改め文方式と新旧対照表方式

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改め文方式(かいめぶん・あらためぶん)と新旧対照表方式(しんきゅうたいしょうひょうほうしき)は、それぞれ、既存の法令を一部改正する法令において、改正内容を表現する方式を表す用語である。

改め文(方式)は「改める文」や「改正文」とも、新旧対照表方式は「改正対照表方式」や「新旧方式」ともいう。

いずれの方式も、当該一部改正法令中の改め文又は新旧対照表は、その施行後、対象となる既存の法令を改正することで当該既存の法令に溶け込み、その一部として吸収されてしまうことから、このような法令改正の方法を「溶込方式」又は「吸収方式」という。

つまり、改め文方式と新旧対照表方式とは、同じ内容を実現する別の手段に過ぎない。従って、改め文方式で可能な改正は新旧対照表方式でも可能であるし、新旧対照表方式で可能な改正は改め文方式でも可能である。

これに対し、皇室典範増補のように、一部改正法令の文章自体が改正対象の法令と別にそのまま残るような方式を「増補方式」又は「積重方式」[1]といい、英米法が代表例とされる。もっとも、英米法でも、溶込方式は用いられている[2]

改め文方式[編集]

日本においては、既存の法令を改正する場合、当該法令を改正する法令を制定し、この法令を施行することで当該法令を改正する方法が採られる。

このとき、一部改正の場合には、その法令は

 ○○法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。
 第○○条中「…」を「…」に改め、「…」の下に「…」を加え、「…」を削る。

といった形式で記述される。このような文章の形式が俗に改め文と呼ばれるものである。

この改め文の記述の仕方には、戦前から積み重ねられてきた、慣習による一定のルールがあるので、実際の起案にあたっては、『新訂 ワークブック法制執務 第2版』を参照したり、過去の閣法・政令での用例を参照することとなる。

また、改正規定の修正を除いては、法令案の修正案もほぼ同様の方式により作成される。ただし、修正案の改め文と一部改正法令の改め文とでは、異なる部分もある。

このほか、全部改正の場合にも、法令の最初に「○○法(令和○年法律第○号)の全部を改正する。」と記載することから、改め文方式と誤解しやすい。しかし、「次のように」と書かれていないことからも分かるように、この記載は、単に当該法令の全部を改正するという制定者の意思を表した「制定文」にすぎない。このため、全部改正の場合には、改め文方式といえない[3]

また、改め文方式自体は、韓国中国ドイツフランスアメリカでも、類似の改正方式が用いられており[2][4]、国際条約の改正でも用いられるなど、国際的に見ても一般的な方式である。

以下では、特に記載のない限り、日本の一部改正法令における改め文について説明している。

大原則[編集]

改め文全体にわたる原則としては、概ね次のようなものがある(『新訂 ワークブック法制執務 第2版』問141参照)。

  • 前から順に行う[5]
    • = 共通する字句の改正や規定の細分の改正(条に対する項の新設・廃止、条・項に対するただし書や後段の新設・廃止など)をまとめて行うことができるのは、中間に別の改正が含まれない場合に限られる。
    • [例外]既存の規定を移動し、そのスペースに新たな規定を加える場合には、先に当該既存の規定を移動して追加先のスペースを確保する。
  • 字句の改正を行ってから移動する。
  • 条(項建ての本則・附則にあっては項)ごとに改正規定を区切る。
    • [例外1]共通する改正を連続して行うときは、2以上の条をまとめて改正することができる。
    • [例外2]規定の加え又は全部改めがあるときは、その部分で区切る。
    • [例外3]条建ての改正規定の場合、閣法では原則どおり同一条内の改正規定をすべて(加え・全部改めの部分を除く。)1文で行うが、衆法等では各改正規定・当該改正規定により全改・新設される条項ごとに区切る。
  • 同一の規定を2度引きしない。
    • = 全部改め+移動は、行わない。
    • = 字句の改正をまとめて行うことができるのは、当該各規定に当該字句以外の字句の改正が含まれない場合に限られる。
    • [例外]法令又はその本則の全体に共通する字句の改正は、最初にまとめて行うことができる[6]
  • 同一の規定を表すときは、同条・同項などのように表す。
    • [補足]号の細分の場合には、「同イ」のように表した例と、「同号イ」のように表した例とがある(第○条第○項第○号イまでが共通する場合)。
    • [例外]段落をまたぐときは、再度「第○条第○項中」のように引きなおす。
      • [補足]内閣法制局の例規上、別表の場合には、例外的に段落をまたいで「同表」とすることが認められている[7]
  • 同一の規定に係る改正は、「中」を用いてまとめることができる。ただし、二段階に「中」を用いることはできない。
    • [例1]第一条中第五項を第六項とし、第四項を削り、第三項を第四項とし、第二項を第三項とし、第一項の次に次の二項を加える。
    • [例2]第一条中第五項を第六項とし、第四項を削り、同条第三項中「甲」を「乙」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の二項を加える。
  • 前項に加えて、改正規定中の改正の場合には、「中」を用いてまとめた改正を更に「うち」を用いてまとめることができる[8]
    • [例]第一条のうち、○○法第二条から第四条までの改正規定のうち第二条中「甲」を「乙」に、「丙」を「丁」に改め、第三条中「戊」を削り、「己」の下に「庚」を加える。

韓国法[編集]

日本法を継受した韓国では、概ね同様の方式によっている。

異なる点として、主に次のようなものがある。

  1. 規定の加え又は全部改めで、規定を区切らない。
    例えば、「第一条第一項を次のようにし、同条第三項を第四項として、同条に第二項及び第三項を各々次のように新設する」という改正規定に続けて、改正後の第一項から第三項までをまとめて掲げる。
  2. 規定の移動前・後にその一部又は全部を改めることができる。
    例えば、「第一条第二項を第三項とし、同条に第二項を次のように新設して、同条第三項(従前の第二項)を次のようにする」、『第一条第二項中「甲」を「乙」とし、同項を第三項として、同条に第二項を次のように新設する』や『第一条第二項を第三項とし、同条に第二項を次のように新設して、第三項(従前の第二項)中「甲」を「乙」とする』とする。
  3. 字句の削り・加えが廃止され、現在はいずれも「改め」方式による。
  4. 規定の一括移動は、「第一条及び第二条を第二条及び第三条とする」といったように、改正前後とも範囲で示す方式による。枝番号の移動を別途示すことは、日本法と同じである。
    なお、日本法のように、最初又は最後の規定のみを別個に移動しないことに注意を要する。
  5. 「~に改める」の代わりに「~にする」とする。
  6. 規定を加えるには、加えられる規定の位置を直接明示して「第○条に第○項を次のように新設する」などとする。後段やただし書についても同様である。
  7. 「~し(하고)、~して(하며)、~し(하고)」と、接続形を交互に変える。
  8. 「うち」に該当するものを用いない。
  9. 「段」や「本文」、「各号以外の部分」(=各号列記以外の部分)を常に明記する。
  10. ただし書(後段)を全改して、後段(ただし書)とする場合には、「第一条第二項ただし書(後段)を後段(ただし書)にして次のようにする」とする[9]

米国法[編集]

米国法では、字句の「改め」にあたる用語を用いないため、『○○法第一条は、「A」を削り、それに代えて「B」を加えることにより改正される(Section 1 of ○○ Act is amended by striking out "A" and inserting in lieu thereof "B")』という表現を行う。

また、長い字句を引用するのに『「A」から「B」までの全部("A" and all that follows through "B")』と引用したり、同一規定内に同一の字句が数個含まれる場合に『2つ目に現れる「A」("A" the second place it appears)』や『「B」の後最初に現れる「A」("A" the first place it appears after "B")』といった特定方法を用いることがある。

なお、同じ英米法系に属するニュージーランドでは、「改め(replace)」を導入している[10]

規定の改正[編集]

規定の全部を改める場合[編集]

概ね次のような形式による。

区分 改正規定の例 備考
原則 題名

題名を次のように改める。

○○法

  • 目次・題名の順になっている法律において、「題名及び目次を次のように改める」として、題名・目次の順に改めた例がある。
目次

目次を次のように改める。

目次

第一章 ○○○(第一条-第○条)

第二章 ×××(第×条・第×条)

[中略]

附則

章名等

第一章の章名を次のように改める。

第一章・・・

  • 許容表現
章等

第一章を次のように改める。

第一章・・・

第一条・・・。

第二条・・・。

  • 連続する規定の改正は、「第○条及び第×条」や「第○条第○項から第×項まで」などのようにまとめて表現することができる。
  • ただし、条の場合、条名は連続していても、中間に章名等が入るときには、連続する条として扱うことができない。 このため、章名等の前と後とで分けて改正を行う。

第一条を次のように改める。

第一条・・・。

第一条第二項を次のように改める。

・・・。

第一条第二項第三号を次のように改める。

・・・

号の細分

第一条第二項第三号ニを次のように改める。

・・・

第一条第二項前段(後段、第○段)を次のように改める。

 ・・・。

本文・ただし書

第一条第二項本文(ただし書)を次のように改める。

 ・・・。

連続する規定 各号

第一条第二項各号を次のように改める。

・・・

・・・

[以下略]

  • 各号の数が増減する場合にも、この方法による。
  • なお、号の細分の場合には、この方法に類する方法を用いることができない。
ただし書(後段)+各号

第一条第二項ただし書(後段)を次のように改める。

 ただし(この場合において)、・・・。

・・・

・・・

[以下略]

  • 本文・前段や、逆(各号あり→各号なし)の場合には、別途各号を加え、又は削る旨を明らかにする。
見出し・付記 条項見出し

第一条の見出しを「(□□□)」に改める。

  • 共通見出しを条項見出しに改める場合には、共通見出しを削り、条項見出しを付する。
共通見出し

第一条の前の見出しを「(□□□)」に改める。

  • 条項見出しを共通見出しに改める場合には、条項見出しを削り、共通見出しを付する。
  • 共通見出しの属する条項の個数が変動する場合には、一度共通見出しを削った上で、改めて共通見出しを加える。 見出しの内容が変わらない場合も同様である。
付記

第一条の付記を次のように改める。

(罰則 第○項については第○条第○号)

章名等

「第一章 □□□」を「第一章 ◇◇◇」に改める。

  • 章名中の見出し部分(「□□□」の部分)の全改と章の移動を同時に行う場合に、次のようにした例がある。 第一章の章名中「□□□」を「◇◇◇」に改め、同章を第二章とする。[11]

規定を移動する場合[編集]

同水準での移動[編集]

概ね次のような形式による。

この際、共通見出しに属する条等が移動したり、増減したりする場合には、共通見出しは、一度削り、移動後に加え直す必要がある。

また、全部改め+移動は、認められないため、一度元の規定を削り(新たにその位置に加えるべき規定があれば、その規定に改め)、新たに移動後の位置に加え(その位置に削るべき規定がある場合には、その規定から改め)直す方法による[12]

