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*U型フレーム
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*スタッガード型フレーム
*スタッガード型フレーム
*ダブルループフレーム


==関連項目==
==関連項目==

2008年2月26日 (火) 07:01時点における版

フレーム(frame)は、自転車の中で、前後の車輪を連結させ乗り手の体重を支える役割を担う部分。自転車の部品の中でも最も重要な部品であり、また自転車が大幅に革新される時はほとんどフレーム形状、素材によるところが大きい。現在世界中で生産されている自転車のフレームのほぼ全てがダイヤモンドフレームと呼ばれるフレームないしその派生型を使用している。ここでは最も基本的なダイヤモンドフレームを中心に解説する。

フレームの素材に関してはフレーム素材 (自転車)を参照する事。

ダイヤモンドフレームの特徴

ダイヤモンドフレームとは、2個の三角形を合体させたダイヤ形(菱形)をしているフレームのことである。

ダイヤモンドフレームは安全型自転車の発明の後、多くの制作者が試行錯誤を繰り返して生き残ったデザインである。耐久性があり非常にシンプルで生産性が高く、以来自転車フレームにほぼ全てと言ってよいほど採用されている。しかしながら折り畳み自転車など収納機能を特化させるためダイヤモンドフレーム以外の形状を求めたり、リカンベントのように通常の自転車の体勢を取れない特殊な自転車は独自のフレームを選択している。また空気抵抗軽減の関係から1990年の中頃の一時期、ロードレースのタイムトライアル競技ではダイヤモンドフレームでないフレームも使われた事があった。

現在のロードレース国際自転車競技連合(以下UCI)の規定によりダイヤモンドフレーム以外の機材の使用は認められてはいない。ただしUCIの管轄ではないトライアスロンにおいては多様で前衛的な形状のフレームがよく見られる。

マウンテンバイクは基本的にダイヤモンドフレームを使用してきたが、現在ではサスペンションを前後に装着している車体も多く、前三角と後ろ三角が独立してビボットを介してつながれサスペンションで衝撃を和らげる「フルサスペンション」フレームが主流になりつつある。詳しくはマウンテンバイクの項目を参考の事。

フレームの構造

各種パイプの名称

自転車のフレームパイプ

ダイアモンドフレームを構成するパイプは以下のように分かれており、各々のパイプが「ラグ」というジョイントを用いた溶接、あるいは接着という方法で組み合わさっている。

トップチューブ
上管とも言われる。ヘッドチューブとシートチューブ上端をつなぐパイプ。
ヘッドチューブ
頭管とも言われる。ヘッドパーツがこのパイプの上下を挟み、フロントフォークのステアリングコラムが内部を貫通する。
ダウンチューブ
下管とも言われる。ヘッドチューブとシートチューブ下端をつなぐパイプ。
シートチューブ
立管とも言われる。トップチューブとダウンチューブをつなぐパイプ。シートポストがこのパイプに上から差し込まれる。
ボトムブラケットシェル
ダウンチューブ・シートチューブ・チェーンステイの交点で3本全てをつなぐパイプ。このパイプの左右にボトムブラケットが差し込まれる。
シートステイ
シートチューブ上端と後輪軸を結ぶパイプ。左右で一対ある。左右のシートステイは途中一本の短いパイプでつながれる。これを「シートステイ・ブリッジ」と呼ぶ。キャリパーブレーキを取り付ける穴がある。
チェーンステイ
シートチューブ下端と後輪軸を結ぶパイプ。左右で一対ある。左右のチェーンステイは途中一本の短いパイプでつながれる。これを「チェーンステイ・ブリッジ」と呼ぶが、フレームによっては省略される事もある。
フロントフォーク
フロントフォークは前輪をフレームに固定して、路面からの衝撃を緩和する働きをしている。正確にはフレームの中には含まれないが、ロードバイクに限っては便宜上フレームの一部として扱われる事が多い。フロントフォークも参照。

フレームの区分

自転車フレームの大まかな区分けとして以下の呼称がある。

前三角
トップチューブ、ヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブ、ボトムブラケットシェルを合わせた総称。
後ろ三角・リア三角
シートチューブ、ボトムブラケットシェル、シートステイ、チェーンステイを合わせた総称。
エンド
車輪とフレームをつなぐところ。前輪側を「フロント・エンド」、後輪側を「リア・エンド」と呼ぶ。

