改め文方式と新旧対照表方式

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改め文方式(かいめぶん)と新旧対照表方式(しんきゅうたいしょうひょうほうしき)は、それぞれ、既存の法令を一部改正する法令において改正内容を表現する方式を表す用語である。改め文は、「改める文」とも。

いずれの方式も、当該一部改正法令に規定された改め文又は新旧対照表は、対象となる既存の法令を改正することで当該既存の法令に溶け込み、その一部として吸収されてしまうことから、このような法令改正の方法を「溶込方式」又は「吸収方式」という。なお、これに対し、皇室典範増補のように、一部改正法令の文章自体が改正対象の法令と別にそのまま残るような方式を「増補方式」という。

改め文方式[編集]

日本においては、既存の法令を改正する場合、当該法令を改正する法令を制定し、この法令を施行することで当該法令を改正する方法が採られる。 このとき、一部改正である場合には、この法令は

「第○○条中「…」を「…」に改め、「…」の下に「…」を加え、「…」を削る。」

というかたちで記述される。このような文章の形式が俗に改め文と呼ばれるものである。

この改め文の記述の仕方には、戦前から積み重ねられてきた、慣習による一定のルールがあるので、実際の起案にあたっては、『新訂 ワークブック法制執務 第2版』を参照したり、過去の閣法・政令での用例を参照することとなる。

なお、韓国中国ドイツフランスアメリカでも同様の方式が用いられるが、以下では、特に記載のない限り、日本の法制執務について説明する。

大原則[編集]

改め文全体にわたる原則としては、次のようなものがある(『新訂 ワークブック法制執務 第2版』問141参照)。

  • 前から順に行う[1]
    • [例外]既存の規定を移動し、そのスペースに新たな規定を加える場合には、先に当該既存の規定を移動して追加先のスペースを確保する。
  • 字句の改正を行ってから移動する。
  • 条(項建ての本則・附則にあっては項)ごとに改正規定を区切る。
    • [例外1]共通する改正を連続して行うときは、2以上の条をまとめて改正することができる。
    • [例外2]規定の加え又は全部改めがあるときは、その部分で区切る。
  • 同一の規定を2度引きしない。
    • [例外]法令全体に共通する字句の改正は、最初にまとめて行うことができる。

なお、日本法を継受した韓国でも、概ね同様であるが、例えば、規定の加え又は全部改めで、規定を区切らない(改正規定の柱書きの次に加え、又は改めるべき規定をまとめて掲げる。)など、いくつかの点で違いがある。

規定の改正[編集]

規定の全部を改める場合[編集]

概ね次のような形式による。

区分 備考
原則

第一条を次のように改める。

第一条・・・。

第一条第二項を次のように改める。

・・・。

第一条第二項第三号を次のように改める。

・・・

号の細分

第一条第二項第三号ニを次のように改める。

・・・

本文・ただし書

第一条第二項本文(ただし書)を次のように改める。

 ・・・。

第一条第二項前段(後段、第○段)を次のように改める。

 ・・・。

連続する条等[2]

第一条及び第二条(第一条から第○条まで)を次のように改める。

第一条・・・。

第二条・・・。

第一条第二項及び第三項(第一項から第○項まで)を次のように改める。

・・・。

・・・。

第一条第二項第三号及び第四号(第三号から第○号まで)を次のように改める。

・・・

・・・

号の細分

第一条第二項第三号ニ及びホ(ニから○まで)を次のように改める。

・・・

・・・

第一条第二項第三号第四段及び第五段(第四段から第○段まで)を次のように改める。

 ・・・。・・・。

理論的にはこのようになるが、現在は、1項に2文以上をおかないこととされているため、法律・政令には実例がない。
各号 ※号のみ

第一条第二項各号を次のように改める。

・・・

・・・

[以下略]

各号の数が増減する場合にも、この方法による。[3]
各号を含むただし書・後段に改める場合

第一条第二項ただし書(後段)を次のように改める。

 ただし(この場合において)、・・・。

・・・

・・・

[以下略]

各号を含むただし書(後段)を各号を含まないただし書(後段)に改める場合には、別途各号を削る旨を明らかにする。
見出し・付記 条項見出し 第一条の見出しを「(□□□)」に改める。 共通見出しを条項見出しに改める場合には、共通見出しの削りと条項見出しの加えに分けて行う。
共通見出し 第一条の前の見出しを「(□□□)」に改める。 共通見出しの対象条項の数が変動する場合には、削りと加えに分けて行う。条項見出しを共通見出しに改める場合も同じ。
付記

