新生児黄疸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

新生児黄疸(しんせいじおうだん)は新生児にみられる黄疸症候の一つ。

解説[編集]

胎生期の胎児は成人と比較して赤血球数が1.5〜2倍程度多い。これは胎盤での酸素交換がより効率が良くないため、胎児は成人と比較するとわずかながら酸素不足に陥る。これを補うため赤血球を増やし、必要な酸素量を確保している。新生児のことを「赤ちゃん」と呼ぶのは、赤血球数が多いため皮膚が赤く見えるためである。出生後、肺が使えるようになると赤血球過多となり、余分な赤血球は脾臓で破壊される。この破壊された赤血球中の赤い色素ヘモグロビンが、黄色い色素のビリルビンとなり、皮膚が黄色く見えるようになる。これが新生児黄疸である。新生児黄疸自体は生理的な現象ではあるが、時として血中ビリルビン濃度が過多となると大脳基底核などに沈着し悪影響を及ぼすことがある。

疫学[編集]

日本人では 98%、白人では 約60% に新生児黄疸が発生し、男子に多く低体重児ほど強く表れやすい[1]

病態[編集]

本症は高ビリルビン血症のため起こる。ビリルビンには間接ビリルビン直接ビリルビンの2つがある。生後24〜48時間に現れる早期黄疸は何らかの疾病による物である[2]

分類[編集]

新生児黄疸の分け方には、黄疸が見られる時期による分け方と、黄疸の病態による分け方がある。

時期による分類[編集]

新生児黄疸は時期によって早発黄疸生理的黄疸遷延性黄疸、の3つに分けられる。 早発黄疸は生後48時間以内に見られる黄疸、生理的黄疸は生後2日〜2週間程度に見られる黄疸、遷延性黄疸は生後2週間以上に見られる黄疸である。

病態による分類[編集]

また病態によって高間接ビリルビン血症、高直接ビリルビン血症、の2つに分けられる。

原因[編集]

疾病が原因とならない黄疸は、

生理的黄疸(physiologic jaundice、最も一般的)
はほとんどの新生児に生じる。新生児の消化管(腸内細菌叢)と肝機能が未熟であることが原因で起こり、消化管と肝臓が成熟するとビリルビンの処理が早くなり、黄疸は速やかに消失する。一般に生後2〜4日目に現れ1〜2週間以内に消失する[2]
母乳哺育黄疸(breastfeeding jaundice)
出生から数日後、母乳を飲んでいる乳児の16%程度に生じ、十分に母乳を飲めていない新生児に生じる。多くの場合、母乳の分泌が十分ではないことが原因となっている。従って、新生児が母乳を飲み続け、乳の摂取量が増加すると自然に消失する[2]
母乳性黄疸(breast milk jaundice)
母乳を飲んでいる新生児の1〜2%に生じる。これは、母乳にビリルビンの排泄を遅くする物質が多く含まれているためにビリルビンの血中濃度が上昇することで起こる。5〜7日齢に現れ、約2週で最も強くなり、3〜12週間続くことがある[2]
赤血球の大量破壊(溶血)
  1. 臍帯を速やかに結紮しないと、胎盤から血液が過剰に移行し移行した過剰な赤血球が破壊される。
  2. 新生児の血液型が母親の血液型と適合していないRh式血液型不適合。
  3. 遺伝性赤血球異常症(サラセミア)。
  4. 出生時(出生過程)に損傷を負った新生児で、皮下出血(血腫)を生じたとき、大きい血腫の中で血液が破壊される[2]

何らかの疾病が原因となる黄疸は、

などである[2]

症状[編集]

症状は黄疸である。重症な黄疸の新生児は核黄疸を発症し、脳障害の後遺症を残す。

警戒すべき症候[2]
  1. 生後24時間以内に現れる黄疸
  2. 生後3週間以上続く新生児黄疸
  3. 嗜眠、哺乳不良、易刺激性、呼吸困難
  4. 急速に悪化する黄疸
  5. 発熱

