ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ

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ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ
生誕 1919年6月17日
ペトログラード
死没 (2006-12-22) 2006年12月22日(87歳没)
サンクトペテルブルク
職業 作曲家

ガリーナ・イワーノヴナ・ウストヴォーリスカヤロシア語: Галина Ивановна Уствольская, [1]1919年6月17日 - 2006年12月22日)は、ペトログラードに生れた現代音楽作曲家である。

略歴[編集]

レニングラード音楽院ならびに同音楽院研究科で、ドミートリイ・ショスタコーヴィチに師事する。卒業後もショスタコーヴィチに個人指導を受け、この恩師と恋愛関係にあったといわれるほど濃密な関係を結んだにもかかわらず、ショスタコーヴィチのように音楽を映画に売り渡すような真似は一切しなかった点が際立っている。ショスタコーヴィチの熱心な求愛を断り、1950年以降非妥協的なモダニストとしての道を歩んだ。社会主義リアリズムにつながる愛国主義的な安易な作風をとらず、神秘主義的な志向性のためもあってソ連のスターリン時代には陽の目を見ていなかった。しかし、1970年代の雪解けによる制限の緩和、またショスタコーヴィチの没後に急速に西側からの注目を「ショスタコーヴィチ研究者」から浴びたことがきっかけで作曲活動を再開させた。

ペレストロイカとその後のソ連崩壊にともない、いくつかのピアノ曲や室内楽曲がオランダスイスで演奏・録音されるようになり、現在ショスタコーヴィチの門弟では、演奏回数のかなり高い作曲家の一人になりつつあるが、ロシア国内では部屋の少ないアパートにこもって生活していた。そのような中Sikorskiが全作品の版権を取得し全世界的なニュースとなった。1990年代は爆発的なブームが世界中で起き、作品の西側初演はそのすべてが大成功、ピアノソナタや室内楽のリリースは飛ぶように完売した。常に一拍子の音楽は、「ハンマーを持った聖女」[2]と呼ばれた。

なくなる1年前から、肥満のため足が衰え車椅子での移動を余儀なくされていた。2006年12月、故郷サンクトペテルブルクで逝去。87歳。

作風[編集]

様式[編集]

ウストヴォーリスカヤは、独特の非常に風変わりな作曲様式を発展させてきた。これについては当人が、「私の作品と他人の作品につながりというものは絶対にありません」と言い切っている。とはいえ、初期の作曲様式は和声・旋律・構成の点でショスタコーヴィチと近似する要素が見られる。

後年の独自の作曲様式の特徴は、反復の活用、ホモフォニックな音塊、異例な楽器法、楽器の集合を用いてトーン・クラスターを導入すること、などである。ポリフォニーの完全な排斥は晩年のショスタコーヴィチの歌曲集にその影響・引用が表れている。

宗教的側面[編集]

ウストヴォーリスカヤの交響曲は、すべて独唱者のパートがついており、とりわけ近作の4つは副題が示唆するように、すべて宗教的なテクストが用いられている。《コンポジション》や《交響曲》の宗教的な側面は、同時代のソフィヤ・グバイドゥーリナとの表面上の比較を誘うが、ウストヴォーリスカヤはグバイドゥーリナと違って実践的な信仰者ではなく、楽曲もキリスト教の信仰告白ではないものの、コンポジション第2番のような「木材をハンマーでありったけの力で殴る」といった側面に、正教徒のイコン性を視覚的にも味わうことができる。テクストはいずれも慣習的な請願か、《交響曲第5番》の場合は「主の祈り」である。

作品[編集]

