血吸村へようこそ

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血吸村へようこそ
小説
著者 阿智太郎
イラスト あらきかなお
出版社 アスキー・メディアワークス
レーベル 電撃文庫
刊行期間 2009年3月 - 2011年6月
巻数 全6巻
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル

血吸村へようこそ』(ちすいむらへようこそ)は、阿智太郎による日本ライトノベルイラストあらきかなおが担当している。電撃文庫アスキー・メディアワークス)より刊行されている。

元々は、電撃文庫MAGAZINE用に書かれた短編であり、これを改稿したものが本作である。

あらすじ[編集]

長野県南部の山奥にある治水村。主人公高村直樹は、父親の勝手な理由でこの村に引っ越してくることになった。可愛い女の子達に囲まれながら楽しい毎日を送っていたのだが、なんとこの村は村人全員が吸血鬼というとんでもない村だったのだ。女の子達に守られながら、人間であることを隠して暮らすことになった直樹の運命は?

登場人物[編集]

主要人物[編集]

高村直樹(たかむら なおき)
治水高校2年。本作の主人公。
父である直太郎の身勝手な理由で、東京から引っ越してきた。本来なら「夕月祭り」で吸血鬼にされるはずだったが、「直樹が吸血鬼になりたいと思うまで血を吸わない」という条件で、季代実達に守られながら、人間のままで過ごすことになった。
周りの女の子の押しに慌てふためいたり、鼻血を吹き出したりとヘタレな面が多いが、優しさとここぞという時の行動力も持っていて、そうした面が女子達から好意を抱かれる要因となっている。だが、本人はそれに全く気づいていない。
川澄季代実(かわすみ きよみ)
治水高校2年。演劇部の部長をしている。
直樹が村にやってくる1年前の「夕月祭り」で吸血鬼になった。村に来る前は孤児として施設に入っていた。
人間であることを隠して暮らすことになった直樹の手助けを良くしている。クールな印象であまり感情を表に出すことはないが、茶目っ気のある部分もあり、冗談を交えて直樹のことをからかうこともしばしば。
村に来た当時は男子に告白されまくったが、片っ端から冷たく振ったので、今では落ち着いているが人気は高い。
利根崎智衣(とねざき ともい)
治水高校2年。陸上部所属。
ボーイッシュで気さくな性格の持ち主で、直樹とは互いに下の名前で呼び合う仲。人間だった頃の後輩の活躍を知り、陸上を続ける意義を見失い、部を辞めようとしたことがあったが、直樹の尽力と励ましで続けることになった。また、この出来事を切っ掛けに、直樹に惹かれるようになる。
陸上部の後輩たちにお姉さまと呼ばれ慕われている。
鳩羽エリ子(はとば えりこ)
治水高校1年。料理研究部所属で、その腕前はかなりのもの。
エリ子という名前は村民になった時につけられた名前であり、本名は星野あかり。人間だった頃は、東京の有名高校に通っていたが、叔父の差し金で誘拐され、その道中で事故に遭い、吸血鬼にされることで一命を取り留めた。
失っていた記憶を取り戻す際に起きた事件を切っ掛けに、直樹に惹かれるようになる。
神楽紅華(かぐら べにか)
治水高校3年で生徒会長。
60年前に村が吸血鬼の村となった時からの村民であり、そのためか喋り方が少し変わっている。家はこの地域に伝わる旧家で、その力は村長以上とも言われている(実際、彼女自身が先陣を切って行動したりする場面は多い)。
5巻で直樹に愛の告白をした。
沢田綾菜(さわだ あやな)
治水高校3年で生徒会書記。
おっとりとした性格だが、怒ると恐い。巨乳の持ち主で、男子生徒の注目の的となっている。人間だった頃は大のケーキ好きであった。

村の住民[編集]

高村直太郎(たかむら なおたろう)
直樹の父親。家が滅茶苦茶にされていても全く気にしない能天気な性格。
SF小説作家だが全く売れていない上に、締め切りを守らず出版社の倉庫に缶詰にされることが多い。直樹にはカレー屋か秘境の部族専門の通訳になればいいと思われている。
村長
本名不明。
山田(やまだ)
治水牧場の牧場主。直樹にプロレスラーのようだと思われるほど大柄な男性。
神楽剛三(かぐら ごうぞう)
紅華の父親。60年前に村が吸血鬼の村となった時からの村民。この地域に伝わる旧家の人間で、その力は村長以上。智衣曰く「影のボス」。

