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人工食道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

人工食道(じんこうしょくどう)とは食道の代用として用いる人工臓器

再生医療の素材を応用して作成された「再生食道」、人工の素材を応用して作成された「人工食道」などがある。

人工食道の開発の背景には、食道癌の手術における「食道再建」の術式が煩雑で困難なことが挙げられる。通常、が代用食道に用いられるが侵襲が大きくなり患者の負担が大きい。そこで代用としての人工食道が発案された。

早くも1960年代には、様々な材料の人工食道が開発されたが、感染そのほかの問題で失敗に終わった。 人工心臓などは無菌的な環境にあるので、感染の危険は比較的少ないが、人工食道などの消化器系の人工内臓では、中身が細菌に溢れた食物や糞便であるので、一際感染には弱い。 見直されるようになったのは近年の再生医療の発展による。しかしながら再生医療の技術では、粘膜だけの再生は可能だが、筋層や外膜は再生されないという問題点がある。 最近、再生医療による粘膜再生と、形状記憶合金による人工筋肉の組み合わせが試みられている。

過去に行われた人工食道の蠕動メカニズムとして、埋め込み型のモーターなどが応用されたこともあったが、胸腔内は腹腔内と比較しても、肺や心臓などがあって余剰スペースが全くなく、実用化に至らなかった。最近開発された形状記憶合金による蠕動搬送機能は、超小型軽量化を具現化した面で実用化に近づいた。経皮エネルギー伝送システムの応用で完全埋め込み型のシステム開発も具現化し、動物実験段階にある。再生医療とのコンバインで実用化が待たれる。