国境
国境
国境(こっきょう)は、国際法における国家と別の国家の領土(広義)を隔てる境目のこと。
地球は絶対的空間の広がりとして連続しており、自然地理学的な障害を別にすれば、本来人間や物体の自由な移動を許容するものである。古来より、国家領域の周囲はフロンティアとして曖昧にされていたが、1648年のウエストファリア条約以降、主権国家は明確な領域を持つこととされ、地球の連続的な広がりを有界化して、バウンダリーとしての国境線が地表上にひかれることとなった。
位置を規定する根拠
国境は、陸上にある場合もあれば海上、湖上にある場合もある。国境は大きく自然的国境と人為的国境に二分される。
いずれもこれを境として、国の領土または領海を分ける。海上においては、両国の狭義の領土から互いに等距離である中間線などを国境とすることが多い。また国際河川上においては、川床の最深部をつないだ線(航路の中央線ともなる)が国境となる。
国境の透過性
陸上の国境には、標柱、遮断機、壁などが設置され、柵などの障害物によって往来を困難にし、往来を特定の国境検問所のみに制限することが多い。また国境検問所では出入国管理(パスポート・コントロール、イミグレーション・コントロール)を行ない、多国間との財物や人の透過性を制御する。国境にどの程度の透過性を与えるかは、それぞれの国の主権者が決定する事項であり、国家がグローバルな競争の領域単位である状況の下では、労働力や財の市場を最適化するように透過性が操作される。労働ビザや定住ビザの発給数や、非合法で入国した労働者取締の強度が、この透過性操作に当たる。
国境の物理的な強度は、この社会的透過性の程度によって規定される。透過性が低い国境は、壁や地雷原などにより、二重三重に封鎖され、人の往来が許されないだけでなく、人の自由や権利にとっても国境であるといわれることもある。ドイツが東西に分割されていた当時の境界などがその例である。
ヨーロッパ統合の成果としてシェンゲン協定実施国[1]では、このような国境での出入国管理は廃止されている。この結果、シェンゲン協定実施国内においては通貨統合の成果と相まって、国境の意味が薄れているため、少数民族問題が解消されつつある。例えばイタリア領南チロル地方に住むドイツ系住民においては、独立を求めない現状維持派が多数を占めるようになっている。これはイタリア領からオーストリア領、ドイツ領へ往来が自由であり、通貨統合により経済的障壁も解消されているからである。