区分 改正規定の例 備考
原則 章等

第一章を第二章とする。

  • 許容

第一章第二節を同章第三節とする。

第一条を第二条とする。

第一条第二項を同条第三項とする。

第一条第二項第三号を同項第四号とする。

号の細分

第一条第二項第三号ニを同号ホとする。

連続する規定 4以上 章等

第四章を第五章とし、第一章から第三章までを一章ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

  • 許容

第一章第五節を同章第六節とし、同章第二節から第四節までを一節ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第四条を第五条とし、第一条から第三条までを一条ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

  • 条名が連続している場合であっても、中間に章名等が入るときは、そこで途切れているものとして扱う。
  • 繰下げは後の規定から、繰上げは前の規定から順次移動する。

第一条第五項を同条第六項とし、同条第二項から第四項までを一項ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第一条第二項第六号を同項第七号とし、同項第三号から同項第五号までを一号ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

号の細分

第一条第二項第三号トを同号チとし、同号ニからヘまでを同号ホからトまでとする。

章等の境界

第一章第二条を第三条とする。[13]

    • 「第一章中第二条を第三条とし、同条の次に次の一条を加える」
    • 「第一章中第二条を第三条とし、同章に次の一条を加える」
本則・附則間の移動 条項
  • 本則・附則の条項を削り(他の規定に全改し)、附則・本則に条項を加える(他の規定から全改する)。
章等

「第一章 ・・・」を「第二章 ・・・」に改める。

「第二節 ・・・」を「第三節 ・・・」に改める。

水準の異動を伴う移動[編集]

概ね次のような形式による。

通常の移動と同様、字句改正の後で移動する。

なお、章・節を節・款にするなどの改正の場合には、一度章名・節名を削り、新たに節名・款名を(「前に」方式により)付する方式による。

区分 改正規定の例 備考
改正前 改正後
本則・附則 その条

本則を(本則)第一条とし、同条に見出しとして「(・・・)」を付し、同条の次(前)に次の一条を加える。

第二条・・・。

その項

本則を(本則)第一項とし、同項に見出しとして「(・・・)」を付し、同項の次(前)に次の一項を加える。

・・・。

本則・附則

第二条を削り、第一条の見出し及び条名を削り、(本則)第一項に項番号を付する。

第二条の見出しを削り、同条第一項を第二項とし、同項の前に見出しとして「(・・・)」を付し、同条第二項から第五項までを第三項から第六項までとする。

  • 通常このような改正は考えられない。従って、基本的には、本則・附則の全改によることになると思われる。
  • 1項からなる条の見出しが、そのまま当該項の見出しとなる場合には、特段の措置を講ずる必要がない。
本則・附則

第二項を削り、第一項の見出し及び項番号を削る。

第一項を第一条第一項とする。

第二項の見出しを削り、同項を第一条第二項とし、同条に次の一項を加える。

・・・。

  • 当該項の見出しがそのまま条の見出しとなる場合には、特段の措置を講ずる必要がない。

第一項を第一条とし、同条に見出しとして「(・・・)」を付し、同条の次(前)に次の一条を加える。

第二条・・・。

第二項を第二条第二項とする。

規定を加える場合[編集]

概ね次のような形式による。

なお、元々条等のある位置に、条等を加えようとする場合には、先に、繰上げ又は繰下げを行い、当該加えようとする空間を確保しておいてからこれを加える。

ただし、項番号のない条に項を加える場合には、繰上げ・繰下げを明示する必要がない。

区分 改正規定の例
原則 題名

次の題名を付する。

○○法

目次

題名の次〔第一条の前〕に次の目次を付する。

目次

第一章 ○○○(第一条-第○条)

第二章 ×××(第×条・第×条)

[中略]

附則

  • 〔〕内は、制定文のある法令(全部改正のあった法令など)の場合である。
  • 全部改正のあった法令であって、章立てで、かつ、目次のないものに目次を付する場合には、「第一章の前に」と表現することになる。
章等

第一章の次に次の一章を加える。

第二章・・・

第○条・・・。

第○条・・・。

第一章第二節の次に次の一節を加える。

第三節・・・

第○条・・・。

第○条・・・。

第一条の次(前)に次の一条を加える。

第二条・・・。

第一条第二項の次(前)に次の一項を加える。

・・・。

第一条第二項第三号の次(前)に次の一号を加える。

・・・

号の細分

第一条第二項第三号ニの次(前)に次のように加える。

・・・

第一条第二項に後段(第○段)として次のように加える。

 ・・・。

ただし書

第一条第二項に次のただし書を加える。

 ただし、・・・。

連続する規定 題名+目次

次の題名及び目次を付する。

○○法

目次

第一章 ○○○(第一条-第○条)

第二章 ×××(第×条・第×条)

[中略]

附則

号+項

第一条に次の一号及び一項を加える。

・・・

・・・。

各号

第一条第二項に次の各号を加える。

・・・

・・・

[以下略]

  • 普通、当該条項中に「次の(各号)」などの字句を加える改正に伴って行われることとなる。
ただし書(後段)+各号

第一条第二項に次のただし書を(後段として次のように)加える。

 ただし(この場合において)、・・・。

・・・

・・・

[以下略]

章等の境界

第一章(本則・附則)第二条の次(前)に次の一条を加える。

第三条・・・。

  • 本則・附則は、条名が通し番号になっている場合に明示する必要が生じる。
章等又は条等の末尾 章等

第一章に次の一節を加える。

第○節・・・

第○条・・・。

第○条・・・。

第一章(本則・附則)に次の一条を加える。

第二条・・・。

第一条に次の一項を加える。

・・・。

第一条第二項に次の一号(各号)を加える。

・・

号の細分

第一条第二項第三号に次のように加える。

・・・

本則、条等の先頭

第一条として次の一条を加える。

第一条・・・。

  • 理論的には、第1章や、附則第1条の新設についても同様に可能である。

第一条に第一項として次の一項を加える。

 ・・・。[14]

見出し・付記 条項見出し

第一条に見出しとして「(□□□)」を付する。

共通見出し

第一条の前に見出しとして「(□□□)」を付する。

付記

第一条に付記として次のように加える。

(罰則 第○項については第○条第○号)

章名等

第一条の次(前)に次の章名を付する。

第一章 ・・・

規定を削る場合[編集]

概ね次のような形式による。

なお、規定の廃止後に欠番が生じるのを避けるため、「第○条 削除」などのように形骸を残す場合[15]があるが、これは、あくまでも「第○条 削除」という条文に改めるものであるため、規定の改めの例による。項については、条の段落という建前から、このような方式を用いることはできないとされる[16]

区分 改正規定の例 備考
原則 題名

題名を削る。

目次

目次を削る。

第一条を削る。

  • 連続する規定の改正は、「第○条及び第×条」や「第○条第○項から第×項まで」などのようにまとめて表現することができる。
  • ただし、条の場合、条名は連続していても、中間に章名等が入るときには、連続する条として扱うことができない。 このため、章名等の前と後とで分けて改正を行う。

第一条第二項を削る。

第一条第二項第三号を削る。

号の細分

第一条第二項第三号ニを削る。

第一条第二項第三号後段(第○段)を削る。

ただし書

第一条第二項第三号ただし書を削る。

連続する規定 各号

第一条第二項各号を削る。

  • ただし書(後段)とともに各号を削る場合であっても、別途各号の削りを明示する。
見出し・付記 条項見出し

第一条の見出しを削る。

共通見出し

第一条の前の見出しを削る。

付記

第一条の付記を削る。

章名等 〈原則〉

「第一章 ・・・」を削る。

〈許容〉

第一章の章名を削る。

韓国の場合[編集]

規定を移動する場合には、「第一条及び第二条(第一条から第○条まで)を各々第二条及び第三条(第二条から第×条まで)とする」などのように、移動前後の標記部分を直接摘示する方法による。

規定を加える場合には、加えられる位置を直接指定して、「第一条を次のように新設する」、「第一条に第二項(ただし書・後段)を次のように新設する」などのように表現する。

規定を廃止する場合には、韓国の法制執務では欠番が認めるため、形骸を残す方法は用いず、もっぱら削る方法による。


字句等の改正[編集]

字句[編集]

概ね次のような形式による。

同一の字句のうちの一部のみについて改正する必要があるときは、〝第○条中「□□□を」を”や“第○条中「「□□□」を〟、〝第○条中「その□□□」を〟などのように、前後の字句や記号とともに引用する。

また、カギ括弧により引用する際、元の規定自体に含まれるカギを更にカギで引用することとなる場合がある。一部改正法令ではそのまま〝第○条中「□□□」の下に「」と、「◇◇◇」とあるのは「△△△」を加える〟とカギの中にカギを含む字句をそのまま引用する形式によるが、修正案の場合には〝第○条中「□□□」の下に『」と、「◇◇◇」とあるのは「△△△』を加える〟と二重カギの中にカギを含む字句を引用する形式によることもできる。

区分 改正規定の例 備考
原則 加え

第一条第二項第三号ただし書中「□□□」の下に「◇◇◇」を加える。

  • ただし書は、常に明示する。
  • 本文・段及び各号列記以外の部分は、内閣法制局の例規では「特記することを妨げない」ものとされるが、実際には必要な場合にのみ明示する。
改め

第一条第二項第三号ただし書中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

削り

第一条第二項第三号ただし書中「□□□」を削る。

条の見出し 見出し中の字句のみ

第一条の見出し中「×××」を「△△△」に改める。

見出し以外の部分中の字句のみ

第一条中「×××」を「△△△」に改める。

見出し及び見出し以外の部分中の字句の両方

第一条(見出しを含む。)中「×××」を「△△△」に改める。

当該法令全体

「□□□」を「◇◇◇」に改める。

複数の法令

次に掲げる法律の規定中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

○○法第一条第二項第三号

××法第四条第五項第六号

  • 加え・削りも同様に可能である。
  • また、字句の改めが一般的であるが、表の項や各号を削ったり、表の項をカギ括弧で加えたりした例もある。いずれにしても、1文で書ききれる改正である。
複数の改正規定

次に掲げる改正規定中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

第一条のうち○○法第二条の改正規定

第三条のうち××法第四条の改正規定

  • 修正案で用いることができるとされる。加え・削りも同様に可能である。
米国法[編集]

米国法では、長い字句を引用する際に〝第一条中「□□□」から「◇◇◇」までを削り、これに代えて「△△△」に加える〟

目次・列記[編集]

概ね次のような形式による。

区分 改正規定の例 備考
目次 加え

目次中「第一章総則(第一条・第二条)」を
















に改める。

改め

目次中「第二章□□□(第三条-第五条)」を「第三章◇◇◇(第四条・第五条)」に改める。

削り

目次中
















を「第一章総則(第一条・第二条)」に改める。

目次中「第一章□□□(第三条-第五条)」を削る。

列記(改行) 加え

第一条第二項中「□□□課」を





に改める。

  • 課等の設置規定の改正に多く見られる。
改め

第一条第二項中「□□□課」を「◇◇◇課」に改める。

削り

第一条第二項中





を「□□□課」に改める。

第一条第二項中「◇◇◇課」を削る。

列記(空白) 加え

別表第一○○の項○○の欄中「□□□」を「□□□ ◇◇◇」に改める。

  • 別表等で管轄区域や(課税等の)対象品目を列記する場合に用いられる。
  • また、道路交通法の付記でも見られる。
改め

別表第一○○の項○○の欄中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

削り

別表第一○○の項○○の欄中「□□□ ◇◇◇」を「□□□」に改める。

別表第一○○の項○○の欄中「◇◇◇」を削る。

[編集]

