認知的不協和

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認知的不協和(にんちてきふきょうわ、: cognitive dissonance)とは、人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された。人はこれを解消するために、自身の態度や行動を変更すると考えられている。

有名な例として、イソップ物語のキツネとすっぱい葡萄の逸話が知られる。

フェスティンガーによる認知的不協和の仮説(命題)[編集]

不協和の存在は、その不協和を低減させるか除去するために、なんらかの圧力を起こす。
つまり、複数(通常は二つ)の要素の間に不協和が存在する場合、一方の要素を変化させることによって不協和な状態を低減または除去することができる。
不協和を低減させる圧力の強弱は、不協和の大きさの関数である。
つまり、認知的不協和の度合いが大きければ、不協和を低減させる圧力はその度合いに応じて大きくなる。

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弁護士は、実際には有罪だと考えているクライアントを無実だと弁護する必要が生じた場合、「不協和による負の緊張感」を感じるだろう。
原因不明の感情を説明する
あるコミュニティで何らかの災害が発生していると、その災害が起こっていない隣接するコミュニティで、不合理な恐ろしい噂が広がる。これは、脅威に直面していない人が、災害への不安を正当化する必要があるためである [1]
キャンセルできない選択肢の後悔を最小化する
競馬場の賭けは投票後に変更できないため、馬券購入後はより自分が選んだ馬に自信を深める(決定後の不協和)[2]

フェスティンガーの実験[編集]

上記の煙草の例は、対照実験をすることが難しいため、認知的不協和の提唱者フェスティンガーは以下の実験を考案した。フェスティンガーは、単調な作業を行わせた学生に対して報酬を支払い、次に同じ作業をする学生にその作業の楽しさを伝えさせる実験を行った。

この実験では、実際にはつまらない作業という認知と矛盾する楽しさを伝えるという認知から不協和が発生するが、報酬の多寡で楽しさを伝える度合いが異なる事を確かめた。

報酬が少ない学生は、報酬が多い学生よりも楽しさを伝える度合いが強く、割に合わない報酬に対して「本当は面白かったのかもしれない」と、認知に修正を加えて不協和を解消しようとする心理が強く働いているとした。

脚注[編集]

  1. ^ Prasad, J. (1950). A comparative study of rumours and reports in earthquakes. British Journal of Psychology, 41(3-4), 129-144.
  2. ^ Knox, R. E., & Inkster, J. A. (1968).Postdecision dissonance at post time. Journal of Personality and Social Psychology, 8(4), 319-323.

参考文献[編集]

  • 「10 認知的不協和の理論(L・フェスティンガー)」『命題コレクション 社会学作田啓一井上俊 編、筑摩書房、1986年6月6日。ISBN 4-480-85292-1
  • Leon Festinger (1957) [1954]. A Theory of Cognitive Dissonance. California: Stanford University Press. ISBN 0-8047-0911-4. 
  • Leon Festinger; Henry Riecken; Stanley Schachter (2009). When Prophecy Fails. Martino Fine Books. ISBN 978-1-57898-852-5. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]