精嚢腺

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精嚢腺(せいのうせん、seminal vesicle)とは副生殖腺の1つで、尿道起始部に一対存在し、精管膨大部膀胱頸の背面に位置する。前立腺がその背位にある。精嚢腺を構成する上皮偽重層上皮に分類される。
多くの哺乳類において精液の約8割は精嚢腺からの分泌物で構成される。精嚢腺からの分泌物アルカリ性ゼラチン様の液体であることが多く、精液の凝固化をもたらす。ヒトの場合、精嚢腺由来のSemenogelinと前立腺由来のZn2+射精混合することによって精液が凝固する。この凝固した精液は、前立腺由来のPSAがSemenogelinを分解することで液化し、それと同時に精子は運動を開始する。[1] Semenogelinは非常に進化速度の早いタンパク質であり、霊長類マウスラットなどの動物でのみ相同タンパク質が見られるが、その他の動物では見つかっていない。マウスにおいて、semenogelinと相同なタンパク質はseminal vesicle secretion 2 (SVS2)と考えられ、それぞれ精子の受精能を抑制する。[2] また精嚢腺分泌物は果糖プロスタグランジンに富み、果糖精子のエネルギー源、プロスタグランジンは子宮収縮を促す。イヌネコでは精嚢腺は存在しない。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Robert M, Gagnon C. (1999) "Semenogelin I: a coagulum forming, multifunctional seminal vesicle protein." Cell Mol Life Sci.
  2. ^ Kawano N, Yoshida M. (2007) "Semen-coagulating protein, SVS2, in mouse seminal plasma controls sperm fertility." Biol Reprod.

参考文献[編集]

  • 山内亮監修 『最新家畜臨床繁殖学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4254460201
  • 日本獣医解剖学会編集 『獣医組織学 改訂第二版』 学窓社 2003年 ISBN 4873621135