表の改正は、概ね次のような形式による。

区分 改正規定の例
図画的把握 加え

別表第一中に改める。

改め

別表第一中に改める。

削り

別表第一中に改める。

別表第一中◇◇◇◇◇◇を削る。

論理的把握 加え

別表第一□の項の次に次のように加える。

◇◇◇◇◇◇
改め

別表第一□の項を次のように改める。

◇◇◇◇◇◇
削り

別表第一□の項を削る。

韓国の場合[編集]

韓国の法制執務では、字句の改正が改めに統一されており、前段・後段、各号列記以外の部分[17]等についても明示することとされている。

また、韓国では、法令に目次を付さない扱いとなっているので、かかる改正は存在しない。

改正規定の改正等[編集]

改正規定は、かつて「改正に関する部分」とも表現されていたことからも分かるように、ここまで述べてきたような方法によって記載された、それぞれの改正内容を定めた規定をいう。

改正規定の改正は、一部改正法令の成立後施行までの間にその法令に改正の必要が生じた場合に行われる。典型例として、A法を改正するB法が施行される前に、B法よりも後に施行されるC法によりA法を改正する場合が挙げられる。

また、改正規定の改正と同様の技術を用いるものとして改正規定の修正がある。件数だけで見れば、改正規定の改正よりも多い。

規定や字句の修正と異なり、改正規定の修正では、各議院のローカルルールが相当程度に見られる。

なお、以下において、参法というのは原則『「法令の改め方」『立法技術入門講座』〈第3巻〉』の方式をいう。したがって、実際の参法の方式と異なることがある。

[編集]

架空のケースとして、D法・C法・B法の順に施行される次のような場合を想定する。

ただし、実際にこのような改正が行われることは多くないと思われる。

A法

第一条 ・・・X、A及びY・・・。

……

B法

……

第二条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「A」の下に「、B」を加える。

……

C法

……

第三条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「A」を「C」に改める。

……

附 則

……

第二条 B法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第二条のうちA法第一条の改正規定中「A」を「C」に改める。

D法

……

第四条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「A」の下に「、D」を加える。

……

附 則

……

第三条 B法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第二条のうちA法第一条の改正規定中「A」を「D」に改める。

第四条 C法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第三条のうちA法第一条の改正規定中A」を「CA、D」を「D、Cに改める。

附則第二条のうちB法第二条中A法第一条の改正規定の改正規定中「A」を「D」に改める。

まず、D法の施行により、次のように改正される。

A法

第一条 ・・・X、A、D及びY・・・。

……

B法

……

第二条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「」の下に「、B」を加える。

……

C法

……

第三条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「A」を「CA、D」を「D、C」に改める。

……

附 則

……

第二条 B法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第二条のうちA法第一条の改正規定中「」を「C」に改める。

次いで、C法の施行により、次のように改正される。

A法

第一条 ・・・X、A、DD、C及びY・・・。

……

B法

……

第二条 A法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第一条中「」の下に「、B」を加える。

……

最後に、B法の施行により、次のように改正される。

A法

第一条 ・・・X、D、C、B及びY・・・。

……

改正規定の概念とその引用[編集]

改正規定には、制定法令(全部改正法令を含む。)の規定とは異なり、条や項などの「住所」は付されていない。

このため、各改正規定を引用するには、それぞれの改正規定の「第○条第○項中(第○条を・第○条に)・・・改める(削る・加える・とする)」とった文言を元に「第○条第○項の改正規定」や「第○条の次に1条を加える改正規定」のようにすることが原則となる。

一方で、「第○条第○項第○号中「○○」を「○○」に改め、同項第○号中「○○」の下に「○○」を加え、同項第○号を同項第○号とし、同項第○号中「○○」を削り、同号を同項第○号とし、同項第○号の次に次の1号を加える」のように、煩雑な改め文を捉える場合にまで、徹底的にそれぞれの改正規定の文言を用いて捉えることとなると煩雑になることから、条未満の単位の改正は、条・項の単位にまで丸める(抽象化して捉える)ことができる[18]

この際、条単位にまで丸めた結果、複数の段落をまとめて捉えることとなっても構わない。 例えば、第○条第1項の全部を改め、同条に1項を加える改正は、「第○条第1項の改正規定」と「第○条に1項を加える改正規定」の2つの段落で行うこととなるが、必要に応じて、「第○条の改正規定」のように2つの段落を束ねる形で丸めてしまっても構わない。

なお、条又は項中の改正規定や、改正規定中の特定の部分を特定し、更にそのうちの字句を改める場合のように、「・・・中」が重なることとなる場合には、「第一条のうち、○○法第二条の次に二条を加える改正規定のうち第三条第四項中「A」を「B」に改める」のように、一番最小の単位に係る「中」のみを残して、それ以外は、「のうち」とする。この場合において、閣法・参法では「のうち」の下に読点を打つことがあるが、衆法では読点を打たないこととなっている。

改正規定の単位[編集]

ここでまず問題になるのは、改正規定は「それぞれの改正内容を定めた規定」をいうとしても、この「規定」というのをどこまで細かく捉えるかという点である。「段落」を単位として捉える方式と、「要素」を単位として捉える方式がある。

2つの方式は、それぞれ便宜的に使い分けられ、同一の法令内でも必ずどちらかの方式だけが用いられる訳ではない。

「段落」を単位として捉える方式[編集]

1つ目の方式は、改め文の各段落[19]を単位として捉える方式である。

この方式は、改め文自体の構造から、改正規定を形式的に捉えることができるという点において優れている。一方で、この方式を厳密に貫けば、各段落中のごく一部を改めるに過ぎない場合でも段落全体を引用しなければならないという点で難がある。また、「改め・・・る改正規定」という表現に違和感を覚える向きもある。

この方式によれば、「第○条第○項中・・・改め、同条第×項中・・・改め、同条を第△条とする。」という改め文は、「第○条第○項及び第×項を改め、同条を第△条とする改正規定」と引用する。また、条単位に丸めて「第○条を改め、同条を第△条とする改正規定」と引用することもできる。

このため、「第○条を第△条とする」の部分を「第○条を第□条とする」に改める場合には、「第○条を改め、同条を第△条とする改正規定中」と引用することになる。

また、「第○条を第△条とする」の部分の施行期日だけを、別途定める場合には、第○条移動に係る部分のみを分離する必要があるため、「第○条を改め、同条を第△条とする改正規定(第○条を第△条とする部分に限る。)」等と引用する。

「要素」を単位として捉える方式[編集]

2つ目の方式は、各段落に含まれるそれぞれの改正要素(それ以上段落を分けることができない最小の要素をいう。)を単位として実体的に捉える方式である。

この方式は、「改め文の段落は、それぞれの改正要素が便宜的に結合した結果に過ぎない」という考え方に由来する。例えば、「第○条中・・・改め、同条を第△条とする。」という改め文は、条単位でまとめるという原則からすれば、本来「第○条中・・・改める。 
 第○条を第△条とする。」
という2つの段落からなるべきものであるが、これが便宜的に一つの段落になっているに過ぎないと考えるのである。

この方式は、各段落のうち改正の対象となる要素を直截に特定できる点で優れている。一方で、この方式は、制定法令の改正の場合に、段落よりも小さい単位で捉えないこととの整合性の面において難がある。また、1つの段落を複数の「(改正)規定」として捉える点に違和感を覚える向きもある。

この方式によれば、「第○条第○項中・・・改め、同条第×項中・・・改め、同条を第△条とする。」という改め文は、もっとも細かく捉える場合「第○条第○項の改正規定、同条第×項の改正規定及び同条を第△条とする改正規定」と引用することができる。また、条単位に丸めれば「第○条の改正規定及び同条を第△条とする改正規定」と表現することもできる。

このため、「第○条を第△条とする」の部分を「第○条を第□条とする」に改める場合には、「第○条を第△条とする改正規定中」とだけ引用すれば足りる。同じ部分を施行期日を定める規定などで引用する場合も、同様である。

改正規定の表現[編集]

次に問題になるのは、上記により、「改正規定」として切り出した箇所をどのように表現するのかという点である。

1つ目は、原改正規定の表現をできるだけそのまま用いるという方式である。

この立場は、原改正規定の表現を最大限そのまま用いることで、原改正規定を確実に特定することができるという点で優れている。一方で、原改正規定の表現にこだわることで、表現が冗長になり、かえってどの改正規定を表しているのかが分かりづらくなる可能性もある。しかし、この点については、適宜、条・項単位での丸めを行うことで、ある程度の対応が可能と考えられる。

2つ目は、原改正規定の改正の内容を要約し、簡潔に表現する方式である。

この立場は、改正内容を簡潔に表すことで、改正される改正規定の内容が改め文自体から把握しやすいという点で優れている。一方で、原改正規定の表現と異なる表現をすることにより、原改正規定の特定に疑義が生じる可能性も完全には拭えない。


これらの立場の違いが端的に現れる例としては、次のようなものがある。

  • 第三条を第四条とし、第二条を第三条とし、第一条を第二条とする。」という改正規定
    • 前者:第三条を第四条とし、第二条を第三条とし、第一条を第二条とする改正規定
    • 後者:第一条から第三条までを一条ずつ繰り下げる改正規定
  • 第一章中第二条の次に次の一条を加える。
    第二条の二 ・・・。
    • 前者:第一章中第二条の次に一条を加える改正規定
    • 後者:第二条の次に一条を加える改正規定
  • ①「「第一章 ○○○」を「第一章 ×××」に改める。」及び ②第一章の章名を次のように改める。
    第一章 ×××
    • 前者:① 「第一章 ○○○」を「第一章 ×××」に改める改正規定、② 第一章の章名の改正規定
    • 後者:①② 第一章の章名の改正規定

段落レベルの改正[編集]

段落レベルの改正には、全部又は一部を改める場合、削る場合及び加える場合がある。

全部を改める場合には、まず当該改正規定の段落の特定を行った上で、「~改正規定を次のように改める」として、全部改正後の改正規定を、その溶け込み後の配字に従って記載する。

一部を改める場合のうち、単独の要素のみに係るときは、基本的に要素レベルの改正として考えれば足りる。複数の要素に係るときは、段落レベルの改正として捉えることとなる。まず、当該改正規定の段落の特定を行った上で、通常の条項中の字句の改めと同様に、カギ括弧で捉えて改正すればよい。