第一条の付記を次のように改める。

(罰則 第○項については第○条第○号)

章名等 〈原則〉

「第一章 □□□」を「第一章 ◇◇◇」に改める。

〈許容〉

第一章の章名を次のように改める。

第一章 ◇◇◇

規定を移動する場合[編集]

概ね次のような形式による。

なお、実際には、規定の削り又は加えと連続して行われることがほとんどである。

また、共通見出しに属する条等が移動したり、増減したりする場合には、共通見出しは、一度削り、移動後に加え直す必要がある。

区分
原則

第一条を第二条とする。

第一条第二項を同条第三項とする。

第一条中第二項を第三項とする。

第一条第二項第三号を同項第四号とする。

第一条第二項中第三号を第四号とする。

号の細分

第一条第二項第三号ニを同号ホとする。

第一条第二項第三号中ニをホとする。

連続する条等[4] 3以下

第二条を第三条とし、第一条を第二条とする。

第一条第三項を同条第四項とし、同条第二項を同条第三項とする。

第一条中第三項を第四項とし、第二項を第三項とする。

第一条第二項第四号を同項第五号とし、同項第三号を同項第四号とする。

第一条第二項中第四号を第五号とし、第三号を第四号とする。

号の細分 第一条第二項第三号ホを同号ヘとし、同号ニを同号ホとする。

第一条第二項第三号中ホをヘとし、ニをホとする。

4以上

第四条を第五条とし、第一条から第三条までを一条ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第一条第五項を同条第六項とし、同条第二項から第四項までを一項ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第一条中第五項を第六項とし、第二項から第四項までを一項ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第一条第二項第六号を同項第七号とし、同項第三号から同項第五号までを一号ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

第一条第二項中第六号を同項第七号とし、第三号から第五号までを一号ずつ繰り下げる(繰り上げる)。

号の細分

第一条第二項第三号トを同号チとし、同号ニからヘまでを同号ホからトまでとする。

第一条第二項第三号中トをチとし、ニからヘまでをホからトまでとする。

章等の境界

第一章中第二条を第三条とする。[5]

章等 〈原則〉

「第一章 ・・・」を「第二章 ・・・」に改める。

〈許容〉

第一章を第二章とする。

〈原則〉

「第二節 ・・・」を「第三節 ・・・」に改める。

〈許容〉

第一章第二節を同章第三節とする。

第一章中第二節を第三節とする。

規定を加える場合[編集]

概ね次のような形式による。

なお、元々条等のある位置に、条等を加えようとする場合には、先に、繰上げ又は繰下げを行い、当該加えようとする空間を確保しておいてからこれを加える。

ただし、項番号のない条に項を加える場合には、繰上げ・繰下げを明示する必要がない。

区分
原則

第一条の次(前)に次の一条を加える。

第二条・・・。

第一条第二項の次(前)に次の一項を加える。

・・・。

第一条第二項第三号の次(前)に次の一号を加える。

・・・

号の細分

第一条第二項第三号ニの次(前)に次のように加える。

・・・

ただし書

第一条第二項に次のただし書を加える。

 ただし、・・・。

第一条第二項に後段(第○段)として次のように加える。

 ・・・。

章等の境界

第一章(本則・附則)中第二条の次(前)に次の一条を加える。

第三条・・・。

本則・附則は、条名が通し番号になっている場合に明示する必要が生じる。
章等又は条等の末尾

第一章(本則・附則)に次の一条を加える。

第二条・・・。

第一条に次の一項を加える。

・・・。

第一条第二項に次の一号(各号)を加える。

・・

号の細分

第一条第二項第三号に次のように加える。

・・・

本則、条等の先頭 条等

第一条に第一項として次の一項を加える。

 ・・・。[6]

本則

第一条として次の一条を加える。

第一条・・・。

理論的には、附則についても同様に可能である。
見出し・付記 条項見出し 第一条に見出しとして「(□□□)」を付する。
共通見出し 第一条の前に見出しとして「(□□□)」を付する。
付記

