アースアンカー工法
アースアンカー工法(アースアンカーこうほう)またはグラウンドアンカー工法(グラウンドアンカーこうほう)は建築用語(土木関連)で、山留工法の一種である。テンドン(tendon、腱の意味)と呼ばれるPC鋼材(PC鋼より線)を地盤に固定し、PC鋼材の引張力で山留壁や法枠を保たせるために用いる。単に「アンカー工法」と呼ばれることもある。
地すべりの末端部や道路の法面などで、不安定な土塊を固定するために用いたり、様々な理由で構造物が単独では安定しない(転倒のおそれがある)場合に用いる。地すべり対策においては、抑止工(構造物により力学的に地すべりの発生要因を抑制する工法)の代表的工法の一つである。
名称について[編集]
土質工学会(現地盤工学会)により1977年(昭和52年)に「アースアンカーの設計・施工基準」が制定され、しばらくはアースアンカーの名称が用いられていたが、1988年(昭和63年)の基準改定に伴い、「グラウンドアンカーの設計・施工基準」と改称された[1]。以降は技術文献等では専らグラウンドアンカーの名称が用いられている。
種類[編集]
グラウンドアンカーは、その目的により永久アンカーと仮設アンカーに分類される。永久アンカーは長期に渡る安定性が求められる法面安定などに用いられ、仮設アンカーは土留のような比較的短期の用途を目的としたものに使用される。仮設アンカーには役目を終えた後に除去可能な構造を有する除去式アンカーと、除去不可能な残置式アンカーとに分けられる。
また、アンカー力の伝達方法による区分として、アンカー体と地盤との摩擦抵抗によりアンカー力を伝達する「摩擦型アンカー」、地中で径を拡大して施工したアンカー体の支圧抵抗によりアンカー力を伝達する「支圧型アンカー」、またはその両方の効果を期待した「複合型アンカー」に分類される[2]。
施工手順[編集]
- 土留杭や受圧盤を施工し、基礎になる部分を掘り下げる。
- 掘り下げ後、土留杭や受圧盤の背面地盤を所定の長さまでボーリング削孔する。
- 削孔後、テンドンを挿入し、グラウト(セメントミルクや合成樹脂)を孔に圧入、硬化させる。
- グラウト硬化後、テンドンに所定の緊張力を導入し、くさびやナットなどの定着具を用いてアンカー頭部を定着する。
脚注[編集]
- ^ 公益社団法人地盤工学会 『地盤工学会基準 グラウンドアンカー設計・施工基準,同解説(JGS 4101-2012)』丸善出版、2012年。ISBN 978-4-88644-090-7。
- ^ 社団法人日本道路協会 『道路土工-切土工・斜面安定工指針』丸善出版、2009年6月。ISBN 978-4-88950-415-6。