フレームの設計

自転車フレームのジオメトリー

フレームを見極めたり、製作するにあたり、以下の数値が重要な決め手となる。総称して「フレーム・スケルトン」と呼ばれる。

トップチューブ長

ヘッドチューブの芯からシートチューブの芯までのトップチューブの長さ。略して『トップ長』と呼ぶ事もある。ロードバイクの適正サイズを選ぶ上でこの数値が最重要となる。ただし最近のスローピングフレームはトップチューブ自体が水平でないので選択には注意を要する。しかしながら、たいていのメーカーには実際の長さの実質トップチューブ長とホリゾンタルフレームに仮想して計算上出した仮想トップチューブ長を併用に記載してある事が多い。

シートチューブ長

シートチューブの長さ。ほとんどの自転車の適正サイズを選ぶ上で最重要な数値。この数値を誤ると、極端に大きくて足を着くたびにトップチューブと股がカチ合い、痛くて乗れないようなサイズのもの、逆に小さ過ぎてサドルピラーを一杯に上げても膝が伸び切らず、走る事が出来ない様なサイズのものを選んでしまう事になる。長さの表記方法には2種類ある。

  • C-C(センター - センター)ボトムブラケットの中心~トップチューブとの接合点まで。別名「芯・芯」。
  • C-T(センター - トップ):ボトムブラケット中心~シートチューブの天辺まで。別名「芯・トップ」。

またスローピングフレームではホリゾンタルフレームに換算して出した計算上の仮想シートチューブ長が表記される事もある。

ホリゾンタルフレームにおいてC-T(センター - トップ)の長さは、(靴底の厚さを考慮して)乗車に用いる靴を履いた状態の股下から250mm 引いた長さが一般的な目安とされる。

ヘッド角・シート角

乗り心地(セルフステア特性)を決定する数値。ヘッドアングルシートアングルとも呼ぶ。軽快に走る用途のロードバイクスポルティフで72-75度、未舗装路の上り坂を考慮した車種マウンテンバイクランドナーなどで70-72度、実用車など最適乗車速度の小さい用途の車種は68度程度が多い。上述のように用途によって最適なヘッド角・シート角が異なってくるが、一般的なスポーツサイクルにおいては72-73度程度のヘッド角・シート角が扱いやすく最も基本的なヘッド角・シート角である。ヘッド角が大きい (ヘッドチューブとフロントフォークが立つ) ほど、機敏な操作が可能になるが安定性がなくなり、ヘッド角が小さい (ヘッドチューブとフロントフォークが寝る) ほど、安定感は増すが操作が鈍重になる。ヘッド角とシート角が同一の数値のものを「パラレル」、そうでないものは「アンパラレル」と表現する事がある。

ホイールベース

直進安定性を決定する数値。数値が短いと機敏な動きが可能になり、長いと直進安定性が増す。競輪などで使われるトラックレーサーは短かめ、ランドナースポルティフは長めに出されている。

BB下がり、ボトムブラケットハイト

車体の重心の高さを決める上で重要な数値。BB下がりはハンガー下がりハンガードロップボトムブラケットハイトはBB高ハンガー高とも呼ぶ。BB下がりとボトムブラケットハイトは相補的な関係にある。ボトムブラケットの位置が低いと低重心になり安定するが、低すぎるとカーブを曲がった時にペダルが地面に当たり転倒する危険性が出てくる。ボトムブラケットの位置が高いとオフロードでの走破性が高くなるが、高すぎると左右に不安定になる。BB下がりの値は絶対的なものではなく、車輪の径によって相対的に変化する。700Cではだいたい65-75mmほどに設定され、小径になればなるほどこの値は下がっていく。車輪が16インチ以下になると場合によってはマイナス(BBが前輪後輪軸よりも高くなる)になる。

チェーンステイ長

加速の機敏さを決定する上で重要な数値。この値が短ければ短いほど加速の切れがよくなるが、あまりに短いと車体が不安定になり、また短すぎると後輪のタイヤの選択が限られる、または後輪自体が装着不能になってしまうので、数値の設定には限界がある。車輪径によって相対的に数値が変化し、700Cではギリギリまでつめるか、シートチューブを変化させてチェーンステイ長を限界まで短くする例もあるが、650C以下のフレームでチェーンステイ長を限界まで詰めると車体が不安定になる。