治水高校関係[編集]

熊谷(くまがい)
直樹のクラスメイト。頭の中が中二で止まっていると言われるほどの馬鹿。学校の教室内で堂々と雑誌のグラビアアイドルに興奮する人物。
季代実に振られた理由は「生理的に受け付けない」から。
平山里佳(ひらやま りか)
治水高校の英語教師。60年前に村が吸血鬼の村となった時からの村民。高校生のような可愛らしい外見をしており、男子生徒からは平山ちゃんと呼ばれている。

その他[編集]

マロ
高村家で飼っている雑種の犬。平安時代の公家のような眉毛模様が特徴。夕月祭りの二日前に他の犬に噛まれ、吸血犬になった。
エリオット神父
六十年前に村を訪れた西洋人の神父。実は吸血鬼で寝ぼけて一人の女性に噛み付いたことが今の治水村の現状を作り出した張本人。
さすがに反省したらしく、村人に吸血鬼としての生き方や注意点を書いたノートを渡し、雲と牛に呪いを掛けて、村人を人間に戻す方法を探すために旅立っていった。

用語[編集]

治水村
長野県の南部に存在する闇に囲まれた村。実は村人全員が吸血鬼であり、本来の名は血吸村
六十年前に訪れたエリオット神父が原因で村人全員が吸血鬼と化し、神父が人間に戻る方法を見つけて戻ってくるのを心待ちにしている。
いつか人間に戻る日のために出来るだけ人間に近い生活をしているが、吸血鬼は変化しないため床屋が存在しない。また、血液か呪いがかかった牛乳以外は栄養にならないので、食料品店では普通の食料が嗜好品代わりとして少しだけ売られている。
吸血鬼が日光を浴びれないために昼間は呪いで作られた雲が村を覆っており、晴れることは無い。
吸血鬼
血を吸う生物。人間が吸血鬼となった場合は、赤い目と牙、長い爪を持つ。既存の生物を遥かに凌駕する力を持ち、どんな傷を負っても直ぐに再生する。
紫外線に弱く、日光を浴びると燃え上がり、灰になって死ぬ。
明らかに普通の生物とは異なっており、紅華曰く「呪いのようなもの」。
吸血鬼になった時から、肉体や精神は変化せず、髪の毛などは切っても何時の間にか戻っており、成長するのは吸血鬼としての力ぐらい。その為、外見と年齢が一致せず、長く生きている吸血鬼ほど『変化』を求めている。
人間以外でも吸血鬼になることは可能で、作中では犬や牛などが吸血鬼となっている。その場合、基本的に赤い目を持ち、手足や口のある場合は牙や爪を持つ。
夕月祭り
一年に一度開かれる祭り。実は新しく村に招いた者を吸血鬼にするための祭りで、本来の名は吸血祭り。普段人間に近い生活を送っている村人のガス抜きを兼ねた一面も持つ。
ブラッディーミルク
一日数本しか生産されるかされないかという程、貴重な人間の血に近いほんのり桜色の牛乳。
治水牧場
村の吸血鬼にとって重要な牛乳を生産する牧場。全部で五十頭の牛がいる。
神父の呪いによって人間の血の代用品である乳をだすようになっている。
この牛も吸血鬼であり、昼間は普通の牛であるが、夜は本性を表し、赤い目と牙、蝙蝠のような翼と爪を持ち、天井にぶら下がって寝る。当然、人間の匂いを嗅げば血を吸おうと飛びながら襲い掛かってくる。このことはあまり知られておらず、村の初期メンバーである紅華ですら知らなかった。

既刊一覧[編集]

タイトル 初版発行日 ISBN
1 血吸村へようこそ 2009年3月10日 ISBN 978-4048676038
2 血吸村へようこそ2 2009年7月10日 ISBN 978-4048679039
3 血吸村へようこそ3 2009年11月10日 ISBN 978-4048681421
4 血吸村へようこそ4 2010年4月10日 ISBN 978-4048684613
5 血吸村へようこそ5 2010年9月10日 ISBN 978-4048688352
6 血吸村へようこそ6 2011年6月10日 ISBN 978-4048705516