マルクス・ヘレンニウス

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マルクス・ヘレンニウス
M. Herennius M. f.
出生 紀元前136年
死没 不明
出身階級 プレブス
氏族 ヘレンニウス氏族
官職 法務官紀元前96年以前)
執政官紀元前93年
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マルクス・ヘレンニウスラテン語: Marcus Herennius、生没年不明)は紀元前2世紀後期・紀元前1世紀初期の共和政ローマの政治家。紀元前93年執政官(コンスル)を務めた。

出自[編集]

ヘレンニウス氏族はイタリア中部・南部に居住していたオスク系イタリック人と推定される。マルクス・ヘレンニウスはノウス・ホモ(先祖に高位官職者をもたない新人)であっただけでなく、「新ローマ市民」であったと思われる[1]

カピトリヌスのファスティによれば、ヘレンニウスの父のプラエノーメン(第一名、個人名)はマルクスであるが、祖父は不明である[2]。父マルクスはガイウス・センプロニウス・グラックスの友人とされるハルスペックス(生贄の動物の内臓から前兆を読み取る占官)であるヘレンニウス・シクルスと同一人物との説もある[3]

経歴[編集]

ヘレンニウスの経歴に関しては、ほとんど知られていないが、生誕年は紀元前136年頃と推定されている[4]。政治歴の初期に造幣官を務めたことが分かっているが、その時期に関しては紀元前109年[4]紀元前109年[3] がある。プラエトル(法務官)就任年は不明だが、執政官就任年とウィッリウス法の規定から、遅くとも紀元前96年と推定される[5]

紀元前94年末に、ヘレンニウスは執政官選挙に立候補する。対立候補はルキウス・マルキウス・ピリップスであった。ピリップスは非常に著名で影響力のある人物で、幅広い人脈を持ち、優れた弁論家としての評判を得ていた。驚いたことに、ヘレンニウスはより多くの票を獲得し、執政官に当選した。キケロによれば、そのような結果は予想されておらず、「ヘレンニウスのピリップスに対する勝利は、クィントゥス・ファビウス・マクシムス・エブルヌスマルクス・アエミリウス・スカウルスに対する勝利(紀元前117年選挙)や、グナエウス・マッリウス・マクシムスクィントゥス・ルタティウス・カトゥルスに対するグ勝利(紀元前106年選挙)と同じように、同時代の人々には不可解なものとうつった」と述べている[6]

紀元前93年に執政官に就任。同僚執政官は、パトリキ(貴族)のガイウス・ウァレリウス・フラックスであった。執政官としての業績はほとんど分かっていない[7]。またこれ以降のヘレンニウスに関する記録もない[3]

大プリニウスによれば、フラックスとヘレンニウスが執政官の年に、キレナイカでのシルフィウム(現在のどの植物に該当するか不明)の収穫は普通であった[8]

知的活動[編集]

キケロは、『ブルトゥス』で、ルキウス・リキニウス・クラッススマルクス・アントニウス・オラトルと同時代の弁論家として、ヘレンニウスを挙げている。それによると「演説は人並みだったが純粋なラテン語を正確に話す弁論家」であり、「ピリップスに弁論術は劣っていた」とされている[9]

脚注[編集]

  1. ^ Herennius, 1912, s. 1177.
  2. ^ カピトリヌスのファスティ
  3. ^ a b c Herennius 10, 1912.
  4. ^ a b Sumner, 1973, p. 20.
  5. ^ Broughton, 1952 , p. nine.
  6. ^ キケロ『ムレナ弁護』、36.
  7. ^ Broughton, 1952 , p. 14.
  8. ^ 大プリニウス『博物誌』、XIX, 3.
  9. ^ キケロ『ブルトゥス』、166.

参考資料[編集]

古代の資料[編集]

研究書[編集]

  • Broughton R. Magistrates of the Roman Republic. - New York, 1952. - Vol. II. - P. 558.
  • Münzer F. Herennius // Paulys Realencyclopädie der classischen Altertumswissenschaft . - 1912. - Bd. VIII, 1. - Kol. 661-662.
  • Münzer F. Herennius 10 // Paulys Realencyclopädie der classischen Altertumswissenschaft . - 1912. - Bd. VIII, 1. - Kol. 664.
  • Sumner G. Orators in Cicero's Brutus: prosopography and chronology. - Toronto: University of Toronto Press, 1973 .-- 197 p. - ISBN 9780802052810 .

関連項目[編集]

公職
先代
ガイウス・コエリウス・カルドゥス
ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス
執政官
同僚:ガイウス・ウァレリウス・フラックス
紀元前93年
次代
ガイウス・クラウディウス・プルケル
マルクス・ペルペルナ