オフセット

ヘッドチューブの角度に沿って下に延長させた位置からフロントフォークがどれだけ前に出ているか調べた数値。この数値が大きいと振動衝撃に優れると言われている。また少ないと機敏なハンドリングとなる。主にロードバイクランドナーに表記される事が多い。また市販のカーボン製フロントフォークにもこの数値は必ず表記されており、だいたい43-45mmくらいで設定されている。

スタンドオーバーハイト

地面からトップチューブ中心部までの高さ。英語では「S.O.」と表記される事が多い。マスプロメーカーのロードバイクでは表記されてはいるが、フレームのみ販売のメーカーだと表記されていない事が多い。

細部処理

リアエンド処理

主に外装変速機の有無によってリアエンドの処理が変わる。

ホリゾンタルドロップアウト
開口の向きが水平かそれに近い角度のエンドのことで、チェーンのテンション調整が可能である。テンション調整が必要な固定ギアや、 (外装変速機が無いため) テンショナーの無いシングルスピード等ではこちらが使われる。正爪と逆爪がある。
正爪エンド・トラックエンド
トラックレーサーに使われることからトラックエンドとも呼ばれる。真後ろに開口しており、トラックレーサーに限らずBMXや、クイックリリースが不要であるいわゆるママチャリにも用いられる。構造上チェーンが外れないので後輪をクイックリリースにする意味がなく、車軸はナットで締める。
逆爪エンド・ロードエンド
ロード車に使われたことからトラックエンドに対しロードエンドとも呼ばれる。ゆるい角度で前方斜め下方に開口しており、後輪のクイックリリースにも対応する。ストレートドロップアウトを斜めに延ばしたものと見ることもできる。汎用性が高く、ホイールハブのOLD幅さえ合えば外装変速機にもシングルスピードや固定ギアにも対応できる。カンパニョーロが製造しているためカンパニョーロタイプとも呼ばれる(クイックリリースナットが当たる面に「Campagnolo」の刻印がある)。
ストレートドロップアウト・バーチカルドロップアウト
ホリゾンタルドロップアウトに対しバーチカルドロップアウトとも呼ばれる。開口部がほぼ下を向いており、チェーンのテンション調整ができないので固定ギヤは不可能であり、通常、外装変速機が必須である。ホイールの脱着がしやすいのでスポーツ自転車、特に輪行に供する車種でこのリアエンドを採用するものが多い。俗に「ストドロ」と略す。

台座

自転車に必要な各種部品を取り付けるためにフレームに溶接する設置具を「台座」と呼ぶ。1950年代のロードバイクにはフレーム強度を弱めるという観点から溶接を一切避け、金属バンドで止めてあった時代もあった。

ブレーキ台座
マウンテンバイク、BMXなどで カンチブレーキVブレーキUブレーキをつけるために必要なもの。フロントフォークに1対、シートステイ・チェーンステイのどちらかに1対ある。最近ではマウンテンバイクのディスクブレーキを取り付ける台座もあり、これはフォーク下端フロントエンド近くと、リアエンド近くにある。
レバー台座
初期のロードバイクなどのようにWレバーを設置するために必要なもの。バンド止めでなければ特定のメーカーの特定の製品専用になる。現在でもケーブルの取り回しに必要なため、溶接される事が多いが、最近ではWレバーが取り付けられる台座ではなく、単なるケーブル受けを溶接する事が多い。
フロント台座
マウンテンバイクのフロントディレイラーの一種に特殊な台座を必要とするものがある。それを取り付けるための台座。現在ではあまり見られない。

ケーブル処理

変速機を使用するためにはワイヤーを使わなくてはならない。ケーブルの通し方で3種類、そのための処理が2種類ある。

トップルーティング
トップチューブ上にケーブルを這わせる方法。マウンテンバイクシクロクロスなどに使用される。泥詰まりに強いが、ロードバイクのフロントディレイラーを使う場合、特殊なアタッチメントでケーブルを反転させなくてはならない。
ボトムルーティング
ダウンチューブに沿ってワイヤーを這わせる従来からの古典的な処理。ロードバイク、一部のシクロクロスに多い。ロードバイク、マウンテンバイク双方フロントディレイラーともこの方法で使う種類のものを取り揃えてある。
ケーブル内蔵処理
煩雑なケーブル処理を避けるためにアウターケーブルごとフレームの中に入れてしまう処理。ランドナースポルティフなどの趣味の自転車カーボンを使った非ダイアモンドフレームのケーブル処理に使われる。フレームの途中でそのままアウターケーブルごと最初から最後まで通してしまう方法もあり、これを「フルアウター」と言う。シフトレバー台座直付け(これをやると特定のレバー以外は付けられない)などと同様、「特殊工作」と呼ばれる加工の一つで、受注製作のオーダー車に多い。

