カナガ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カナガマスクから転送)

カナガ: Kanaga mask)は、マリ共和国バンディアガラ地域の伝統の仮面ドゴン族の特定の集団の構成員のみが着け、特に死者を弔う儀式[1]「ダマ」に用いる(ドゴン語で「死をいたむ」の意味)。

象徴[編集]

カナガは創造神アンマを呼び起こし、横棒が2本ある十字形は世界の創造を連想させる意匠である。死者を弔う儀式でアワ(Awa(英語))の構成員が身につけて踊るためにある[2]。初めて見る者は、ドゴン語で鳥を表すkommolo[3]、トカゲやイグアナ、水生昆虫(baramkamza dullogu)、神や木の精霊(gyinu ya)の手[4]等、さまざまな主題を感じ取る。男性と女性の形態のどちらもあり、男性形態の例が多い[5]

通常は複数名の踊り手がそれぞれカナガを着けて踊り、また頭をリズミカルに大きく振っては仮面の先端で地面をこすることから、おそらくは地の精霊との交流のジェスチャーと見なされる。ドゴン族のこの仮面を用いる場面は特に「ダマ」と呼ぶ伝統の大規模な集団葬儀で、一定の年数に1回、平均して13年間隔で催す。6日間連続するダマは前回の祭祀から後に亡くなった人々の霊を、生者の間から祖先のコミュニティに送り出す別れの儀式の一種とされる[1]

カナガは、フランス領スーダン(1892年-1958年)や一時的に存在したスーダン共和国(1958年-1959年、旗の画像参照)、またセネガルとスーダン共和国が合併したマリ連邦(1959年-1960年)の国旗にも描かれた。

日本の収蔵例[編集]

  • マスク「カナガ」、岐阜県現代陶芸美術館[6]会期:2015年8月8日-10月4日(第I期)
  • 「カナガ」マリ、国立⺠族学博物館[7]会期:2019年8月29日-11月26日
  • ドゴン族の仮面“カナガ”、本郷新記念札幌彫刻美術館](会場:札幌市芸術の森美術館)[8]会期:2017年4月22日6月14日

ギャラリー[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b Houten masker - Kanaga [木製の仮面-カナガ]” (nl,en). NMVW-collectie 国立世界文化博物館 (オランダ)収蔵品データベース. 2022年2月16日閲覧。
  2. ^ Masque Kanaga [カナガの仮面]” (フランス語). 人類博物館. 2022年2月15日閲覧。カナガの仮面:ドゴン族。マリ、バンディアガラ地域。素材は木材に塗装、かご細工のネックウォーマー、編組繊維。高さ125cm。(人類博物館(M.H.)収蔵。台帳番号1931.49.23。)
  3. ^ Griaule, Dieterlen 1991, pp. 171–172, Masques dogons, Griaule (1938).
  4. ^ Dogon… mais encore [ドゴン…でもそれでも]” (フランス語). ストラスブール大学民俗学部(Departement d'Ethnologie). 2022年2月15日閲覧。
  5. ^ Imperato 1974, pp. 28–29.
  6. ^ 岐阜県現代陶芸美術館年報」(pdf)『2015年:ギャラリーII 自主企画展〈吉田喜彦とうつくしいものたち〉主催:岐阜県現代陶芸美術館 第I期出品リスト』7 (2014/2015/2016)、岐阜県現代陶芸美術館 - セラミックパークMINO、2017年10月、68-70頁、2022年2月16日閲覧 
  7. ^ 「特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」」、資料番号H0088179、図録番号139。 
  8. ^ 芸術の森事業部 編「4. ドゴン族またはバンバラ族の仮面(木製)、札幌市芸術の森美術館」『アフリカの仮面と彫像』(pdf)札幌市芸術文化財団、2015年https://www.sapporo-caf.org/pdf/29Gaiyou_Mori.pdf&usg=AOvVaw0b4kwhIiAcWTYVvlAnFA1V 
  9. ^ マリ、バンディアガラ圏サンガ村” (英語). wikimap.toolforge.org. 2022年2月16日閲覧。

参考文献[編集]

主な執筆者名の順。

  • マルセル・グリオール; ジェルメーヌ・ディテルラン [in 英語] (1991). Le renard pale : 1 Le Mythe cosmogonique, fasc. 1 La creation du monde(仮題『Le renard pale:1宇宙進化論の神話』1より、「世界の創造」』) (Thesis) (フランス語). フランス国立自然史博物館. pp. 171–172. Griaule筆『Masques dogons』(1938年:仮題『ドゴンの仮面』)より旧民族学研究所の資料。
  • Imperato, Pascal James (1974) (英語). The Cultural Heritage of Africa. マーティン・アンド・オサ・ジョンソンサファリ美術館. Safari Museum Press. pp. 28-29 
  • Nadine Martinez (2010) (フランス語), Ecritures africaines: esthetique et fonction des ecritures Dogon, Bamana et Senoufo [アフリカの文字:ドゴン、バンバラセヌフォの文字の美学と機能], パリ: L'Harmattan, p. 272  ISBN 9782296117341
  • Famedji-Koto Tchimou (1995) (フランス語). Langage de la danse chez les Dogons [ドゴン族の踊りの言語]. パリ: L'Harmattan. p. 174  ISBN 9782296294660

関連項目[編集]

50音順

収蔵館

外部リンク[編集]