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フレネルレンズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
平凸レンズ(上)を厚みが一定のフレネルレンズ(下)となるように分割した場合の断面図

フレネルレンズ: Fresnel lens[1] [freɪˈnɛl lɛnz, ˈfrɛznəl lɛnz])は、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズであり、のこぎり状の断面を持つ。分割数を多くすればするほど薄くなるため、材料を減らし軽量にできる一方、同心円状の線が入ってしまう欠点や、回折の影響による結像性能の悪化が顕著になる。そのため、薄型化が特に有利な用途や、回折の影響を無視できる照明用などに用いられることが多い。

1822年フランス物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルによって発明された。

用途

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照明

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フレネルは元来、灯台用としてこのレンズを開発した。今も、主に灯台や投光器などの照明機器用に用いられる。灯台用レンズは巨大であり、凸レンズでは厚みが大きく重くなり過ぎた(フレネルレンズでも、最大級の物は数トンに達する)。加えて原材料費が高くつくこと、製造に手間がかかるという問題が有り、それらの解決策としてこのレンズを考案したと考えられている。

大型の物では、フレネルレンズの周囲にリング状のプリズムをも配置した物がある。この場合、中央部のフレネルレンズだけでは屈折角が大きすぎ水平方向に向けられない外周部の光も、プリズムによる全反射も利用して曲げることにより利用できる。プリズムへの入射光は一旦光源側に屈折し、全反射したのち再度屈折し水平方向に出射することになる(プリズムの三角の向きがフレネルレンズと逆であることに注意)。

ただし灯台用の大型の物は、現在すでに製造されておらず、製造できる者もほぼいない。それゆえ再生産どころか、破損した場合の修復も、ほぼ不可能になっている。

また、カメラフラッシュ用照明レンズとしても使用される。光源(通常はキセノンフラッシュランプ)の直前に取り付けられ、光が画面内にまんべんなく行き渡るようにカメラレンズの画角に合わせたものが選ばれる。

光学機器

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フレネルレンズのルーペ

簡易な拡大鏡などに使用される。この種のものは無色透明なプラスチックアクリル樹脂ポリスチレンポリカーボネートなど[2])を同心円状の溝を持つ薄板に形成することにより、平板なカードの様な形状でありながらレンズの役割を果たすようになっていることが多い。近年は断面を非球面とすることで、同心円状の溝を目立たなく、像を明るくしている製品がある[3]

レフレックスカメラ(一眼レフ二眼レフ)のファインダーにおいてフォーカシングスクリーン(すりガラス面など)の付近に置かれるフィールドレンズとしても、厚さや重さを減らすためにフレネルレンズが用いられる事が多い。ただし、単純なフレネルレンズが用いられることは少なく、通常は同一面上に用途に合わせた他の光学部品も形成した複雑なパターンを持っている。例えば、オートフォーカスでない一眼レフカメラの典型的なものでは、目視でのピント合わせを容易にするため、スクリーン中央には一対のスプリットプリズムとそれを囲むマイクロプリズム面とが配置され、それ以外の画面周辺部はフレネルレンズ面とされる[2]オートフォーカスの場合にはプリズム面が無い場合が多い。

リニアフレネルレンズ

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フレネルレンズの原理を円柱レンズに応用したものはリニアフレネルレンズと呼ばれる。フレネルレンズでは溝が同心円状であり、光は一点に集光する。一方、リニアフレネルレンズは溝が平行直線状であり、光は直線上に集光する。

脚注

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  1. ^ 文部省日本物理学会編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4 
  2. ^ a b Smith, Warren J. (2000). Modern Optical Engineering: The Design of Optical Systems (3rd Ed. ed.). McGraw-Hill. pp. pp. 190-192, 274 -275. ISBN 978-0071363600 
  3. ^ カタログ「VisuCard」”. スポーツオプティクスディパートメント. カールツァイス株式会社 (2007年). 2012年5月15日閲覧。

関連項目

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  • 回折レンズ - フレネルレンズと形状はよく似ているものの、原理は全く異なる。

外部リンク

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