削る場合には、特定した段落について「~改正規定を削る」とすればよい。

加える場合には、まず、新設する改正規定が溶け込む位置の直前又は直後の改正規定を特定し、「~改正規定の次(前)に次のように加える」として、当該新設する改正規定を、その溶け込み後の配字にしたがって記載する。「次(前)に」とする以上、当該直前又は直後の改正規定の段落全体として捉える必要があろう。

いずれにしても、当該段落の特定が必要となる。

段落の特定[編集]

概ね次のような形式による。

区分 改正規定の引用の例 改正規定の例 備考
原則 規定の一部を改める改正規定 第一条の改正規定

・ 第一条中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

・ 第一条第二項を削る。

  • 規定の一部を改める改正規定のみを表す場合には、単に「第一条の改正規定」とすれば足りる。
  • 要素レベルで改正規定を把握する立場では、規定の一部を改める改正規定とそれ以外の改正規定とは、常に別の改正規定と捉えることとなるため、事実上、「第一条の改正規定」という表現のみを用いる。全部を改める改正規定についても、同様である。
  • なお、規定中の字句の改め、削り及び加え並びに規定の細分の改正は、いずれも当該規定のレベルでは、「改め」となる。
第一条を改める改正規定

本則中「□□□」を「◇◇◇」に改める改正規定

本則中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

  • このような特定の仕方は、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案中修正(第177回国会閣法第2号)に用例がある[20]
  • この場合に、単に「本則の改正規定」とすると、本則中の条項の改正規定全てを引用することとなってしまうためと考えられる。
  • なお、理論的には、「本則中「□□□」を削る改正規定」や「本則中「□□□」の下に「◇◇◇」を加える改正規定」という表現も考えられる。
規定の全部を改める改正規定 第一条の改正規定

第一条を次のように改める。

第一条・・・。

  • 規定の全部を改める改正規定のみを表す場合には、単に「第一条の改正規定」とすれば足りる。
第一条を改める改正規定
  • 国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(第164回国会閣法第37号)に例がある[21]
規定を移動する改正規定 第一条を第二条とする改正規定

第一条を第二条とする。

  • 基本的には、移動のみを単独で行うことはない。
規定を削る改正規定 第一条を削る改正規定

第一条を削る。

規定を加える改正規定 第二条の次(前)に一条を加える改正規定

第二条の次(前)に次の一条を加える。

第三条・・・。

  • 題名や見出しなどの場合には、「付する改正規定」とする。
複合的改正 規定の一部を改め、かつ、移動する改正規定
  • 第一条を改め、同条を第三条とする改正規定
  • 第一条第一項を改め、同条第三項を削り、同条を第三条とする改正規定
  • 第一条第一項の改正規定、同条第三項を削る改正規定及び同条を第三条とする改正規定
  • 第一条の改正規定(ほかに第一条の改正規定がない場合)

第一条第一項中「□□□」を「◇◇◇」に改め、同条第三項を削り、同条を第三条とする。

  • 第一条第一項の改正規定及び同条第三項を削り、同条を第三条とする改正規定
  • 第一条第一項の改正規定並びに同条第三項を削る改正規定及び同条を第三条とする改正規定
  • 第一条の改正規定(ほかに第一条の改正規定がなく、かつ、2段落ともを引用する場合)

第一条第一項を次のように改める。

 ・・・。

第一条第三項を削り、同条を第三条とする。

規定を削り、移動し、加える改正規定 第三条を削り、第二条を第三条とし、第一条の次に一条を加える改正規定

第三条を削り、第二条を第三条とし、第一条の次に次の一条を加える。

第二条・・・。

規定の一部を改め、続けて他規定の全部を改める改正規定
  • 第一条第一項及び第三項の改正規定
  • 第一条第一項の改正規定及び同条第三項の改正規定

第一条第一項中「□□□」を「◇◇◇」に改め、同条第三項を次のように改める。

・・・。

章の境界にある条を移動する改正規定
  • 第三条(第一項)を改め、第二章中同条を第四条とする改正規定
  • 第三条(第一項)の改正規定及び第二章中同条を第四条とする改正規定

第三条第一項中「□□□」を「◇◇◇」に改め、第二章中同条を第四条とする。

  • 参法では、改正規定を特定するのに、必ずしも「第二章中」と明示しなくてもよいとされる。
複数の規定を移動する改正規定
  • 第四条を第五条とし、第三条を第四条とする改正規定
  • 第三条及び第四条を一条ずつ繰り下げる改正規定

第四条を第五条とし、第三条を第四条とする。

* 第四条を第五条とし、第一条から第三条までを一条ずつ繰り下げる改正規定
  • 第一条から第四条までを一条ずつ繰り下げる改正規定

第四条を第五条とし、第一条から第三条までを一条ずつ繰り下げる。

次の点に留意する必要がある。

まず、閣法、衆法及び参法でおおむね一致する取扱いについては、次のとおりである。

  1. 改正前後で、改正の種類が変わっても構わない。
    例えば、規定の全部を改める改正規定を規定の一部を改める改正規定に改める、規定を削る改正規定を規定の一部を改め、移動する改正規定に改めるなどである。
  2. 複数の段落を同時に引用することができる。
    例えば、「第一条の改正規定」として、第一条第一項を全部改める改正規定及び同条第二項を第三項とし、同条第一項の次に一項を加える改正規定を引用するなどである。
  3. 改正前後で段落数が増減しても構わない。
    例えば、第一条第七項を同条第八項とし、第六項の次に一項を加える改正規定を、第一条第七項を同条第九項とし、同条第六項を同条第七項とし、同項の次に一項を加える改正規定及び第一条第五項の次に一項を加える改正規定に改めるなどである。

そのほか、次のとおりである。

  1. 連続する2以上の段落を同時に引用する場合の方法について
    1. 衆法では、それぞれの段落を順に引用して「第一条第一項の改正規定及び同条第二項の改正規定、第二条の改正規定並びに第四条の改正規定」等のようにする。この場合、各段落に含まれる改正要素同士を「及び」で結び、段落同士を「並びに」で結ぶ。
    2. 閣法及び参法では、最初と最後の段落のみを引用して、「第一条第一項及び第二項の改正規定から第四条の改正規定まで」等のようにする。
  2. 改正前後の改正対象の異動について
    1. 衆法では、改正前と改正後とで、改正対象に異動が生じても構わない。
      例えば、第一条の改正規定を第三条の改正規定に改めるなどである。
    2. 参法では、改正前と改正後とで、改正対象がおおむね対応する必要があるとする。
      例えば、第一条の改正規定を第一条第一項の改正規定及び同条第三項の改正規定に改めることはできる。しかし、第一条の改正規定を第三条の改正規定に改めることはできない。
  3. 複合的改正規定の処理について
    1. 衆法では、段落に含まれるそれぞれの改正要素を「改正規定」の単位として引用する。ただし、移動の前後に行う削り・加えの要素は、移動と一体として扱う。
      例えば、「第一条を削り、第二条を第一条とし、同条の次に一条を加える改正規定」を分解して、「第一条を削る改正規定、第二条を第一条とする改正規定及び同条の次に一条を加える改正規定」のように表現することはできない。
    2. 参法では、段落レベルの改正にあたっては、段落を「改正規定」の単位として引用する。ただし、要素レベルの改正にあたっては、各要素を「改正規定」の単位として引用すれば足りる。

段落に含まれる条項の改正[編集]

当該段落により全部改正され、又は新設される各条項(以下、「新条項」という。)に係る部分の改正には、当該部分の全部又は一部を改める場合、移動する場合、削る場合及び加える場合がある。

新条項段落に含まれる条項の特定には、通常の条項に準ずる引用を行う方式と、通常の条項とは異なる引用を行う方式とがある。

これらについても、徹底的にどちらかのみを用いるとは限らず、例えば、新条項中の字句については後者により改め、新条項の移動については前者により行うといった例も見られる。

通常の条項に準ずる引用を行う方式[編集]

衆法・参法及び閣法のいずれにも例がある。

各新条項の引用は、「~改正規定中第一条(第二項第三号)」などのように、最初に改正規定を特定して引用するほかは、通常の条項の改正の場合と同様である。

「第一条の次に一条を加える改正規定中第二条第三項を次のように改める」、「第一条の改正規定のうち同条第二項中「甲」を「乙」に改める」、「第一条の改正規定中「第一条を」を「第二条を」に改め、第一条を第二条とする」、「第一条の次に三条を加える改正規定中「三条を」を「二条を」に改め、第四条を削る」、「第一条の改正規定中同条第二項に次の一号を加える」などのように改正を行えばよい。

通常の条項とは異なる引用を行う方式[編集]

基本的に、閣法によく見られる方式である。

各新条項は、「~改正規定中第一条第二項第三号に係る部分」又は「〜改正規定(第一条第二項第三号に係る部分に限る。)」として引用することが基本となる。「第○条に係る部分」等とするのは、当該部分は、被改正法令に溶け込むまでの間はあくまで「溶け込んだら第○条になるはずの部分」に過ぎず、「第○条」それ自体ではないためと考えられる。

次のような改正の方法が見られるものの、単純な字句レベルの改正や新条項が大部になる場合を除いては、当該改正規定全体を改める形になることが少なくない。

まず、新条項の全部を改める場合には、「第一条の改正規定中同条第二項(第三号)に係る部分を次のように改める」などとする。 また、新条項中の字句を改める場合には、「第一条の改正規定のうち同条第二項(第三号)に係る部分中「甲」を「乙」に改める」などとするが、具体的な条項を指定する必要がなければ、「第一条の改正規定中「甲」を「乙」に改める」のようにすることで足りる。

新条項を移動する場合には、「第一条の改正規定中「第一条」を「第二条」に改める」(規定を全改する改正規定)や「第一条に一項を加える改正規定中「2」を「3」に改める」(規定を加える改正規定)などとする。

改正規定中の末尾に新条項を加える場合には、当該改正規定を特定して「第一条の次に二条を加える改正規定中「次の二条」を「次の三条」に改め、同改正規定に次のように加える」などとする。

また、条項に細分を加える場合のうち、新条項の途中に加えるときは「第一条の次に二条を加える改正規定のうち、第二条第三項に係る部分中・・・改め、同条に係る部分に次のように加える」などと、末尾に加えるときは単に「第一条の次に二条を加える改正規定のうち、第二条第三項に係る部分中・・・改め、同改正規定に次のように加える」などとする。

新条項を削る場合には、「第一条の次に三条を加える改正規定中「次の三条」を「次の一条」に改め、第三条及び第四条に係る部分を削る」などとする。

このようにそれぞれの区分に応じて、当該段落又は段落中の新条項を特定する必要がある。

要素レベルの改正[編集]

各段落に含まれるそれぞれの改正要素を単位とする改正には、全部又は一部をめる場合、削る場合及び加える場合がある。

各要素の引用は、基本的に段落の場合と同様に行う。

要素の全部又は一部を改める場合には、当該要素を特定して、『第一条第二項の改正規定中「甲」を「乙」に改める』のようにカギ括弧で引用して行えばよい。

削る場合には、当該要素のみを特定して「第一条第二項の改正規定を削る」とする例と、段落全体として引用して、『第一条の改正規定中「、同条第二項中・・・改め」を削る』や「第一条第二項の改正規定及び同条第三項の改正規定中「第一条第二項中・・・改め、同条第三項」を「第一条第三項」に改める』などとする例がある。

