ジャン・バラケ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

ジャン=アンリ=アルフォンス・バラケJean-Henri-Alphonse Barraqué , 1928年1月17日 - 1973年8月17日)は、フランス作曲家

略歴[編集]

ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」とドビュッシーの「」を至高の作品と崇め、戦後に入ってから創作活動を始める。極めて高度のセリー技法を扱う作曲家であり、レヴェルの維持のために残された作品数は僅か7作品だけであった。

初期の作品、ソプラノ、器楽合奏と打楽器のための「セカンス」と「ピアノソナタ」では、ブーレーズと極めて近い立場にあったことが伺える。ブーレーズはトータル・セリエリスムへの忠誠を誓ったが、バラケはこの不自由極まりない技法とは袂を別ち、「増幅するセリー proliferating series」を用いる一種の「セリーのポリフォニー[1]」と呼ばれる作風へ迫ってゆく。後期のクラリネット、ヴィブラフォンと6つの器楽グループのための「協奏曲」では三和音の不自然な挿入によりセリー技法のテンションが引き立つ可能性を探っていたが、前衛の時代では彼の態度はほとんど孤立無援に近く、楽壇から遠のく結果となってしまった。

後年、ヘルマン・ブロッホの『ヴェルギリウスの死』に感銘を受けたバラケは、この小説に基づく大規模な連作に取り掛かる。4つの器楽グループと1組の声楽グループのための「偶然の彼方に」、ソプラノ、ピアノと6人の打楽器奏者のための「歌に次ぐ歌」、ソプラノ、混声合唱とオーケストラのための「復元された時間」は、この連作の一環として作曲された。これらの作品は『ヴェルギリウスの死』やブロッホの他の小説からテキストが採られている。また、「協奏曲」も『ヴェルギリウスの死』と間接的な関わりを持った作品である。この連作はピアノ独奏曲からオペラに至る様々な作品で構成される計画であったが、未完に終わった。

1964年には交通事故に遭った上に自宅が火事で焼失。その後は病気に悩まされた末に1973年、45歳で死去。楽譜は死後25年以上を経てベーレンライター社から生前公表作品より再出版されたが、ピアノソナタを除いて初版のリプリントであり校訂作業はなされていない。「ピアノソナタ」の日本初演は2003年鈴木貴彦[2]によってなされた。

バラケはデュパルクのように、極めて自作品の選定には厳しく、「18人の声楽のための火の回廊(c. 1968; 1972–73)」、「弦楽四重奏のためのプロティアへの賛歌I(1972–73)」「ピアノ独奏のためのプロティアへの賛歌II(1973)」、「3人の声楽と大オーケストラのためのリサニアス(c. 1966–69; 1972–73)」、「声楽とオーケストラのためのディスクール(c. 1961)」、「吹奏楽と二人のナレーターのための舞台音楽(1958–59)」は完成させることが出来なかった。また、『30作ほどあった』とされ生前失われた事になった「夜想曲嬰ハ短調」、「交響曲」、「無伴奏バイオリンソナタ」、三つのピアノソナタなどは、実は遺族が管理しており存在が確認されている。

出版[編集]

現在作品の再検証作業が進んでおり、ピアノソナタは批判検証版が出版されている[3]

生前公表作品[編集]

  • 1950-52 ピアノソナタ Sonate pour piano
  • 1954 エチュード Etude
  • 1955-56 セカンス Séquence
  • 1959 偶然の彼方に ...au delà du hasard
  • 1966 歌に次ぐ歌 Chant après chant
  • 1962-68 協奏曲 Concerto pour six formations instrumentales et deux instruments
  • 1968 復元された時間 Le Temps restitué

生前未公開作品[編集]

  • 18人の声楽のための火の回廊(c. 1968; 1972–73)
  • 弦楽四重奏のためのプロティアへの賛歌I(1972–73)
  • ピアノ独奏のためのプロティアへの賛歌II(1973)
  • 3人の声楽と大オーケストラのためのリサニアス(c. 1966–69; 1972–73)
  • 声楽とオーケストラのためのディスクール(c. 1961)
  • 吹奏楽と二人のナレーターのための舞台音楽(1958–59)
  • ピアノのための間奏曲
  • ピアノのための二つの断章
  • ピアノのための主題と変奏
  • ピアノのための小品
  • ピアノのための回帰
  • ピアノのための私の愛のうちにいなさい[4]
  • 無伴奏ヴァイオリンソナタ[5]
  • 三つのピアノソナタ[6]
  • オーケストラのための交響曲嬰ハ短調
  • ピアノのための夜想曲嬰ハ短調[7]

著書[編集]

  • 『ドビュッシー』(平島正郎訳/音楽之友社/1969)

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Modern Music And After, 3rd Edition, Paul Griffiths, Oxford University Press, p.122
  2. ^ あれから10数年が経って30代半ばになって、鈴木貴彦のリサイタルに行った。バラケのソナタは、久しぶりに出会った「青二才エテュード」だった。”. www.weblio.jp. WEBLIO. 2020年3月8日閲覧。
  3. ^ Replaces BA 7284”. www.baerenreiter.com. Sonate pour piano. 2020年3月8日閲覧。
  4. ^ 世界初録音を含む!ジャン・ピエール・コロによるジャン・バラケのピアノ作品集”. tower.jp. Tower Records (2020年3月3日). 2020年3月10日閲覧。
  5. ^ Sonate für Violine solo”. www.baerenreiter.com. Baerenreiter Verlag (2020年3月3日). 2020年3月10日閲覧。
  6. ^ Jean Barraqué”. musicalics.com. musicalics. 2020年3月11日閲覧。
  7. ^ A Biographical Chronology of Jean Barraqué”. www.jstor.org/. JSTOR. 2020年3月10日閲覧。

外部リンク[編集]