「齧歯目」の版間の差分

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{{改名提案|齧歯目|date=2021年7月}}
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{{生物分類表
| 名称 = ネズミ目(齧歯目)<br/>Rodentia
|名称 = 齧歯目
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|目 = '''齧歯目''' Rodentia
| 省略 = 哺乳綱
|学名 = Rodentia Bowdich, 1821
| 上目 = [[真主齧上目]] {{sname||Euarchontoglires}}
|和名 = 齧歯目<ref name="kawada_et_al">[[川田伸一郎]]他 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.58.S1 世界哺乳類標準和名目録]」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。</ref>
| 大目 = [[グリレス大目]] {{sname||Glires}}
| 目 = '''ネズミ目(齧歯目)''' {{sname||Rodentia}}
| 学名 = Rodentia {{AUY|Bowdich|1821}}
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*[[ヤマアラシ亜目]] {{sname||Hystricomorpha}}
*[[ネズミ亜目]] {{sname||Myomorpha}}
*[[リス亜目]] {{sname||Sciuromorpha}}
}}
}}

'''ネズミ目''' (ネズミもく、{{sname|Rodentia}}) は[[脊椎動物亜門]] [[哺乳綱]]の目の1つ。'''齧歯目'''(げっしもく)、'''齧歯類'''(げっしるい)ともいう。[[リス]]、[[ネズミ]]、[[ヤマアラシ]]などが含まれる。現在の哺乳類で最も繁栄しているグループであり、現生哺乳類全種(4300-4600種)の約半数に当たる2000-3000種を占める。生息域は、[[南極大陸]]を除く全[[大陸]]、およびほとんどすべての島。さまざまな環境に適応した多様な種が存在する。
'''齧歯目''' (げっしもく、Rodentia) は、哺乳綱に分類される目。

== 分類 ==
以下の和名は川田らに従う<ref name="kawada_et_al" />。
* [[ウロコオリス形亜目]] [[w:Anomaluromorpha|Anomaluromorpha]]
* [[ビーバー形亜目]] [[w:Castorimorpha|Castorimorpha]]
* [[ヤマアラシ形亜目]] [[w:Hystricomorpha|Hystricomorpha]]
* [[ネズミ形亜目]] [[w:Myomorpha|Myomorpha]]
* [[リス形亜目]] [[w:Sciuromorpha|Sciuromorpha]]


== 特徴 ==
== 特徴 ==
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===ネズミ目と伝染病===
===ネズミ目と伝染病===
ネズミ目は、[[伝染病]]の生物学的な[[媒介者]]となることがある。[[ペスト]]の例は、[[公衆衛生]]が発達した[[2000年代]]においても世界的に年間数千人規模の患者が発生し、時には[[アウトブレイク]]も発生するなど病気の撲滅が達成されていないが、これは野生のネズミ目が感染している広大な地域では対策が難しいためである<ref>[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2010/02081741.html ペスト:地域別罹患率・死亡率の検討-2004年~2009年] CDC Travelers' Health, Outbreak Notice(2010年2月18日)2017年3月4日</ref>。
ネズミ目は、[[伝染病]]の生物学的な[[媒介者]]となることがある。[[ペスト]]の例は、[[公衆衛生]]が発達した[[2000年代]]においても世界的に年間数千人規模の患者が発生し、時には[[アウトブレイク]]も発生するなど病気の撲滅が達成されていないが、これは野生のネズミ目が感染している広大な地域では対策が難しいためである<ref>[http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2010/02081741.html ペスト:地域別罹患率・死亡率の検討-2004年~2009年] CDC Travelers' Health, Outbreak Notice(2010年2月18日)2017年3月4日</ref>。