第一条に付記として次のように加える。

(罰則 第○項については第○条第○号)
章名等

第一条の次に次の章名を付する。

第一章 ・・・

規定を削る場合[編集]

概ね次のような形式による。

なお、規定の廃止後に欠番が生じるのを避けるため、「第○条 削除」などのように形骸を残す場合[7]があるが、これは、あくまでも「第○条 削除」という条文に改めるものであるため、規定の改めの例による。項については、条の段落という建前から、このような方式を用いることはできないとされる[8]

区分
原則

第一条を削る。

第一条第二項を削る。

第一条第二項第三号を削る。

号の細分

第一条第二項第三号ニを削る。

ただし書

第一条第二項第三号ただし書を削る。

第一条第二項第三号後段(第○段)を削る。

連続する条等[2]

第一条及び第二条(第一条から第○条まで)を削る。

第一条第二項及び第三項(第二項から第○項まで)を削る。

第一条第二項第三号及び第四号(第三号から第○号まで)を削る。

号の細分

第一条第二項第三号ニ及びホ(ニから○まで)を削る。

第一条第二項第三段及び第四段(第三段から第○段まで)を削る。

各号

第一条第二項各号を削る。

見出し・付記 条項見出し

第一条の見出しを削る。

共通見出し

第一条の前の見出しを削る。

付記

第○条の付記を削る。

章名等 〈原則〉

「第一章 ・・・」を削る。

〈許容〉

第一章の章名を削る。

韓国の場合[編集]

規定を移動する場合には、「第○条及び第×条(第○条から第×条まで)を各々第△条及び第□条(第△条から第□条まで)とする」などのように、移動前後の標記部分を直接摘示する方法による。

規定を加える場合には、加えられる位置を直接指定して、「第○条を次のように新設する」、「第○条に第○項(ただし書・後段)を次のように新設する」などのように表現する。

規定を廃止する場合には、韓国の法制執務では欠番が認めるため、形骸を残す方法は用いず、もっぱら削る方法による。


字句の改正[編集]

概ね次のような形式による。

区分
原則 加える場合 第○条第×項第△号ただし書中「□□□」の下に「◇◇◇」を加える。
改める場合 第○条第×項第△号ただし書中「□□□」を「◇◇◇」に改める。
削る場合 第○条第×項第△号ただし書中「□□□」を削る。
本文、前・後段、各号列記以外の部分中の字句 「本文、前・後段、各号列記以外の部分」を明示しないと字句を特定できない場合[9] 第○条第×項第△号本文(前段・後段)中「□□□」を「◇◇◇」に改める。
その他[10] 第○条第×項第△号中「□□□が」を「◇◇◇が」に改める。
条の見出し中の字句 見出し中の字句のみ 第○条の見出し中「×××」を「△△△」に改める。
見出し以外の部分中の字句のみ 第○条中「×××」を「△△△」に改める。
見出し及び見出し以外の部分中の字句の両方 第○条(見出しを含む。)中「×××」を「△△△」に改める。
当該法令に含まれる同一字句の全部 「□□□」を「◇◇◇」に改める。
2以上の法令に含まれる単一の字句全部又は一部 次に掲げる法律の規定中「□□□」を「◇◇◇」に改める。

○○法第×条第△項第□号

○○法第×条第△項第□号

なお、韓国の法制執務では、字句の改正が改めに統一されており、前段・後段、各号列記以外の部分[11]等についても明示することとされている。

改め文方式の改善の試み[編集]

このように、日本では、従来より、国及び大部分の地方自治体で、改め文方式による法令の改正が行われてきた。

しかし、改め文で記述された法令は、対象となる既存の法令のうち、どの部分をどのように改めるかを逐語的に記述したものであることから、既存の法令の内容を知らなければ、改め文だけでどのような改正が行われたかを理解することが難しい[12]

このことから、改正の内容を分かりやすくするための工夫として、改正を当該条文又は法令全体を全部改正する方式とする、いわゆる全文改め方式が考案されているが、これを全面的に導入した例はないようである[13]

このほかに、国では、官報に「法律・政令のあらまし」を、ホームページに新旧対照表等を掲載している。地方公共団体では、国と同様の試みを行ったり、さらに進んで公報自体に改め文とともに新旧対照表を掲載するところもある。

