ダイマクション

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ダイマクション (: Dymaxion) は、「最小のもので最大を成す」という思想・理念を表すためにバックミンスター・フラー造語した用語。 dynamic + maximum + tensionという構成の英語のかばん語である[1][注釈 1]

バックミンスター・フラーが、彼の発明品の根底にある理念を表すためにそれに冠し、また講演会や著書などでもその理念を説いたことで世に広まった。

経緯[編集]

シカゴのマーシャルフィールド・デパートでフラーの最初の建築モデルを展示することになった際、その建築モデルに何らかの名前をつける必要が生じた。デパート経営者のマーシャル・フィールド(en:Marshall Field)はそれに名前をつけさせようとしてワーズスミス(wordsmith、コピーライターのような職)のワルド・ワレン(Waldo Warren)を雇い、2日かけてフラーの語るところじっくり聞かせたところ、フラーは風変わりな言葉を使っていることに気付かされた。ワレンとフラーは、フラーが使っている言葉についてあれこれと会話を交わし、造語のアイディアが生まれ、結局2人は「Dymaxion」という用語を使うのが良いという結論で合意した。

それ以降、数十年にわたりフラーは自身の発明品にしばしば「Dymaxion(ダイマクション)」という語を冠するようになった。著名なものとしてダイマクション・ハウスダイマクション・カーダイマクション地図などがある。

他にもフラーは、日中に30分程度とる睡眠(多相睡眠)の説明にも「ダイマクション」という用語を使った 。またフラーが日々行っていたクロノファイル(詳細な個人日誌)のことも後に、実質的に「Dymaxion Chronofile ダイマクション・クロノファイル」と再命名した。

1968年にはダイマクションに触発された雑誌全地球カタログ(WEC)が刊行され、ヒッピーのバイブルのような存在となった。読者だったスティーブ・ジョブズは強い影響を受けており、廃刊時のイベントで集まった資金を利用して立ち上げられたホームブリュー・コンピュータ・クラブに参加し、会員だったスティーブ・ウォズニアックAppleを起業した。

脚注[編集]

  1. ^ 「dynamic maximum tention」をあえて日本語(漢字)に訳せば「動的最大張力」となるが、こう訳しただけではバックミンスター・フラーの当思想・理念はうまく理解できない。
  1. ^ Sieden, Lloyd Steven (2000). Buckminster Fuller's Universe. Basic Books. p. 132. ISBN 978-0-7382-0379-9. https://books.google.com/books?id=rG__1rhIzE0C&dq=Dymaxion+dynamic&pg=PA132 

関連項目[編集]