加える場合には、その直前の要素又は当該段落全体を特定して、『第一条第二項の改正規定中「・・・改め」の下に「、同条第三項中・・・改め」を加える』のように行う。

改め文方式の改善の試み[編集]

このように、日本では、従来より、国及び大部分の地方自治体で、改め文方式による法令の改正が行われてきた。

しかし、改め文で記述された法令は、対象となる既存の法令のうち、どの部分をどのように改めるかを逐語的に記述したものであることから、既存の法令の内容を知らなければ、改め文だけでどのような改正が行われたかを理解することが難しい[22]

このことから、改正の内容を分かりやすくするための工夫として、改正を当該条文又は法令全体を全部改正する形で行う、いわゆる全文改め方式が考案されているが、これを全面的に導入した例はないようである[23]

このほか、従来より行われてきた試みとして、国では、官報に「法律・政令のあらまし」を、ホームページに新旧対照表等を掲載している。地方公共団体の中には、さらに進んで公報自体に新旧対照表を併載するところもある。

また、議会に提出される議案自体にも、改正の内容を分かりやすく示すための参考資料として、新旧対照表が添付する場合が多い。

それならば、最初から新旧対照表自体を一部改正法令としてしまおうというのが、次の項で説明する新旧対照表方式の基本的な発想である。

なお、日本のほか、韓国や中国、台湾などでは法案の資料として新旧対照表を作成している。また、ドイツでは、民間レベルで法令の新旧対照表を提供しているサイトがある()。これに対し、米国では、法令案の修正の場合において、いわゆる「見消し」を作成することが規則で定められている()。

新旧対照表方式[編集]

平成12年に鳥取県で最初に新旧対照表方式による条例・規則の改正が導入され、都道府県レベルでは、令和2年6月時点で16府県が新旧対照表方式を導入している。

府県 導入時期 方式の概要
(現  行)
岩手県 H17/12 備考・簡易
秋田県 H30/12
※規則のみ
本文・簡易・改正する
栃木県 H30/01 本文・簡易・改正する
新潟県 H17/10 本文・詳細
福井県 R02/04 本文・簡易・改正する
静岡県 H23/01 備考・簡易
三重県 H30/12 本文・簡易・改正する
大阪府 H22/07 本文・簡易・改正する
和歌山県 H30/02 本文・簡易・改正する
鳥取県 H12/07 本文・簡易・改正する
広島県 R01/07 本文・簡易・改正する
香川県 H19/01 本文・簡易・改正する
愛媛県 H18/08 本文・簡易・改正する
佐賀県 H25/01 本文・簡易・である
長崎県 H27/07 本文・簡易・である
宮崎県 H20/11 本文・簡易・改正する

国レベルでは、平成14年から自民党のe-Japan重点計画特命委員会で新旧対照表方式の導入が検討された。

同委員会からの申入れを受けて、内閣法制局では、平成15年5月12日の文書課長等会議で各府省に対し、新旧対照表方式についての検討依頼を行い、その回答を受けて、「改正対照表を用いた改正方式について(案)」(以下同文書を「方式書」といい、これによる新旧対照表の作成の方式を「方式書方式」という。)が作成されたが、このときは、国レベルで採用されるには至らなかった。

その後、平成28年に入って、当時行革担当大臣国家公安委員会委員長であった河野太郎の主導で、国家公安委員会規則に、最初[24]に方式書方式による新旧対照表方式の改正が導入された[25]。これを受けて内閣官房行政改革推進本部事務局より「各府省等法令窓口担当官」宛に「新旧対照表の方式による府省令等の改正について」(事務連絡)が発せられ、「法令改正の中には、改め文方式よりも新旧対照表方式で行うことにより、国民にとって改正内容が分かりやすくなるものがある」との考え方が示された。その後、国土交通省を皮切りに、現在、全ての省において新旧対照表方式が用いられている[26]

新旧対照表方式の種類[編集]

新旧対照表方式では、各府省庁等[27]・自治体ごとにいくらかの異なる方式が見られる。

旧様式方式[編集]

従来から各府省庁等・自治体で用いられてきた新旧対照表をそのまま用いる方式である。

本文等[編集]

本文等(本文、備考欄その他表前又は表後の記載をいう。以下同じ。)のうち、主なものとしては、次のものがある。

  • 愛媛県方式:
 次の表の改正前の欄に掲げる規定を同表の改正後の欄に掲げる規定に、下線及び太線で示すように改正する。
  • 農林水産省方式:
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分(以下「傍線部分」という。)でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分があるものは、これを当該傍線部分のように改め、改正後欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正前欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを加え、改正前欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを削る。
  • 厚生労働省[28]方式:
 ○○施行規則(令和○年厚生労働省令第○号)の一部を次の表のように改正する。〈改正文〉
(傍線部分は改正部分)〈注 記〉
  • 岩手県方式:
備考 改正部分は、下線の部分である。
  • 新潟県方式(鳥取県方式):
 次の表の改正前の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動条等」という。)に対応する同表の改正後の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動後条等」という。)が存在する場合には当該移動条等を当該移動後条等とし、移動条等に対応する移動後条等が存在しない場合には当該移動条等(以下「削除条等」という。)を削り、移動後条等に対応する移動条等が存在しない場合には当該移動後条等(以下「追加条等」という。)を加える。
 次の表の改正前の欄中別表及び様式並びにこれらの細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動別表等」という。)に対応する次の表の改正後の欄中別表及び様式並びに細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動後別表等」という。)が存在する場合には当該移動別表等を当該移動後別表等とし、移動別表等に対応する移動後別表等が存在しない場合には当該移動別表等を削り、移動後別表等に対応する移動別表等が存在しない場合には当該移動後別表等を加える。
 次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、削除条等並びに別表及び様式並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正部分」という。)に対応する次の表の改正後の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、追加条等並びに別表及び様式並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正後部分」という。)が存在する場合には当該改正部分を当該改正後部分に改め、改正部分に対応する改正後部分が存在しない場合には当該改正部分を削り、改正後部分に対応する改正部分が存在しない場合には当該改正後部分を加える。
 次の表の改正前の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正表」という。)に対応する次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正後表」という。)が存在する場合には当該改正表を当該改正後表に改め、改正表に対応する改正後表が存在しない場合には当該改正表を削り、改正後表に対応する改正表が存在しない場合には当該改正後表を加える。
[編集]

基本的には、それぞれの省や自治体で従来から用いられてきた新旧対照表と同様であるが、自治体によっては、改め文を前提とした従来の新旧対照表から一部改良を行ったものを用いるところもある。

このため、それらを反映して次のようなバリエーションがある。

  • 字句
    • 「削り」又は「加え」を「改め」に統一するか否か。
    • 改正前欄と改正後欄で傍線(下線を含む。以下同じ。)部分の字数を合わせるために、空白文字を挿入するか否か[29]
  • 別表等(別表その他の表、様式及び目録をいう。以下同じ。)
    • 一部改正
      • 表の項(号)や欄の改正を、太線(項の全体を囲む。)でするか、傍線(項内の字句の全体に付する。)でするか。
    • 全部改め、削り、加え
      • 新旧対照表で行うか、改め文で行うか。
      • 新旧対照表で行う場合、あくまで新旧対照表内に別表等を入れ込むのか、[様式第一 別紙]のような注釈を行い、実際の別表等は別紙とするのか。

新様式方式[編集]

本文[編集]

新様式方式の本文には、大きく分けて、方式書方式、原子力規制委員会方式及び大阪市方式がある。

方式書方式では、次のような本文が用いられる。

〈方式書で示された全ての要素を示した場合〉
 次の第1表及び第2表(1)により、改正前欄に掲げる規定(題名を含む。以下この条において同じ。(a))の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(2)をこれに順次(3)対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(2)のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分([]で注記した項番号を含む。以下この条において同じ。(b))に二重傍線を付した規定(以下この条において「対象規定」という。(c))は、その標記部分が同一のものは(4)当該対象規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは(4)改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正前欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出し(5)で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これ(6)を削り、改正後欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出し(5)で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これ(6)を加える。


〈改正される字句が1つのみの場合〉
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改める。


〈規定が1種類だけの場合〉
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正後欄に掲げるその標記部分に二重傍線を付した節を加える。

大阪市方式では、次のような本文が用いられる。

〈大阪市の手引で示された全ての要素を示した場合〉
 次の表により、改正前欄に掲げる規定(題名並びに章名、節名、款名及び目名を含む。以下同じ。)の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分([ ]で注記した項番号を含む。以下同じ。)に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)及び二重傍線を付した共通見出しのうち、その標記部分が同じ番号の対象規定で標記部分以外の部分を掲げているものの改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定のように改め、改正前欄に掲げる対象規定で標記部分以外の部分を掲げていないものに改正後欄に掲げる対象規定のように項番号を付し、二重傍線を付した共通見出しは改正前欄に掲げる共通見出しを改正後欄に掲げる共通見出しのように改め、その標記部分が異なる番号の対象規定の改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正前欄に掲げる対象規定(条の第1項の規定を除く。)に改正後欄に掲げる対象規定のように項番号を付し、改正前欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出しで改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものを削り、改正後欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出しで改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものを加える。

原子力規制委員会方式では、次のような本文が用いられる。

〈原子力規制委員会の解説書で示された全ての要素を示した場合〉

(改正の対象となる規則の一部改正)

第一条 次の各号に掲げる規則の一部を、それぞれ当該各号に定める表により改正する。

(1) ○○規則(令和○○年原子力規制委員会規則第○○号) 別表第1

(2) ○○規則(令和○○年原子力規制委員会規則第○○号) 別表第2

第二条 前条各号に定める表中の傍線、破線及び二重傍線の意義は、次の各号に掲げるとおりとする。

(1) 改正前欄に掲げる規定(題名を含む。以下この号において同じ。)の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改めること。

(2) 条項番号その他の標記部分(以下単に「標記部分」という。)に二重傍線を付した規定を改正前欄及び改正後欄に対応して掲げている場合であって、標記部分が改正前欄及び改正後欄で同一のときは、改正前欄に掲げる規定を改正後欄に掲げるもののように改めること。

(3) 標記部分に二重傍線を付した規定を改正前欄及び改正後欄に対応して掲げている場合であって、標記部分が改正前欄及び改正後欄で異なるときは、改正前欄に掲げる規定を改正後欄に掲げる規定として移動すること。

(4) 標記部分に二重傍線を付した規定又は二重傍線を付した見出しを改正前欄に掲げている場合であって、改正後欄にこれに対応するものを掲げていないときは、当該規定を削ること。

(5) 標記部分に二重傍線を付した規定又は二重傍線を付した見出しを改正後欄に掲げている場合であって、改正前欄にこれに対応するものを掲げていないときは、当該規定を新たに追加すること。

