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[[Image:Alembics from Andreas Libavius Alchymia.png|thumb|200px|[[1606年]]に記された錬金術書に描かれた、さまざまな形状のアランビック]]
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2015年6月25日 (木) 08:26時点における版

アランビック蒸留器による蒸留
中世に描かれたアランビック蒸留器
1606年に記された錬金術書に描かれた、さまざまな形状のアランビック

アランビック: Alembic)は、チューブで接続された2つの容器からなる蒸留器 (Still錬金術において、化学物質を蒸留するために使用された。「アランビック」の語は一般的に蒸留装置全体を指して用いられるが、より厳密には、蒸留されるべき物質を蓄えるフラスコククルビットcucurbit 蒸留瓶)と呼び、その上部に取り付けるチューブのついた蓋(蒸留器の頭部 still-head)のことをアランビックと呼ぶ。ククルビットの中の液体を加熱・沸騰されることによって生じた蒸気は、頭部(アランビック)へと上昇して内壁によって冷却され、濃縮されて受けフラスコの中に降下する仕組みである。

蓋とフラスコを一体化させた器具はレトルト(retort)と呼ぶ。アランビックの近代的な形は単式蒸留器 (pot still) であり、現代においても蒸留酒の製造に用いられている。

名称

アランビックという語は、アラビア語で「蒸留器」を意味する الأنبيق / al-'anbiq から来ている。この言葉を辿ればギリシャ語 ἄμβιξ / ambix に由来し、 おそらくセム語派の言語に至る[1]

シェイクスピアの戯曲には、limbeck という語形で登場する。フランス語形の alambic は、コニャックの製造に用いられる装置を指して用いられる(たとえば、単式蒸留器を Alambic charentaisシャラントのアランビック」と呼ぶ)。日本では江戸時代に用いられた蒸留器に「ランビキ」という名称が用いられた。

英語の alembic という語は、なにかを洗練 (refines) したり、変成転換 (transmutes) したりすることの比喩として使われることがある(たとえば、"the alembic of creative thought" 創造的思考のアランビック)。

歴史

アランビックを最も早い時期に使用したのは、ジャービル・イブン=ハイヤーン(ゲベルス)のような古代ペルシャの錬金術師たちである[2]アル・ラーズィー(ラーゼス)もその仕事にアランビックを用い、蒸留について最初の科学的記録を書き残した[3]。その研究は、中世においてイブン・スィーナー(アウィケンナ)やファーラービー(アルファラビウス)らイスラム教徒の錬金術師によって広げられた。

錬金術師ゾシモス (Zosimos of Panopolisによるアンビクス、ククルビット、レトルト。
近代的な化学実験に用いられるアランビック
蒸留酒の製造に用いられる大型の「シャラント式」アランビック
銅製のレトルト

脚注

  1. ^ Forbes, Robert James (1970) A Short History of the Art of Distillation: from the beginnings up to the death of Cellier Blumenthal. Leyden: E. J. Brill ISBN 978-90-04-00617-1; p. 23
  2. ^ Encyclopædia Britannica 1911, Alchemy.
  3. ^ Forbes, Robert James (1970) A Short History of the Art of Distillation: from the beginnings up to the death of Cellier Blumenthal. Leyden: E. J. Brill ISBN 978-90-04-00617-1; pp. 20-23

関連項目

  • ランビキ - 江戸時代の日本で使われた蒸留装置

外部リンク