無尾翼機

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無尾翼機(むびよくき)とは、飛行機の種類のひとつであり、水平尾翼を持たないものを指す。

概要[編集]

水平尾翼飛行機の縦の安定性の向上と、ピッチングの操作のために存在するが、空気抵抗が増すといった問題も抱えている。これに対して、飛行速度の向上を追求する手段のひとつとして考案されたのが水平尾翼を無くす方法であり、そうした飛行機を無尾翼機という。本来は水平尾翼に備えられる昇降舵は、無尾翼機においては当然ながら主翼に装備される事となり、かつ補助翼を兼ねる事となり、エレボンと呼ばれる。

しかしながら、水平尾翼は単に昇降舵を装備する場所として必要なだけでなく、航空機の風見安定性の確保のため、翼全体の空力中心を重心より後方に配置するという役目を担っている。そこで無尾翼機の場合は、主翼の外側の部分のみが断面形が変わっており、マイナスの揚力を発生する事で主翼のプラスの揚力とバランスを取っている。これにより主翼全体の空力中心を重心より後方に配置できる。ただし主翼のプラスの揚力を発生する部分とマイナスの揚力を発生する部分が前後しないと、機体のバランスは保てない。そのため無尾翼機の主翼平面形は、後退翼にする必要がある。後退翼は一般的には臨界マッハ数を高めるための手法であるが、その効果が知られる以前から無尾翼機(の研究試作機)で採用されていた。

また、翼型の工夫により自然安定性を持たせる手法も存在する。後縁が上方に湾曲したS字型のキャンバーを持つ翼型によって、主翼自体が安定性を保つ構造になっている。この場合は主翼の前後幅が大きい事が必要であるため、デルタ翼形式にする場合が多い。

前述の通り、尾翼が無いためその分の空気抵抗が減少し、高速を追求するのに有利な点が長所である。

欠点は、主翼に大きな揚力を持たせる(高揚力装置を付加する)事が困難な事である。その欠点を補うために、大揚力を必要とする際は仰角を大きく取る必要があるが、機首を上げるためにエレボンを上げると、そのエレボンは同時に揚力を減少させる働きをするという矛盾がある。そのため離着陸性能に劣る事である。

サーブ 35 ドラケン戦闘機ではその欠点を補うためにダブルデルタ翼を採用している(現在広く採用されているストレーキ(LERX)の先駆である)。またミラージュ2000CCV設計を導入する事によって、エレボンを上げる事なしに機首を上げる事を可能とし、離着陸性能を改善した。

またカナード翼を採用し、昇降舵をそちらに装備する(従って主翼後縁部の動翼は純然たる補助翼となる)場合もある。またカナード翼を主翼と近づけて装備すればストレーキと同等の作用をもたらす(クロースカップルドデルタ翼)ため、この意味でも離着陸性能を改善できる。ただし、カナード翼とは水平尾翼の一種であるので、その意味でカナード翼を持つものは厳密には無尾翼機と呼ぶことはできない(エンテ型飛行機と呼ばれる)のだが、もとは無尾翼機だった機体にカナードを付加した例は多い(クフィルなど)。

上述のミラージュ2000のように、近年ではCCV設計の導入により、機体設計による自然安定性は放棄する(安定性と運動性・格闘性能はトレードオフの関係にあるため、安定性を犠牲にして運動性を追求し、操縦の困難さはコンピューター補正でカバーする)例も見られる。このように自然安定性を切り捨てた機体では、水平尾翼のみならず、垂直尾翼も廃した無尾翼機も存在する。この場合は垂直尾翼に代わってスポイラーによってヨー制御を行う。

ホーク (ミサイル)等のミサイルは、その翼が飛行の際に大きな揚力を発揮する一種の無尾翼無人機であり、その翼後端には昇降蛇・方向舵兼用の(補助翼機能は不要)が翼端付近のリンクで繋がっているが、このリンクを廃し翼後端に隣接して舵を配した例が、フェニックス (ミサイル)等のミサイルである。

主な無尾翼機の例[編集]

ドイツ
日本
アメリカ
フランス
スウェーデン
インド

関連項目[編集]