かませ犬

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噛ませ犬[1][2] / 咬ませ犬[1][2] / かませ犬(かませいぬ)とは、原義および第1義には、闘犬において、訓練したい犬に噛み付かせて自信を付けさせる引き立て役として宛がわれる弱い犬のこと[1]。そういった日本語表現であり、第2義には、原義から転じて、勝負事において引き立て役として対戦させる弱い相手[1]や、主役を引き立てるために一方的に負ける役目の者[2]をいう。

なお、後述するように「アンダードッグ」を同義語とする[注 1]のは誤用であるが、日本では一部で通用している。

概説[編集]

若い闘犬には、まず弱い犬をあてがい、その犬を十分に噛ませることで勝つ味を教える。しかし若い犬は戦い方がわからず、うまく噛めないこともあるため、そういう場合には弱い犬の口を縛ったりする例もあるという。往々にして、闘犬を引退した老犬がかませ犬として使われる。

ここから転じて、スポーツ格闘技において選手やチームの調整のためや華々しい勝利を観客に見せ付けるために、意図的に対戦させる実力の劣る相手や、フィクション作品において主人公または強大な敵役の強さを見せ付けるためのやられ役を指すようになった。映画『ロッキー』におけるチャンピオンのアポロ・クリードに対するロッキー・バルボアのような立場が想定される。

似て非なる言葉[編集]

巨人ゴリアテ(奥)とダビデ(手前)。ゴリアテと背後の敵兵たちはダビデを憐れなアンダードッグの一人と侮っていたが、この直後、若者が繰り出したスリングの痛撃により、文字どおりのジャイアントキリングが果たされる。

アンダードッグ[編集]

英語には "underdog" という語があり、これを仮名音写した外来語アンダードッグ」が日本でも通用しているが、「噛ませ犬」の同義語のように用いるのは間違いである。

「噛ませ犬」は、原義の「犬」であれ転義の「人」であれ「負ける役回りに就かされた者」に対する呼称であるが、"underdog" は、「負けてしまった者」(※既に決着している)や「必ずや負けるに違いないと予想される者」(※決着していない)に対する呼称であって、「負けることを想定して仕立てられた者」とは決定的に違う。

"underdog" は、文字どおりには「劣った」を意味するが、「喧嘩/闘いで打ちのめされた犬[7]負け犬[8] 」「弱い犬[8] 」という直接的語意で1887年初出した[9]後、そこから転じて、「人生などの生存競争における敗残者[10][8]負け犬[10][11])」、「勝ち筋の見えない不利な立場にある者[10][12][8][11]」(例:旧約聖書において、最強の巨漢兵士ゴリアテとの決闘に挑む若輩の戦士ダビデの、戦前の立場。ドラマにおいて、大手企業と競合して淘汰されようとする零細企業。当選するとは到底思えない選挙立候補者〈泡沫候補者〉。)、「社会的不正あるいは政治的不正の犠牲者[8]、(社会的不正による)弱者[10]」などを意味するようになった語である。異なる視点から同じものを表して結果的の同義で用いることはあろうが、日本語「噛ませ犬」の同義語とは言えない。

当て馬[編集]

ダークホース[編集]

負け犬[編集]

魚腩部隊[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ マスメディア[3]や企業広報[4]ウィキペディアの過去記事[5]SNSでの書き込み[6]などには、そのような説明が散見される。

出典[編集]

  1. ^ a b c d kb泉.
  2. ^ a b c EBWeb 広辞苑.
  3. ^ 例として、ABEMA配信版『アンダードッグ』で森山未來、北村匠海、勝地涼らが魅せる」『PR TIMES』株式会社 PR TIMES、2021年1月13日。2023年1月12日閲覧。「タイトルである“アンダードッグ”とは、ボクシング界で“かませ犬”を意味する言葉で、」
  4. ^ 例として、2020年の日本映画アンダードッグ』公式ウェブサイトの解説より抜粋、「そこからはずれた今も〝かませ犬(=アンダードッグ)〟としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々をおくる崖っぷちボクサー・末永晃(森山未來)。」
  5. ^ 例として、「アンダードッグ2020年12月16日05:49版2021年9月9日10:06版まで。「アンダードッグ(英語: underdog)は、かませ犬や負け犬を意味する英単語。 」
  6. ^ 例えば、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトでの回答。
  7. ^ OED, "the beaten dog in a fight,".
  8. ^ a b c d e kb underdog.
  9. ^ OED.
  10. ^ a b c d 英辞郎 underdog.
  11. ^ a b kb泉 アンダードッグ効果.
  12. ^ Brit underdog.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]