== 系統 ==
{{Clade
| label1=[[真主齧上目]]<br/>{{sname||Euarchontoglires}}
| 1={{Clade
| label1=[[グリレス大目]]<br/>{{sname||Glires}}
| 1={{Clade
| 1=[[アナガレ目]] {{sname||Anagalida}} [[絶滅|†]]
| 2={{Clade
| label1=[[単歯類]]<br/>{{sname||Simplicidentata}}
| 1={{Clade
| 1=[[混歯目]] {{sname||Mixodontia}} †(側系統?)
| 2='''ネズミ目''' {{sname||Rodentia}}
}}
| label2=[[重歯類]]<br/>{{sname||Duplicidentata}}
| 2={{Clade
| 1=[[ミモトナ目]] {{sname||Mimotonida}}†
| 2=[[ウサギ目]] {{sname||Lagomorpha}} }} }} }}
| label2=[[真主獣大目]]<br/>{{sname||Euarchonta}}
| 2={{Clade
| 1=[[ツパイ目]] {{sname||Scandentia}}
| 2={{Clade
| 1=[[ヒヨケザル目]] {{sname||Dermoptera}}
| 2={{Clade
| 1=[[プレシアダピス目]] {{sname||Plesiadapiformes}} †
| 2=[[サル目]] {{sname||Primates}} }} }} }} }}
}}

== 分類 ==
ネズミ目は系統的には[[ヤマアラシ亜目]] {{sname||Hystricomorpha}} ({{sname|Ctenohystrica}})、[[ネズミ亜目]] {{sname||Myomorpha}}、[[リス亜目]] {{sname||Sciuromorpha}} ({{sname|Sciurognathi}}) の3亜目に分かれる<ref name="Blanga-Kanfi_etal2009">{{harvnb|Blanga-Kanfi et al. (2009)|ref="Blanga-Kanfi_etal2009"}}</ref>。ただし、古い分類では、同じ3目に分けていても内容が微妙に異なることがある。

ネズミ亜目の3下目をそれぞれ亜目に引き上げ5亜目とする分類もある<ref>[[ITIS]]、[[Wikispecies]]など</ref>が、本質的には同じである。

顎骨の形態から[[リス顎亜目]](リス亜目) {{sname|Sciurognathi}} と[[ヤマアラシ下目|ヤマアラシ顎亜目]](ヤマアラシ亜目) {{sname|Hystricognathi}} に分ける分類もあるが、リス顎亜目はネズミ亜目・リス亜目・ヤマアラシ亜目の一部([[グンディ科]])にわたって分布する[[側系統]]と思われる。

<!--上科までは Blanga-Kanfi et al. 2009 による-->
=== ヤマアラシ亜目 ===
ヤマアラシ下目の2つの小目をそれぞれ下目とすることもある。

* [[ヤマアラシ下目]] {{sname||Hystricognathi}} - 古い分類のヤマアラシ顎亜目に当たる。
** [[テンジクネズミ小目]] {{sname||Caviomorpha}}
*** [[デグー上科]] {{sname||Octodontoidea}}
**** [[ヌートリア科]] {{sname||Myocastoridae}} - [[ヌートリア]]。フチア科に含めることも。
**** [[フチア科]](カプロミス科) {{sname||Capromyidae}} - [[フチア]]
**** [[デグー科]] {{sname||Octodontidae}} - [[デグー]]、[[コルロネズミ]]など
**** [[ツコツコ科]] {{sname||Ctenomyidae}} - [[ツコツコ]]
**** [[アメリカトゲネズミ科]](アメリカトビネズミ科) {{sname||Echimyidae}} - [[アメリカトゲネズミ]]
**** [[チンチラネズミ科]] {{sname||Abrocomidae}} - [[チンチラネズミ]]。分子系統ではチンチラ上科から移される。
*** [[チンチラ上科]] {{sname||Chinchilloidea}}
**** [[チンチラ科]] {{sname||Chinchillidae}} - [[チンチラ]]、[[ビスカーチャ]]
**** [[パカラナ科]] {{sname||Dinomyidae}} - [[パカラナ]]。分子系統ではテンジクネズミ上科から移される。
*** アメリカヤマアラシ上科 {{sname|Erethizontoidea}}
**** [[アメリカヤマアラシ科]](キノボリヤマアラシ科) {{sname||Erethizontidae}} - [[カナダヤマアラシ]]、[[キノボリヤマアラシ]]など
*** [[テンジクネズミ上科]] {{sname||Cavioidea}}
**** [[パカ|パカ科]] {{sname||Cuniculidae}} ({{sname|Agoutidae}}) - [[パカ]]
**** [[テンジクネズミ科]] {{sname||Caviidae}} - [[モルモット]]、[[マーラ_(動物)|マーラ]]、[[クイ]]、モコ
**** [[カピバラ科]] {{sname||Hydrochoeridae}} - [[カピバラ]]。「テンジクネズミ科カピバラ属」とすることも。
**** [[アグーチ科]] {{sname||Dasyproctidae}} - [[アグーチ]]
**** [[チンチラネズミ科]] {{sname||Abrocomidae}} - [[チンチラネズミ]]
** [[フィオミス小目]] {{sname||Phiomorpha}} - 側系統の可能性がある
*** [[ヨシネズミ科]] {{sname||Thryonomyidae}}
*** [[アフリカイワネズミ科]] {{sname||Petromyidae}}
*** [[デバネズミ科]] {{sname||Bathyergidae}} - [[ハダカデバネズミ]]など
*** [[ヤマアラシ|ヤマアラシ科]] {{sname||Hystricidae}} - フィオミス小目から外すことも。
* [[グンディ|グンディ下目]] {{sname||Ctenodactyloidea|Ctenodactylomorphi}} (グンディ上科 {{sname|Ctenodactyloidea}})
** [[グンディ科]](ツコツコ科) {{sname||Ctenodactylidae}} - [[グンディ]]。従来はリス亜目とされることが多かった。
** [[ディアトミス科]] {{sname||Diatomyidae}} - [[ラオスイワネズミ]]。2005年に初めて現生種が発見された。

