帰属バイアス

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心理学における帰属バイアス(Attribution bias, Attributional bias)とは認知バイアスのひとつであり、人々が体系的なエラーの原因について、それが自分や他人の行動によるものだと考えたり、理由を求めたりすることである[1][2][3]。人は常に帰属理論で思考するが、しかしその理論は常に現実に正確であるものではない。人は客観的な観察者としては存在してはいないため、社会的世界の偏った解釈によって、バイアスのある解釈を行いがちである[4][5]

帰属バイアスは日常にあまねく存在する。たとえばある車のドライバーが運転する車が他車に割り込んだ時、割り込まれた側の車のドライバーはいらだち、その理由について、たとえば「そのドライバーは仕事などの予定に遅れそうで注意力が散漫になっていた」などの状況証拠よりも、「そのドライバーは無礼で乱暴で無能だから割り込んだ」などと言った形で、割り込んだ側のドライバーのパーソナリティー(性格)にあると解釈しがちである。

主な帰属バイアス[編集]

根本的な帰属の誤り[編集]

根本的な帰属の誤りとは、、他人の行動を解釈しようとする際の偏見を指す。このエラーは他人の行動について帰属を評価する際に、状況要因による影響評価を最小化し、一方で気質要因の影響評価を必要以上に最大化するものである[6]。たとえば、ある人が会議に行く途中で同僚が誰かにぶつかるのを見た場合、この行動について「同僚は会議に遅れている」と言うよりも、「あわてんぼうな同僚が注意力散漫になって人にぶつかった」と解釈する可能性が高くなる。

行為者-観察者バイアス[編集]

行為者-観察者バイアス(Actor-Observer bias)は根本的な帰属の誤りの延長として考えられている。これによると人々は、他者の行動については気質要因を過大評価することに加えて、自分の行動の気質要因を過小評価し、状況要因を過大評価する傾向がある。たとえば勉強する学生は、状況要因(「試験が近づいている」など)を中心に行動を解釈し、自分以外の学生たちについては気質要因(「野心的で勤勉」など)を中心に解釈している。

このバイアスは1971年に Edward E. Jones と Richard E. Nisbett らにより提案され、「俳優は行動の原因を状況に内在する刺激に帰する傾向があり、観察者は行動を俳優の安定した気質に帰する傾向がある」と述べている[7]

自己奉仕バイアス[編集]

自己奉仕バイアス(self-serving bias)とは、成功ケースの要因は内面的要因に帰属させるが、失敗ケースでは外部的要因に帰属させる人々を指す[8]。このバイアスは、失敗についてはその責任をしばし否定するが、一方で成功については自己称賛する人を説明する助けになる。たとえばあるテニスプレーヤーが試合に勝った時には「私は優秀なアスリートだから勝てた」と言う一方、負けた時は「不公平な審判のせいでだから負けた」と言う可能性がある。

自己奉仕バイアスは、自尊心を維持する手段として考えられている[9]。成功を称賛し、失敗は外部を非難することで、人は自分自身をより優秀だと感じるとみられる[10]

敵意帰属バイアス[編集]

敵意帰属バイアス(Hostile attribution bias)とは、ある人が他人の曖昧な行動について、それを好意的ではなく敵対的と解釈するバイアスとして定義されている[11][12] 。たとえば子供は、別の2人の子供が囁いているのを目撃した場合、彼は自分について否定的なことを話していると思い込むことがある。この場合、他の子供たちの行動は潜在的に好意的な帰属であったとしても、彼は敵対的な帰属としていた。研究によると敵意帰属バイアスと攻撃行動(aggression)には関連性があり、他人の行動を敵対的であると解釈する可能性が高い人は、攻撃的な行動をとる可能性も高くなっていた[13][14]

一覧[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Heider, F. (1958). The psychology of interpersonal relations. New York: Wiley. p. 322 
  2. ^ Kelley, H.H. (1967). Attribution theory in social psychology. In D. Levine (Ed.) Nebraska Symposium on Motivation, Lincoln: University of Nebraska Press
  3. ^ Abramson, L.Y.; Seligman, M.E.; Teasdale, J.D. (1978). “Learned helplessness in humans: Critique and reformulation”. Journal of Abnormal Psychology 87 (1): 49–74. doi:10.1037/0021-843X.87.1.49. PMID 649856. 
  4. ^ Funder, D.C. (1987). “Errors and mistakes: Evaluating the accuracy of social judgment”. Psychological Bulletin 101 (1): 75–90. doi:10.1037/0033-2909.101.1.75. PMID 3562704. 
  5. ^ Nisbett, R.E. & Ross, L. (1980). Human inference: Strategies and shortcomings of social judgment, Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall.
  6. ^ Ross, Lee (1977). “The Intuitive Psychologist and His Shortcomings: Distortions in the Attribution Process”. In Berkowitz, Leonard. Advances in Experimental Social Psychology. 10. pp. 173–220. doi:10.1016/S0065-2601(08)60357-3. ISBN 9780120152100 
  7. ^ Jones, E.. & Nisbett, R.E. (1971). The actor and the observer: Divergent perceptions of the causes of behaviors. New York: General Learning Press.
  8. ^ Darity, W.A. (2008). "International encyclopedia of the social sciences." Detroit: Macmillan Reference USA.
  9. ^ Larson, J.R. (1977). “Evidence for a self-serving bias in the attribution of causality”. Journal of Personality 45 (3): 430–441. doi:10.1111/j.1467-6494.1977.tb00162.x. 
  10. ^ Campbell, W.K.C.; Sedikides, C. (1999). “Self-threat magnifies the self-serving bias: A meta-analytic integration”. Review of General Psychology 3 (1): 23–43. doi:10.1037/1089-2680.3.1.23. 
  11. ^ Crick, N.R.; Dodge, K.A. (1996). “Social information-processing mechanisms in reactive and proactive aggression”. Child Development 67 (3): 993–1002. doi:10.2307/1131875. JSTOR 1131875. PMID 8706540. 
  12. ^ Camodeca, M.; Goossens, F.A.; Schuengel, C.; Terwogt, M.M. (2003). “Links between social informative processing in middle childhood and involvement in bullying”. Aggressive Behavior 29 (2): 116–127. doi:10.1002/ab.10043. https://research.vu.nl/ws/files/1907280/Camodeca%20Aggressive%20Behavior%2029%202003%20u.pdf. 
  13. ^ Steinberg, M.S.; Dodge, K.A. (1983). “Attributional bias in aggressive adolescent boys and girls”. Journal of Social and Clinical Psychology 1 (4): 312–321. doi:10.1521/jscp.1983.1.4.312. 
  14. ^ Camodeca, M.; Goossens, F.A. (2005). “Aggression, social cognitions, anger and sadness in bullies and victims”. Journal of Child Psychology and Psychiatry 46 (2): 186–197. doi:10.1111/j.1469-7610.2004.00347.x. PMID 15679527. https://research.vu.nl/en/publications/26cb5aac-177b-41d1-aace-0988ccf91679. 

さらに読む[編集]

関連項目[編集]