方式書方式[編集]

以下では、最も多く用いられている方式書方式に則り、対照表と、それに対応する本文の記載について解説する。

対照表の記載方式については、原子力規制委員会方式や大阪市方式でも、おおむね同様である。

表に関する記載[編集]

本文では、初めに実際の改正の内容を表した表について規定する。

区分 本文
(1) 施行期日を分ける必要がない場合 次の表により

次の表により・・・改め・・・る。

改正後 改正前
第○条 云々 第○条 云々
一部施行期日を分ける必要がある場合
多段ロケットとする必要がある場合 次の第一表及び第二表(第一表から第n表まで)により

次の第一表及び第二表により・・・改め・・・る。

第一表

改正後 改正前
第○条 云々 第○条 云々

第二表

改正後 改正前
第○条 云々 第○条 云々
字句等の改正[編集]

次の区分により規定する。

区分 本文
(2) 字句の改正 傍線を付した部分 字句・見出し[30] 方式書方式の傍線による改正の例.png
  • 削り・加えの場合は、改正前欄又は改正後欄において、前後の字句とともに傍線を付することにより、左右で傍線部分が対応するようにする。
条項見出しや章名等の削り・加え、表の項(号)・欄の改正 破線で囲んだ部分 方式書方式の破線等による改正の例.png
  • 条項見出しの削り、付し →当該見出しとその直後の条名(項番号)とを破線で囲む。
  • 章名等の削り・付し
    • [原則]当該章名等([ ]の記載)とその直後の条の見出し・条名(項番号)とを破線で囲む。
    • [例外]章等の細分の追加の場合には、当該章名等とその直前の章名等とを破線で囲む。
  • 表の項(号)・欄の改正 →改め文でのかぎ括弧の引用範囲に準じて(けい線を含めて)破線で囲む。
両方 傍線を付し又は破線で囲んだ部分 ――
(3) 同一の規定内に複数の字句等の改正が含まれる場合に 記載する。 ――
(a) 題名の改正を含む場合に 記載する。 ――


規定の改正[編集]

次の区分により規定する。

区分 本文
移動し、改め、削り、又は加えるべき規定 ―― 方式書方式の二重傍線による改正の例.png
  • 標記部分(条名・号名、章番号等・項番号、表の項の一番上の欄の字句[31]など)に二重傍線を付する。
  • その細分の標記部分[32]には、二重傍線を付する必要はない。
  • 改め、又は加えるべき規定については、標記部分を除く全体に注記としての傍線を付する。
(4) 移動と全部改めの両方が含まれる場合に 記載する。 ――
(5) 共通見出しの削り、又は加えがある場合に 記載する。 ――
(6) 全文改め又は移動が含まれる場合に 記載する。 ――
(b) 第1項や項番号のない条の項の改正が含まれる場合に 記載する。
  • 項番号のある条の第1項 →「[1]」とする。
  • 項番号のない条の項 →「[①]」等とする。
(c) 2種類以上の改正がある場合に 記載する。 ――


各府省でのバリエーション[編集]

本文に関して、特記すべきバリエーションとしては、次のものがある。

  • 規定の移動に係る部分を削る。 - 経産省令・環境省令
  • 規定の全改に係る部分を削る。 - 経産省令・文科省令
  • 「に掲げる対象規定」を「に二重傍線を付した規定」とする。 - 経産省令
  • 「標記部分」を「標記部分(連続する他の規定と記号により一括して掲げる規定にあっては、その標記部分に係る記載)」とする。 - 内閣府令
  • 「、改正前欄に掲げる対象規定」を「、改正前欄に掲げる二重傍線を付した共通見出しをこれに対応する改正後欄に掲げる二重傍線を付した共通見出しのように改め、改正前欄に掲げる対象規定」とする。 - 大阪市条例
  • 空振りの規定をおく。 - 環境省令

表については、次のようなバリエーションがある。

  • 字句・部分レベルの改正
    • 長方形以外の破線(章名等や条項見出しの削り・加え)を用いない。 - 多くの府省庁等
    • 見出しの削り・付しを規定の全改の形式により行う。 - 総務省令
  • 規定レベルの改正
    • 連続する規定の移動を「~」や「・」でまとめて表す。 - 多くの府省庁等、大阪市条例
    • 移動を傍線で表す。 - 経産省令・環境省令
    • 全改を標記部分を除く全体への傍線により表す。 - 経産省令・文科省令
    • 削り・加えを規定全体への二重傍線で表す。 - 経産省令
    • 共通見出しの全改を二重傍線で表す。 - 大阪市条例
  • 表等の改正
    • 新旧対照表内に表等を入れ込む。
    • 表内には「[様式第一 別紙一 挿入]」などの注釈のみを入れ、実際の表等は別紙等とする。

新旧対照表方式の問題点[編集]

改め文方式では、法律・政令を基準として、法令・例規を通したおおよそ統一された表現方法が確立されているのに対し、新旧対照表方式では、府省令等同士、例規同士ですら、その表現方法が必ずしも統一されていない。これが第一の問題点といえる。

つまり、本文は、基本的に表中の記号の趣旨を明らかにするため、定型的に記載されるものであることから、その書き方に多少の不統一があっても、法的に疑義なく記載されてさえあれば、事実上読む者の理解にはかかわらないといえる。

一方、新旧対照表本体は、改正内容を実質的に定める部分であり、その記載方法をどのように定めるかは、まさに現実に法令の適用等を受ける国民の理解に関わる部分である。 それにも関わらず、新旧対照表の記載方法は各省庁・自治体ごとに少なからず異なっており、このことは国民が各改正規定の趣旨を理解する上での障害となりうるといえる。

また、記載方法に揺れがあることは、新様式方式でも同様である。その要因の1つは、イメージサンプルが(法令審査事務提要に載っているような比較的一般的な改正も含め)あまり多くを語っていないこと、そして府省令等レベルでの改正は考慮されていないことである。例えば、1項からなる条に第1項を加える場合、1項からなる本則又は附則に項又は条を加える場合、様式の改正を行う場合の記載方法については、新様式方式を採用する府省庁等の間で揺れがある。

次に、内閣官房・内閣法制局「新たな改正方式について(検討状況)」(平成15年12月9日)では、新旧対照表方式の技術的問題点として、次のものを挙げている。

  • 1. 新旧対照表方式の適用範囲(改め文との使い分け)
  • 2. 早期に提出を要する大部な法案等における適用の可否
  • 3. 印刷、校正等に要する時間の増大への対応
  • 4. 紙量の増大の抑制方案
  • 5. 参考記載部分のチェック等の省略化方策
  • 6. 現行法令のデータベースの整備

これらについては、「新旧対照表方式による法令等の改正について(調査依頼)」(内閣官房行政改革推進本部事務局平成29年2月13日)別添によると、平成29年2月9日、自由民主党の行政改革推進本部長(河野太郎氏)から次のような指摘があったとする。

  • 改め文を作る前に新旧対照表を作るため、新旧対照表方式を採用すれば改め文を作る手間が確実に省ける[33]
  • 新旧対照表方式の場合、旧の箇所のチェック等が大変というが、IT も使えるし、正確な条文とするのは役所として当然の仕事であり、官報が大部になりチェックの量が増えることは理由にならない。

また、「改正対照表方式による法律の改正について(意見聴取)」(内閣官房行政改革推進本部事務局平成29年3月1日)の別添資料でも、「ITの活用により参考記載部分を含めてその正確性の確保は容易であるとの認識に基づき、改正対照表の全体について正確性を確保する必要があること」を意見聴取の前提としている。そもそも、現在でも、参考資料としての新旧対照条文の訂正等は行われる[34][35]

このように、法令案の起案者としては、新旧対照表から作成する官庁が大半であること、現状でも新旧対照表の参考記載部分の誤りの訂正は行われていることから、法令案の起案上の負担は、多くの場合新旧対照表方式に移行した方が減少すると考えられている。もっとも、新旧対照表方式では、法令案の本文自体に表を入れ込まなければならないこと、方式書方式のまま導入する場合、不整形な破線の使用が必要になることなどから、単純に作業量が減少するのみとはいえない。

一方、国民の分かりやすさという観点からは、現状でも新旧対照表はホームページ等で提供されていることからして、どうしても法令自体を新旧対照表方式にしなければならない理由を見いだしがたいとも考えられる。

内閣法制局の国会での答弁[編集]

改め文方式の利点と新旧対照表方式の問題点について、内閣法制局は、国会で次のような答弁を行っている。

 内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。
 一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。このようなことから、実際上困難があるものと考えております。
 ちなみに一例を申し上げますと、平成十一年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。改め文による法案本体は全体で九百四十ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、四千七百六十五ページに達しております。これを改め文と同じ一ページ当たりの文字数で換算いたしますと、二万一千三百五ページということになりまして、実に改め文の二十二倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。 — 横畠裕介政府参考人(内閣法制局総務主幹)
 今ほど、先生からお話しいただきました改め文と言われる逐語的改正方式でございますが、改正点が明確であり、かつ簡潔に表現できることから、従来より我が国における法改正の形式として用いられているものであります。
 一方、新旧対照表でございますが、現在は改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでありますが、逐語的改正方式をやめてこれを改正法案の本体にするということにつきましては、一般的には新旧対照表は改め文よりも相当に大部となることが避けられません。
 したがいまして、全体について正確を期するための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられること、また、改正法案を国会で御修正いただく場合には、現在、新旧対照表は新しい部分ともともとの部分の二段の表になっていますが、場合によっては、それをさらに三段、四段組みにすることが必要になるというような議論もございます。
 したがいまして、御指摘のような新たな改正方式につきましては、国会で合意いただくことが大前提であるというふうに私どもは考えております。 — 林徹政府参考人(内閣法制局総務主幹)
 いわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、その形式を定めた法令はございませんが、論理的順序に従って必要な改正処理を順次行っていくものでございまして、改正に係る立法者の意思を明確に表現することができることなどから、従来より我が国における法改正の方法として用いられているものでございます。
 新旧対照表は主として改正内容の理解を助けるための参考資料として作成されているものでありますところ、改め文方式をやめて新旧対照表を改正法案の本体とすることにつきましては、平成十五年に政府部内で内閣法制局も参画する形で検討を行い、その結果を踏まえ、新旧対照表を用いる新たな改正方式について国会で検討いただいた結果、取りやめとなった経緯があると承知しております。
 そういった経緯もございますことから、国会で合意いただくことが大前提であるというようなことだと考えております。 — 嶋一哉政府参考人(内閣法制局総務主幹)

改め文・新旧対照表方式と関連するもの[編集]

見消し[編集]

新旧対照表が新旧を左右に並べて改正部分をいずれも下線で表現するのに対し、見消しでは、単一の文章中に、改正内容をそれぞれ、削り・加えに分けて表現する。日本では、削りを打消線で、加えを下線(+イタリック)により表現することが多い。

米国[編集]

アメリカの連邦議会では、委員会報告中に、その法律案による改正の内容を、「Changes in existing law」等として見消しの形で添付する[36]。また、修正案でも同様に、見消しを添付する。

