シットゥイン

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シットゥインの初期配置

シットゥインビルマ語: စစ်တုရင်、Sittuyin)は、ミャンマー将棋類であり、2人で行うボードゲームである。将棋チェスなどと同様、チャトランガを元とするゲームの1つである。

チャトランガがビルマに渡りシットゥインの原型が生まれたのは8世紀ごろだといわれている。「シット」はビルマの言葉で「戦争」や「軍隊」を意味している。「シットゥイン」という言葉は「戦争に使われる軍隊」に由来している。チェスの流入により南部ではプレイヤーは減っているが、北西部の地域では普及している。

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シッケ(副官)の動き
シン(象)の動き

シットゥインの盤は8×8 の64マスからなる。チェスボードとは違い、市松模様には塗られていない。盤上にはシッケチョウと呼ばれる2本の対角線が引かれている。盤の大きさは60 cm四方くらいであり、1つのますの大きさは7.5 cmくらいとなる。

駒の名前と動き[編集]

シットゥインの駒は通常は木製であるが、高級品では象牙製のものも存在する。大きさは種類によって違うが、5-7 cmくらいである。公式の駒は赤と黒に色分けされている。

駒の名称と動きは以下の通りである。

ミンジー(王)
上下左右斜めに1マス進むことができる。将棋の玉将(王将)・チェスのキング・マークルックのクンなどと同じ動きである。
シッケ(副官)
斜めに1マス進むことができる。マークルックのメットと同じ動きである。
シン(象)
斜めに1マスか前に1マス進むことができる。将棋の銀将・マークルックのコーンと同じ動きである。
ミン(馬)
チェスのナイト・マークルックのマーと同じ動きである。
ヤター(戦車)
縦横に好きなだけ動くことができる。将棋の飛車・チェスのルーク・マークルックのルアと同じ動きである。
ネ(兵)
前に1マス進むことができる。ただし前の敵駒は取れず、その代わり斜め前の敵駒を取ることができる。簡単に言うと、チェスのポーンと同じ動きである。

ルール[編集]

8
abcdefgh
8
d8 black rook
f8 black rook
b7 black king
c7 black knight
e7 black bishop
b6 black bishop
c6 black knight
d6 black queen
e6 black pawn
f6 black pawn
g6 black pawn
h6 black pawn
a5 black pawn
b5 black pawn
c5 black pawn
d5 black pawn
e4 white pawn
f4 white pawn
g4 white pawn
h4 white pawn
a3 white pawn
b3 white pawn
c3 white pawn
d3 white pawn
e3 white queen
f3 white bishop
g3 white bishop
d2 white knight
f2 white knight
g2 white king
c1 white rook
e1 white rook
8
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh
配置の一例

シットゥインの初期配置は、ネの位置が指定されていることとヤターを最下段に配置することを除けば自陣内で自由に配置してよい。赤から順に駒を配置していくが、公式の大会では相手の配置がわからないようにカーテンなどで仕切られる。配置の例は右の図を参照。

ネは、シッケチョウ(盤上に引かれた対角線)のあるマスに入るとシッケに昇格することができるが、これは既に自分のシッケが取られている場合に限る。ネがシッケチョウのマスにいるときにシッケが取られた場合、次の手番で昇格することができる。シッケチョウを通過したネは、今後昇格することはできない。

勝負は、相手のミンジーを詰ませた方が勝ちとなる。ステイルメイトはされてミンジーが動けなくなった方が負けである。

H・J・R・マレーの記録によれば、シットゥインは3段階の手順がある。

  1. ネおよび他の駒を配置する。
  2. 相手の配置を見て自陣の駒を好きな場所に置きなおす。このとき、駒の動きは無視してよい。どちらかのプレイヤーがネを動かしたときこの段階は終了し、ゲーム開始となる。
  3. 通常のルールに従って相手のミンジーを詰ますまで指す。

参考文献[編集]