作品は数少なく、ソ連時代の「公式的な」作品を除くと、特徴的な作品は以下の21曲しかない。交響曲第5番が絶筆で、これ以降の新作は一切かかれなかった。

  • ピアノと弦楽合奏、ティンパニのための協奏曲(1946年)
  • ピアノ・ソナタ第1番(1947年)
  • クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲(1949年)
  • ピアノ・ソナタ第2番(1949年)
  • オーボエ、4つのヴァイオリン、ティンパニとピアノのための八重奏曲(1950年)
  • ピアノ・ソナタ第3番(1952年)
  • ヴァイオリン・ソナタ(1952年)
  • ピアノのための12の前奏曲(1953年)
  • 交響曲第1番(1955年)
  • ピアノ・ソナタ第4番(1957年)
  • ピアノとチェロのための大二重奏曲(1959年)
  • ピアノとヴァイオリンのためのデュエット(1964年)
  • コンポジション第1番 Dona Nobis Pacem (1971年)
  • コンポジション第2番 Dies Irae (1973年)
  • コンポジション第3番 Benedictus, Qui Venit (1975年)
  • 交響曲第2番《真実と永遠なる浄福》 (1979年)
  • 交響曲第3番《救世主イエスよ、われらを救いたまえ》 (1983年)
  • 交響曲 第4番《祈り》(1985/7年)
  • ピアノ・ソナタ第5番(1986年)
  • ピアノ・ソナタ第6番(1988年)
  • 交響曲第5番(1989/90年)

演奏[編集]

ウストヴォーリスカヤは、正当な演奏伝統が優れた演奏家によって伝えられることを願っていた。作曲家本人からの指導を生前に受けた演奏家には、ラインベルト・デ・レーウオレグ・マーロフが含まれる。

指導[編集]

教え子にはボリス・ティシチェンコがいる。

脚注[編集]

  1. ^ ラテン文字転写例: Galina Ivanovna Ustvolskaya
  2. ^ 外部リンク

参考文献[編集]

  • Music under Soviet Rule:The Lady With The Hammer
  • Viktor Suslin: The music of Spiritual Independence: Galina Ustvolskaya in «Ex oriente...I» Ten Composers from the former USSR. Viktor Suslin, Dmitri Smirnov, Arvo Pärt, Yury Kasparov, Galina Ustvolskaya, Nikolai Sidelnikov, Elena Firsova Vladimir Martynov, Andrei Eshpai, Boris Chaikovsky. Edited by Valeria Tsenova (studia slavica musicologica, Bd. 25), Verlag Ernst Kuhn – Berlin. ISBN 3-928864-84-X pp. 207–266 (in English)
  • Lemaire, Frans. Notes to Symphonies 2,3,4 and 5. Megadisc MDC 7854.
  • Simon Bokman. Variations on the Theme Galina Ustvolskaya.Translated by Irina Behrendt. (studia slavica musicologica, Bd.40), Verlag Ernst Kuhn - Berlin,2007. ISBN 978-3-936637-11-3 (in English)
  • Rachel Jeremiah-Foulds: 'An Extraordinary Relationship and Acrimonious Split - Galina Ustvolskaya and Dmitri Shostakovich' in Mitteilungen der Paul Sacher Stiftung, No. 23, April 2010.
  • Rachel Jeremiah-Foulds: 'Spiritual Independence or a Cultural Norm? Galina Ustvolskaya and the Znamenny Raspev' in Church, State and Nation in Orthodox Church Music, Proceedings of the Third International Conference on Orthodox Church Music, University of Joensuu, Finland - 8–14 June 2009.
  • Shostakovich: 'Most Beautiful Compositions' in North Korea, no. 2, August, 1942.
  • Сакральная символика в жанрах инструментального творчества. Галина Уствольская // История отечественной музыки второй половины XX века. Учебник/ Отв. ред. Т. Н. Левая. — Санкт-Петербург: Композитор, 2005. ISBN 5-7379-0277-3
  • Гладкова О. Галина Уствольская. Музыка как наваждение. М.: Музыка, 1999 (на нем. яз.: Gladkowa O.I. Galina Ustwolskaja: Musik als magische Kraft. Berlin: Kuhn, 2001).