治療[編集]

光線療法を受ける新生児

治療法として、光線療法、交換輸血、ガンマーグロブリン点滴療法がある。

疾病が原因とならない黄疸の治療は、

生理的黄疸
治療は必要ない。1日8〜12回程度の授乳すると黄疸の予防や軽減につながる。水や砂糖水はビリルビン濃度の上昇を防ぐことができないだけで無く母乳や人工乳の摂取量が減少してしまう為、新生児には与えない。
母乳哺育黄疸
授乳回数を1日8〜12回以上にすると黄疸が予防されるか軽減することがあります。ビリルビン値の上昇が続く場合は、一時的に母乳に人工乳か搾乳した母乳を足すことも行う。
母乳性黄疸
母乳による授乳を1〜2日間中止し、中止している期間は定期的に搾乳する。ビリルビン値が低下し始めたら、母乳授乳を再開する。核黄疸の発生リスクよりも母乳を与えることの有益性が

勝るため、母乳授乳は継続する。

黄疸の程度(血中ビリルビン)と原因によっては下記の治療法が選択される。

光線療法
光線療法(こうせんりょうほう、光療法)は光線(人工的に作り出した紫外線。最近は副作用の少ない470〜620nmの波長のグリーンライトが使用されることが多い)をあてて血中ビリルビンを分解する治療法。副作用として発疹[3]
適応
光線療法は総ビリルビン値が17を超えた場合に適応となる。早発黄疸や遷延性黄疸の病態は生理的黄疸の時期にも合併するので、生後2日〜2週間であっても総ビリルビン値を元に適応を考える。
交換輸血
血中の抗体及び、抗体と結合した赤血球を交換することによって根治的に重症黄疸(新生児溶血性疾患=母児間血液型不適合)を治療する。橈骨動脈に留置カテーテルを挿入しそこから瀉血して全血の2倍の交換血液を末梢静脈に注入し交換輸血を実施する。
臍帯静脈を使用してオペルームで交換輸血を施行すると30分で済む。
ガンマーグロブリン大量療法
この治療法は交換輸血と同程度の効果があり、交換輸血の頻度は大幅に減少している。
この治療法は、ITP(特発性血小板減少性紫斑病)の治療にヒントを得て行われた。
赤血球に抗原抗体反応で結合した抗体(IgG抗体)のFC部分が脾臓や肝臓の細胞にあるFCレセプターと結合して血管外溶血を起こす。それで、大量のガンマーグロブリン1g/kgを点滴静中する事で、このFCレセプターに前もって結合させて、抗体と結合した赤血球がFCレセプターに結合するのをブロックして溶血を防ぐ。

ほか[編集]

ヒトだけで無くウマ[4]ブタ[5]等の動物でも発症することがある。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 小林邦久、高橋ユミ、林勝之助、藤原忠詔、歯牙着色について 小児歯科学雑誌 6巻 (1968) 1号 p.32-34, doi:10.11411/jspd1963.6.1_32
  2. ^ a b c d e f g 新生児黄疸 メルクマニュアル プロフェッショナル版
  3. ^ 大原俊夫、斉藤昭、武内重樹、[ https://doi.org/10.11261/iryo1946.28.582 新生児黄疸の成因と治療] 医療 28巻 (1974) 7号 p.582-585, doi:10.11261/iryo1946.28.582
  4. ^ 細田達雄、馬の新生児黄疸症 その原因と診断と予防 日本獣医師会雑誌 21巻 (1968) 5号 p.187-192, doi:10.12935/jvma1951.21.187
  5. ^ 茂木一重、細田達雄、姫野健太郎、豚の新生児黄疸症に関する研究 日本畜産学会報 37巻 (1966) 8号 296-301, doi:10.2508/chikusan.37.296

出典[編集]

外部リンク[編集]