また、議会でも、議案とともに、改正の内容を分かりやすく示すための参考資料として、新旧対照表が添付されている場合がほとんどである。

そこで、これを更に進め、最初から新旧対照表自体を一部改正法令としてしまおうというのが、次項の新旧対照表方式である。

新旧対照表方式[編集]

平成12年に鳥取県で最初に新旧対照表方式による条例・規則の改正が導入され、都道府県レベルでは、令和2年6月時点で16府県が新旧対照表方式を導入している。

府県 導入時期 方式の概要
(現  行)
岩手県 H17/12 備考・簡易
秋田県 H30/12
※規則のみ
本文・簡易・改正する
栃木県 H30/01 本文・簡易・改正する
新潟県 H17/10 本文・詳細
福井県 R02/04 本文・簡易・改正する
静岡県 H23/01 備考・簡易
三重県 H30/12 本文・簡易・改正する
大阪府 H22/07 本文・簡易・改正する
和歌山県 H30/02 本文・簡易・改正する
鳥取県 H12/07 本文・簡易・改正する
広島県 R01/07 本文・簡易・改正する
香川県 H19/01 本文・簡易・改正する
愛媛県 H18/08 本文・簡易・改正する
佐賀県 H25/01 本文・簡易・である
長崎県 H27/07 本文・簡易・である
宮崎県 H20/11 本文・簡易・改正する

国レベルでは、平成14年から自民党のe-Japan重点計画特命委員会で新旧対照表方式の導入が検討された。

同委員会からの申入れを受けて、内閣法制局では、平成15年5月12日の文書課長等会議で各府省に対し、新旧対照表方式についての検討依頼を行い、その回答を受けて、「改正対照表を用いた改正方式について(案)」(以下同文書を「方式書」といい、これによる新旧対照表の作成の方式を「方式書方式」という。)が作成されたが、このときは、国レベルで採用されるには至らなかった。

その後、平成28年に入って、当時行革担当大臣国家公安委員会委員長であった河野太郎の主導で、国家公安委員会規則に、最初[14]に方式書方式による新旧対照表方式の改正が導入された[15]。これを受けて内閣官房行政改革推進本部事務局より「各府省等法令窓口担当官」宛に「新旧対照表の方式による府省令等の改正について」(事務連絡)が発せられ、「法令改正の中には、改め文方式よりも新旧対照表方式で行うことにより、国民にとって改正内容が分かりやすくなるものがある」との考え方が示された。その後、国土交通省を皮切りに、現在、全ての省において新旧対照表方式が用いられている[16]

新旧対照表方式の種類[編集]

新旧対照表方式には、各府省庁等[17]・自治体ごとにいくらか方式の違いが見られる。

従来型方式[編集]

改正規定[編集]

改正規定(本文、備考欄その他表前又は表後の記載をいう。以下同じ。)のうち、主なものとしては、次のものがある。

  • 愛媛県方式:
 次の表の改正前の欄に掲げる規定を同表の改正後の欄に掲げる規定に、下線及び太線で示すように改正する。
  • 農林水産省方式:
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分(以下「傍線部分」という。)でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分があるものは、これを当該傍線部分のように改め、改正後欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正前欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを加え、改正前欄に掲げる規定の傍線部分でこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線部分がないものは、これを削る。
  • 厚生労働省[18]方式:
 ○○施行規則(令和○年厚生労働省令第○号)の一部を次の表のように改正する。〈改正文〉
(傍線部分は改正部分)〈注 記〉
  • 岩手県方式:
備考 改正部分は、下線の部分である。
  • 新潟県方式(鳥取県方式):
 次の表の改正前の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動条等」という。)に対応する同表の改正後の欄中条、項、号及び号の細目の表示に下線が引かれた条、項、号及び号の細目(以下「移動後条等」という。)が存在する場合には当該移動条等を当該移動後条等とし、移動条等に対応する移動後条等が存在しない場合には当該移動条等(以下「削除条等」という。)を削り、移動後条等に対応する移動条等が存在しない場合には当該移動後条等(以下「追加条等」という。)を加える。
 次の表の改正前の欄中別表及び様式並びにこれらの細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動別表等」という。)に対応する次の表の改正後の欄中別表及び様式並びに細目の表示に下線が引かれた別表及び様式並びにこれらの細目(以下「移動後別表等」という。)が存在する場合には当該移動別表等を当該移動後別表等とし、移動別表等に対応する移動後別表等が存在しない場合には当該移動別表等を削り、移動後別表等に対応する移動別表等が存在しない場合には当該移動後別表等を加える。
 次の表の改正前の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、削除条等並びに別表及び様式並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正部分」という。)に対応する次の表の改正後の欄中下線が引かれた部分(条、項、号及び号の細目の表示、追加条等並びに別表及び様式並びにこれらの細目の表示を除く。以下「改正後部分」という。)が存在する場合には当該改正部分を当該改正後部分に改め、改正部分に対応する改正後部分が存在しない場合には当該改正部分を削り、改正後部分に対応する改正部分が存在しない場合には当該改正後部分を加える。
 次の表の改正前の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正表」という。)に対応する次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分(以下「改正後表」という。)が存在する場合には当該改正表を当該改正後表に改め、改正表に対応する改正後表が存在しない場合には当該改正表を削り、改正後表に対応する改正表が存在しない場合には当該改正後表を加える。
[編集]