=== ネズミ亜目 ===
3つの下目をそれぞれ亜目とすることもある。

*[[ビーバー下目]] {{sname||Castorimorpha}}
** [[ホリネズミ上科]] {{sname||Geomyoidea}}
*** [[ホリネズミ科]] {{sname||Geomyidae}} - [[ホリネズミ]]
*** [[ポケットマウス科]] {{sname||Heteromyidae}}
** ビーバー上科 {{sname|Castoroidea}}
*** [[ビーバー科]] {{sname||Castoridae}} - [[ビーバー]]など
*[[ウロコオリス下目]] {{sname||Anomaluromorpha }}
** [[ウロコオリス科]] {{sname||Anomaluridae}} - [[ウロコオリス]]
** [[トビウサギ科]] {{sname||Pedetidae}} - [[トビウサギ]]
*[[ネズミ下目]] {{sname||Myodonta}} - 亜目に格上げするときは {{sname||Myomorpha}} となる。
** トビネズミ上科 {{sname|Dipodidea}}
*** [[トビネズミ科]] {{sname||Dipodidae}} - [[トビネズミ]]
** [[ネズミ上科]] {{sname||Muroidea}}
*** [[メクラネズミ科]] {{sname||Spalacidae}} - [[メクラネズミ]]、[[タケネズミ]]
*** [[キヌゲネズミ科]] {{sname||Cricetidae}} - [[キヌゲネズミ]]、[[ハムスター]]、[[ミズハタネズミ属|ミズハタネズミ]]、[[ハタネズミ属|ハタネズミ]]
*** [[ネズミ科]] {{sname||Muridae}} - [[クマネズミ]]、[[ドブネズミ]]、[[ハツカネズミ]]、[[アカネズミ]]、[[アレチネズミ科|アレチネズミ]]、[[スナネズミ]]
*** [[ヨルマウス科]] {{sname||Calomyscidae}}
*** [[アシナガマウス科]] {{sname||Nesomyidae}} - [[アフリカオニネズミ]]

=== リス亜目 ===
[[ファイル:Japanese Squirrel edit2.jpg|thumb|120px|right|[[ニホンリス]]]]
* ヤマネ下目 {{sname|Glirimorpha}} (ヤマネ上科 {{sname|Gliroidea}})
** [[ヤマネ科]] {{sname||Gliridae}} - [[ヤマネ]]
* [[リス下目]] {{sname||Sciurida}} (リス上科 {{sname|Sciuroidea}})
** [[ヤマビーバー科]] {{sname||Aplodontidae}}
** [[リス科]] {{sname||Sciuridae}} - [[リス]]、[[シマリス]]、[[プレーリードッグ]]など

