チェビシェフの偏り
チェビシェフの偏りとは、あるNまでの素数には、4k + 3 の形をした素数(非ピタゴラス素数)が 4k + 1 の形をした素数(ピタゴラス素数)より多い現象である。1853年にパフヌティ・チェビシェフによって最初に発見された。
詳細
[編集]いま π(x; 4, 1) を、x までの 4k + 1 形の素数の個数、 π(x; 4, 3) を、x までの 4k + 3 形の素数の個数とする。そのとき算術級数の素数定理より、
であるから、素数の半分は 4k + 1 の形であり、残りの半分は 4k + 3 の形である。すると、π(x; 4, 1) > π(x; 4, 3) となる x も π(x; 4, 1) < π(x; 4, 3) となる x もそれぞれ50%ずつ存在するであろうと推測できるが、実際には π(x; 4, 3) > π(x; 4, 1) となる区間が(少なくとも小さな x に対しては)はるかに長く、x が5, 17, 41, 461において π(x; 4, 3) = π(x; 4, 1) となる4個を除いた26833未満の素数 x に対しては π(x; 4, 3) > π(x; 4, 1) が成立し続ける。
いま 0 < a, b < q かつ (a, q) = (b, q) = 1 となる整数に対して、a が平方剰余、b が平方非剰余である場合には、π(x; q, b) > π(x; q, a) となる区間の方がより長いことが一般に言える。これは、強いリーマン仮説が成立する仮定の下では証明される。しかし、「π(x; 4, 3) > π(x; 4, 1) が成り立つ x の稠密度は1である」というKnapowskiとTuránの予想は否定された。一方、それらの対数密度(logarithmic density)は約0.9959である[1]。
関連項目
[編集]- Shanks–Rényi race problem
参考文献
[編集]- ^ (Rubinstein—Sarnak, 1994)
- P.L. Chebyshev: Lettre de M. le Professeur Tchébychev à M. Fuss sur un nouveaux théorème relatif aux nombres premiers contenus dans les formes 4n + 1 et 4n + 3, Bull. Classe Phys. Acad. Imp. Sci. St. Petersburg, 11 (1853), 208.
- Granville, Andrew; Martin, Greg (2006). “Prime number races”. Amer. Math. Monthly 113: 1–33. JSTOR 27641834.
- J. Kaczorowski: On the distribution of primes (mod 4), Analysis, 15 (1995), 159–171.
- S. Knapowski, Turan: Comparative prime number theory,I, Acta Math. Acad. Sci. Hung., 13 (1962), 299–314.
- Rubinstein, M.; Sarnak, P. (1994). “Chebyshev's bias”. Experimental Mathematics 3: 173–197. doi:10.1080/10586458.1994.10504289.
- Weisstein, Eric W. "Chebyshev Bias". mathworld.wolfram.com (英語).
- オンライン整数列大辞典の数列 A007350 (where prime race 4n-1 versus 4n+1 changes leader)
- オンライン整数列大辞典の数列 A007351 (where prime race 4n-1 versus 4n+1 is tied)
- 数学セミナー2019年4月号P2~P5 高校数学ではじめる整数論(第1回) 素数のレース