基本的には、それぞれの省や自治体で従来から用いられてきた新旧対照表と同様であるが、自治体によっては、改め文を前提とした従来の新旧対照表から一部改良を行ったものを用いるところもある。

このため、それらを反映して次のようなバリエーションがある。

  • 字句
    • 「削り」又は「加え」を「改め」に統一するか否か。
    • 改正前欄と改正後欄で傍線(下線を含む。以下同じ。)部分の字数を合わせるために、空白文字を挿入するか否か[19]
  • 別表等(別表その他の表、様式及び目録をいう。以下同じ。)
    • 一部改正
      • 表の項(号)や欄の改正を、太線(項の全体を囲む。)でするか、傍線(項内の字句の全体に付する。)でするか。
    • 全部改め、削り、加え
      • 新旧対照表で行うか、改め文で行うか。
      • 新旧対照表で行う場合、あくまで新旧対照表内に別表等を入れ込むのか、[様式第一 別紙]のような注釈を行い、実際の別表等は別紙とするのか。

方式書方式[編集]

総論[編集]

方式書では、次のような本文が例示されている。

〈方式書で示された全ての要素を示した場合〉
 次の第1表及び第2表(1)により、改正前欄に掲げる規定(題名を含む。以下この条において同じ。(a))の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(2)をこれに順次(3)対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分(2)のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分([]で注記した項番号を含む。以下この条において同じ。(b))に二重傍線を付した規定(以下この条において「対象規定」という。(c))は、その標記部分が同一のものは(4)当該対象規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは(4)改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正前欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出し(5)で改正後欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これ(6)を削り、改正後欄に掲げる対象規定及び二重傍線を付した共通見出し(5)で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これ(6)を加える。
〈改正される字句が1つのみの場合〉
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改める。
〈規定が1種類だけの場合〉
 次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付し又は破線で囲んだ部分のように改め、改正後欄に掲げるその標記部分に二重傍線を付した節を加える。
表に関する記載[編集]

本文では、初めに実際の改正の内容を表した表について規定する。

区分 本文
(1) 施行期日を分ける必要がない場合 次の表により 単一の表
一部施行期日を分ける必要がある場合
多段ロケットとする必要がある場合 次の第一表及び第二表(第一表から第n表まで)により 複数の表
字句等の改正[編集]

次の区分により規定する。

区分 本文
(2) 字句の改正 傍線を付した部分
  • 削り・加えの場合は、前の字句とともに傍線を付する。
  • 条項見出し・共通見出しや章名等の全文改めも字句の改正に準ずる[20]
条項見出しや章名等の削り・加え、表の項(号)・欄の改正 破線で囲んだ部分
  • 条項見出しの削り、付し →当該見出しとその直後の条名(項番号)とを破線で囲む。
  • 章名等の削り・付し
    • [原則]当該章名等([ ]の記載)とその直後の条の見出し・条名(項番号)とを破線で囲む。
    • [例外]章等の細分の追加の場合には、当該章名等とその直前の章名等とを破線で囲む。
  • 表の項(号)・欄の改正 →改め文でのかぎ括弧の引用範囲に準じて(けい線を含めて)破線で囲む。
両方 傍線を付し又は破線で囲んだ部分 ――
(3) 同一の規定内に複数の字句等の改正が含まれる場合に 記載する。 ――
(a) 題名の改正を含む場合に 記載する。 ――
規定の改正[編集]

