ピーザ・スクラム (海防戦艦)

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「ピーザ・スクラム」(1939年)
「ピーザ・スクラム」の図面

ピーザ・スクラム (Peder Skram) はデンマーク海軍海防戦艦ヘアロフ・トロレ級。艦名は16世紀のデンマークの提督にちなむ[1]

コペンハーゲン海軍工廠で建造[2]。1905年4月25日起工[2]。1908年5月2日進水[2]。1908年9月24日竣工[2]。建造費は約700万クローネであった[3]

常備排水量3735トン、満載排水量3785トン、全長87.40メートル、水線間長84.00メートル、幅15.70メートル、吃水5.0メートル[2]

主砲は24㎝砲2門で、「ピーザ・スクラム」のものはボフォース43口径M/06型であった[2]。射程は10キロメートルで、後に15.2キロメートルに伸びている[4]。発射速度は毎分3発であった[4]。副砲はボフォース50口径15㎝砲4門[5]。射程は10.0キロメートルで、後に14.3キロメートルに伸びている[6]。発射速度は毎分7発[6]。他に、55口径75㎜M/7型薬莢砲10門を搭載した[7]。また、45㎝水中魚雷発射管を艦首と艦尾に1門と両舷に1門ずつ搭載した[8]。1915年と1916年に主砲天蓋上の75㎜砲が55口径75㎜高角砲に換装され、1919年にも別の75㎜砲2門が高角砲に換装された[9]。後に、主砲上天蓋はマドセン75口径8㎜機銃に換えられている[10]。また、時期により20㎜機銃や40㎜機関砲が搭載されている[10]

機関は共にコペンハーゲン海軍工廠製の直立3気筒3段膨張式蒸気往復動機関2基、ソーニクロフト式水管缶6基で、出力5400指示馬力[11]。2軸推進で速力16.0ノット[2]。航続距離は9ノットで2620浬であった[11]

「ピーザ・スクラム」の水線装甲帯、砲塔、ケイスメイト外壁の装甲鈑はKCであった[12]。水線装甲帯は厚さ155ミリメートルから195ミリメートルで、下部では厚さは半減していた[12]。前方は艦首より5.5メートルの位置までで、そこに両装甲帯を繋ぐ厚さ175ミリメートルの装甲鈑があった[12]。主砲塔は前190ミリメートル、横175ミリメートル、後ろ160ミリメートルで、バーベットは185ミリメートル[2]。ケイスメイト側面は140ミリメートルであった[2]。上甲板はニッケル鋼で、厚さは45ミリメートル[12]。司令塔の装甲が190ミリメートルで、煙突基部が75ミリメートルであった[11]

1911年、ストックホルムを訪問[13]。1912年、ハンブルクで死去した国王フレズレク8世の棺引き取りのため、「オルファト・フィシャ」、王室ヨットと共にトラフェミュンデへ向かう[14]。1913年、フク・ファン・ホラントロッテルダムを訪問[14]。1914年、「ヘアロフ・トロレ」とともにニューカッスル[要曖昧さ回避]を訪問[14]。同年、カルマルを訪問[14]。1922年、「オルファト・フィシャ」とともにストックホルム、ダンツィヒを訪問[15]。1935年、王室ヨット「ダネブロー」の護衛でストックホルムへ向かう[15]

自沈した「ピーザ・スクラム」

1940年4月9日のドイツ軍によるデンマーク侵攻時は「ピーザ・スクラム」はフレズレクスハウンにあった[16]。1943年8月29日、ニュホルム島で自沈[17]。同年11月22日にドイツ軍が浮揚[16]。「アドラー (Adler)」と改名し、10.5㎝砲6門と40㎜機関砲4門、20㎜4連装機銃4基を搭載して砲術練習艦および対空浮砲台とした[16]。15㎝砲は砲台に移されている[16]。1945年4月1日、フリードリヒショルトで空襲により沈没[16]

1945年9月に浮揚され、1949年4月1日にH. J. ハンスン社に売却[2]

脚注[編集]

  1. ^ 『海防戦艦』65ページ
  2. ^ a b c d e f g h i j 『海防戦艦』83ページ
  3. ^ 『海防戦艦』73ページ
  4. ^ a b 『海防戦艦』67ページ
  5. ^ 『海防戦艦』68-69ページ
  6. ^ a b 『海防戦艦』69ページ
  7. ^ 『海防戦艦』69、83ページ
  8. ^ 『海防戦艦』70、83ページ
  9. ^ 『海防戦艦』79ページ
  10. ^ a b 『海防戦艦』82ページ
  11. ^ a b c 『海防戦艦』71ページ
  12. ^ a b c d 『海防戦艦』70ページ
  13. ^ 『海防戦艦』74ページ
  14. ^ a b c d 『海防戦艦』75ページ
  15. ^ a b 『海防戦艦』76ページ
  16. ^ a b c d e 『海防戦艦』77ページ
  17. ^ 『海防戦艦』77、81ページ

参考文献[編集]

  • 橋本若路『海防戦艦 設計・建造・運用 1872~1938』イカロス出版、2022年、ISBN 978-4-8022-1172-7