口腔底癌

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口腔底癌(こうくうていがん、口底癌)とは、口腔癌の一つで、口腔底に発生する腫瘍の総称。口腔癌全体の10%~28%を占める[1][2][3]

概念[編集]

口腔底癌は口腔底に発生する腫瘍で、口腔癌の中で比較的発生頻度が高い腫瘍である。通常、目に見える範囲であるため、早期発見は容易であるが、自覚症状がない場合、放置され、腫瘍が進行してから医療機関を受診することもある。

原因[編集]

疫学[編集]

1930年代は男女比が13:1と女性は少なかった[4]が、2010年には男女比は約4:1とされ[1]、女性患者の割合が増加している。これについて、女性の飲酒喫煙の増加が原因として示唆されている[4]

舌下小丘付近に好発する[1]

症状[編集]

口腔底部の潰瘍と硬結を伴う腫瘤を形成する。

舌癌とならびリンパ節転移が早期より発生しやすく、約半数の患者が初診時に既にリンパ節へと転移している[1]

検査[編集]

腫瘍部位の病理検査のほか、原発部位や転移部位の画像診断として、CTMRIPETUS胸部X線、Gaシンチグラフィ、骨シンチグラフィ、上部消化管内視鏡検査、消化管造影検査等が行われる[5]

治療[編集]

外科的療法放射線療法化学療法の治療法が、単独または組み合わせで行われる。また、初期のものを除き、外科的療法を選択した場合には再建術が行われる。

この他、リンパ節転移に対しては頸部郭清術が行われる。

治療後は、摂食嚥下・発語等の機能が低下するため、医師歯科医師言語聴覚士歯科衛生士看護師らにより、リハビリテーションが行われる。

診療科[編集]

主に担当する診療科としては歯科口腔外科耳鼻咽喉科、癌センターなどでは頭頸部外科がある。この他、再建が必要な場合は形成外科が、放射線治療では放射線科が、化学療法では担当診療科(化学療法科など)が関わる。また言語聴覚士をはじめとするリハビリテーション部門も関与する。

予後[編集]

5年生存率は70~80%と言われる[1]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 浦出雅裕 著「第7章 口腔腫瘍 5 悪性腫瘍 2.癌腫 1)口唇および口腔の癌 (6)口底癌」、白砂兼光古郷幹彦 編『口腔外科学』(第3版)医歯薬出版東京都文京区、2010年3月10日、259-260頁。ISBN 978-4-263-45635-4NCID BB01513588 
  2. ^ 覚道健治 著「V.顎口腔領域の腫瘍および類似疾患 5.非歯原性悪性腫瘍」、栗田, 賢一覚道, 健治小林, 馨 編『口腔外科の疾患と治療』(初版)永末書店京都市上京区、1998年11月23日、167-168頁。ISBN 4-8160-1071-8 
  3. ^ SO Krolls, S Hoffman (1976). “Squamous cell carcinoma of the oral soft tissues: a statistical analysis of 14,253 cases by age, sex, and race of patients”. JADA (アメリカ歯科医師会) 92 (3): 571-574. ISSN 0002-8177. 
  4. ^ a b Jens J. Pingborg, Palle Holmstyup 著「第24章 口腔粘膜疾患および唾液腺疾患の病理と治療」、原著編 Poul Holm-Pedersen, Harald Löe 編『高齢者歯科学』訳:森戸光彦 監訳:稲葉茂高江洲義矩森戸光彦 監修:渡辺誠[要曖昧さ回避](第1版(原著第2版))、永末書店京都市上京区、2000年3月1日(原著1997年1月30日)、320頁。ISBN 4-8160-1082-3 
  5. ^ 日本口腔腫瘍学会口腔癌治療ガイドライン作成ワーキンググループ 日本口腔外科学会口腔癌ガイドライン策定委員会 合同委員会 編「第3章診断 II.画像診断」『科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン2009年度版』(初版)金原出版、2009年1月30日、31-33頁。ISBN 978-4-307-45009-6http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0082/G0000273/00192011年3月27日閲覧 

関連項目[編集]