== ネズミ目でないもの ==
形態などから、ネズミの名を持たされた別目の種がいくつかある。

*[[モグラ目]]
**[[トガリネズミ科]] - [[トガリネズミ]]、[[ジネズミ]]、[[ジャコウネズミ]](スンクス)、[[カワネズミ]]
**[[ハリネズミ科]] - [[ハリネズミ]]
*[[ハネジネズミ目]](1目1科) - [[ハネジネズミ]]
*[[オポッサム目]](1目1科) - [[オポッサム]](フクロネズミ)


== 脚注 ==
== 脚注 ==
163行目: 58行目:


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Wikispecies|Rodentia}}
{{Commonscat|Rodentia}}
{{Commonscat|Rodentia}}
{{Species|Rodentia}}
* [[哺乳類]]


== 外部リンク ==

* {{Kotobank}}
{{哺乳類}}
{{Animal-stub}}
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{{デフォルトソート:けつしもく}}

{{Normdaten}}
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[[Category:齧歯目|*]]
[[Category:齧歯目|*]]

2021年7月29日 (木) 17:55時点における版

齧歯目
現生種最大のネズミ カピバラ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
学名
Rodentia Bowdich, 1821
和名
齧歯目[1]

齧歯目 (げっしもく、Rodentia) は、哺乳綱に分類される目。

分類

以下の和名は川田らに従う[1]

特徴

ネズミ目の動物は、物をかじるのに適した歯と顎を持ち、上顎・下顎の両方に伸び続ける2つの門歯と、犬歯を持たないことが特徴である[2][3]。この門歯は物をかじることで次第に削れてゆき、長さを保っている。漢語名齧歯目、および学名「Rodentia」はラテン語で「かじる(齧る)」という意味のrodereから来ている。歯は木を削ったり堅果類の皮をかじったり身を守ったりするために使われる。ネズミ目の動物の多くは、種子などの植物質を食料とするが、魚や昆虫を主食とする種もわずかに存在している。なお他の哺乳類とは異なり、ネズミ目では嘔吐反射が見られない[4]

南極大陸ニュージーランドを除く世界各地に分布している。オーストラリアを除く各地域では、種類数・個体数ともに多く、外形・習性変化も富んでおり、約2400種が知られている。「ねずみ算」という言葉があるほど、非常に繁殖力が強い[2]

概して小さいものが多く、なかでもアフリカンドワーフマウスは体長6cm、体重7g程度しかない。一方、大きいものでは、現生種最大のカピバラ Hydrochoeris hydrochaeris が 45kg 程度である。

化石種としては、1999年南米ベネズエラで全身化石が発見された第三紀後期のフォベロミス・パッテルソニ Phoberomys pattersoni が最大で、体高 1.3 m(尾まで含めた体長は3 m)、体重 700 kg程度あったと考えられている[5]

ネズミ目と伝染病

ネズミ目は、伝染病の生物学的な媒介者となることがある。ペストの例は、公衆衛生が発達した2000年代においても世界的に年間数千人規模の患者が発生し、時にはアウトブレイクも発生するなど病気の撲滅が達成されていないが、これは野生のネズミ目が感染している広大な地域では対策が難しいためである[6]

脚注

  1. ^ a b 川田伸一郎他 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  2. ^ a b 齧歯類とは”. コトバンク. 2020年12月27日閲覧。
  3. ^ 齧歯目とは”. コトバンク. 2020年12月27日閲覧。
  4. ^ Bininda-Emonds OR, Cardillo M, Jones KE, MacPhee RD, Beck RM, et al. (2007) The delayed rise of present-day mammals. Nature 446: 507–512. doi: 10.1038/nature05634
  5. ^ Sanchez-Villagra et al. (2003)
  6. ^ ペスト:地域別罹患率・死亡率の検討-2004年~2009年 CDC Travelers' Health, Outbreak Notice(2010年2月18日)2017年3月4日

参考文献

  • Marcelo R. Sánchez-Villagra, Orangel Aguilera, Inés Horovitz (9 2003). “The Anatomy of the World's Largest Extinct Rodent”. Science 301 (5640): 1708-1710. doi:10.1126/science.1089332. 

関連項目