ダボ

泥よけ、荷台など本来の自転車の走行機能には関係がないものを取り付けるネジ穴を「ダボ」と呼ぶ。英語では「eyelet」または「boss」と呼ばれる。競技用の自転車についている事はあまりないが、ランドナー、スポルティフなどツーリング用自転車にはほとんど必須と言える工作である。

ダイヤモンドフレームの種類

ホリゾンタルフレーム

ホリゾンタルフレームとは、トップチューブが地面と平行になっているフレームをさす。本来のダイアモンドフレームはこの形状であり、ロードバイクはもちろん、初期のマウンテンバイクもこの形状だった。特徴はチューブが長いことから振動吸収性にやや優れると言われているが、反面、素材を多く必要とするために重量的にはスローピングフレーム(後述)に対して不利である。また空気抵抗が大きいと虚偽の宣伝をした会社があったが、その整った外観を好む愛好者も多くいる。現在、マスプロメーカーではロードバイクを厳密な意味でのホリゾンタルフレームで作るところは少なくなってきているが、主にオーダーによってクロームモリブデン鋼で作られるフレーム(ロードバイク、ランドナースポルティフ」など)ではこのタイプを採用されるケースが多い。

スローピングフレーム

スローピングフレームはトップチューブの後ろが下がるように取り付けられているフレームのこと。マウンテンバイクのフレームより始まり、ロードバイクでも主流はこのタイプになった。ロードバイクに導入された理由は空気抵抗が少ないという理由であったが、現在はむしろフレームの剛性向上、軽量化・低重心化の利点の方が注目されている。また工業製品としての利点も多く、ユーザー側には身長の低いライダーも乗車可能になるという利点、メーカー側には細かなフレームサイズを多種用意する必要がないという利点がある。ただショック吸収性はホリゾンタルフレームに対して劣るという欠点も存在する。トップチューブの傾斜具合はメーカーによって変わり、メーカーによっては傾斜をゆるく平行に近くして「セミスローピング」と称する事もある。大量生産に好都合なので、主要な自転車メーカーが採用しているが、個人のフレームビルダーも低重心、足付きのよさに注目して採用するところもある。

スローピングフレームを採用するもっとも代表的なメーカーは台湾のジャイアント・マニュファクチャリングである。

ファニーバイク・非ダイヤモンドフレーム

ロードレースのタイムトライアル競技のみに見られたフレーム。現在はUCIにより、機材は「ダイヤモンドフレームである事」「前後車輪径は同じであること」という規定があるため、ロードレースでの使用が禁じられている。ただしUCIの管轄ではないトライアスロンに限っては、これらの規定はなく非ダイヤモンドフレームもしばしば使用される。

ファニーバイク
後輪は700Cのまま、前輪のみ24もしくは26インチ等の小径車輪にしたものである。前後異径の車輪を持つ車体外観が「Funny(おかしな)」と形容されたためこの名が付いたといわれる。乗車姿勢が極端に前屈みのポジションになり空気抵抗を少なくできるため、タイムトライアルレーサー等に、また前輪26インチ・後輪700C用のそれは女性や身長の低い男性など前後輪共700Cでは乗車出来ない人向け(シートチューブ長450mmモデル)に使用された。個人、チーム両方のタイムトライアルに使用されていたが、チームでのタイムトライアルにおいて使用する際は、前走者との距離を少なくし(前輪径が小さいため、より近づくことができる)チーム全体の空気抵抗を少なくする効果もある。
非ダイヤモンドフレーム
空気抵抗の向上の観点から従来のダイヤモンドフレーム以外のフレーム形状の模索が始まり、さらに金属加工技術の向上、カーボン素材の発達により一時期多種多様なフレーム形状が見られた。金属フレームとしてはトップチューブがないもの(「ビーム(beam―)形式」と呼ばれる)、一体形成のものがあった。

ダイヤモンドフレームから派生したフレーム

  • ミキストフレーム
  • H型フレーム
  • L型フレーム
  • U型フレーム
  • スタッガード型フレーム
  • ダブルループフレーム

関連項目