内眼角贅皮

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内眼角贅皮
Epicanthic KR02.jpg
内眼角贅皮 (ないがんかくぜいひ) は、上眼瞼 (じょうがんけん) が内眼角を覆う皮膚のひだ[1][2]
概要
表記・識別
ラテン語 plica palpebronasalis
TA A15.2.07.028
FMA 59370
解剖学用語英語版

内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)または蒙古ひだ蒙古襞(もうこひだ)[2]とは、上眼瞼(上まぶた)が内眼角(目頭、めがしら)を覆う部分にある皮膚のひだ。この特徴を表現する言葉としては、他に瞼鼻ヒダ(けんびヒダ、plica palpebronasalis[3]: 解剖学用語)[4][5]がある。内眼角贅皮と密接に関連した主な顔の特徴に、鼻梁(鼻すじ)がある。他の条件が同じなら鼻梁が低い[6]ほど内眼角贅皮になりやすく、また逆に、内眼角贅皮があれば鼻梁が低いとも言える[7]。内眼角贅皮が生じる原因は、地理上の血統、年齢、病的な理由などさまざまである [8]

出現の要因[編集]

血統上の分布[編集]

ナミビアサン人の少女。南部アフリカに住むサン人の間では、内眼角贅皮はありふれたものである。
内眼角贅皮のあるサーミ人イェンス・ビックマーク (en) [9]

東アジアの人々では内眼角贅皮のある顔が典型的であり[1]中央アジアの人々の間でもありふれたものである。南部アフリカに住むサン人の特徴ともなっている。アメリカ先住民の内のかなりの人でも見られる[10][11][12]。さらにヨーロッパの少数民族にも比較的よく出現することがある。スカンジナビア人サーミ人[11]ポーランド人ドイツ人アイルランド人およびイギリス人[要出典]など。女性や子供で顕著にみられ、加齢とともにはっきりしなくなる傾向がある。

年齢[編集]

ヒトはもともと胎内では内眼角贅皮が発達している。しかし胎児の内に妊娠3ないし6か月で、あるいは出生前には消えることが多い。乳幼児でも鼻梁が隆起する以前には見られる場合がある[11]

病態として[編集]

先天異常の表現型として、内眼角贅皮が見られる場合がある[1]。鼻梁が成長して前方に伸びるのを阻害するような病態が、これに関連している。ダウン症候群 (21トリソミー) 患者の多くにみられる特徴の一つに、際立った内眼角贅皮がある[13]。1862年にイギリスのジョン・ランドン・ダウン (en) は、現在では ダウン症候群と呼ばれる疾患を分類した。彼は「ダウン症を持つ子供、はブルーメンバッハ (en) のいわゆるモンゴロイドと同じ (内眼角贅皮のように) 身体的顔貌的な共通性がある」という考えをもっていた。そこで当時流行のこうした (ブルーメンバッハ的な) 民族理論に基づいて「モンゴリズム」という呼称 (蒙古症) をもちいた[14]。「蒙古症」という用語は1970年代初頭までは使われていたが、侮蔑的でしかも不正確なものとみなされるようになって、今では通常用いられていない[15]

Zellweger 症候群 (ペルオキシソームの機能異常をきたす遺伝子疾患のひとつ) でも内眼角贅皮は特徴的である[16]。他に内眼角贅皮を呈するものとして、胎児性アルコール症候群[17]フェニルケトン尿症ターナー症候群[18]などがある[19]

進化における起源[編集]

内眼角贅皮の形成は、気候的要素が原因であり、その出現は人類史上で1回だけではなかった、という仮説がある。性による出現の差もこの特色の進化に影響を及ぼしたであろう。進化上の適応に対する遺伝学的な裏付けもよくわかっていない[20]

脚注[編集]

  1. ^ a b c epicanthic”. Oxford Dictionaries. Oxford University Press. 2013年2月28日閲覧。
  2. ^ a b 日本小児遺伝学会による写真と用語。2013年2月28日閲覧
  3. ^ Plica Palpebronasalis-medilexicon. Stedman's Medical Dictionary. 2006. Retrieved 2013-2-28
  4. ^ 『Rauber-Kopsch解剖学』中の解説。船戸和弥のホームページより。2013年2月28日閲覧
  5. ^ 解剖学用語A15.2.07.028。船戸和弥のホームページより。2013年2月28日閲覧
  6. ^ 日本小児遺伝学会による写真と用語。2013年2月28日閲覧
  7. ^ Montagu, A. (1989) Growing Young N.Y.: McGraw Hill pp. 40
  8. ^ AllRefer Health-Epicanthal Folds (Plica Palpebronasalis) Archived 2010年1月12日, at the Wayback Machine.. AllRefer.com. Retrieved 2013-2-28.
  9. ^ "VM med samer i centrum". www.samer.se. 2007-02-26. Retrieved 2013-2-28.
  10. ^ Montagu, A. (1989). Growing Young. Bergin & Garvey: CT.
  11. ^ a b c Epicanthus”. 28 2 2013閲覧。
  12. ^ epicanthic fold (anatomy)”. Encyclopaedia Britannica. 28 2 2013閲覧。
  13. ^ Kim, JH; Hwang, JM; Kim, HJ; Yu, YS (Nov 2002). “Characteristic ocular findings in Asian children with Down syndrome” (free full text). Eye(Lond) 16 (6): 710-714. doi:10.1038/sj.eye.6700208. PMID 12439664. http://www.nature.com/eye/journal/v16/n6/full/6700208a.html. 
  14. ^ Conor, WO (1999). “John Langdon Down: The Man and the Message”. Down Syndrome Research and Practice 6 (1): 19?24. doi:10.3104/perspectives.94. 
  15. ^ Howard-Jones, Norman (1979). “On the diagnostic term "Down's disease"”. Medical History 23 (1): 102?04. PMC 1082401. PMID 153994. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1082401. 
  16. ^ Theil, AC; Schutgens, RB; Wanders, RJ; Heymans, HS (Feb 1992). “Clinical recognition of patients affected by a peroxisomal disorder: a retrospective study in 40 patients”. Eur J Pediatr 151 (2): 117-120. PMID 1371465. 
  17. ^ Ribeiro IM, Vale PJ, Tenedorio PA, Rodrigues PA, Bilhoto MA, Pereira HC (Jan-Feb 2007). “Ocular manifestations in fetal alcohol syndrome”. Eur J Ophthalmol 17 (1): 104-109. PMID 17294389. 
  18. ^ Chrousos GA, Ross JL, Chrousos G, Chu FC, Kenigsberg D, Cutler G Jr, Loriaux DL (Aug 1984). “Ocular findings in Turner syndrome. A prospective study”. Ophthalmology 91 (8): 926-928. PMID 6493701. 
  19. ^ MedlinePlus Medical Encyclopedia.Retrieved 28-2-2013.
  20. ^ Hotep, Amon (2000年9月4日). “Race, Genetics and History”. 28 2 2013閲覧。

関連項目[編集]