次の区分により規定する。

区分 本文
移動し、改め、削り、又は加えるべき規定 ――
  • 標記部分(条名・号名、章番号等・項番号、表の項の一番上の欄の字句[21]など)に二重傍線を付する。
  • その細分の標記部分[22]には、二重傍線を付する必要はない。
  • 改め、又は加えるべき規定については、標記部分を除く全体に注記としての傍線を付する。
(4) 移動と全部改めの両方が含まれる場合に 記載する。 ――
(5) 共通見出しの削り、又は加えがある場合に 記載する。 ――
(6) 全文改め又は移動が含まれる場合に 記載する。 ――
(b) 第1項や項番号のない条の項の改正が含まれる場合に 記載する。
  • 項番号のある条の第1項 →「[1]」とする。
  • 項番号のない条の項 →「[①]」等とする。
(c) 2種類以上の改正がある場合に 記載する。 ――


各府省でのバリエーション[編集]

本文については、次のようなバリエーションがある。

  • 規定の移動に係る部分を削る。 - 経産省令・環境省令
  • 規定の全改に係る部分を削る。 - 経産省令・文科省令
  • 「に掲げる対象規定」を「に二重傍線を付した規定」とする。 - 経産省令
  • 「標記部分」を「標記部分(連続する他の規定と記号により一括して掲げる規定にあっては、その標記部分に係る記載)」などとする - 内閣府令

表については、次のようなバリエーションがある。

  • 字句・部分レベルの改正
    • 長方形以外の破線(章名等や条項見出しの削り・加え)を用いない。 - 多くの府省庁等
    • 見出しの削り・付しを規定の全改の形式により行う。 - 総務省令
  • 規定レベルの改正
    • 連続する規定の移動を「~」や「・」でまとめて表す。 - 多くの府省庁等
    • 移動を傍線で表す。 - 経産省令・環境省令
    • 全改を標記部分を除く全体への傍線により表す。 - 経産省令・文科省令
    • 削り・加えを規定全体への二重傍線で表す。 - 経産省令
  • 表等の改正
    • 新旧対照表内に表等を入れ込む。
    • 表内には「[様式第一 別紙一 挿入]」などの注釈のみを入れ、実際の表等は別紙等とする。


新旧対照表方式の問題点[編集]

改め文方式では、法律・政令を基準として、法令・例規を通しておおよそ統一された表現方法が確立されているのに対し、新旧対照表方式では、各省庁・自治体ごとに幾分方式が異なる点がまず一番の問題点とされる。

また、内閣官房・内閣法制局「新たな改正方式について(検討状況)」(平成15年12月9日)では、新旧対照表方式の技術的問題点として、

  1. 新旧対照表方式の適用範囲(改め文との使い分け)
  2. 早期に提出を要する大部な法案等における適用の可否
  3. 印刷、校正等に要する時間の増大への対応
  4. 紙量の増大の抑制方案
  5. 参考記載部分のチェック等の省略化方策
  6. 現行法令のデータベースの整備

が 挙げられている。

なお、改め文方式の利点と新旧対照表方式の問題点について、平成14年12月3日衆議院総務委員会での谷本龍哉衆議院議員による質疑に対する回答では、次のように述べられている。

 内閣法制局におきましては、法令の正確性はもとより、これが国民にとってわかりやすいものとなるよう平素から意を用いているところでございます。また、法令案の作成事務の簡素合理化につきましても努力をしているところでございます。御指摘のいわゆる改め文と言われる逐語的改正方式は、改正点が明確であり、かつ簡素に表現できるというメリットがあることから、それなりの改善、工夫の努力を経て、我が国における法改正の方法として定着しているものと考えております。

 一方、新旧対照表は、現在、改正内容の理解を助けるための参考資料として作成しているものでございますが、逐語的改正方式をやめて、これを改正法案の本体とすることにつきましては、まず、一般的に新旧対照表は改め文よりも相当に大部となるということが避けられず、その全体について正確性を期すための事務にこれまで以上に多大の時間と労力を要すると考えられるということが一つございます。また、条項の移動など、新旧対照表ではその改正の内容が十分に表現できないということもあると考えられます。このようなことから、実際上困難があるものと考えております。

