ヴァルドサウルス

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ヴァルドサウルス
Valdosaurus sp.jpg
Valdosaurus sp.の腸骨
地質時代
白亜紀前期
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 鳥盤目 Ornithischia
亜目 : 鳥脚亜目 Ornithopoda
上科 : ドリオサウルス上科
Dryosauroidea
: ドリオサウルス科
Dryosauridea
: ヴァルドサウルス属
Valdosaurus
学名
Valdosaurus
Galton1977

ヴァルドサウルスValdosaurus "ウィールドen)のトカゲ"の意味)は白亜紀前期に生息した二足歩行草食イグアノドンティアに分類される鳥脚類恐竜の属である。化石はワイト島などのイングランドで発見されている。

発見と命名[編集]

19世紀、ウィリアム・ダーウィン・フォックスen)師はワイト島南西部の海岸にあるカウリーズチャインen )で小さな大腿骨を収集した。1868年、フォックスは不正確にも1848年にギデオン・マンテルが発掘し、イグアノドンの化石としたものと同じ個体のものであるとした。マンテルの化石は1869年に新属ヒプシロフォドンと命名された。両者の大腿骨は無関係であるが、大英自然史博物館に BMNH R184及びBMNH R185として収蔵され、一般的にはヒプシロフォドンのものとされていた。

しかし、1975年にピーター・ガルトンen)はドリオサウルスの新種として命名し、Dryosaurus canaliculatusとした。種小名ラテン語で「小さな溝を持つ」を意味し、大腿骨下部のの間の明瞭な溝に言及したものである[1]。1977年、ガルトンはこの種に新たな属名を命名した。 Valdosaurusというこの属名は発見地であるウィールド層群en)にちなみ、ラテン語で「ウィールドの」を意味するValdusから派生している。そのタイプ種としてD. canaliculatusV. canaliculatusと改名された[2]。第二の種V. nigeriensisは1982年、ニジェールのより新しい年代の堆積岩から発見された化石に基づいてフィリップ・タケen)により記載された[3]。この種は後に独自の属エルラゾサウルスElrhazosaurus)へと移されている。

1988年、ウィリアム・ブロウズen )は不注意にも動物相のリストに掲載することによって別の種Valdosaurus dextrapodaを命名した[4]。しかし、これは単なる誤りでありこの種は一切支持されていない[5][6]。記載を欠いているため、裸名Nomen nudum)である。

分布と標本[編集]

ヨーロッパに近縁種をもつアメリカの種であるドリオサウルスが命名されたでヨーロッパで発見されたほとんどのドリオサウルス科Dryosaurididae)の化石はヴァルドサウルスのものとされることになった。ヴァルドサウルスはイングランド(ワイト島のウェセックス累層en)およびウェスト・サセックスヘイスティング層en))のみならずルーマニア(ビホル県コルネットのボーキサイトen))およびスペインにも生息していたようだ。これらの岩相層序単位(地層の年代)はベリアス期からバーレム期(1億4500万年前から1億2500万年前)である。V. canaliculatusは大腿骨のみが知られていたものの、部分的な首から後の骨格と歯骨、歯の標本が後に加えられた[7]

しかし、2009年にガルトンがヴァルドサウルスの化石についての批判的な再評価を行い、イングランド以外から発見された化石に確実にこの属ものとできるものはないと結論した。それゆえV. nigeriensisを独自の属エルラゾサウルスへと分類した。全ての頭部の化石と歯を含む多くのイングランドで発見された標本でさえもヴァルドサウルスのものであるかは不確定であるとした。上部ウィールデンクレイ累層en )(バーレム期後期)で発見された後肢や骨盤V. canaliculatusのものとされている。またヘイスティング層前期(バランジュ期)の化石はValdosaurus sp.とされている。ガルトンはオーウェンが1842年にイグアノドンのものであるとして記載した大腿骨、標本BMB 004297-004300が初めて記載されたヴァルドサウルスであったと確証した。また、タイプ標本の大腿骨は非常に小さく、長さ14 cmほど(体長1.2 m、体重10 kgと推定される)であるが[8]、これは幼い個体のもので、生体は中程度の大きさの真鳥脚類となり、大腿骨は50 cmほどであっただろうとと強調している[6]

分類[編集]

ガルトンはヴァルドサウルスをヒプシロフォドン科Hypsilophodontidae)に分類した[1][2]、しかし、この分類群は多系統な人為的分類群であり一般的は放棄されている。現在では一般的にドリオサウルス科に属すと考えられている[7]

関連[編集]

参照[編集]

  1. ^ a b Galton, P.M., 1975, "English hypsilophodontid dinosaurs (Reptilia: Ornithischia)", Palaeontology 18(4): 741-752
  2. ^ a b Galton, P.M., 1977. "The Upper Jurassic dinosaur Dryosaurus and a Laurasia-Gondwana connection in the Upper Jurassic", Nature 268(5617): 230-232
  3. ^ Galton, P.M. & P. Taquet, 1982, "Valdosaurus, a hypsilophodontid dinosaur from the Lower Cretaceous of Europe and Africa", Géobios 13: 147-159
  4. ^ Blows, W.T., 1998, "A review of Lower and Middle Cretaceous dinosaurs of England", New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin, Albuquerque 14: 29-38
  5. ^ Martill, D.M. and Naish, D., 2001, "Ornithopod dinosaurs." Pages 60-132 in Martill, D.M. and Naish, D. (eds.). Dinosaurs of the Isle of Wight, The Palaeontological Association, London.
  6. ^ a b Galton, P.M., 2009, "Notes on Neocomian (Late Cretaceous) ornithopod dinosaurs from England - Hypsilophodon, Valdosaurus, "Camptosaurus", "Iguanodon" - and referred specimens from Romania and elsewhere", Revue de Paléobiologie 28(1): 211-273
  7. ^ a b Norman, David B. (2004). “Basal Iguanodontia”. In Weishampel, D.B., Dodson, P., and Osmólska, H. (eds.). The Dinosauria (2nd ed.). Berkeley: University of California Press. pp. 413–437. ISBN 0-520-24209-2. 
  8. ^ Paul, G.S., 2010, The Princeton Field Guide to Dinosaurs, Princeton University Press p. 283