化)が伝導に関連しており、現象としては良く似たものである。

注釈

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関連項目

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