連邦議会では、削られる部分は打消線+赤塗り(例:削り)で、加えられる部分は下線+イタリック+緑塗り(例:加え)で示すが、州議会では、州により異なる方法が用いられる。

最も多いのは、連邦議会と同様に、削りを打消線で、加えを下線で表現する州[37]で、そのほかに削りを角括弧([ ])で表現する州や、加えを太字で表現する州などがある(議案書に用いられるマークアップの類型について(全米州議員協議会)参照)。

もっとも、議会レベルで「見消し」による改正(以下「見消し方式」という。)を導入した事例はないようであるが、契約書等のレベルでは見消し方式による改正も行われている(『Q&Aで学ぶ英文契約書の基礎』第37回「変更契約」カリフォルニア州プレイサー郡での例参照)。

施行期日[編集]

一部改正法令の施行期日については、一般の法令と同様に、各改正規定のうち、一部の施行期日のみを、先又は後にすることができる。

改め文方式の場合[編集]

各改正規定を特定する方法は、基本的に改正規定の改正の場合と同様であるが、各改正規定の、更に一部を特定する場合の方式に違いが見られる。

これは、改正規定の改正は飽くまで各改正規定を「文字列」として捉えて改正を行うものであるのに対して、施行期日規定は各改正規定の「一部改正法令としての効力」を捉えてその施行の日を定めるものであるという、改正規定の特定の目的・性質の違いによる。

特定の方法が異なる場合の顕著な例を挙げれば、次のとおりである。

1つ目は、ある改正規定のうち、特定の字句の改正に係る部分のみを引用する場合である。

改正規定の改正の場合には、「第○条第○項の改正規定」等のように、改正規定のレベルまで特定してしまえば、後はカギ括弧で引用し改正すれば足りる。

これに対して、施行期日規定の場合には、カギ括弧での引用がないので、直接当該字句の改正に係る部分まで特定する必要がある。このため、「第○条第○項の改正規定(「甲」を「乙」に改める部分に限る。)」等の表現を用いる。

2つ目は、連続する数個の規定を改め、又は加える改正規定のうち、一部の規定に係る部分のみを引用する場合である。

改正規定の改正の場合には、例えば「第○条の次に○条を加える改正規定(第×条に係る部分に限る。)」等のように、改正規定に含まれる新条項さえ引用してしまえば、後はそれを改正するだけである。

これに対して、施行期日規定の場合には、当該新条項だけが効力を生じても仕方がないので、当該改め又は加えの効力まで含めて、「第○条の次に○条を加える改正規定(第×条を加える部分に限る。)」等のように引用することが多い。

2つ目の点については、条項の移動や削りの場合ついても、同様に考えることができる。

新旧対照表方式の場合[編集]

「一部改正法令としての効力」を捉える点は、改め文方式と同様である。

新旧対照表方式の場合には、新旧対照表の各規定に係る部分を「第○条の改正規定」として引用することには、違和感がないとはいえないことから、「第○条の改正」と引用するものもある。

しかし、方式書方式では、本文と表からなる「改正規定」として捉えることとしていることから、改め文方式とほぼ同様の方式により、「第○条の改正規定」等と引用する。しかし、規定の加えの場合については、改め文方式とは異なり、加えられる規定の標記部分に二重傍線を付して直接加えることから、「第○条を加える改正規定」等と引用することになる。

また、改め文方式と同様に、効力を基準にすることから、「第○条の改正規定(「甲」を「乙」に改める部分に限る。)」のように表現することも可能である。

読替え規定[編集]

改め文に類するものとして、読替え規定がある。

読替え規定による読替えは、ある規定において他の規定の適用・準用を定める場合において、何らかの理由があって当該他の規定の一部を変更して適用・準用したい場合などに用いられる。

読替え規定は、特定の規定中の文言を逐一カギで捉えて変更していくという点で改め文と類似しているが、次の点で異なる。

  1. どれだけ条が多くても基本的には一文で書き切る。
  2. 読替え規定では、最後に一回だけ読み替える等の旨を記載する[38]
    ※ 改め文では各規定ごとに改める等の旨を記載する[39]
  3. 同一の読替えは、最初の出現位置でまとめて行う[40]
  4. 読替え規定では、削り・加えがないので、前後の字句とともに捉えて、「「A、B」とあるのは「A」と・・・読み替えるものとする」などのように読み替える。
  5. 規定の全部改めや削り・加えなども当然ないので、全部改めや加えの必要があるときは当該部分は準用せずに新たに条を起こして書き下し、削る必要があるときは準用対象から除外する[41]

また、 厳密に、法令中の規定の一字一句を改正していく改め文と異なり、適用・準用の場合の読替えは、あくまでもその規定の当てはめにあたって必要な規定内容の加工を行うに過ぎないことから、実際に読替えの必要なものでもその全てを読替え規定中に書き切る訳ではない。

なお、ある規定を適用・準用するに当たり、適用・準用の趣旨上(読替え規定に書くまでもなく)当然に行われる読替えを「当然読替え」という。これに対し、何らかの政策的な理由などがあって、敢えて読替え規定をおいてする読替えを「政策的読替え」という。また、絶対に明示しなければ読み替えられないとまでは言えないが、当該規定がどのように適用・準用されるかを明確にするため、読替え規定をおいてする読替えを「技術的読替え」という。このような性質から、技術的読替えは、内容的には些細なものではありながら、量的に膨大になることが少なくないというので、下位法令に委任されることが多い。

もっとも、何が当然に読み替えられて、何が明示しないと確実に読み替えられないのか等は、それ自体明確な基準がある訳ではない。このため、当然に行われるべき読替えであっても、念には念を入れて、敢えて読替え規定中に書く場合もあり、これを「入念的読替え」という。

ちなみに、最近では、適用・準用された規定は、あくまで適用・準用先に出張して読むものと観念する傾向が強いので、例えば、適用・準用先に及んでいない略称・定義を使用するには、読替えにより適用・準用先に略称・定義規定をおく必要があるとされる[42]。また、「前項」や「次項」、「○○法」という語も、適用・準用先を基準に用いる[43]

そのほか、読替えが複雑になる場合には、表を用いることができる。表を用いた読替えの場合には、ビジュアル的にも無理がないことから、規定全体を読み替えた(全部改め)例も見られる。

このように、読替え規定の場合には、何をどこまで読み替えるか等について、必ずしも固まっていない。このため、新旧対照表方式と同様に、「読替表方式」とでもいうべき方式を導入すべきという意見もない訳ではないが、極めて少数である。

そもそも、読替表方式として、読替え後の全文を示すくらいであれば、最初から全文を書き下ろしてしまった方が早いともいえ、実際に、平成15年に自民党がした電子政府及びCIO連絡会議に関する申入れでも、「新旧対照表での改正」と並び、「準用規定、読み替え規定の原則廃止等」についても言及している。

増補方式[編集]

上に述べたような溶込方式(改め文方式・新旧対照表方式)とは異なり、増補方式では、既存の法令と内容的に重複する新たな法令を制定する。その内容が既存の法令と接触する限度において既存法令の規範が変更される訳である。

英米法での例が有名であるが、わが国でも、明治前期の法令では、「「増補方式」的な法運用」がなされていた[44][45]

具体的には、海陸軍刑律中改正並増加(明治6年太政官布告第276号)などが挙げられる[46]

また、わが国の法令でも、附則は、被改正法令の附則(原始附則)の後に一部改正法令の附則(改正附則)が順次追加されていくことから、増補方式であるとする見解もある。

しかし、改正附則の規定内容は、改正の施行期日や当該改正限りの経過規定等に限られており、例え一時的な措置であっても、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律(令和2年法律第4号)での新型インフルエンザ等対策特別措置法附則への新型コロナウイルス感染症に関する特例の条項のようなものを改正附則で規定することはできない。

このような点から、附則を増補方式による「改正」と見ることはできない。

各方式の例示[編集]

旧皇室典範での改正(増補方式)を参考に、溶込方式(改め文方式・新旧対照表方式)と増補方式による改正を例示すると次のとおりである。

改正内容

ㅇㅇ法

第1条 ・・・。

第2条 ・・・。

第3条 皇族は、同族及び華族以外の者と婚姻をすることができない。

  • 皇族男子の婚姻相手は同族及び華族に限ったままにする。
  • 皇族女子は王族又は公族にも嫁ぐことができることとする。
改め文方式

ㅇㅇ法の一部を改正する法律

ㅇㅇ法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

第3条中「皇族」を「皇族男子」に改め、同条に次の1項を加える。

2 皇族女子は、同族及び華族並びに王族及び公族以外の者と婚姻をすることができない。

新旧対照表方式

ㅇㅇ法の一部を改正する法律

ㅇㅇ法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

次の表により、改正後欄に掲げるその標記部分に二重下線を付した項を加える。

改正後 改正前

第3条 皇族男子は、同族及び華族以外の者と婚姻をすることができない。

 皇族女子は、同族及び華族並びに王族及び公族以外の者と婚姻をすることができない。

第3条 皇族は、同族及び華族以外の者と婚姻をすることができない。

[項を加える。]

備考 表中の[ ]の記載及びその標記部分に二重下線を付した項の当該標記部分を除く全体に付した下線は注記である。
見消し方式
(イメージ)

ㅇㅇ法の一部を改正する法律

ㅇㅇ法(令和○年法律第○号)の一部を次のように改正する。

次に掲げる規定の打消線を付した部分を削り、下線を付した部分を加える。

第3条 皇族皇族男子は、同族及び華族以外の者と婚姻をすることができない。

 皇族女子は、同族及び華族並びに王族及び公族以外の者と婚姻をすることができない。

増補方式

ㅇㅇ法増補

皇族女子は、王族又は公族とも婚姻をすることができる。

※ 見消し方式はイメージであり、実際に法令例規の改正に採用されたり、検討された例はない。

注釈[編集]