 ちなみに一例を申し上げますと、平成十一年でございますが、中央省庁等改革関係法施行法という法律がございました。改め文による法案本体は全体で九百四十ページという大部のものでございましたけれども、その新旧対照表は、縮小印刷をさせていただきまして、四千七百六十五ページに達しております。これを改め文と同じ一ページ当たりの文字数で換算いたしますと、二万一千三百五ページということになりまして、実に改め文の二十二倍を超える膨大な量となってしまう、こういう現実がございます。 — 横畠裕介政府参考人(内閣法制局)、第155回国会総務委員会第9号にて

注釈[編集]

  1. ^ 例えば、規定単位では、第1条の改正は、第5条の改正よりも先に行う。字句単位では、例えば、同一条内で「改め」「改め」「削り」「改め」の順に改正を行う場合には、1つめと2つめの「改め」はまとめるが、「削り」は3つめの「改め」よりも先に行う必要があるので、3つめの「改め」は他の「改め」とまとめることはできない。
  2. ^ a b ただし、条名が連続する場合であっても、中間に章名等が入るときは、連続する条として扱わない。
  3. ^ なお、号の細分の全部を改める場合には、「各号」のような表現ができないため、「イから○まで」のように表現することとなる。この場合において、号の細分の数が増減するときは、その増減分については、削り、又は加えることとなる。
  4. ^ ただし、条名が連続する場合であっても、中間に章名等が入るときは、連続する条として扱わない。
  5. ^ なお、章等の末条の移動後に条を加える場合には、「第一章中第二条を第三条とし、同条の次に次の一条を加える」とか、「第一章中第二条を第三条とし、同章に次の一条を加える」のように表現することとなろう(章等の末条を繰り下げて、その次に条を追加する場合の改め文 参照)。
  6. ^ 原則どおり「(第○項を第2項とし、)同項の前に」とすることもできる。
  7. ^ 削る場合が「形式的廃止」だとすると、こちらは「実質的廃止」といえるだろう。
  8. ^ もっとも、内閣法制局の審査の及ばない府省令等の場合には、項を「削除」とした例がある(『項』を「削除」とできるか参照)。
  9. ^ 直前又は直後の字句を巻き込んでも、同一の字句となってしまう場合など。もっとも、それ以外の場合にも明示すべきとする意見もある(石毛正純『法制執務詳解』など)。
  10. ^ 本文及びただし書又は前段及び後段に含まれる字句の両方を改正する場合
  11. ^ 韓国では、「各号外の部分」という。
  12. ^ 勿論、全部改正のあった条項や新設される条項は、その全体が表示されるため、その部分だけは、理解できるだろう。
  13. ^ 「(10) 法令案の改正方式をいわゆる全文改め方式とする場合の基準及び利点並びに主に法制執務上考えられる問題点について」(平成13年9月10日法令整備会議)、「県民に分かりやすい条例について」(平成17年3月28日新潟県文書私学課)。なお、台湾の法令では、この方式に類する方式である、各条ごとに改正後の条文を示す方式を用いている。
  14. ^ 国家公安委員会関係警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律施行規則の一部を改正する規則(平成28年国家公安委員会規則第5号)。なお、その後も新旧対照表方式による改正と、改め文方式による改正とが行われている。
  15. ^ もっとも、当初導入が検討されていた方式は、方式書方式を元に検討しつつも、従来型の新旧対照表をそのまま用いる方式だったようである(File:新旧対照表を用いた国家公安委員会規則の一部改正の改正文について(平成28年1月警察庁総務課).pdf参照)。
  16. ^ ただし、全ての改正を新旧対照表方式で行っている訳ではない。
  17. ^ 新旧対照表方式の方式参照。
  18. ^ なお、平成29年7月18日(号外 第154号)の時点では、方式書方式に準ずる方式を用いていた。
  19. ^ 新旧対照表ってルールがあるの?続・新旧対照表ってルールがあるの?Re:新旧対照表及び新旧対照表の作り方(まだ続く)参照。
  20. ^ イメージサンプル87頁参照。
  21. ^ 別表第一の○○の項というときの「○○」の部分
  22. ^ 例えば、条を加える場合、条名には二重傍線を付するが、項番号や号名には二重傍線を付さない(注記としての傍線を付する。)。

参照[編集]

外部リンク[編集]