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リーマン和(リーマンわ、英語: Riemann sum)とは、
実数区間
上で、
なる数列があるとし、
代表点
と数列の有限差分
が
を満たし、
区間
上で定義された実数値連続函数
があるとき、

のことである。
この
での極限が、リーマン積分

である[1]。
ニュートンとライプニッツがそれぞれ別々に、微分と積分の逆演算性を発見した。
最初にリーマン和を左リーマン和
と右リーマン和
の形で導入したのはオイラーであるが、
それは「積分の定義」としてではなく「積分の近似式」としてであった。
以後、ラクロワ、ポアソンを経て、コーシーが、積分の定義とし採用する。
コーシーよりも前の積分は、微分の定義に依存したニュートン・ライプニッツ以来の逆微分であり、微分と独立に定義されたものではなかった
[2]
[3]。
"Euler は積分を微分の逆演算として定義しているが,Cauchy は定積分をまず定義した後,
を定理として導いた.こうした発想の逆転も Cauchy に負う.[4]"
これによって、微分の存在とは無関係に積分が定義できるようになった。

における

の右リーマン和
リーマン和の具体例[編集]
被積分函数が単項式のとき[編集]
例えば、
で
のとき
等差数列[編集]
等差数列
をとると、
左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、


となる[5]。
等比数列[編集]
等比数列
をとると、
左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、


となる。
は
で単調増加函数なので、等差数列か等比数列かに拘わらず、左リーマン和と右リーマン和の間で

の関係が成り立つ。
連続函数の左リーマン和と右リーマン和は、
の極限で収束するので、

が得られる。
積分の結果が対数となるとき[編集]
で
のとき
等比数列
をとると、
左リーマン和と右リーマン和は、それぞれ、


となる[6]。
は
で単調減少函数なので、左リーマン和と右リーマン和の間で

の関係が成り立つ。
連続函数の左リーマン和と右リーマン和は、
の極限で収束するので、

が得られる。
参考文献[編集]
- ^ 『リーマン論文集』足立恒雄・杉浦光夫・長岡亮介編訳
- ^ 二キフォロスキー著、馬場良和訳『積分の歴史 - アルキメデスからコーシー, リーマンまで -』現代数学社, 1993, pp.190 - 191
- ^ 安部齊『微積分の歩んだ道』森北出版, 1989, pp.194 - 195
- ^ 岩波『数学辞典』第四版, p.106
- ^ 遠山啓『微分と積分 - その思想と方法 -』日本評論社, 1970, pp.180 - pp.181
- ^ 遠山啓『微分と積分 - その思想と方法 -』日本評論社, 1970, pp.182 - pp.183