  1. ^ 「改正附則」は一部改正の名残り参照。
  2. ^ a b 高橋康文「新旧対照表方式(1)・(2)」(『金融法務事情』2149号40-52頁・2150号54-60頁、2020年11月)参照
  3. ^ この点、全部修正は、「○○法律案の全部を次のように修正する。」としており、改め文方式といえる。 また、韓国では、法令案はもちろん、法令自体も「○○法の全部を次のように改正する。」という柱書きに続けて、題名以下を記載する方式を採っており、明確に改め文方式を採っている。
  4. ^ もっとも、アメリカでは、既存の法律と類似内容を取り扱った法案が別法律として成立する事例が多数見られ、完全に改め文方式であるとはいえない(高橋康文「新旧対照表方式(1)・(2)」(『金融法務事情』2149号40-52頁・2150号54-60頁、2020年11月)参照)。
  5. ^ 例えば、規定単位では、第1条の改正は、第5条の改正よりも先に行う。字句単位では、例えば、同一条内で「改め」「改め」「削り」「改め」の順に改正を行う場合には、1つめと2つめの「改め」はまとめるが、「削り」は3つめの「改め」よりも先に行う必要があるので、3つめの「改め」は他の「改め」とまとめることはできない。
  6. ^ 附則や別表等も含めた当該法令全体の特定字句を一括して改める場合には、特に範囲を指定する必要がないので、単に「「甲」を「乙」に改める」のようにする。これに対して、本則中の特定字句のみを改める(附則中の特定字句については改めたくない)場合には、「本則(第○条第○項を除く。)中「甲」を「乙」に改める」のようにすることとなる。
  7. ^ もっとも、当該例規は昭和30年代のものであり、現実には、必ず「別表第○」から引きなおす取扱いとなっている。
  8. ^ もっとも,個々の適用場面に際しては、それを「中」又は「うち」によりまとめることが字数や分かりやすさの面において真に適切なのかを研究すべきである。
  9. ^ 日本法では、「第一条第二項ただし書(後段)を削り、同項に後段として次のように(次のただし書を)加える」とする。
  10. ^ 新しい改正方式参照。なお、それ以外にも、いくつか既存の方式からの変更点がある。
  11. ^ 自殺対策基本法の一部を改正する法律(平成28年法律第11号)参照。
  12. ^ もっとも、過去には全部改めて移動したり、移動して全部改めた例がない訳ではないが、現在はしないこととなっている。
  13. ^ なお、章等の末条の移動後に条を加える場合には、「第一章中第二条を第三条とし、同条の次に次の一条を加える」とか、「第一章中第二条を第三条とし、同章に次の一条を加える」のように表現することとなろう(章等の末条を繰り下げて、その次に条を追加する場合の改め文 参照)。
  14. ^ 原則どおり「(第○項を第2項とし、)同項の前に」とすることもできる。
  15. ^ 削る場合が「形式的廃止」だとすると、こちらは「実質的廃止」といえるだろう。
  16. ^ もっとも、内閣法制局の審査の及ばない府省令等の場合には、項を「削除」とした例がある(『項』を「削除」とできるか参照)。
  17. ^ 韓国では、「各号外の部分」という。
  18. ^ それでも、どうしようもない場合もあり、例えば、次のような例がある。 「第二条のうち、地方税法・・・第五十三条・・・第六項・・・を同条第四項とし、同条第七項を改め、同項を同条第五項とし、同条第八項を改め、同項を同条第六項とし、同条第六十三項を改め、同項を同条第七十二項とし、同条第六十二項を改め、同項を同条第七十一項とし、同条第六十一項を同条第七十項とし、同条第六十項を改め、同項を同条第六十九項とし、同条第五十九項を改め、同項を同条第六十八項とし、同条第五十八項を改め、同項を同条第六十七項とし、同条第五十七項を改め、同項を同条第六十六項とし、同条第五十六項を同条第六十五項とし、同条第五十五項を改め、同項を同条第六十四項とし、同条第五十四項を改め、同項を同条第六十三項とし、同条第五十三項を改め、同項を同条第六十二項とし、同条第五十二項を同条第六十一項とし、同条第五十一項を改め、同項を同条第六十項とし、同条第五十項を改め、同項を同条第五十九項とし、同条第四十九項を改め、同項を同条第五十八項とし、同条第四十八項を改め、同項を同条第五十七項とし、同条第四十七項第一号を改め、同項を同条第五十六項とし、同条第四十六項を改め、同項を同条第五十五項とし、同条第四十五項を削り、同条第四十四項を同条第五十四項とし、同条第四十三項を改め、同項を同条第五十三項とし、同条第四十二項を改め、同項を同条第五十二項とし、同条第四十一項を削り、同条第四十項を改め、同項を同条第五十一項とし、同条第三十九項を改め、同項を同条第五十項とし、同条第三十八項を改め、同項を同条第四十九項とし、同条第三十七項を同条第四十八項とし、同条第三十六項を同条第四十七項とし、同条第三十五項を改め、同項を同条第四十六項とし、同条第三十四項を改め、同項を同条第四十五項とし、同条第三十三項を改め、同項を同条第四十四項とし、同条第三十二項を改め、同項を同条第四十三項とし、同条第三十一項を改め、同項を同条第四十二項とし、同条第三十項を改め、同項を同条第四十一項とし、同条第二十九項を削り、同条第二十八項を改め、同項を同条第四十項とし、同条第二十七項を改め、同項を同条第三十九項とし、同条第二十六項を改め、同項を同条第三十八項とし、同条第二十五項を改め、同項を同条第三十七項とし、同条第二十四項を改め、同項を同条第三十六項とし、同条第二十三項を改め、同項を同条第三十五項とし、同条第二十二項を改め、同項を同条第三十四項とし、同条第二十一項を改め、同項を同条第三十三項とし、同条第二十項を改め、同項を同条第三十二項とし、同条第十九項を改め、同項を同条第三十一項とし、同条第十八項を改め、同項を同条第三十項とし、同条第十七項を改め、同項を同条第二十九項とし、同条第十六項を改め、同項を同条第二十八項とし、同項の前に一項を加える改正規定」(地方税法等の一部を改正する法律(令和3年法律第7号)第5条)
  19. ^ この場合において、いわゆる「次のよう」は、独立した段落として数えない。
  20. ^ 『第一条のうち所得税法本則(第百五十九条第一項、第二項及び第四項第二号並びに第百六十条第一項及び第四項第二号を除く。)中「国税通則法」を「国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律」に改める改正規定』等とする。
  21. ^ 附則第27条は、『附則第八十条中厚生保険特別会計法第十八条ノ六を削り、同法第十八条ノ六ノ二を同法第十八条ノ六とし、同法第十八条ノ七を改める改正規定』とする。元の規定は、第18条の6を削り、第18条ノ6ノ2を第18条ノ6とし、第18条ノ7を次のよう(「第十八条ノ七 削除」)に改めるものであった。
  22. ^ 勿論、全部改正のあった条項や新設される条項は、その全体が表示されるため、その部分だけは、理解できるだろう。
  23. ^ 「(10) 法令案の改正方式をいわゆる全文改め方式とする場合の基準及び利点並びに主に法制執務上考えられる問題点について」(平成13年9月10日法令整備会議)、「県民に分かりやすい条例について」(平成17年3月28日新潟県文書私学課)。なお、台湾の法令では、この方式に類する方式である、各条ごとに改正後の条文を示す方式を用いている。
  24. ^ 国家公安委員会関係警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律施行規則の一部を改正する規則(平成28年国家公安委員会規則第5号)。なお、その後も新旧対照表方式による改正と、改め文方式による改正とが行われている。
  25. ^ もっとも、当初導入が検討されていた方式は、方式書方式を元に検討しつつも、従来型の新旧対照表をそのまま用いる方式だったようである(File:新旧対照表を用いた国家公安委員会規則の一部改正の改正文について(平成28年1月警察庁総務課).pdf参照)。
  26. ^ ただし、全ての改正を新旧対照表方式で行っている訳ではない。
  27. ^ 新旧対照表方式の方式参照。
  28. ^ なお、平成29年7月18日(号外 第154号)の時点では、方式書方式に準ずる方式を用いていた。
  29. ^ 新旧対照表ってルールがあるの?続・新旧対照表ってルールがあるの?Re:新旧対照表及び新旧対照表の作り方(まだ続く)参照。
  30. ^ イメージサンプル87頁参照。
  31. ^ 別表第一の○○の項というときの「○○」の部分
  32. ^ 例えば、条を加える場合、条名には二重傍線を付するが、項番号や号名には二重傍線を付さない(注記としての傍線を付する。)。
  33. ^ もっとも、財務省主税局のように、いきなり改め文から書き始める部署もあるようである。
  34. ^ 例えば、第204回国会では、「デジタル庁設置法案」の新旧対照条文の参考記載部分に関する訂正等が行われている。
  35. ^ 訂正の流れについては、令和3年4月2日第204回国会衆議院議院運営委員会第22号での答弁を参照
  36. ^ 後藤敬三「アメリカ」大森政輔・鎌田薫 編『立法学講義』商事法務、2011年
  37. ^ 背景色は、付する州と付さない州とがある。
  38. ^ 「第一条第二項中甲とあるのは乙と、同条第三項中丙とあるのは丁と読み替えるものとする
  39. ^ 「第一条第二項中甲を乙に改め、同条第三項中丙を丁に改める
  40. ^ 例えば、「第一条第二項及び第四項中甲とあるのは乙と、同条第三項中丙とあるのは丁と読み替えるものとする」とする。これに対して、改め文の場合には、「第一条第二項中甲を乙に改め、同条第三項中丙を丁に改め、同条第四項中甲を乙に改める」とする。
  41. ^ 「第○条(第○項を除く。)」や「第○条第○項、第○項及び第○項」などの表現を用いる。
  42. ^ もっとも、適用・準用先の略称・定義も、適用・準用対象範囲内に略称・定義規定が含まれていないときは、適用関係を明確にするため、読替え規定中に明示することが望ましい。
  43. ^ このため、他の法令の規定を適用・準用している場合において、適用・準用元の法令を表すときには、「○○法(令和○年法律第○号)」と引用する必要がある。もちろん、2回目以後は、法令番号を示す必要がない。
  44. ^ 手塚豊 (1964.1). “明治六年太政官布告第六十五号の効力―最高裁判所判決に対する一異見―”. 法学研究(法律・政治・社会) (慶應義塾大学法学研究会) 37巻1号: 3頁. 
  45. ^ 岩谷十郎 (平成19年1月). “明治太政官期法令の世界”. 日本法令索引〔明治前期編〕解説 明治太政官期法令の世界 (国立国会図書館): 1頁. 
  46. ^ 遠藤芳信「1881年陸軍刑法の成立に関する軍制史的考察」『北海道教育大学紀要 人文科学・社会科学編』54巻1号,125頁参照。

参考文献[編集]

書籍[編集]

  • 内閣法制局関係
    • 内閣法制局長官総務室『法令整備会議関係資料集()・()・()・()』平成20年12月
    • 内閣法制局『法令審査事務提要(改定)』平成23年12月
    • 法制執務研究会 編『新訂 ワークブック法制執務 第2版』ぎょうせい、平成30年1月
  • 議院法制局関係(改正規定の改正/修正に関する詳細な説明あり)
    • 河野久 編『「法令の改め方」『立法技術入門講座』〈第3巻〉』昭和63年4月
    • 浅野一郎 編『改訂法制執務事典』昭和63年5月
    • 衆議院法制局 編『修正案例規 補訂版』令和2年6月
  • 石毛正純『法制執務詳解 新版Ⅲ』ぎょうせい、令和2年3月
  • 礒崎陽輔『分かりやすい法律・条例の書き方[改訂版(増補2)]』ぎょうせい、令和2年12月
  • 原田『改正対照表方式について 5稿(解説編・事例編・参考編)』平成30年
  • 大阪市総務局行政部行政課『「新旧対照表方式」による規程の一部改正事務の手引(本編・文例編)』令和3年2月

論文・記事等[編集]

外部リンク[編集]